44、水俣病
すべての水俣病被害者の早期全面救済をはかります
2024年10月
公害の原点・水俣病による健康被害のひろがりは、公式確認から68年の年月が経過しながら全貌が明らかにされず、いまも公害健康被害補償法申請や司法救済を求める裁判提訴が後を絶ちません。その根本には、1977(昭和52)年判断条件や2014(平成26)年通知によって被害者を切り捨ててきた国の責任があります。
「あたうかぎりの救済」を謳った水俣病被害者救済特別措置法(2010年施行)においても、国は、不合理な地域・年齢による線引き、ずさんな検診、わずか2年で申請自体を打ち切るなどむごい仕打ちで多くの被害者を苦しめ続けてきました。
これに対するノーモア・ミナマタ第2次国賠訴訟で、昨年9月、大阪地裁が特措法未救済被害者である原告全員を水俣病と認める判決を下したことは画期的でした。本年3月熊本、4月新潟の各地裁判決をふくめ、司法がこれまでの救済策では救済されない多くの水俣病患者・被害者が存在することを明らかにしたことはきわめて重要です。
そうしたなかで、本年5月1日、水俣病犠牲者慰霊式典後の環境大臣と患者団体の懇談のさなかに、発言中の被害者を環境省職員が遮りマイクを遮断するという事態が起こりました。そこには、あくまで反省なく被害者を切り捨て、声を聞こうとしない誤った姿勢があります。
水俣病の歴史は、被害者が立ち上がり国民の世論と運動によって救済をかちとってきた歴史です。被害者の高齢化がすすむなか、病苦を負い困難な人生を歩んできた被害者の救済をこれ以上遅らせることは人道上も許されることではありません。
日本共産党は、いまこそ全ての水俣病被害者の全面救済をはかるために、以下の実現を目指します。
―――水俣病は、汚染された魚介を多食した有機水銀中毒によって様々な症状を引き起こす疾病であり、感覚障害があれば水俣病と認めるべきことは、民間医師団の臨床研究、疫学的研究によって明らかにされ、最高裁を含む司法判断です。
これまで行政認定されたのはわずか3,000人で、公健法は被害者への補償として機能していません。重い複数の症状との組合せを求める極めて狭い1977年判断条件、2014年通知を抜本的に改め、被害者を被害者として救済することを進めます。これまでの公健法運用について水俣病の臨床研究を続ける医師・研究者・専門家による第三者検証委員会を設置し、制度を抜本的に改めさせます。現在係属している裁判については、司法の場による救済を図ります。
―――さまざまな制約のなかでも、特措法によって新たに5万5000人を超える被害者が救済され、政府がいう指定地域や年代の枠を大きく超えて不知火海沿岸地域全体に有機水銀による健康障害がひろがっている事実が証明されました。
公式確認から70年が迫るなか、被害を受けているすべての住民の救済を図る上でも、水俣病被害の全貌を解明し教訓を後世に引き継ぐ上でも、汚染実態の把握をこれ以上サボタージュすることは、許されません。
不知火海沿岸・阿賀野川流域に居住歴を有するすべて住民の健康調査を直ちにおこなわせます。その際、MRI・脳磁計による患者切り捨てではなく、民間医師団や患者会が提案する共通診断書の方法に基づいておこないます。プライバシーの保護、侵襲的検査の排除、身体的・心理的負担の軽減など、住民の意向を最大限考慮させます。
―――すでに救済対象となっている被害者も、高齢化によって医療、福祉、介護の問題が山積しています。
被害実態に即した補償協定の見直し、ランク付け基準の明確化と実態に合わせた補償、生活支援事業の拡充、療養手当の見直し、離島手当の拡充など、被害実態に即して対応を国におこなわせます。
―――加害企業チッソに対し、加害責任をまっとうし、患者団体・市民に誠実に説明・協議をつくすよう国に求めさせます。認定申請や訴訟によって救済を求める被害者がいる限り、特措法に基づくJNC株式の売却を認めさせません。
―――国が、水俣病の被害実態を覆い隠し争い続けるのではなく、国民に明らかにしていくことによってこそ差別や偏見をなくせます。
国の責任で健康調査、被害者救済をすすめるとともに、関係市町村の国保財政への特別調整交付金の100%交付、健康づくりの取組支援など、被害地域の振興に積極的役割を果たさせます。
水俣病問題によって壊された健康・環境・地域のきずなを回復するための人々の努力を世界に発信し、こうした惨禍を二度と繰り返さないために、後世に引き継いでいくことを進めます。臨床研究を続ける多くの民間医師・研究者を支援すること。「水俣病遺産を文化遺産に」という水俣地域の取組の国の支援を強めます。