54、住宅・マンション
市場任せから「住まいは人権」の住宅政策へ
恒久的な家賃補助制度を実現し、誰もが安心して暮らせる住宅を
2024年10月
今こそ、国の責任による恒久的な家賃(住居費)補助制度の創設を
日本における住宅政策は、長年の「持ち家政策」により、住宅確保を「自己責任」として公的責任を後退させる新自由主義的施策がとられてきました。アベノミクス以降の格差と貧困の拡大により、この「住宅無策」と呼ぶべき傾向はさらに強まりました。
住宅の取得・維持における経済的負担の増大は、庶民の生活を直撃しています。
特に、日本では約4割の世帯が賃貸住宅ですが、借家人保護の政策は貧弱です。日本は、生活費に占める家賃の割合が極めて高いうえに、昨今の物価高騰や民泊需要などを口実に、家賃を2倍に増額する通告がされる等、更なる家賃負担増が広がりつつあります。しかし、日本には、国の責任による家賃補助制度がありません。アメリカやイギリス、フランスをはじめOECD諸国の大半が家賃補助制度を整備しているにもかかわらず、自民・公明政権は家賃補助制度の創設を拒み続けています。
その結果、「家賃が高すぎて収入の7割以上、これでは生活を維持できない」と高齢者から悲鳴が上がるなど、収入が年金のみの世帯、低所得の単身者世帯、シングル子育て世帯等々の賃貸住宅に暮らす世帯の多くで、高すぎる家賃が家計を圧迫しています。加えて、引き続く物価高騰が何重にも暮らしの危機的状況を招いており、ホームレス状態にある人も含めた住宅困窮者の生活はより深刻さを増しています。
一方、政府の住宅困窮者対策としては、わずかに住宅セーフティネット制度に基づいた、最大月額4万円の家賃低廉化(家主に給付する家賃補助)があるのみです。同制度はスタートして8年目になるにも関わらず、その給付実績は、2023年度も全国でわずか27自治体630戸(給付額1億734万円)のみです。住宅困窮者対策としての役割をまったく果たしていません。
住まいは人権であり、人が社会生活をおくるための土台です。就労、就学、そして社会保障を受けるときの基礎になります。その確保のためには、国の責任による恒久的な家賃補助制度の創設が急務です。
―――国の責任による恒久的家賃補助制度を創設します。
―――高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)の家賃補助制度など、以前国が行っていた家賃補助を、国の制度終了を口実に自治体が打ち切る事態が各地で発生しています。国の責任で、家賃補助を引き続け続けます。すでに打ち切った自治体にも、すみやかに「住宅セーフティネット」の家賃低廉化措置などにより、実質上家賃補助が続けられるようにします。
―――入居時に保証人に代わって利用されている家賃債務保証業者は、審査の名での入居者選別やつきまといなどの不当な債権取り立て行為を行わないよう規制を強化します。また、追い出し屋規制法をつくるなど、立場の弱い借家人が住まいを追い出されることのないようにします。
公的な賃貸住宅の充実を
公営住宅の抜本的充実
自民公明政権は、住宅政策への公的責任を後退させてきました。「国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備」する公営住宅は、ニーズが一貫して高いのに、05年度の219万戸をピークに、21年度は213.3万戸まで減少しており、全住宅に占める比率はわずか3.4%に過ぎません。そのため、例えば東京都では都営住宅の新規建設は25年、石原都政以来ゼロのままです。しかし、応募倍率は一般募集で約20倍、単身者向け募集は50倍を超えています。全国的にも、公営住宅を供給する必要性は都市部中心に引き続き高いですが、政府はその整備どころか自治体による削減をそのまま容認する一方で、公営住宅の更新にはPPP/PFI方式の検討を義務付ける(地域居住機能再生推進事業)など、公的関与も弱める施策を進めています。
また公営住宅は、多くの自治体で、政令月収(月15万8千円など)以下のごく限られた低所得者しか入居できません。加えて、居住者の高齢化や外国人居住の増加等で住民間のコミュニケーションに新たな課題が生じ、自治会活動など住民の共同活動も困難を抱えています。自治体任せではなく、地域の実情を踏まえた国の支援が求められます。
―――公営住宅の新規建設を含む供給の増加をすすめるとともに、UR賃貸住宅の空き家や、民間賃貸住宅を借り上げて公営住宅にするなど、多様な供給方式の活用により、公営住宅の供給を大幅に増やします。
―――公営住宅については、法改悪で引き下げられた、現行の月収15万8千円の入居収入基準を、まずは引き下げ前の月収20万円に引き上げるとともに、子育て世代や低所得の若者、単身女性やDV被害者などの住宅困窮者が入居しやすいようにします。収入が増えた入居者を「収入超過者」として、強制的に居住者を追い出すことをやめさせます。
―――入居時の保証人については、国土交通省が2018年3月、保証人の確保を入居の前提とすべきでないという通知を出しました。しかし、まだ多くの自治体で保証人を入居時に要求しており、保証人要件が住宅困窮者入居の障害となっています。公営住宅の保証人要件を残している自治体には、要件を撤廃させます。
公団住宅(UR住宅)の改善
全国公団住宅自治会協議会が2023年に行ったアンケート結果によると65歳以上の世帯主は73.5%であり、世帯収入245万円未満の低所得世帯が5割を超えます。また、現在の家賃負担が重いと答えた世帯は75.5%に上る一方で、このまま公団住宅に住み続けたいとの切実な回答が78.2%もあります。高齢化の進む入居者が安心して住み続けたいとの希望が多いにも関わらず、昨今の物価高騰で低所得入居者の生活はますます危機に瀕しており、高家賃対策は急務です。
生活困窮者の家賃負担軽減のため、明確に法的根拠のある機構法25条4項の「家賃の減免」規定を現在の入居者に一刻も早く適用すべきです。国と機構が決断すればすぐにできることです。加えて、UR賃貸住宅は、生活に困窮する入居者に対し高すぎる家賃を引き下げるべきです。そのためにも、都市再生機構法を改正し、高すぎる家賃の原因となっている「近傍同種家賃」(民間と同等の市場家賃)制度を廃止することが必要です。
―――UR機構法25条4項の「家賃の減免」を条文通り実施させて、いまUR賃貸住宅に居住している、高齢者や低所得者の居住安定をはかります。
―――UR賃貸住宅は、住宅セーフティネットを担う公共住宅として位置づけます。戸数削減や民間売却をさせずに国民の財産として守り、充実させます。「ストック活用・再生ビジョン」は、白紙撤回させます。
―――住み続けられる家賃にするため、低所得世帯(公営住宅入居対象世帯)の家賃は近傍同種家賃制度や「継続家賃改定ルール」によるのではなく、公営住宅同様の家賃制度(応能家賃)にします。そのため現行のUR機構法等の改正を行います。
―――2018年12月に、畳床、ふすまの枠等の修繕負担区分の見直しが実現しました。まだ、畳表・ふすま紙の入れ替え等、民間賃貸住宅でも家主負担が多い項目が入居者負担とされています。これらの修繕をUR都市機構の負担で進めます。
CO2排出削減のため、住宅の断熱・省エネ化をすすめます
深刻な「気候危機」のもと、CO2排出削減のためには、住宅の断熱・省エネ化を新築・改築時に進めることが必要です。また、WHO(世界保健機構)の「住宅と健康ガイドライン」を発表し、各国に対し住生活の観点から寒さ対策(冬季室内温度18度以上)を強く勧告しています。
日本でも、2025年4月から、新築のすべての建築物に省エネ基準への適合が義務化されます。これを第一歩に、住宅の断熱・省エネ化を、新築・改築時に進めることが必要です。とくに、既存住宅の省エネ基準適合率は2022年時点で約18%にとどまっています。中小の建設業者が各地域の事業に参加しやすい環境づくりを行い、既存住宅の省エネ・断熱改修を進めることが重要です。
―――新築・改築時の省エネ・再生エネ化を規制と助成一体にすすめます。一定規模の建物建設に断熱化、太陽光パネル設置などの脱炭素化対策を義務化するとともに、住宅建設への省エネ減税・住宅ローン減税の上乗せなどを行います。
―――政府は2030年までに段階的に省エネ基準を引き上げ、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の基準を新築建築物に義務化するとしていますが、段階的にではなく当初からZEH・ZEB基準を義務付けます。
―――住宅の耐震化やバリアフリー化、長寿命化とあわせて、安全で快適な住宅をめざす住宅リフォーム事業をしっかり位置付けるとともに、自治体の取り組みを支援します。
―――中小の建設業者が省エネ改修事業に参加するうえで大手ハウスメーカーと格差が生じないように、技術面も含めた支援を行います。
➡参照:気候危機打開の日本共産党の2030戦略(2021年9月1日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2021/09/post-882.html)
マンション対策、空き家、サブリース
分譲マンションの維持・管理への支援
分譲マンションは国民の1割、1,400万人の人々が暮らす場であり、都市におけるコミュニティの場でもあります。マンションの維持・管理に対する公的な支援を充実し、安全、快適で、長持ちするマンションをめざすとりくみへの支援が求められています。
住民の立場で活動するマンション管理士の育成や、管理組合団体などの自主的なとりくみへの支援、行政の相談体制の整備など支援体制を充実します。
また、老朽マンションの建て替え・修繕の増加につれて、管理組合の積立額では要求される修繕費用を出せない、修繕費用が払えないことを理由に建て替えに同意しない等の問題が生じています。また、マンション管理業者が修繕も行うなど住民と利益相反を起こしかねない事態も生まれています。
マンションはまずは修繕による長寿命化が優先されるべきで、安易な「スクラップ・アンド・ビルド」政策をとるべきではありません。
―――政府が行おうとしているマンション建て替え要件の緩和は、反対する居住者に一方的な財産権侵害を押し付けることになりかねません。現存する建物の長寿命化を優先させながら、判明している居住者全員の合意をマンション建て替えの原則とします。
空き家・既存(中古)住宅対策
空き家が増えています。その数は2023年時点で900万戸(2018年比51万戸増)に上っています。そのうち利活用方法(賃貸、売却、二次的利用など)が定まっていない「その他空き家」は、385万戸と、この5年で37万戸増加しました(2023年住宅・土地統計調査)。空き家は利活用こそが必要で、管理されない「放置空き家」としないことが重要です。
とくに、日本は既存住宅(中古住宅)の流通が少なく、全住宅流通量の15%程度しかありません。これは、欧米諸国の5分の1~6分にとどまります。既存住宅市場の活性化のため、政府も安全性や市場価値を高める「長期優良住宅」制度の対象を既存住宅のリフォームにも広げるなど施策をとり始めました。既存住宅を長持ちさせ、有効活用する施策を支援する等、市場任せ、家主任せではなく、行政が住民とともに対策を進める仕組みを作ります。
サブリース業者への実効性ある規制
サブリース業をめぐり、賃貸アパートのオーナー(投資主)への不正融資や、共同住宅の違法建築が社会問題化しています。サブリース規制立法が成立し、義務的な登録制度ができましたが、相変わらずオーナーに契約内容の十分な説明もないまま一方的に家賃値下げを迫る等の行為が続いています。サブリース事業者に対しては、借地借家法の借家人としての地位に基づく主張を認めない等、オーナーや入居者の生活と権利を保護するためにより実効性のある規制を行います。