日本共産党

2002年12月7日(土)「しんぶん赤旗」

「4党合意」離脱し解決責任を放棄

JR採用差別事件で与党3党


 自民、公明、保守の与党三党は六日、社民党にたいしJR採用差別事件で国鉄労働組合(高嶋昭一委員長)に示した「四党合意」から離脱すると通告しました。三党は、国労が「誠意を裏切る不誠実な行為」を行ったとしていますが、これは国労に責任をなすりつけて、みずからの解決責任を放棄するものです。


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「解雇撤回へ新しい運動の流れを」と討論した国労大会=11月25日、東京

2年半も経過 解決案出さず

 「四党合意」は、二〇〇〇年五月に出した「JR不採用問題の打開について」という文書です。このなかで、国労にたいして「JRに法的責任なし」を大会で決定するよう要求。それを条件に、問題のすみやかな解決のために努力するという内容でした。国労は大会で「四党合意」を受け入れました。しかし、四党側は、雇用や経済的補償などについて、二年半を経過した今日まで公式には一人の雇用も、何の解決案も出さないという事態が続いています。

 国労組合員がこれにたまりかねて、「政府の責任でILO(国際労働機関)勧告に基づき採用差別の早期解決をはかれ」と政府とJRに対して各地で行動に立ちあがったのは当然のことです。

 ところが三党は「責任転嫁だ」(自民党の甘利明副幹事長)と国労を非難しました。みずからの無責任姿勢を棚にあげた本末転倒の姿勢です。

 与党三党と社民党は、いったい何のために「四党合意」を出してきたのでしょうか。

 国労闘争団と家族は現在まで、十六年間もの長期にわたって、筆舌に尽くしがたい困難のなかでたたかってきました。政府が解決責任を果たしていないからです。

 これまで政府は、「一人も路頭に迷わせない」「最終的に見届けるまで就職問題については努力していきたい」(中曽根首相=当時、一九八六年十一月)と言明し、「所属組合による差別があってはならない」(橋本運輸相=同、同年十月)と答弁してきました。

 同年十一月には、採用について、「本人の希望を尊重し、所属労働組合による差別が行われることのないよう特段の留意をする」との国会決議を採択しました。答弁や決議を守っておれば、採用差別は早期に解決をはかることができたのです。

狙いは国労の解体・骨抜き

 ところが与党と社民党は、政府に解決の努力を求めるのではなく、国労にたいして一方的に「JRに法的責任なし」とする「四党合意」を押しつけてきました。

 国労は、労働組合の最高決定機関の大会で「四党合意」の賛否をはかりました。一昨年九月には全組合員による「一票投票」まで実施しました。

 しかし、与党は「国労が政治解決の前提条件をいまだ満たしていない」といって四月、一部の闘争団が起こした新たな訴訟の取り下げや、訴訟に参加している組合員の処分を国労に迫る「JR不採用問題に関する声明」(いわゆる「三党声明」)を発表しました。

 「政治的解決の前提条件」というなら、国労に「JRに法的責任なし」を認めさせるだけではなく、三党みずからも差別雇用の解決案を示すべきです。解決の条件を「満たしていない」のは、三党の側です。

 労働組合が政治的態度を決めても、要求が実現されていないもとで組合内部でさまざまな意見があったり、裁判闘争をやったりするのは個々の組合員の自由です。それをやめさせることはできません。結局、与党三党の離脱通告は、たたかう伝統のある国労の骨抜き・解体が目的だといわざるをえません。

 同時に、四党の政治的意図が崩れたとみることもできます。国労は六日、「国労の今日までのさまざまな努力に真しにこたえることなく、国労のみにその責めを帰して四党合意を離脱する与党三党の態度は、はなはだ遺憾であり、憤りを禁じえない」との声明を発表しました。「みぞうの組合差別・不当労働行為問題について、だれも責任をとらない、だれも解決をはからないということが社会通念上許されないことは自明の理である」と批判し、「四党合意から離脱しても、政府及び与党の責任が免責されるわけではない」と責任を追及しました。

政府の責任で解決をはかれ

 採用差別事件で政党のとるべき態度は、政府答弁や国会決議の実現を政府に迫っていく点で労働組合と協力・共同することです。それを十六年間も怠ったうえ、組合員、家族の運動に介入し、問題解決を困難に陥れるようなことは、政党にあってはならない態度です。

 千四十七人の労働者と家族は、解雇から十六回目の冬を迎えます。解雇時に生まれた子どもたちは高校生に成長し、国労闘争団の平均年齢は五十歳です。すでに二十四人が亡くなり、一刻の猶予もならない事態です。

 「いまこそ政府の責任で解決をはかれ」。千四十七人の解雇撤回とJR復帰を支援する労働者と労働組合、心ある人たちがJR採用差別事件の解決へ力を合わせ、政府や与党三党を追い込むことが重要になっています。


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