日本共産党

2002年12月18日(水)「しんぶん赤旗」

日本経団連が経労委報告

賃下げ、不安定雇用を拡大

労働者の切実な要求に挑戦


 日本経団連(奥田碩会長)は十七日、財界の春闘対策方針、旧日経連が行ってきた労問研報告に代わる「経営労働政策委員会報告」(経労委報告)を発表しました。あからさまに賃下げをとなえ、不安定雇用の増大をうちだすなど財界の手前勝手な主張を展開し、労働者にいっそうの犠牲をおしつける内容になっています。

 小泉内閣・自公保政権によって日本経済と国民生活が破壊されるもとで、完全失業者が三百六十万人を超え、最悪を記録し続け、雇用不安がいっそう広がっていますが、「報告」は、その原因が大企業などによる空前のリストラ・人減らしにあることにはいっさい口をつぐんでいます。そして、「構造改革の後れによるわが国の国際競争力の劣化は、国の存続にかかわる深刻な事態」とのべ、小泉「構造改革」に同調。「不良債権処理が本格化すれば失業が増大し、雇用情勢は深刻の度を増す恐れがある」といいながら、その方向に突き進む無責任ぶりです。

いっそうの「規制緩和」

 雇用対策については、「雇用のセーフティネット(安全網)の整備・充実」、「若年層・高齢者への施策」「柔軟なワークシェアリング」などをあげて、雇用不安の緩和・解消を主張していますが、その力点は「円滑な労働移動を可能にする環境条件を整える必要がある」として労働分野のいっそうの「規制緩和」です。

 人材派遣期間の制限撤廃や、許可制を届け出制に移行、製造業や医療関連職場への派遣禁止の撤廃、有期契約を一年から五年へ、裁量労働制の対象業務の拡大、行政の介入が増加する解雇規制の法制化反対と、労働法制の全面改悪を唱えています。

 四年連続の実質賃金マイナスなど切実さを増す賃金については、「先進諸国のなかでもトップレベル」と旧日経連以来の主張をくり返し、「これ以上の引き上げは困難であり、ベースアップは論外」と断じています。さらに「定期昇給の凍結・見直し」「雇用を維持する代わりに、賃金は下げるという選択に迫られる企業も多数」と賃下げを公然と訴えています。

 そのうえで、月々の賃金だけでなく一時金や退職金、社会労働保険を含む「総額人件費の効率化」が急務と強調。「最小の人件費コストで最大の経営効率を実現する」ことを掲げ、分社化、アウトソーシング(外注化)、海外展開などのリストラ「合理化」をあおり、正社員からパート、派遣などの不安定雇用労働者への置き換えを打ち出しています。

名目賃金のマジック使い

 「報告」の「賃金はトップレベル」という主張は、日本の賃金を一〇〇とするとアメリカ九三、ドイツ七六、フランス六二と示して、日本が一番高いというものですが、これは、名目賃金を為替レートに換算して比較したものにすぎず、労働者のくらしからかけ離れた数字のマジックです。

 同じ内容の商品やサービスが購入できる各国の通貨単位の比較値、購買力平価でみると、アメリカは一四五、ドイツ一七七、フランス一三二といずれも日本の賃金を上回っています。「トップレベル」どころか、日本の低賃金構造は歴然です。「報告」は、古ぼけた労働者だましのやり方を引き継いでいます。


経済破たんの道

経労委報告で 全労連事務局長が談話

 全労連(全国労働組合総連合)は十七日、日本経団連の経労委報告について、坂内三夫事務局長の談話を発表しました。

 談話は、「報告」は来春闘の課題が「雇用の確保を最重点」としているが、一方で大量の人減らし「合理化」で雇用不安を拡大しながら、他方ではそれを逆手にさらなる賃下げを迫るというきわめて不当な主張を行っていると指摘。この主張が「人減らし↓雇用不安↓賃下げ↓内需・個人消費落ち込み↓業績悪化↓人減らし」の「悪魔のサイクル」とデフレをいっそう加速させ、日本経済を破たんの道に引きずり込むと批判しています。

 雇用問題について「報告」が、労働分野の規制緩和を要求し、「未権利・無法状態」の不安定雇用労働者の増大をはかろうとしており、多くの労働者・労働組合の共通要求となっている解雇規制法の制定について真っ向から反対の態度を表していると強調。トヨタやNTTをはじめ大企業が軒並み膨大な利益を予定し業績を「V字回復」させているとのべ、全労連は賃上げと、増税や社会保障の改悪などの国民負担の中止を要求し、すべての労働者に共同をよびかけると表明しています。


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