日本共産党

しんぶん赤旗

政策

日本共産党のかかげる政策をご紹介します

9、福祉・生活保護

生活に困っている人への支援を抜本的に強化し、くらしと人権を守ります

2024年10月

生活保護を「生活保障制度」に改め、必要な人がすべて利用できる制度に改革します

自民党は12年前の政権復帰直前の時期から、生活保護の制度や利用者を攻撃するバッシングを開始し、第2次安倍政権以後、生活保護基準の連続引き下げや申請者の親族に対する扶養照会の強化など、制度改悪を連打してきました。生活保護制度の改悪は、国民の人権にかけられた攻撃です。

日本共産党は、生活保護を、憲25条に明記された国民の生存権を守る”最後の砦”として再生・拡充し、必要とするすべての人が利用できる制度にするため、▽自公政権が強行した生活保護費削減を緊急に復元し、物価高騰に見合った水準に引き上げる、▽保護申請の門前払い、扶養照会、自動車保有やわずかな預貯金を理由に保護利用を拒む運用などを改める、▽名称を「生活保障制度」に変え、権利性を明確にし、必要なすべての人が利用できる制度にあらためる――などの改革を進めます。

保護基準の切り下げをストップし、給付の改善をはかります

――引き下げられた生活扶助基準(最大▲15%)を緊急に復元し、物価高騰に見合った水準に引き上げて、生存権保障にふさわしく充実させます。期末一時扶助や住宅扶助も、復元・改善をはかります。

――廃止された老齢加算の復活、削減された冬季加算の復元・改善、夏季加算の導入などを進めます。

――「保護を利用しながらの大学進学は原則認めない」という制度を見直し、生活保護世帯の子どもが”世帯分離なし”で大学に通えるようにします。虐待などの被害者が、制度を利用しながら大学に進学できるようにします。

――持ち家がある生活困窮の高齢者に、不動産を担保にお金を貸し付ける「リバースモーゲージ」を適用して保護受給を遅らせ、受給権を侵害する運営を改めます。

――自公政権が検討する、給付削減のための級地区分の見直し・簡略化に反対します。

「水際作戦」を根絶して、国民の受給権を守ります

――生活保護の申請権の不可侵を法律に明記し、申請の門前払いを絶対に許さない国の立場を明確にして「水際作戦」を根絶します。

――各自治体の保護行政の状況を調査し、違法行為の根絶にむけた指導を強めます。

――親族等への、不必要な扶養照会をやめさせます。扶養照会の慎重な運用を自治体に求めた厚生労働省「事務連絡」(2021年3月30日)の趣旨を徹底し、扶養照会がかけられるのを怖れて、困窮者が申請をためらう事態をなくします。

――「自動車保有を原則認めない」という制度の運用を改めます。

――国の責任でケースワーカーを大幅に増員し、過重な担当件数を減らすなど待遇改善をはかります。

――ケースワーカーの専門性を高め、生活困窮者にきめ細かな支援ができる体制を構築します。

――生活困窮者支援に取り組むNPO、NGO、受給者などの意見を聴きながら「生活保護の実施要領」を改善し、自治体に徹底します。

膨大な漏給、低すぎる捕捉率こそ改革を

――生活保護は国民の権利であることを広く知らせる活動を、国と自治体で進めます。

――国として捕捉率を向上させる年次目標を設定し、生活保護法にも違反した行為や無法な指導をやめさせ、必要な人がきちんと保護を受けられるようにします。

――名称を「生活保障制度」に変え、権利性を明確にし、必要なすべての人が利用できる制度にするための改革を進めます。生活保護費に対する国・地方の負担割合の改善等を進め、福祉行政に係る国の財政支出を増やします。

国民分断を狙ったバッシングを許しません

生活保護の不正受給は支給総額1%以下で、しかも、悪質な事例はごく少数です。ところが、自民・公明・維新や一部メディアが、生活保護の制度と利用者を攻撃するバッシングを繰り返し、一部の自治体が、保護利用者の行動を住民に監視・通報させるシステムを導入するなどの状況が続いています。

――国民の人権にかけられた攻撃を、社会的連帯の力で跳ね返す運動の先頭に立ちます。

保護利用者への人権侵害をやめさせます

――生活保護の利用者の人権を侵害する「資産申告」をやめます。厚労省通達を撤回させ、生活保護法の主旨に即した行政を徹底します。

――「就労支援」の名で要保護者に圧力をかけ、「水際作戦」や強権的な保護の打ち切りを推進する制度改悪に反対します。

――生活保護の利用者の受療権に制限をかける、後発薬の使用原則化を見直します。

貧困ビジネスへの規制を行います

――住居や食事を実態とかけはなれた高額料金で提供し、さまざまな名目をつけて保護費の大半を”ピンハネ”していく悪質業者・団体(貧困ビジネス)への実効性ある規制を行います。

ハンセン病元患者に対する保障を充実させます

全国には、13カ所の国立ハンセン病療養所、1カ所の民間の療養所があります。入所者は720人(24年5月1日時点)で、平均年齢は88.3歳となっており、高齢化と身体の不自由が年々進んでいます。2001年の「隔離は違憲」とした熊本地裁判決、ハンセン病問題対策協議会での「基本合意」「確認事項」にもとづいた運動を受け、2008年6月には、療養所の具体的な維持対策を求めた「ハンセン病問題基本法」が成立し施策がおこなわれてきましたが、自治会から改正の要望が出されています。元患者への名誉回復、社会復帰・社会内生活支援、在園保障などについて、法の完全実施が実現されるよう力をつくします。

元患者家族の損害賠償をすべての対象者に

元患者の家族も過酷な偏見差別の被害を受けてきました。補償金を支給するハンセン病家族補償法と、名誉回復を盛り込んだ改正ハンセン病問題基本法が成立(2019年11月)しました。家族補償の請求期限は2024年11月からさらに5年間延長されました。家族の補償申請は、想定された3分の1にとどまっており、「ためらわずに申請してほしい」と原告団はよびかけています。

家族への補償は、日本の植民地下で隔離政策が及んだ台湾や韓国の家族も対象ですが、差別されないよう徹底的に患者だということを隠さねばならなかったにもかかわらず、申請には「証拠」が必要です。「差別を受け、苦しめられた事実」を認めてほしいという願いにこたえ、元患者家族の対象者すべてが賠償を受けられるよう、国はあらゆる手立てをつくすべきです。

療養所の職員の増員と処遇改善をはかります

緊急に入所者の医療・生活保障を拡充し、不足している医師、看護師、介護職員の確保・増員をはかることが必要です。入所者に対し、必要な医療の実施は、福祉施策の実施でなく、国の隔離政策により被害を受けた元患者への国に課された義務です。そして、ハンセン病問題基本法11条1項では、「医療及び介護に関する体制の整備」に加えて、新たに「充実」を規定しました。そのことからも、国家公務員の定員削減計画からハンセン病療養所を除外し、重症化している入所者の日常の支援、夜間の看護・介護体制の充実を進めます。

退所者が安心してかかることのできる医療制度を確立します。賃金職員・期間業務職員の差別的処遇の抜本的な改善をはかります。

入所者の願いに応えた地域構想・保存を

療養所ごとに「将来構想」づくりが進められています。高齢化の中で療養所の自治会の運営が厳しくなっており、入所者の思いを代弁し施策に反映するため、療養所ごとに人権擁護委員会が立ち上がり、弁護士などの外部委員を充実させることが求められています。将来構想を実行していく上でも、医師や看護師などの職員体制を維持・拡充させていくことが要となることから、国は予算を確保し、手厚い支援を求めます。

療養所施設を保存し、療養所に併設されているハンセン病の資料館を、公的責任で運営できるようにします。全国の療養所敷地内に保育所や特養ホームが開設されており、さらに各地に広げます。障害者施設や高齢者福祉施設などを誘致することも望まれています。他施設の誘致、併設にあたっては、法外に高い借地代の改善が不可欠です。国は、自治体とともに入所者の願いを反映する療養所を実現するため、着工の予算を確保し、積極的で万全な支援と保障につとめるべきです。

厚労省で開かれる毎年の追悼式への交通費を、代表者だけでなく、元患者やその家族に支給します。

「特別法廷」の違憲判断を受け止め、菊池事件の再審開始を

裁判所以外の療養所などで開かれた「特別法廷」のハンセン病患者の裁判は、1948年から1972年まで95件が実施されました。ハンセン病患者とされた男性が特別法廷で裁かれ、死刑となった「菊池事件」は、再審開始を求める運動が続けられています。2020年2月、熊本地裁は「特別法廷」そのものを違憲として断罪しました。死刑判決・執行が憲法違反の手続きであり、菊池事件の再審を開始すべきです。今年10月1日、熊本地裁で再審を認めるかどうかの審理が開かれ、弁護側が申請した証人への尋問が行われました。

特別法廷について、元患者の弁護団は国・司法から国民に向けての公式な謝罪を求めています。裁判官などへの人権研修を進め、いまだに克服されていないハンセン病に対する偏見、差別をなくし、政府がなぜ隔離政策をとったのか、その隔離政策とは何であったのか、広く国民に知らせ、二度と同じ過ちを繰り返さないための啓発活動を積極的に講じていきます。

中国等からの帰国者に社会的支援を確実に行います

さきの戦争で犠牲になった中国「残留孤児」「残留婦人」たちが、国の謝罪と生活支援を求め、全国で訴訟に立ち上がった結果、改正「中国残留邦人支援法(新支援法)」による支援給付金などの制度が実施されています。しかし、国は、終戦間際に多くの国民を中国東北部に置き去りにし、その後も長期にわたって支援を怠ってきたことへの真摯な反省と謝罪をしていません。そのために、支援給付金の水準は、「安心した老後を送りたい」という願いにこたえるものとはなっていません。

残留邦人の配偶者には2014年10月から支援給付金と合わせて老齢基礎年金の3分の2相当が加えられるようになりました。さらなる支援拡充を進めます。中国渡航期限(2カ月以内)の緩和などを行います。

2世にも高齢化が始まっており、日本語も話せず低賃金・過酷な労働を余儀なくされ、生活保護に頼らざる得ない2世も多くいます。新支援法を改正して、2世も法の対象にして、私費帰国の2世にも通訳・日本語教育サービス等が受けられる、中国への里帰りが2週間を超えても生活保護費を減額・停止しない、などの願いにこたえるべきです。また、生活保護とは異なる老後の生活保障を行うことや、医療や行政サービスを拡充します。

配偶者や2・3・4世も含め、国が「孤児」たちに約束した「日本に帰ってきてよかったといえる支援策づくり」を、人間としての尊厳にふさわしく、確実に行っていきます。

ひきこもり、社会的孤立となっている人への支援を進めます

15~64歳のいわゆる稼働年齢層のなかで、メディアや研究者が「ひきこもり」「孤立無業者」などと呼ぶ、社会的な孤立状態にある人たちの増加が、日本社会の直面する問題となっています。2023年に内閣府が公表した、「こども・若者の意識と生活に関する調査」(2022年)によれば、15~64歳でひきこもり状態にある人は50人に1人、146万人にのぼると推計されます。これらの人たちが孤立状態に至った経緯はさまざまですが、その背景には、過度の競争教育、長時間・過密労働、職場におけるハラスメント、弱者たたきの風潮のまん延、格差と貧困の拡大など、日本社会の矛盾があります。

実際、現在、ひきこもりになっている人の就業経験は15~39歳で62.5%、40~64歳で90.3%です。支援団体の聞き取り等により、そうした人たちの多くが、職場でのパワハラ、いじめ、暴言、叱責、差別的発言などを受け、心を傷つけられた経験をしていることが明らかとなっています。

今回の内閣府の調査では、これまで「男性中心」と思われてきた、ひきこもりの4割以上が女性であり、とくに、40~64歳では52.3%と半数を超えていたことが話題となっています。これは、伝統的な性別役割分担の価値観のもと、「主婦」「家事手伝い」などの名で隠されてきた、ひきこもっている女性たちの実態が顕在化したものです。そのなかには、職場や社会におけるストレスとともに、「女性だから」というジェンダーによる差別・抑圧を受け、生きづらさを抱えこまされてきた女性が数多く含まれていると考えられます。

ひきこもりは長らく、「本人の甘え」「親の甘やかし」という偏見にさらされてきましたが、この間の政府の調査結果は、ひきこもりが、現在の社会情勢やさまざまな社会的要因のもと、だれもがいつからでもなりうる状態像であることを浮き彫りにしています。

孤立・無業の状態にある子を高齢の親が支え、共倒れのリスクを抱える「8050問題」や「9060問題」が叫ばれるなか、政府も、ひきこもりの人への支援強化を言いだし、関係者の要求を受けて予算をつけるようになりました。しかし、その額は数十億円規模に過ぎず、経済的支援もないなど、ひきこもりの本人・家族への支援は乏しいままです。当事者や家族への社会的支援の強化、偏見をなくす啓蒙活動の促進、だれもがふるい落とされない包摂の社会づくりが必要です。

日本共産党は、国民のくらしを守り、すべての人が尊厳をもって、自分らしく生きられる社会をめざす立場で、ひきこもりなど孤立状態となっている人と家族への支援を進めます。

支援拠点の確立、相談窓口の明確化

――「ひきこもり地域支援センター」への予算を抜本的に増額し、支援拠点としての体制・機能の拡充や、増設をはかります。

――ひきこもりの事案を担当する所管部署・窓口を明確化し、すべての区市町村で相談に応じられる体制を確立します。対応する機関の情報不足や認識不足をただし、家族や当事者の心情に寄り添い、適切で具体的な情報提供を行う姿勢を現場に徹底します。

伴走型で継続的な支援体制を確立します

ひきこもり、孤立状態となっている人が抱える困難は複雑・多様で、一人ひとりの状況に応じた伴走型の柔軟なサポートが必要です。2022年の内閣府の調査では、同じ立場の当事者や経験者同士が、互いに支え合い、学び合い、エンパワメントしあう、「ピアの関係性」による支援の重要性が示されました。

――行政とNPOや家族会などの支援機関とが連携し、ひきこもり支援のネットワークを確立し、支援体制の強化・拡充を進めます。

――各自治体に、専門性をもった相談員による訪問相談、アウトリーチの仕組みを構築します。その際、ひきこもりの本人、家族の話にじっくりと耳を傾け、苦しみや葛藤に寄り添ってアドバイスをする姿勢を徹底します。

――多様な背景をもち、年代も経験も千差万別である、ひきこもりの本人を継続的にサポートするため、オーダーメイド型の支援ができる体制をつくります。

――自治体の担当職員を大幅に増やすとともに、居場所づくり、ピアサポート、家族会の拡充を進めます。NPOなどの支援機関と協力しながら、本人が自らの意思で参加し、他者との出会いやつながりを持つ、多様な居場所をつくります。そのために、当事者経験者スタッフ(ピアサポーター)の積極的起用と、活動への援助を行います。

――家族が、地域社会から孤立することを防ぎ、悩みや辛さを分かち合える場として、家族会(家族のつどい)の拡充をはかります。家族会をはじめ、ひきこもりを支援する機関の、自治体の福祉施策を検討する場への参画を進めます。

本人の意思にそった就労・社会参加の支援

ひきこもりの人への就労支援にも活用されている、「生活困窮者自立支援法」にもとづく国の委託事業では、1年間という期限の設定や、サポートステーションへの数値目標の義務づけが、制度を使いにくくしていると指摘されています。

――ひきこもりの人への就労支援に、一律の期限設定や数値目標を押しつけることをやめ、本人の意思や状況に応じた対応ができるようにします。

――就労後も使える居場所づくり、サポートの仕組みを整備します。

――ひきこもりの本人が、自らの経験を活かしながら、ボランティアや地域活動に参加する「社会的役割の機会創出事業」を広げます。

――「就労だけがゴール」という発想ではなく、本人の意思と選択、実情に応じた援助を行ないます。

自立支援ビジネスの実態把握と規制

ひきこもりの人の家族が、藁をもつかむ思いで、たまたまネット検索などの情報で知った「自立支援ビジネス」にすがってしまうケースが後を絶ちません。そうした業者のなかに、同意もないまま本人を暴力的手法で強引に家から引き出し、施設に収容して”矯正”しようとする業者や、家族と高額の契約を結びながら、まともなケアや支援を行わない業者が多数いることが問題となっています。

――自立支援ビジネスについて、消費者相談による対応を強化するとともに、行政として実態を把握し、脱法的行為の摘発と規制を進めます。こうしたビジネスが横行する余地をなくしていくためにも、行政による家族への相談と情報提供、本人へのサポート体制の構築が必要です。

偏見・スティグマを克服し、誰もが自分らしく生きられる社会へ

ひきこもりを「甘え」「怠け」などといって中傷し、無業の人たちにスティグマ(恥辱)を負わせる偏見が、日本社会には根強く残っています。そうした偏見・スティグマは、本人や家族の苦悩と孤立に拍車をかけ、解決をいっそう遅らせるだけです。

内閣府の調査によれば、ひきこもりの人の多くは「自分を変えたい」と願っていますが、過去のさまざまな経験もあり、「将来、自分が多くの人の役に立てるとは思えない」と8割の人が回答する状況となっています。社会に敷かれた”レール”から一度外れたとしても、受け入れられる場や役割があり、自分らしく生き続ける選択肢があると実感できるような、居場所・仕組みづくりが必要です。

マスメディアのなかには、ごく一部の事件をセンセーショナルに取り上げ、ひきこもりを”犯罪者予備軍”であるかのように扱う言論を、無責任に流す動きもあります。

ひきこもる人の多くは、職場や学校で傷つけられたり、他人を傷つけるのを回避したいと望んだりした結果、他者との関係を遮断せざるを得ない状況に追いやられた人たちであり、無関係な他者に危害を加えるに至るようなケースは、きわめてまれです。根拠のない不安をあおって、社会的偏見を拡大するような報道・発言はやめるべきです。

ひきこもりの本人が、孤立状態に至った背景は複雑で多様ですが、その大本には日本社会の矛盾があります。それを「自己責任」の名で攻め立て、いっそう孤立無援に追い込む社会ではなく、困難のなかで傷ついた人を地域と行政が支え、かけがえない個人として尊重する社会こそ、だれもが安心して生きられる社会です。

――ひきこもっている人の人権を守るため、支援団体等が要望している「ひきこもり基本法」の制定を進めます。

――ひきこもりの本人や家族を攻撃する風潮をただし、偏見を克服するため力をつくします。

――過度の競争教育の是正、長時間労働の規制、ブラック企業の根絶、ハラスメントの禁止、社会保障の充実など、日本社会の矛盾を打開する改革を進めます。