日本共産党

2002年12月31日(火)「しんぶん赤旗」

長崎県知事選の違法献金事件

自民党に衝撃

特定寄付の禁止 「政治資金」で届けても違法

選挙の集金構造にメス


 ことし二月の長崎県知事選をめぐる違法献金事件で、政権与党の事務所が強制捜査されたことは、政界はじめ関係業界に大きなインパクトを与えています。容疑は、自民党県連の浅田五郎幹事長・県議(二十九日、ともに辞職)が知事選の直前、県発注の公共工事を請け負っていた大手・中堅建設会社に知事選名目で献金を要求したことが、公職選挙法違反(特定寄付の禁止)にあたるというもの。選挙→ゼネコン献金という図式は、全国どこでも常態化しているだけに、「政治資金として届け出をしていても法に問われる可能性が出てきた」といっせい地方選挙を前にあわてさせているのです。(藤沢忠明記者)

20年前、共産党の追及

 公職選挙法は、国や地方自治体と契約関係にある企業が国政選挙や地方選挙に関連して献金することを禁じています(一九九条一項)。また政治家の側は、受け取ってはならないとしています(二〇〇条二項)。これは対価性があまりにも明白で、行政をカネの力でゆがめることを防ぐための規定です。

 ところが、この条項はほとんど有名無実でした。

 この違法献金が自民党を中心にかなり広範囲に行われていたことに国会で初めて本格的にメスを入れたのは、一九八二年二月八日、衆院予算委員会での日本共産党の村上弘議員(当時)による追及でした。

 村上議員の質問は、七九年の総選挙、八〇年の衆参ダブル選挙の選挙運動収支報告書と、建設会社が建設省(当時)に提出している工事経歴書にもとづくもの。「国や公共企業体から工事を受注している企業が選挙に関し寄付することは公選法で禁止されているにもかかわらず、これに違反して寄付を受領していた」として、鈴木善幸首相、安倍晋太郎通産相ら現職閣僚八人を含む四十七人の衆参国会議員の違法献金問題を取り上げました。

 このときの爆弾質問の効果は大きく、自民党のある理事は、共産党理事席にきて「覚えてろ」とすごむ一幕もあったほど。その後、各県警が捜査に乗り出しました。

軍事関連企業からも

 こうした違法献金は、建設業界にかぎったことではありません。

 八二年二月二十五日の衆院予算委員会。日本共産党の渡辺貢議員(当時)は、中曽根康弘行政管理庁長官(のち首相)が防衛庁から航空戦術支援システムやレーザーレーダー試作を受注していた富士通、62口径76ミリ速射砲を受注していた日本製作所の二社から八〇年六月の総選挙で計百九万円の献金を受け取っていたことを取り上げました。

 このとき、自治省選挙部長(当時)は、公選法一九九条について、「土木事業に関する請負というものが代表的なものとして掲げられているが、継続的、定期的な取引、物品の納入契約等も含まれる」と答弁しています。

公共事業エサに強制

 日本共産党が八二年に追及した公共事業を受注している建設会社からの違法献金問題は、警察庁が同年七月八日現在で、十三件十九人を公選法違反で書類送検するなど、社会問題化しました。

 しかし、以後、選挙のたびに建設業界を回り、公共事業をエサに票とカネを強制していることは全国どこでもおこなわれています。にもかかわらず、政治家の側が、選挙運動の収支報告書への届け出ではなく、政治資金として処理するようになりました。このごまかしのため、公選法違反の特定寄付の禁止が摘発されることは、めったになくなりました。

 今回の長崎県知事選でも、自民党長崎県連の幹事長らが、知事選を控えた昨年十一月、東京、大阪などに本社を置くゼネコン四十九社でつくる「県建設業協会長崎中央支部」に「来年は知事選もある。五千万円取りまとめてもらえないか」と要請。公選法に違反する疑いが指摘され、捜査を受けた五洋建設、不動建設などの昨年末の献金は、二〇〇一年分の自民党県連の政治資金収支報告書に届け出がされています。

 それだけに今回、長崎地検が公選法違反容疑で立件しようとしていることに自民党県連側は「党存亡の危機」と受けとめています。

受注企業献金禁止こそ

 公共事業と選挙をめぐる同様の疑惑は長崎県だけのことではありません。

 山口県でも二〇〇〇年八月の知事選で、現職知事を推薦した自民党県連が県発注工事を受注したゼネコンなど二十二社から計二千五百万円の寄付を受け取っていたことが報道されています。岐阜県では、昨年一月実施の知事選の直前、大日本土木など県発注工事受注企業が計千五百三十万円を自民党県連などに献金。その一部が知事の選挙母体に還流していた事実を日本共産党の大西啓勝県議が県議会で取り上げました。

 政治家個人が、政治資金として処理したゼネコン献金も受領時期が選挙期間中であれば、今回の「特定寄付の禁止」条項にあてはめれば、公選法違反ということになります。来年のいっせい地方選挙にも大きな影響を与えます。

 今回、強制捜査を受けたゼネコンが日常的に自民党に献金をおこなっているように、政治と行政の癒着を断つためには、少なくても日本共産党などが要求しているように、公共事業受注企業からの献金を禁止することが求められています。


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