日本共産党

しんぶん赤旗

政策

日本共産党のかかげる政策をご紹介します

80、外国人の人権と入管、難民

2024年10月

外国人の人権を保障するため、入管法の抜本的改正を求めます

岸田文雄政権(当時)は2023年通常国会で、2021年に廃案に追い込まれたものとほぼ同じ入管法の改悪案の審議を強行し、法案は自民、公明、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決・成立しました。改悪入管法は、従来の入管法が抱える根本的問題の解決に背を向け、入管行政の底深い人権侵害の構造を温存・強化するものです。

改悪法は、難民認定申請中は送還が停止される規定に例外を設け、申請中の送還を可能にします。迫害を受ける恐れがある国への追放・送還は、難民条約のノン・ルフールマン原則に反する国際法違反です。難民を保護すべき難民認定審査は、ずさん極まりなく、独立した難民等保護委員会を設置し、出入国管理と難民保護の機関を分離することが必須です。改悪法は、新たに送還忌避罪などを設け、外国人の送還を容易にし、長期収容での重大な人権侵害や、仮放免中の深刻な生活苦によって、帰国せざるを得ない状況に追い込むものです。収容にかわる監理措置制度は、支援者に監視する役目を負わせるもので、外国人の保護とは相いれません。収容には司法審査もなく入管庁に広範な裁量を与えたままです。収容期間に上限のない非人間的な扱いが続く懸念は消えません。

日本共産党は、日本国憲法に立脚して、外国人の人権を守り、地域社会で共生していける入管法への抜本的な改正を求めます。

―――迫害を受ける恐れがある国への追放・送還を禁じた難民条約のノン・ルフールマン原則に反する事態を引き起こす危険性のある難民認定申請中の送還規定、送還忌避罪等を廃止します。

―――出入国在留管理庁から難民行政を切り離し、独立した難民等保護委員会を新設します。極端に難民認定数が低い現在の難民認定審査の在り方を、専門性をもって国際基準に基づき、事案の実情に即した適切な判断を行うものへと大きく変えます。

―――仮放免や在留資格のない子どもの意に反した送還、医療を受けさせないなどの行為は子どもの権利条約違反です。子どもと家族に直ちに在留特別許可を出します。

―――監理人が見つからない、あるいは法務省・出入国在留管理庁が監理人を認めない場合は、外国人を収容する原則収容主義を改め、収容には司法判断を必須とします。収容期限に上限を設けます。入管施設に収容されている者を仮放免できる制度を拡大します。支援者に監視する役目を負わせ、外国人保護に反する監理措置制度は、廃止します。

―――外国人個々の事情を考慮し、柔軟な在留特別許可制度にします。短期在留資格における就労許可を拡大します。難民申請者など在留資格を求める外国人に対する、生活支援制度を設けます。

戦前の入管制度は、内務省管轄で、特高警察が実務を担い、外国人をもっぱら治安維持のための取締りの対象としていました。戦後の入管法制の出発点となったのは、基本的人権を定めた日本国憲法が施行される前の1947年に、米軍占領下で旧憲法体制下の勅令(ポツダム勅令)として政府が公布した外国人登録令です。これには、連合国関係者を除く外国人の原則的入国禁止、退去強制等をはじめ、取締り法的な規定がもりこまれました。現行の入管法制の反人権的な問題点、入管の隠ぺい体質や強権的姿勢は、こうした戦前と戦後の歴史的背景を引き継いだものです。日本国憲法の精神に基づいて入管法を根本から改める必要があります。

外国人労働者の生活と権利の向上を

厚生労働省が公表している「『外国人雇用状況』の届出状況」によると、2023年10月末時点で、日本国内で外国人労働者を雇用している事業所数は31万8,775所(前年比1万9,985所増、6.7%増)、外国人労働者数は204万8,675人(前年比22万5,950人増、12.4%増)で、2007年に届出が義務化されて以来、過去最高を更新しました。

労働者数が多い上位の在留資格では、身分に基づく在留資格(永住者・定住者など)は61万5,934人(全体の30.1%)、専門的・技術的分野の在留資格(特定技能1号・2号の13万8,518人を含む)59万5,904人(同29.1%)、技能実習は41万2,501人(同20.1%)、資格外活動(留学を含む)は35万2,581人(同17.2%)となっています。外国人労働者のうち労働者派遣・請負事業を行っている事業所に就労している外国人労働者数は、37万2,287人(同18.2%)です。

外国人労働者の中には、言葉のハンディなどにつけこまれ、最低賃金を割り込む低賃金で働かされ、パスポートや預金通帳をとりあげて自由を奪われるなど、さまざまな人権侵害に苦しんでいる人たちがいます。

外国人への差別、人権侵害に、簡易迅速に対処できるよう、申し立てを受けて調整し、救済の手だてがとれる、政府から独立した国内人権機関を創設すべきです。

日本共産党は、外国人労働者が、憲法と労働基準法をはじめとした労働法に認められた労働者としての権利が保障され、人間らしい営みができるよう労働条件を改善することを求めます。

在留資格「特定技能」制度―外国人労働者に人間らしい生活を保障するための施策をすすめます

近年政府は、在留資格を次々と追加しながら外国人労働者の受入れを行い、育成就労、技能実習生、留学生、日系人保護の建前をとりながら、実際はいずれも安価な労働力として利用しています。2018年12月、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、2019年4月に施行され、新しい在留資格「特定技能」による外国人労働者の受入が始まりました。

特定技能制度を創設する改定入管法は、受入れ分野や規模、人数など、具体的なことは全て省令以下に委ねる白紙委任法であり、法律の体をなしていません。新設される特定技能1号の在留資格は、1年ごとの更新制です。また、在留の前提となる雇用契約は1年以下、例えば3カ月の短期契約も可能です。さらに、派遣契約も排除していません。結局、特定技能は、5年を上限として雇用契約や在留期間を短期で繰り返す外国人の非正規労働者をつくり出すものです。これは、外国人労働者を雇用の調整弁とするものにほかなりません。

特定技能は、技能実習からの移行を前提にしています。実際、受入対象16分野のうち15分野が技能実習からの移行を可能とし、その多くが8割から10割の移行を見込んでいます。特定技能は、人手不足分野で劣悪な労働条件の下でも従順に働く外国人労働者の受入れを拡大し、深刻な人権侵害の構造が明らかな技能実習生を、更に最大5年、安価に働かせ続けようとするものです。技能実習を前提とした特定技能による外国人労働者の受入は断じて認められません。

特定技能1号の外国人労働者の地位は極めて不安定であり、就職や解雇、住まいを始め生活のあらゆる場面で不正な利益を目的とするブローカーの介入の危険があります。受入れ企業が支援するとしていますが、支援を委託される登録支援機関には技能実習制度の監理団体が横滑りできることが明らかとなりました。登録を受けない未登録団体が営利目的で委託料を受けて行うことも認められます。これでは、支援の名の下に、狭い宿舎に労働者を押し込め、高額の家賃や水光熱費をピンはねする類いの不正行為を排除できません。

新在留資格「特定技能」新設は、外国人労働者の劣悪な労働実態を放置したまま受入れを拡大するものです。今、外国人労働者問題について求められているのは、外国人労働者の基本的人権が保障される秩序ある受入れと、共に生活するための支援体制です。

日本共産党は、外国人労働者に対する人権侵害をやめさせ、人間らしく生きられるために、入管法の抜本的改正を求めます。

外国人労働者に人間らしい生活を保障するための施策をすすめます

―――在留資格の種類にかかわらず、外国人労働者の家族の帯同を実現します。

―――妊娠、出産に対する不利益取り扱いを根絶し、子どもと共に暮らし、育児をしながら働き続けることができる制度に改善します。

―――生活全般に係る相談を一元的に受け入れるワンストップセンターの整備を推進します。

―――地域での円滑な日常生活をおくるために、夜間中学などを含め外国人労働者・家族の日本語教育の充実を図ります。

―――外国人児童の学校教育、外国人学校の支援に取り組みます。

―――多文化共生社会の実現を図ります。

技能実習制度・育成就労制度―安易な受け入れ拡大に反対し、制度の廃止を含めた根本からの見直しを求めます

「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)が2016年11月に成立、2017年11月に施行されました。

人権侵害が多発し国際社会からも批判を浴びている技能実習制度を廃止し、新たな制度を創設することが求められていました。

「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(技能実習改定法)が2024年成立し、技能実習に替わる育成就労制度が創設され、3年以内に施行されます。

技能実習改定法は、技能実習制度から育成就労制度と名前を変え、目的を特定技能1号水準の技能を有する「人材」を育成するとともに、当該分野の「人材」を確保することとしています。育成就労制度は、「人材育成」の名のもとに転籍制限を行い、「人材確保」を目的とするもので、現行の技能実習制度と実質的に変わりはありません。

技能実習制度は、「技能移転」による「国際貢献」を名目としながら、その実態は、低賃金、単純労働力の受け入れであるという構造的矛盾を抱え、深刻な人権侵害を生み出し続けてきました。その抜本的改善もなく、自・公政権は、実習期間の3年から5年への延長、受け入れ人数枠と対象職種の拡大などをおしすすめています。人道上、許されません。

この制度は、当初から、「研修」とは名ばかりの安価な労働力の供給手段とされ、強制労働、低賃金、残業手当不払い、ピンはね、強制貯金、パスポート取り上げ、高額の保証金や違約金、強制帰国、セクハラと性的暴行など、数々の人権侵害が続発し、重大問題となってきました。こうした技能実習生の実態に対し、日本弁護士連合会は、「人権侵害は構造的問題に起因する」として、その早急な廃止を求めていました。また、国連自由権規約委員会は、性的虐待、労働に関する死亡、強制労働を指摘し、米国務省は、労働搾取や人身売買への懸念を表明しています。国連人権機関、国際社会から、さまざまな懸念が指摘されています。

2010年の入管法改正により、それまでの「研修」を「技能実習」にかえて、労働関係法令を適用するとともに、監理団体を設けました。しかし、技能実習生をめぐる悪質な人権侵害の状況は、引き続き深刻です。

技能実習生の失踪件数は、2015年に5,803人、2018年に9,052人、2023年には9,753人と大幅に増加しています。「『日本で働けば月給20万~30万円。1日8時間、週5日勤務。寮あり』ときいて、仲介会社に約150万円を支払い来日したが、実際には毎日早朝6時から深夜2時まで働き、休みもなく、『寮』は農機具の保管場所で、家賃として月2万円が給料から天引きされ、手元には6万円程度しか残らない。7カ月がんばったが疲れてしまい、逃げ出した」(ベトナム人技能実習生)などの事例が報告されています。

失踪した技能実習生からの聴取票は、実習生の実態を解明する上で不可欠の資料です。その提出を政府・与党が拒否する中で、野党が884枚の聴取票を調べたところ、86%が最賃割れだということが明らかになりました。暴力やセクハラなど人権侵害も浮き彫りになっています。

技能実習生は例外的な場合を除いて職場移転の自由がなく、人権侵害の根源である支配従属関係を解消することはできません。悪質なブローカーや法外な保証金を排除するための2国間取り決めが行われる制度的担保がありません。

技能実習機構は、実習認定業務他、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する業務を行います。しかし、機構の体制・権限では、技能実習の適正な実施および技能実習生を保護するには不十分です。

介護分野での過酷な労働条件と低賃金を放置しつづけけたまま、在留資格「介護」を新設し、技能実習の職種に「介護」を追加することは、深刻な人権侵害、介護サービスの質の低下や稚拙な日本語でのコミュニケーションによる新たなトラブルなどの可能性が懸念されます。

育成就労制度は、新たに本人の意向による転籍を規定していますが、分野ごとに1年から2年は転籍を認めず、しかも、日本語、技能要件などの制限を設け、省令に白紙委任をしています。転籍までの期間の生活保障、転籍先確保の支援策も曖昧であり、これでは、転籍の自由を事実上認めないものと言わざるを得ません。政府は転籍を制限しなければ地方から労働者が流出をしてしまうと言いますが、全国一律最低賃金制度1,500円を、中小・小規模事業者を本気で支援して実現し解決すべきことであり、転籍の制限は本末転倒です。

農業と漁業などに派遣労働の仕組みを導入することも問題です。中間搾取で手取り、労働条件が悪くなり、使い捨て、短期間での帰国など、機械的な扱いになってしまう懸念があります。多額の借金を背負い、解雇、事実上、強制帰国をさせられ、人生を壊されることがないよう、労働者からいかなる手数料、経費も徴収してはならないという二国間協定の締結はじめルールをつくるべきです。

育成就労制度は、転籍の自由を保障する制度とは言い難く、独立性、中立性のない監理団体と同じような監理支援機関に関与させ、多額の借金問題の解決の見通しもない、技能実習の看板のかけ替えにすぎません。

育成就労制度の廃止を含めた根本からの見直しを求めます。

永住外国人に地方参政権の付与を

日本には117万人(永住者89万人、特別永住者28万人)の永住外国人が生活しています。日本共産党は、永住外国人の地方参政権を認め、ただちに付与する措置が取られるよう求めます。

1995年2月の最高裁判所判決は、永住外国人に地方参政権を保障することは「憲法上禁止されているものではない」との判断を示しました。地方自治体の運営は、本来、すべての住民の参加によってすすめられるのが、憲法のさだめる地方自治の根本精神です。永住外国人を地方自治の担い手としてむかえ、日本国民と等しく参加する政治を実現することは現状に即しており、わが国の民主主義の成熟と発展につながります。

日本共産党は1998年に「永住外国人に地方参政権を保障するための提案」を発表しましたが、この中で、都道府県および市区町村の首長、議会議員について選挙権を付与すること、日本の法律に基づく被選挙権年齢に達した永住外国人に被選挙権を付与すること、さらに、地方自治体における条例制定などの直接請求権、首長・議員リコールなどの住民投票権も同様に付与することを明記し、その実現のために努力してきました。残念ながら一部の人々の反対で実現には至っていませんが、日本共産党は、永住外国人に地方参政権を保障することに、国会がただちにとりくむことを強く求めます。

永住許可取消し制度は廃止します

2024年改悪入管法は、永住許可制度の適正化と称して、永住許可を取り消すことができる制度を新設しました。永住者に対する重大な権利侵害です。

永住許可の審査は厳しく、原則十年以上、日本で生活し、安定した資産、収入があること、税金、社会保険料の滞納がないことなどを厳格に審査した上で、永住を許可されています。永住者の中には、戦前の植民地支配によって日本国籍とされ、戦後、国籍を離脱するという歴史的経過の下で、特別永住者とともに永住者となった方々も多数存在します。

税金や社会保険料の滞納を永住許可取消しの理由としていますが、これは誰にでも起こり得ることです。こうした場合に必要なことは、まず、生活困窮のSOSと捉え、支援につなげることです。その上で、日本国籍の人と同じように、督促、差押えなど、対応できます。

永住しようとする外国人労働者と家族の地位を著しく不安定にし、日本で培った十分な生活基盤を失わせることは、人道に反しています。永住許可取消し制度は廃止するべきです。

移民・難民問題について

難民問題に、日本政府は先進国として積極的な役割を果たすよう求めます

パレスチナのガザ地区での死者はこの1年で4万2千人を超え、6割の建物が破壊され、新たな避難民は190万人に上ります。2023年10月7日の同地区のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの無差別襲撃と人質拘束は強く非難されるべきです。しかし、イスラエルが入植、占領、封鎖、空爆、歴史的に深刻な人権侵害が続いてきたこと含め、イスラエルのネタニヤフ政権の始めた攻撃は、「自衛権」ではとても正当化できず、ガザをジェノサイド(集団殺害)の場とし、ハマス殲滅と称して今も続いています。イスラエルは隣国レバノンにも、主権と領土を侵害する空爆と地上侵攻を行い、犠牲者は2千人を超えています。2006年の国連安保理決議の重大な違反であり、戦闘をやめ直ちに撤退すべきです。

2021年2月1日にミャンマー国軍がクーデターで不法に政権を奪ってから3年以上たちますが、民政復帰を求める国民と、自治をめざす少数民族のたたかいはやむことがなく、国際社会も民主化を支持しています。人権団体によると、弾圧による死者はクーデター以来4,400人、逮捕者は2万5,000人を超えました。抵抗する少数民族の地域に空爆など無差別攻撃を加え、国連によると、200万人が避難を強いられています。

UNHCRの年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート2022」では、2022年末時点で、ウクライナでの戦争、世界各地での紛争、迫害、暴力、人権侵害により避難を余儀なくされた人は、1億840万人を記録したと報告されています。紛争や迫害によって故郷を追われた人のうち、難民は3,530万人(UNHCR支援対象者2,940万人+UNRWA支援対象者590万人)、国内避難民は6,250万人、庇護希望者は540万人、その他の国際保護を必要としている人は520万人です。難民の主な出身国は、全体の半分以上52%が、シリア650万人、ウクライナ570万人、アフガニスタン570万人3カ国に集中しています。

日本共産党は、世界からテロをなくすために、国際社会が一致結束して次の三つの対策に取り組むことを提唱してきましたが、柱の一つとして、難民支援を抜本的に強めることを提唱しています。

➡各分野の政策「96、国際テロ対策」をごらんください。

国際社会からの要請にこたえ、日本も先進国として難民問題で積極的な役割を果たすべきです。

日本共産党は以下の3点を日本政府に求めます。

―――難民危機に対応した難民の受け入れを適切に行うこと。

―――国際機関、地域機関、NGOと協力体制をとり、難民が滞在する地域周辺国などへの支援を抜本的に強化すること。

―――難民が生まれる根本原因を一掃するための日本の貢献、とくに、平和憲法を持つ国にふさわしく、紛争解決のための外交的な役割を発揮すること。

日本政府の難民認定のありかたを抜本的に改善します

難民認定が極端に少ない

そもそも日本の難民認定制度は、世界に類をみない厳しいものです。2021年は、難民申請数2,413人、難民認定者数74人及び人道配慮による在留許可数580人、2022年は、難民申請者数3,772人、難民認定者数202人及び人道配慮による在留許可数1,760人、2023年は、難民申請者数13,823人、難民認定者数303及び人道配慮による在留許可数1,005人にとどまり、世界各国とはけた違いの状況が続いています。

その要因の第一は、難民条約における「難民」の定義を、あまりにも狭く解釈していることです。「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないか、又はそれを望まないもの」(難民条約第1条)という規定となっていますが、日本の入管行政は「迫害を受けるおそれ」という点を、難民申請者自身に客観的な証拠をもって立証することを求め、また「迫害を受けるおそれ」も極めて狭く解釈しています。また、「国籍国の保護を受けることができない」という規定を「無政府状態」でなければならない、と狭く解釈しています。

要因の第二は、難民認定行政と出入国管理行政が分離されていないことです。日本ではどちらも法務省入国管理局が所管しており、難民調査官は入国審査官の中から指名されています。こうした出入国管理行政との密接なつながりが、難民認定の抑制につながる可能性があると指摘されています。とくに異議申立機関に関しては、出入国管理行政からの分離を推奨する勧告を、国連人権理事会や国連自由権規約委員会などから受けています(いずれも2008年)。

難民申請者の生活保障が不十分

法務省は難民審査を原則的に6カ月で処理できるように努力する旨を宣言しています。一次審査の平均処理期間は約26.6月、審査請求の平均処理期間は約9.9月となっています。入管庁は目標達成には至っていません。さらに、難民認定がなされず、異議申立て・訴訟提起等、経過が長引いた場合には、さらに時間が必要となります。

支援団体や弁護士などからは、この期間の生活保障が不十分であることについて、多くの指摘があがっています。かつては国民健康保険の加入、生活保護の受給は認められず、就労にも制約があるなか、外務省所管の財団法人が難民認定申請中の生活困窮者に支給する生活支援金が唯一の頼りという状況でした。国連の人種差別撤廃委員会からは2010年、わが国に対し、すべての庇護希望者の権利、とくに適当な生活水準や医療ケアに対する権利が確保されるべきであるとの勧告がありました。同年3月、申請者の生活に配慮して、申請から6カ月を超えれば就労できるように改善されましたが、一部メディアには「これが偽装難民を多数生む温床となっている」と問題視する論調もあり、不十分・不安定な状況が続いています。法務省は不当にも、2018年1月、難民申請から6か月経過後の就労可能というそれまでの運用をやめるに至りました。

難民認定者への支援も不十分

難民認定者には、RHQ支援センターで日本語教育、社会生活への適応のための指導、就職あっせんなどの定住支援が半年ないし1年間実施されます。退所後も、生活面でのアフターケアなどを改善する必要があります。

―――「難民」の定義を極端に狭くしている認定を改善します。

―――入管行政と難民審査行政が一体となっているような難民審査体制の改正を含めた法制度の整備を急ぎます。

―――難民申請者の生活保障と難民認定者への支援を拡充します。