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企業・団体献金、政党助成金とまったく無縁
――日本共産党の政治資金を他党とくらべた場合、大きな特徴はどういう点ですか。
上田 まず、日本共産党の政治資金は憲法違反の政党助成金とも、金権腐敗のおおもとである企業・団体献金ともまったく無縁であるということです。日本共産党の政治資金は、党を構成している党員の党費、日本共産党が発行している新聞「赤旗」(機関紙)、週刊・月刊紙誌等の事業収入と党の支持者などから寄せられる個人寄付という、3つの収入を財源の原則にしています。つまり、すべて、構成員である党員の努力と文字どおり国民一人ひとりが自発的に拠出する浄財からなり立っているということです。
中央委員会の収支についていえば、いま一つの特徴は、収支全体のなかで機関紙誌等の事業活動の収入と支出が圧倒的に大きい比率をしめていることです。全国的には、全党組織の資金を総合計すると、党費、機関紙、個人寄付はそれぞれほぼ3分の1ずつを占めていますが、中央についていえば、「赤旗」など機関紙誌の発行元として、事業収入と事業経費が多くなるのは当然であるということです。(表1)
表1 日本共産党の政治資金収支報告概要(1995年分)
(1)収入 (2)支出
13億4,271
97.7
4.3
4億8,932
52.8
1.6
277億9,563
95.0
89.4
14億7,681
96.3
4.7
311億0,447
94.3
100.0
経常経費
45億1,145
95.7
14.8
222億6,469
101.1
72.6
38億6,536
102.2
12.6
100.4
100.0
収支差引〔(1)−(2)〕
4億6,297
前年からの繰越金
64億7,742
翌年への繰越金
69億4,039
収支の圧倒的部分は機関紙誌などの事業収入
――日本共産党の収入が一番多いので、日本共産党は「金持ち」と思っている人もいますが、実際はどうですか。
上田 日本共産党の収入は311億円となっていますから、たしかに各党の「報告」のなかでは1位です。しかし、さきにのべたように、中央委員会の収支の圧倒的部分、収入では89.4%が機関紙誌等の事業収入です。これは日本共産党が近代的組織政党にふさわしく、機関紙中心の党活動を他党にくらべて抜群に発展させてきたことをしめすものですが、この「収入」とは「利益」ではなく、一般の事業でいう売り上げにあたるものです。このなかに、新聞「赤旗」などの発行のための必要な経費(生産費)として用紙、印刷、輸送、編集など諸経費がふくまれています。
政治資金規正法は、一般の事業でいえば「売り上げ」にあたるこうした機関紙誌等の事業収入と、まるまる何にでも使える寄付収入などとを同列に扱っています。このため、日本共産党の収入が多くなっていますが、事業経費を差し引いた「実質収入」で比較しますと、日本共産党の「実質収入」は政治資金収支報告での収入額の3割弱の88億円となります。自民党の229億円や新進党の135億円よりはるかに少なく、社民党の83億円とほぼ同じくらいです。(新進党40億円、社民党44億円の借入金は除く)(グラフ参照)
収入の内容のちがいもさることながら、これが公正な比較と思います。政治資金の収支規模が大きいことが「金持ち」を意味することにはなりません。
他党との大きな違いありのままの資産報告
――1昨年から公表されるようになった政党の資産報告をみると、日本共産党の報告と他の党の報告との差があまりにも大きいように感じますが?
上田 日本共産党は、政党の資産報告を含んだ1993年実施の政治資金規正法に反対しました。その理由は、地位利用による政治家の資産公開は政治家の不正蓄財を監視する意味をもっていますが、政党の資産報告というのは、運用のいかんによっては、憲法で保障されている政治結社の自由にかかわる問題をふくむからです。しかし法が成立した以上、日本共産党はそれにもとづいて公正に実行し、それを通して党の正しい姿も示していくという態度をとっています。
もちろん、報告されている資産はありのままのものです。日常ふだんに国民の中で活動している36万人の党員と全国津々浦々に組織された党支部、および全国の47都道府県委員会、三百数十地区委員会を指導する中央委員会の機構と活動をささえ、また250万読者をもつ「赤旗」をはじめとする機関紙誌の編集、発行をささえるうえで必要な資産です。また、74年の歴史をもつ近代的組織政党として当然の資産の範囲です。そしてここには少なくない寄贈物件もありますが、全部大事にしています。(表2)
表2 資産報告の内訳
21億6,601
17億4,967
地上権または借地権
取得価格が100万円超の動産
3億7,188
預・貯金残高
52億9,145
金 銭 信 託
有 価 証 券
3億5,340
出 資 金
残高100万円超の貸付金
6億4,500
100万円超の敷金
8億8,257
100万円超の施設利用権
1,800
他党の場合、一つは国有地を借り入れている党や、本部建物を別法人の所有としているところもありますが、むしろ報告された資産が少ないことにおどろいています。企業や業界団体、宗教団体、労組などに人も金も依存し、政党の独自活動が弱いことを反映しているのではないでしょうか。また、“総自民党”化の中で、各党が離合集散、政党の組み替えをくりかえし、自党のあすの所属もわからないという政党状況の反映でもあります。
「税金にかかえられた」自民、新進、社民、さきがけ
――今回発表された政治資金収支報告書は、政党助成制度施行後最初のものですが、政党助成金を受けた各党の収支報告書にはどのような特徴や問題点が見られるでしょうか。
上田 大きな特徴は、各党の収入(借入金を除く)にしめる国民の税金から支出される政党助成金の比重がきわめて高いことです。自民党は党本部収入の57%、新進党は68%、社民党は55%、さきがけは56%が政党助成金です。各党とも政党助成金が政党自身が集めた金額を上まわり、いわば「税金にかかえられた政党」という状況がうまれています。
しかも、昨年末の臨時国会で、連立与党が新進党の実質的な協力のもと、政党助成金の制限条項であった「3分の2条項」――つまり上限をその政党の前年収入実績の3分の2とするという、条項を廃止しました。このことは先に見たように「税金にかかえられた政党」を当たり前としたうえに、現在国民1人あたり250円、総額309億円となっている政党助成金を「お手盛り」で増額することも可能にしました。
相変わらず企業・団体献金にたよる各党
――政党助成制度の導入にあたって、企業・団体献金の見直しということがいわれていましたが、昨年の収支報告書ではどうなっていますか。
上田 住専問題で銀行の政治献金が大問題になり、企業・団体献金が政治をゆがめる大もとであることがあらためて証明されましたが、昨年の自民、新進、さきがけの政党助成金以外の収入の大部分は相変わらず企業・団体献金や銀行借金です。しかも銀行献金が一番多額です。社民党も労組献金や銀行借金に依存しています。
政党の政治資金は、日常ふだんの国民の中での活動を通じて、みずからの努力でつくるべきものです。その党の財政資金がどこに依拠しているかということは、その政党がなにをめざし、だれの利益を代表しているかということと切り離せない問題です。国民の税金を政党が山分けする政党助成制度や金の力で政治をゆがめる企業・団体献金をうけながら、国民の立場に立った真の行政改革、母体行責任による住専処理がまともにできないことは当然の理です。これにたいして国民からきびしい批判の声が上がっているのが今日の状況といえます。
日本共産党の政治資金収支報告は公明正大です。一般報道のなかには公正な扱いをしていないものもありますが、収支報告書が自治省から公表されるこの時期に、「赤旗」紙上でもわが党自身の「収支報告概要」を発表しているのは、そこにくもりのない財政、「清潔な党」が示されているからです。
日本共産党は「国民こそ主人公」を政治資金でも貫き、国民のみなさんとともに政党助成金や企業・団体献金の廃止のためにいっそう努力する決意です。
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