63、NPO新法
NGO、NPOの社会的役割を積極的に評価し、自主性を尊重しつつ支援を拡充します
2024年10月
NGO(non-governmental organization)は、「非政府組織」と訳されています。主に、貧困、飢餓、環境、平和、人権をはじめ、世界的な問題に取り組む市民団体で、国連憲章第71条に根拠をもっています。NPO(non-profit organization)は、「非営利組織」と訳されています。営利を目的とせず、社会的な使命を達成することを目的とした組織といえます。外務省は「日本では,海外の課題に取り組む活動を行う団体をNGO、国内の課題に対して活動する団体をNPOと呼ぶ傾向にあるようです」と紹介しています。
NGO、NPOが果たしている役割
市民が中心となり、政府から自立して、営利を目的とせず、世界や社会、地域の諸問題を前向きに動かしたり解決するために取り組んでいるNGOやNPOは、政府や行政を監視したり、政府や行政が把握できない情報にもとづいて政策提言やアクションを起こしています。核兵器禁止条約の成立の過程や気候変動問題で、世界の諸政府とともに、NGO・市民社会が果たした役割は非常に大きなものがあります。国連が提唱したSDGsは、「市民社会及びその他の関係者との間で行われた2年以上にわたる公開の協議と関与によって」出来上がったものであり、17の目標を達成するうえで、NGO、NPO、市民社会は欠かせない存在となっています。
さらにNGOやNPOは、国内でも政治を前に動かす大きな力を発揮しています。持続化給付金、家賃支援給付金、学生支援給付金、雇用調整助成金のコロナ特例、休業支援金をはじめ、政治に働きかけて様々な要求を実現してきました。またジェンダー平等をもとめる巨大な社会的変化の受け皿にもなっています。
NGOやNPO、ボランティアは、「何かやりたい」「専門性を生かして貢献したい」「人とのつながりを大切にしたい」などの切実な思いを実現する機会ともなっています。とりわけ、コロナウイルスの感染爆発や気候変動の深刻化によって、思いはいっそう高まっています。
これまでの活動上の困難
政府や地方自治体以外の非営利の民間組織であれば、NGOやNPOに分類できます。そのなかには、任意団体も含まれます。団体名義での契約の締結や土地登記などを行うためには、法人格を得る必要があります。1998年に施行された特定非営利活動促進法によって、NPOやNGOは法人格を取得することが可能となりました(認証NPO法人)。さらに、2001年には認定特定非営利活動法人制度ができ、税制上の優遇措置を得ることができるようになりました(認定・特例認定NPO法人)。認証NPO法人は49,677 件、うち認定・特例認定NPO法人は1,287 件になっています(2024年8月末現在)。
しかし、その多くの団体や法人が、共通して資金やスタッフの確保、組織運営、活動・交流場所などで苦労しています。2018年3月に内閣府が発表した「特定非営利活動法人に関する実態調査」では、認証NPO法人が抱えている問題として、「後継者の不足」(43.8%)、「人材の確保や教育」(62.0%)、「収入源の多様化」(42.9%)となっています。また、同実態調査では、行政に望むこととして、「公共施設等活動場所の低廉・無償提供」(66.8%)、「市民・企業等が法人の活動情報を得られる仕組みなどの環境整備」(42.7%)、「法令・経理等に係る研修の機会の提供」(42.7%)となっています。
さらに長時間労働や、国民の暮らしの悪化がボランティア活動を妨げる理由となっています。2020年6月に発表された内閣府の調査(2019年度『市民の社会貢献に関する実態調査』)によると、「ボランティア活動参加の妨げとなる要因」には、「参加する時間がない」(51.4%)、「参加するための休暇が取りにくい」(28.3%)など、異常な長時間労働が障壁となっていることがわかります。「参加する際の経費(交通費等)の負担」(27.4%)など、国民の暮らし悪化もボランティア活動をすすめるうえでの妨げとなっています。
新型コロナウイルスが困難を加速
こうした活動上の困難に加え、新型コロナウイルスは、NGO、NPOに危機的影響を与えています。感染リスクを避けるために、活動自粛・断念や資金源である寄付金や事業収入も減少しているからです。日本財団による「新型コロナ禍非営利組織に対する影響調査」(2020年11月)では、「新型コロナウイルスの感染拡大による事業実施への影響はありましたか」の問いに、85.3%が「とてもあった」とし、「少しあった」の13.6%と合計すると、実に99%にのぼります。
東京ボランティア・市民活動センターには2020年2月~2021年3月にかけて1万1,000件以上の相談が寄せられました。「コロナ禍で活動ができないことで、会費や寄付金収入、事業収入が減少してしまい、組織の維持が難しくなった」「(持続化給付金について)、そのままでは要件を満たせないことも多くあった」「多くの団体が公共施設を利用して活動していたため、緊急事態宣言等で施設が休館になったり、会場の貸し出しが終始されたことに伴い、活動場所を失う団体が多く発生した」など深刻です。
コロナ禍のもとで国民の苦しみに寄り添うボランティア活動やNGO、NPOの役割発揮が期待されているにもかかわらず、活動を縮小・休止せざるを得なくなっているのです。2020年度以降、認証NPO法人数は減少し続けています。
役割にふさわしい支援の拡充を
日本共産党は、NGO、NPO、ボランティアの社会的役割にふさわしい支援の強化が必要であると考えます。NGO、NPOなどの自主性を尊重しつつ、行政との間で多面的な協力関係を確立ができるようにします。
資金や活動場所の確保での支援を強化します
人件費も含む事務局の経費への支援など、自由度・柔軟度の高い補助・助成を拡充します。NPOやNGOが使い勝手のよい小・中規模の公民館や公的施設を建設するとともに、備品もふくめて無料・低額で利用できるようにします。また、空き店舗の借り上げや空き教室の活用など、活動場所の提供を進めます。その際、万全のコロナ対策をとれるように援助を強めます。公共施設によるオンライン機器の貸与などを進めます。
公民館などの公的施設の利用制限については、思想信条の自由、表現の自由をはじめ、憲法に保障された基本的人権を守るために、最低限のものにすべきです。利用内容を理由にしたヘイト行為や妨害行為を許さない対応を強めます。
任意団体も含めて、NGOやNPOの認知度をあげるために、行政の広報などをつかっての紹介活動を強めます。市民団体への各種アンケートや要望を聞く会などを草の根で開催し、意見を行政に反映します。
NPO法人の活動をより推進するために法整備をすすめます
NPO法(特定非営利活動促進法)は、阪神・淡路大震災でのボランティア活動の経験などから、ボランティア活動、市民活動の活性化のために議員立法として制定されました。市民活動の活性化のために、NPO法人が市民にとって利用しやすいものであると同時に、信頼性の維持向上も求められます。法の目的は、「ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与すること」です。この目的に沿った施策を拡充します。
インターネットや広報でのNPO法人の情報発信をさらに進めます。NPO法人の悪用にたいしては、行政として速やかに対応します。
国会の審議では、NPO法人による「政治上の施策」は明確に認められています。法律の名称を「市民活動促進法」にし、法律の定義に「政治上の施策を推進する」ことを明記します。
認定NPO法人制度の大幅な改善をおこないます
NPO法人のうち優遇税制(認定・特例認定NPO法人が適用)を受けられるのは認証NPO法人のうち2.6%にすぎません。設立しやすくまた、優遇税制の適用を受けやすくするための制度の抜本的な拡充が求められています。
2020年12月に全会一致で可決・成立したNPO法改正のポイントである、① 設立・定款変更時の縦覧期間の短縮、② 情報公開時の個人情報保護の強化、③ 認定NPO法人の年度報告書類の合理化による事務負担の軽減などを円滑・迅速に進めます。
認定・特例認定NPO法人には公益性の担保としてより高いレベルの情報公開が求められます。20年改正により事務的作業等の負担軽減がされましたが、法人側が事務のミスで提出し忘れることがないよう、所轄庁は、法人側へ十分周知すると共に、毎年の書類提出の時期などに変更がないか確認することが必要です。
個人から認定NPO法人への寄付をうながすために、寄付金控除の上限額を引き上げるとともに、適用下限額の引き下げ、拡充をはかります。また、法人からの寄付を促進するため「法人の寄付金損金算入限度額」を引き上げるなど、拡充をはかります。東日本大震災を機に新設された、救援・復興をおこなう認定NPO法人にたいする指定寄付金制度を拡充します。全国の自治体に寄付金の窓口をおくなど、市民からの寄付を受けやすくします。NPO法人などに融資して活動を支えているNPOバンクへの支援を強めます。バザー、チャリティー、公演などの非課税制度を創設します。
認定NPO法人の認定基準を緩和して、より簡素で明確な手続きで、認定NPO法人制度が活用できるように改善します。