日本共産党

しんぶん赤旗

政策

日本共産党のかかげる政策をご紹介します

50、リニア新幹線

リニア中央新幹線建設事業はただちに中止し、関連する大規模開発工事は中止を含む抜本的な見直しを

2024年10月

 リニア中央新幹線建設事業は、品川から新大阪まで全長438km、品川―名古屋間286kmのうち8割がトンネルという今世紀最大の超巨大開発事業です。沿線の住民をはじめ、多くの国民から「自然環境、生活環境が破壊される」との懸念や不安の声があがっています。

自公政権は、このリニア新幹線を、三大都市圏を結ぶ「日本中央回廊」形成に不可欠として、JR東海が主体の民間事業と言いながら、「国家プロジェクト」に位置付け、リニアを中心に、新幹線・高規格道路ネットワークの形成や、4つの主要国際空港、2つの国際コンテナ戦略港湾の機能強化によって国際競争力強化につなげるとの途方もない構想を描いています(第3次国土形成計画)。

また自公政権は、南海トラフ地震など、巨大災害時に新幹線のリダンダンシー(交通ネットワークの多重化)としてリニア新幹線の必要性を説いています。

しかし、IT技術が飛躍的に進化し、コロナを経験した日本で、これからの社会のありようを展望したときに、リニア新幹線のような超高速輸送手段が必要なのかどうか、立ち止まって冷静に考えるべきです。リダンダンシーについても、新幹線や高速道路が壊滅的な打撃を受けるような災害のもとで、リニアだけが無事でいられるという保障はどこにありません。むしろ、リニアこそ大惨事を起こすとの警告の方が現実的です。

しかも、リニアは、膨大な残土、南アルプスを貫くトンネル工事による水枯れ、異常出水、今年5月に明らかになった岐阜県瑞浪市大湫地区のトンネル工事による井戸やため池の水位低下、8月の北品川工区調査掘進が原因と疑われる気泡の発生など、生態系の破壊、住民生活への影響が懸念されています。また、残土に含まれる重金属、残土を運搬するための工事用車両の走行による振動、騒音、粉塵、排気ガスの発生、残土盛土崩落の危険などが、人体と住民生活に与える影響も危惧されます。超電導で走行するリニアは、新幹線の約4倍の電力を消費すると言われ、気候危機打開にも逆行する乗り物と言わなければなりません。

大井川減水問題、シールドマシンの度重なる損傷・事故などで、リニア建設工事は当初の予定通りには進んでいません。こうしたことからJR東海は、23年12月、名古屋までの工事完了時期を「2027年」から「2027年以降」との変更を余儀なくされました。

―――完全に行き詰まりを見せているリニア中央新幹線建設事業は、ただちに中止するとともに、リニア開業を前提として進められている大規模開発事業も中止、もしくは抜本的に見直します。

―――少なくともリニア建設事業は公共事業として扱い、事業評価制度に基づく3~5年毎の再評価を義務付け、費用対効果分析評価(B/C)などを実施し、中止を含めた事業計画の見直しを行います。

財政投融資3兆円の償還確実性の審査、公表を

自公政権は、リニア建設事業に対して財政的な支援を否定していましたが、2016年、財政制度審議会も開かず、国会でまともな説明もせずに財政投融資3兆円を強行しました。償還確実性について全く精査されていないこの財投は、品川―名古屋間の総工事費5.52兆円を前提としていましたが、工事費はさらに1.52兆円膨れ上がり、総額7.04兆円になっています。財投3兆円の前提は崩れています。

工事完了時期が「2027年以降」と延長され、この間の資材高騰等を考えれば、総工事費の更なる増額が予想されます。財投が償還されなければ、その結果、国民負担となりかねません。

―――財政投融資3兆円の第三者による償還確実性の審査と国民への公表を実施します。

熱海土石流被害を2度と出さない―リニア認可は取り消し、残土の処理計画の総点検を

リニア建設工事で発生する残土は、品川―名古屋間だけで約5,680万㎥、東京ドーム約50杯分の膨大な量が発生するとされています。

その処分計画は、例えば南アルプストンネル工事では、大井川上流部の燕沢河川敷に南北600m、高さ70m規模、総量360万㎥というものです。

ところが、この燕沢では、断層が走っている疑いがあることが明らかになりました。JR東海は、そのことを知りながら、最近まで隠していました。残土処分計画がいかにずさんで危険なものであるか、白日のもとにさらされました。

また、2割の発生土が活用先未定となっています。国は、JR東海が活用先をすべて決定したのち、事業を認可すべきでした。

―――リニア建設事業の認可はいったん取り消し、残土の処理計画は仮置き場も含めて総点検し、安全が確保されない限り、事業は認可しません。

大深度地下使用法は廃止し、地下の大規模開発は厳しき規制を

自公政権は、2018年、JR東海に大深度地下の使用を認可しました。リニア建設工事は、東京、神奈川、愛知では、大深度地下トンネル工事が予定されています。

その根拠法である大深度地下使用法は、地下40m以深等の地下空間は「通常使用しない空間」であり、「地上に影響を及ぼす可能性は低い」との勝手な解釈を前提に、事業者が地権者の同意もとらず補償もしないままに、トンネル工事を行うことができる法律で、2000年の通常国会で、わが党を除く各党の賛成で成立した法律です。

大深度地下トンネル工事を行っている東京外環道建設工事で、2020年10月、調布市の住宅地で陥没・空洞事故が発生しました。「地上に影響は生じない」とした大深度地下法の根拠は完全に崩壊しました。

―――地権者・住民の権利と平穏で安全な生活を脅かす大深度地下法は、ただちに廃止し、今後、地下での大規模開発については、開発禁止区域の設定や事前の十分な調査と住民への説明など、厳しく規制します。

➡各分野の政策「48、国民のための公共事業政策」をごらんください。