日本共産党

2002年12月16日(月)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?――…

サラ金の高金利


 テレビをつけると、サラ金CMがあふれ、駅前にはかならずといっていいほど、サラ金の大看板。新聞を開けば、一面全部をサラ金広告に使う全国紙もあります。一方で、サラ金やヤミ金による被害が急増しています。サラ金の現状は―

被害の現状は

 借金を返せなくなって支払いの免除を求める自己破産申し立ては、ことし十月末で十七万三千件となりました。過去最高だった昨年の十六万件台をすでに突破。二十万件を超える勢いです。二〇〇一年の司法統計年報によると、こうした自己破産申し立ての85・5%がクレジット、サラ金、ヤミ金など貸金業者がらみといいます

 自己破産の申し立ての増大は、消費税5%が導入された九七年以降、顕著です。不況下で広がるリストラ、失業に加え、小泉政権の医療費負担増や社会保障の切り捨てが拍車をかけています。

 サラ金はサラリーマン金融の略称。最近は「消費者金融」ともいっています。無担保無保証の小口融資をおこない、一九七〇年代後半から八〇年代にかけて勤労者や主婦、学生の間に一気に広がりました。最近では自営業者にも広がっています。高金利のため、借金はまたたくまに膨れ、一家心中や自殺、家出、夜逃げが相次ぎ、社会問題となりました。高金利、過酷な取りたての実態は現在も変わっていません。

 この十月にはサラ金最大手の武富士の被害者らが「武富士被害対策全国会議」を結成、告発する動きが出ています。

 最近では「ヤミ金」といわれる貸金業者が急増しています。「トイチ」(十日で一割)「トヨン」(十日で四割)という違法な超高金利で営業しています。このヤミ金がねらうのが、クレジット・サラ金で多額の借金をし、身動きできなくなった債務者や商工ローン被害者です。

金利の上限は

サラ金業者の多くは、貸出資金は銀行から超低金利で借り、他方、貸し付けでは、30%近い利息を取っています

 貸出金利を規制する法律は利息制限法と出資法があります。利息制限法は年15%―20%を超える金利は「無効」で、利息の支払い義務はないとしています。しかし罰則はありません。もう一つの出資法は年29・2%を超える金利には罰則(三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金)を定めています。このため、多くのサラ金業者は、罰則がつかない上限金利ぎりぎりで貸し付けているのです。

 出資法の上限金利をめぐっては九〇年代後半、社会問題となりました。当時の出資法の上限金利は40・004%。中小の商工業者などを対象にした日栄や商工ファンドなど商工ローン業者は、40%ぎりぎりの高金利で貸し付けていました。その取りたては「腎臓(じんぞう)売れ」「目ん玉売れ」と過酷をきわめました。

 九九年、国会でもその異常な取りたてと高金利が取り上げられ、上限金利を40%から29・2%に引き下げる出資法の改正がおこなわれました。当時もサラ金は年30%前後で貸し付けており、被害の温床をそのまま残しました。

 武富士の場合、貸し付けの原資となる借入金は長期、短期ともに1%台です(二〇〇二年三月期の有価証券報告書総覧)。安田信託銀行やあおぞら銀行、第一生命などが二千億円近くを超低利で融資し、サラ金の大もうけを支えています。二〇〇〇年度は所得番付上位五十社に大手サラ金が四社も入りました。

制限引き上げ

 九九年の出資法改正の際、「三年後の見直し」が盛りこまれ、引き上げの動きが出ています。来年がその年にあたります

 サラ金など貸金業界は、「経営状況は日ごとに深刻になり、悪質、違法な業者の横行が広がりを見せる」(全国貸金業協会連合会の「金利引き上げ要望書」)として、現在の29・2%を34・675%に引き上げることを主張しています。

 そのため、貸金業界は自民党国会議員のパーティー券を買ったり、公明党と懐石料理店で「懇談」したり、公明新聞をまとめて購入するなど政界工作をすすめています。

 自民党や公明党は三年前もサラ金大手の意向を代弁し、同様の主張を繰り返しました。今回の「見直し」にあたっても貸金業界の要請を受けて、同業界でつくる全国貸金業政治連盟総会に出席、同業界の主張を代弁しています。

被害をなくすには

 なによりも、利息制限法の制限金利(15%〜20%)を守らせることが必要です。裁判でも利息制限法の制限金利をこえて支払う必要はないという判決が定着しています。出資法の上限金利(年29・2%)も15%〜20%まで引き下げることです

 三年前の出資法改正の際、サラ金被害者や弁護士らは、出資法の上限金利を利息制限法の制限金利(15〜20%)の水準まで引き下げることを求めました。日本共産党は、この声にこたえ、上限金利を20%以下にする法案を提出しました。

 金利の引き下げとともに、返済できないような過剰貸し付けの禁止、契約後八日以内なら破棄できるクーリング・オフ制度の創設、不当な取りたてにたいする罰則の強化などが必要です。

 不況下でテレビ各社のCM収入が減る中、サラ金CMは増えています。被害を拡大するCMはやめるべきです。


外国では

 フランスやドイツにはサラ金もヤミ金も存在しません。最近出版された『消費者金融』(岩波新書)でサラ金を告発した宇都宮健児弁護士は、「フランスやドイツでは消費者金融は銀行が担っている。金利も法律や判例で低く維持されている。一方、金利規制の撤廃が進むアメリカでは、日本と同様の超高利で貸し付ける高利金融業者による被害が社会問題になっている」と指摘します。

 日弁連消費者問題対策委員会が今年3月、ニューヨークなどアメリカの3都市で調査しました。それによると、金利規制の撤廃によって、低所得者層を中心に、日本のヤミ金にあたるペイデイローン(給料として支払われる小切手を担保に数百%の高利で融資)やプレデタリー・レンディング(略奪的貸し付け、自宅を担保に融資)による被害が広がっています。 このところ、レイク、アイク、シンキなどのサラ金を、外国資本が買収するケースが続いています。在日米国商工会議所は今年7月、29.2%から引き下げないよう強く求める意見書を発表しました。

 「金利規制は社会的弱者を守るために絶対必要だ。日本のサラ金を買収しているアメリカにとって、日本はおいしい市場になっている。アメリカのようになれば、弱肉強食でますます被害が広がる可能性がある」と宇都宮弁護士はいいます。


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