71、文化
文化・芸術を人間が生きる糧として大切に守り、発展させます
2024年10月
文化・芸術は、人々に生きる力を与え、心豊かな暮らしに欠かすことができないものです。文化・芸術を創造し享受することは、憲法や文化芸術基本法で保障された国民の権利です。ところが国民は、物価高騰に賃金と年金が追いつかず、欧州と比較して
異常に長い時間外労働時間を強いられ、文化・芸術をゆっくり楽しむお金と時間のゆとりがありません。日本共産党は、すべての国民がもっと自由に文化・芸術をつくり楽しむことができるよう、賃上げと一体に労働時間の短縮を求め、人間の多面的な発達に大切な役割をはたす文化・芸術の活動を発展させる社会をめざします。
文化予算の抜本増額を求めます
国民が文化・芸術を鑑賞し、参加し、創造することができるような環境を整備することは国の責務です。しかし、現実には、所得や住んでいる場所によって、文化・芸術をつくり楽しむ機会に格差が生じています。
日本の文化予算は2024年度の当初予算で1,062億円(出国税分含む)。国家予算の0.09%と0.1%を切ってしましました。国家予算に占める文化予算の割合は、フランスの8分の1、韓国の12分の1と、諸外国と比べてあまりに少なく、さらにその差が広がっています。
最近の国の文化政策は、「稼ぐ文化」を掲げ、文化・芸術に収益性を求め、クールジャパン、インバウンド対策など収益を上げる分野に対する支援に偏っています。
ドイツでは、文化大臣が新型コロナ禍の中で文化・芸術は「生命維持装置」と述べて手厚い支援を行いました。日本では、コロナ対策として一定の補正予算措置がなされましたが、一過性のものであり、拡充が求められています。
日本共産党は、すべての国民の文化的に生きる権利、もっと自由に文化・芸術をつくり楽しむことを保障するために文化予算の抜本増額を求めます。
芸術家、芸術団体の活動を支えます
芸術団体に対する助成は、自公政権の新自由主義路線の下で抑制・削減され、最高時(2002年)の半分まで落ち込んでいます。コロナ禍で大打撃を受けた芸術家、芸術団体は、徐々に活動がコロナ前の水準になってきましたが、物価高騰で経費がかさみ、経済的には苦しいままです。支援についての制度設計は現場の声をとりいれ、継続的に行うことが必要です。
―――芸術団体が専門性を発揮し、持続的に発展していけるよう、事業規模、法人格などを考慮した基盤整備を含めた助成制度の発展、法整備をはかります。
―――幅広い団体・個人が活用できる助成制度を確立し、助成への応募が年に複数回できるようにするなど制度の改善をはかります。寄付税制の充実など、税制面での支援をすすめます。
―――映画やアニメなど日本映画の製作システムを支える財政支援を増額し、制度の拡充をはかります。
―――映画フィルムの保存を急ぐとともに、文化遺産であるフィルム作品の劣化や散逸、デジタル化に対応した映画作品の保存を進めます。フィルムアーキビストなど専門家の育成を進めます。
―――日本の伝統文化を継承・発展させるため、伝統芸能や伝統工芸をはじめとした実演家、技術者の育成をすすめます。希少素材を使用している伝統楽器の材料についての調査・研究を支援します。
―――次代を担う芸術家、技術スタッフの育成をすすめます。
国民が文化・芸術を創造・享受する「場」――劇場・音楽ホールなど文化施設への支援を強化します
劇場や音楽ホール、美術館、博物館などの文化施設は、それぞれの地域の文化・芸術を支える大切な場です。しかし、文化施設は、自民党政治のもとで指定管理者制度が設けられ、予算が削減されてきました。市町村合併で文化施設が統合され、遠方になったため、住民の鑑賞や発表の機会が減っている地域もあります。施設・設備が老朽化したのに大規模改修の費用が捻出できず、休館・閉館に追い込まれている文化施設もあります。
地域文化の多様性を守り、新しい芸術家を育ててきたライブハウス、ミニシアター、小劇場、イベントホールなどが、新型コロナ禍で客席の制限、時短営業を強いられて採算がとれず、閉館したところもあります。
また、国立劇場が建替えのために閉館しましたが、入札が不調に終わり、建替えのめどが立っていません。いつ再開できるのかもわからず、伝統芸能分野が大打撃を受けています。
日本共産党は、文化・芸術を創造・享受する「場」を支えます。
―――劇場・音楽堂に対しては、専門家を適切に配置し、正規化を求めます。バリアフリーなどの施設改修や舞台機能の高度化への支援措置を設けるなど、国の支援を強めます。
コロナ禍の事業として行った「アートキャラバン事業」は、全国の劇場やホールに芸術団体が出向き、地域住民とホール、芸術団体の懸け橋となるものでした。こうした事業の充実を求めます。
―――民間の劇場やミニシアター、ライブハウスは現状では商業施設や遊興施設として扱われ、何の支援もありません。年間100日以上事業を行っている施設は劇場とみなして固定資産税の減免をはかるなど、積極的な支援を行います。
―――美術館・博物館、図書館は「表現の自由」を土台として国民に鑑賞機会を提供するとともに、大切な社会教育の場です。コレクションの購入や修復、適切な保管場所の確保などの支援を強めます。
―――国立美術館・博物館、国立劇場・新国立劇場、国立映画アーカイブについては、文化・芸術活動の拠点として活性化するために、国の施設にふさわしく予算の充実をはかります。資料の保管や修理修復の経費が高騰するもとで、光熱費などへの緊急の予算措置を求めます。
国立劇場の建替えは、全額を国が負担し、一刻も早く開場することを求めます。
―――文化施設の運営への芸術家と市民の参画をすすめるとともに、文化ホールや図書館、美術館・博物館の民営化、民間委託をやめさせ、公的支援を充実します。
―――映画、アニメ、漫画、美術、デザイン、写真、音楽など、文化各ジャンルの貴重な遺産のアーカイブ(収集・保存・公開)を支援します。
文化を支える専門家―「担い手」の地位向上にとりくみます
実演家、技術スタッフ、アニメーターなどフリーランスの芸術家は、一般の労働者に比べて低収入です。2020年度から芸能従事者やアニメーターなどが労災保険に特別加入できるようになり、11月からはフリーランス新法が施行されます。専門家の地位向上、社会保障の充実に力を尽くします。
―――芸術家が本業で仕事ができるように、その収入を一般勤労者並みに改善することをめざします。専門家の共済制度の創設などを求めます。国保に加入するフリーランスの芸術家に対する傷病手当金の支給を求めます。
―――舞台技術者や司書、学芸員など非正規職員となっている専門家の正規化を行い、専門家としての力量を発揮できるよう支援します。
―――文化・芸術活動の現場で、パワハラやセクハラが大きな問題になっています。国として芸術家・専門家に対する相談窓口の拡充、業界団体などが行うハラスメント講習の支援の拡充を求めます。
―――演劇・舞踊や映画の国立大学の設立、国立劇場・新国立劇場での専門家育成・研修事業の充実、海外研修支援の拡充など、専門家の要請における国の責務を果たさせます。
子どもたち、若い世代が文化活動を体験できる条件整備を進めます
新型コロナ禍で、子どもたち、若い世代の人たちが文化・芸術を創造し、享受する機会が大きく失われました。また、「子どもの貧困」もさらに進んでいます。国の施策は、学校公演の助成もまだ一部にとどまっており、劇場・音楽堂における子どもチケット支援に力を入れるものの、その対象になる子どもたちは地域的に限られています。子どもの経済環境や居住地域で文化享受に格差があってはなりません。子どもたち、若い世代の人たちに文化・芸術に触れる機会をつくり、心豊かな成長を保障することが政治の役割です。
―――すべての子どもが年1回以上芸術鑑賞できるよう、国の施策の充実をはかるとともに、学校と芸術団体の自主的な努力を応援します。
―――情報提供や申請実務の簡素化などの条件整備をすすめます。義務教育の期間だけでなく、就学前の子どもや、高校生、大学生に対する芸術鑑賞などの支援を強めます。
―――フランスの「カルチャーパス」などを参考に、若い世代が芸術に触れる多様な機会を保障します。
―――障害者の芸術鑑賞・創造・作品発表などの機会を増やし、支援します。
地域の文化活動を応援します
地域では、住民が主人公となって多種多様な文化活動が、多くの市民や団体で行われ、街の活性化やコミュニティーの形成につながっています。一方で地域の過疎化や文化活動の担い手の高齢化に伴い、地域の文化活動に困難もあります。
―――現役世代や子どもたちの文化活動、NPOやサークル、鑑賞団体などの活動が発展するように、ホールや展示場所、けいこ場の利用料の低減など条件整備をすすめます。
―――自治体の文化担当の職員を支えるために、研修機会の充実をはかります。
文化財の保存と継承をはかります
文化財は、有形・無形を問わず、先人の生きてきた証であり、現在・未来に生きる貴重な財産です。最近の政府の方針では、文化財を観光などに「活用」し、「文化財で稼ぐ」ことに重点が置かれていますが、「活用」の名のもとに、文化財の保存があいまいにされ、破壊・毀損されることがあってはなりません。「活用」する場合も、修理・修復して保存することが欠かせません。東日本大震災や熊本地震、豪雨災害などで被災した文化財の保存・修復も道半ばです。今年は、能登半島地震と豪雨災害がありました。美術館や博物館、国の重要文化財の建造物や無形重要文化財の輪島塗や、県指定の伝統工芸品珠洲焼の工房なども甚大な被害を受けました。自治体、民間任せにせず国としての支援の強化を求めます。
―――文化財の保存・修復のために財政的な支援を強めます。文化財の保存と活用のために、普段からの調査活動を支援します。
―――高輪築提、旧門司駅遺構、神宮外苑などに顕著に表れている大型開発事業とその関連工事による文化財破壊を許さず、埋蔵文化財をはじめ、文化遺産、歴史的景観および文化的景観の保護をはかります。
―――「陵墓」に指定されている古墳の学術目的での調査と保存をすすめます。
―――文化財の防災対策を強化します。
―――世界遺産や無形文化遺産の推薦にあたっては、透明性向上や公平性確保につとめます。
―――食文化の継承・発展のための支援をすすめます。
著作者の権利を守り発展させます
著作権は、表現の自由を守りながら、著作物の創造や実演に携わる人々を守る法律として、文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家も映像作品の二次利用への権利がありません。国際的には視聴覚的実演に関する北京条約(2012年)が締結され、日本も加入するなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。
―――映画の著作権に関しては、著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
―――デジタル化、ネット配信など多様化する二次利用に対しては、著作者や実演家の不利益にならないよう対策を求めます。
―――私的録音録画補償金制度は、デジタル録音技術の普及にともない、一部の大企業が協力業務を放棄したことで、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益を守るために、私的複製に供される複製機器・機材を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担を求める、実効性のある補償制度の導入をめざします。
―――生成AIの「学習」段階については、現行の著作権法では著作者の許諾が不要になっており、無許諾で使用される事例が増加しています。著作権者の権利を守る立場での法改正、AI規制法の制定を求めます。
憲法を生かし、表現の自由を守ります
芸術は自由であってこそ発展します。「表現の自由」は、多様な立場や価値観を持った人たちが生活する民主主義社会を支える上で欠くことのできない大切な人権です。憲法は「表現の自由」を保障していますが、自公政権のもとで、各地の美術館や図書館、公民館などの施設で、創作物の発表を正当な理由なく拒否することが相次いできました。2019年のあいちトリエンナーレでは、政治家の介入を受けて、文化庁が「安全性」を理由に助成金をいったん不交付にしたり、名古屋市が一部負担金の支払いを拒否したりしました。日本芸術文化振興会が映画「宮本から君へ」に対して「公益性」をもちだして助成金を打ち切ったりするなど、「表現の自由」への介入・侵害が相次ぎました。こうした権力からの介入は、自由な創造活動に「忖度」や「萎縮」効果をもたらすことにつながるものであり、司法の場でも厳しく批判されています。
また、文化庁の助成は応募要綱などが行政の考え方に沿って決められ、芸術団体などの意見が十分反映されていません。諸外国では、表現の自由を守るという配慮から、財政的な責任は国が持ちつつ、専門家が中心となった独立した機関が助成を行っています。
日本共産党は、「表現の自由」を守り、文化芸術基本法や憲法の基本的人権の条項をいかした支援を求めます。
―――「アームズ・レングス原則」(お金は出しても口は出さない)にもとづいた助成制度を確立し、萎縮や忖度のない自由な創造活動の環境をつくります。
―――すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。
―――公共施設などでの創作物の発表、展示への脅迫・妨害行為に毅然とした対応を求め、「表現の自由」を保障します。
―――「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメ・ゲームなどへの法的規制の動きに反対します。青少年のゲーム・ネットの利用について、一律の使用時間制限などの法規制に反対します。
消費税は廃止をめざし、直ちに消費税を5%に。インボイス制度は廃止を
コロナ禍と物価高騰のもと、 消費税は文化・芸術分野に大きな重しになっています。また、インボイス制度の導入は、これまで免税事業者だったフリーランスの芸術家の生業を直撃し、消費税の支払いに借金をしなくてはならない事態も生まれています。文化・芸術潰しの消費税は廃止をめざし、今すぐ5%への減税を求めます。インボイス制度の廃止を強く求めます。