58、地方自治
地方自治を壊す政治を転換し、住民の命と暮らしを守り、憲法の「地方自治の本旨」にもとづく自治体のとりくみを応援します
2024年10月
医療や介護、教育や子育て、災害対策や地域振興など、いま地方自治体が「住民福祉の機関」として果すべき役割がますます重要になっています。政府には、全国の自治体への支援と財源の保障が求められています。
ところが歴代の自公政権は支援どころか、地方財政を抑制し企業の儲け先をつくろうと、公的サービスの切り捨てや公共施設の統廃合を自治体に押し付けています。さらに地方自治法を改悪し国から自治体へ指示する仕組みを広げるなど、地方自治を壊す政策を次々とすすめています。
日本共産党はこうした悪政を転換し、憲法が謳う「地方自治の本旨」にもとづき地方自治体の自主性と自立性を尊重し、その取り組みに必要な財源を保障するとともに、住民の命と暮らしを守り、地域再生の取り組みを全力で応援します。
長引く物価高騰や頻発する自然災害などから住民の命と暮らしを守るため、国が地方自治体を支え財源を保障します
新型コロナウイルス感染症への対応で疲弊した地域経済に、長引く物価高騰が追い打ちをかけ、住民の暮らしと経営を直撃しています。ところが政府の経済対策はガソリンや電気代への補助、一時的な定額減税や給付金など、細切れの対策ばかりで、内容も規模もまったく不十分です。日本共産党は、国民だれもが対象となり最も効果がある対策として消費税の廃止をめざし、当面緊急に5%に引き下げることを提案しています。また、それぞれの地域の実情に応じた支援策が図れるよう、地方創生臨時交付金の追加交付に加え地方交付税の増額など地方財源の拡充を求めます。
頻発する自然災害から住民を守ることも喫緊の課題となっています。特に気候変動による温暖化によって「50年に1度」レベルの大雨が毎年襲い、河川の氾濫や土砂災害が頻発しています。気象庁が今夏の平均気温が昨年(23年)と並んで統計開始以来もっとも高かったと発表するなど、高齢者や低所得の世帯などへの熱中症対策も強化する必要があります。また大地震も毎年のように発生し、今年は能登半島地震が大きな被害をもたらし、今も被災者の生業の再生、地域の復興の道筋も見えていません。しかも近い将来には南海トラフ巨大地震や首都直下地震などが予想されており、国と自治体が一体となった対策が求められています。ところが政府の災害対策予算は自治体からの要望に応えるものになっておらず、抜本的な拡充が必要です。
新型コロナウイルスによるパンデミックによって、公立・公的病院や保健所などが果たす重要な役割が浮き彫りとなりましたが、政府は公立病院の統廃合や病床削減をすすめる地域医療構想などを推し進め、保健所の増設に背を向けています。感染症や災害発生のたびに自治体職員の不足が指摘されても、地方公務員の増員にかじを切らず、非正規の公務員(会計年度任用職員など)の処遇改善もまったく不十分です。
地方自治法に定められた「住民の福祉の増進」という地方自治体の役割を果たすためには、自公政権による地方財政の抑制路線を転換し、自治体の財政需要に見合った一般財源総額の確保と、地方交付税の充実で財源を保障することが欠かせません。
――消費税は低所得者ほど負担が重い不公平な税制です。消費税の廃止をめざし、当面緊急に税率を5%に引き下げます。地方創生臨時交付金など自治体の地方単独事業に活用できる交付金の予算化で自治体の経済対策を支援します。国、自治体が率先して非正規雇用の待遇の抜本的改善をすすめます。
――全国の自治体が頻発する豪雨や地震、土砂崩れや火山噴火など大規模な自然災害に備え、避難所の環境改善や自治体職員・消防職員などの人員を確保し、被災・避難した住民に安定的・継続的な支援ができるよう、国の責任で財源を拡充します。
――地域医療構想や公立・公的病院の独立行政法人化などに反対し、保健所を増設し体制を強化します。国民健康保険制度へ公費1兆円を投入し、人頭税のようにかかる均等割・平等割を廃止し保険料(税)を抜本的に引き下げます。
――物価高騰、災害、社会保障、地域振興への対応など、財政需要が増す地方自治体の実情に見合うよう一般財源総額を拡充します。交付税率を引き上げて地方交付税を拡充します。
地方自治法改悪、住民サービス切り捨ての「行革」に反対し、安心して住みつづけられる真の地域活性化を全力で応援します
憲法が謳う「地方自治の本旨」にもとづいて地方自治体が住民の総意と自主性を発揮して地域を再生・発展させるには、国から自治体への支援が求められています。ところが自公政権がおこなっているのは、国が地方自治体へ指示できるようにする地方自治法改悪や、行政のデジタル化を突破口にした新自由主義による「地方行革」の押し付けなど、地方自治を壊そうとするものばかりです。
政府は今年の通常国会で地方自治法を改悪しました。「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合」に、閣議決定で、住民の生命・財産を守るために「必要がある」とすれば、国が自治体に指示を出し義務を課すことを可能とします。災害や感染症を例示していますが、「その他」「これらに類する」など「事態」の範囲は極めて曖昧で、発生の「おそれがある」など判断はすべて政府に委ねられ、時の政権が国会にも諮らず恣意的に運用する恐れを排除できません。
審議の過程で国会への事後報告を義務付ける修正が加えられましたが、「事後では意味がない」との批判が現職知事からあがり、成立後も全国知事会は「地方自治の本旨に反し安易に行使されることがないよう、制度運用することを強く求める」とのコメントを発表しています。日本共産党は地方自治法改悪の撤回を求めるとともに、地方自治を守り地方自治体の自主性・自立性の発揮を保障します。
自公政権は、コロナ禍に乗じて「行政のデジタル化」を地方自治体に押し付け、これを突破口に新自由主義の「地方行革」を一気に加速させようとしています。住民の暮らしに役立つデジタル化は否定するものではありませんが、いまの「デジタル改革」は、国や自治体がもつ膨大な個人情報のデータ利活用を「成長戦略」に位置づけて企業に開放し、儲けのタネとしていくための「改革」です。行政が保有する個人情報は企業が保有する顧客情報などとは比べ物になりません。これを企業の使い勝手がいいように統一・標準化してしまおうというのです。法律では全自治体の基幹業務システムを2025年度末までに移行することを目指しています。知事会、市長会、町村会など地方団体からは、行政事務に裁量の余地がなくなる懸念があり地方の創意工夫を可能とする仕組みとすべき、自治体の負担とならないようにすべき、などの声があがっています。
これと同時に政府が巨額を投じてすすめているのがマイナンバー制度です。マイナンバーカードと他サービスとの一体化による利活用が急拡大しています。しかし多くの国民は、様々な個人情報が紐づけされることへの不安と個人情報の漏洩への懸念がひろがっています。健康保険証との一体化では、利用がまったく広がってないにもかかわらず現行保険証の廃止を強行しようとしています。行政のデジタル化とマイナンバーカード取得促進によって、自治体の窓口の削減・廃止もねらわれています。
「行政のデジタル化」による統一・標準化は、自治体の再編、「集約化」の動きを促進する役割も果たすものです。大都市では引き続き「国際競争力の強化」の名のもとに大型開発を集中し、国際港湾の整備や、高速・高規格道路へのアクセス道路などの負担を強いています。各地で新たな「中心地域」の大型開発や「周辺地域」の切り捨てなどが指摘されるコンパクトシティ(立地適正化計画)もすすめられているほか、近隣自治体間で公共施設・行政サービスを連携することをつうじて「集約化」を図ろうとする「連携中枢都市圏構想」など自治体間の広域化の法制化も検討されています。自治体のあり方の再編の先には「道州制」がねらわれています。
いま、こうした地方再編の動きに抗するように、コロナ禍によるテレワークの導入や人の密集を避ける生活で、地方への移住が改めて見直されています。若者世代を中心とした地方への移住志向=「地方回帰」の現象がひろがっています。
日本共産党は、自公政権がすすめる行政のデジタル化と「行革」、自治体再編による地方切り捨てに反対し、だれもが住み続けることができる地域活性化策を全力で応援し、住民が主人公のまちづくりをすすめます。
――国から地方自治体に指示を出し義務を課すことを可能とする地方自治法の改悪は撤回し、憲法が謳う「地方自治の本旨」にもとづいて住民の総意と自主性を発揮して地域を発展させられるよう、国から自治体への支援を強めます。
――行政システムの標準・統一化に対して、自治体の独自施策を維持・拡充できるものとさせ、独自施策を抑制する自治体負担をなくすことを強くもとめます。マイナンバー制度の廃止を求め、「行政のデジタル化」を口実にした行政窓口の縮小や紙による手続きの廃止に反対し、対面窓口のサービス体制を充実し手続きを簡素化します。
――公共施設等総合管理計画にもとづく統廃合・民間委託や、コンパクトシティ、「連携中枢都市圏構想」などの「地方行革」と地方再編の地方自治体への押しつけに反対し、老朽化が課題となっている公共施設等の維持・管理・更新への対策に必要な財源を保障します。自公政権と財界がねらう「道州制」と新たな市町村の大再編に断固反対します。
――東京一極集中の政策を改め、地方移住のU・I・Jターンへ支援を拡充し、若者の「地方回帰」の流れを後押しするとともに、自治体が行う子育て支援、若者の雇用創出や正社員化への後押し、定住促進策への財政支援を大幅に拡充し、地方の交通網を維持・復活します。
――地方の基幹産業である農林水産業の振興と「6次産業化」(第1次産業から第3次産業までを手掛ける活性化策)への支援、中小企業と小規模事業者の振興、観光産業や地域おこしなどの振興策、住宅や商店のリフォーム助成制度への支援、自然・再生可能エネルギーの地産地消など、地方自治体が取り組む真の地域活性化策を全力で支援します。
――これら自治体の取り組みを支援するため、「地方創生」関連交付金は、地方自治体の自主性を保障し、すべての自治体を支援する使い勝手の良い制度とし増額します。