日本共産党

しんぶん赤旗

政策

日本共産党のかかげる政策をご紹介します

17、子どもの権利

子どもの権利が保障される国に

2024年10月

 今年は子どもの権利条約批准30周年の年です。子どもの権利条約は、①生命、生存及び発達に関する権利、②子どもの最善の利益、③子どもの意見の表明、尊重、④差別の禁止の4原則を掲げ、国連で1989年に採択されました。現在、国連加盟国数を上回る196の国と地域で締約され、世界で最も広く受け入れられている人権条約です。

日本は批准から30年になりますが、条約を生かした施策や普及はすすんでおらず、日本政府は、国連子どもの権利委員会から、子どもの権利の保障が不十分だという勧告を繰り返し受けています。「教育制度の過度に競争的な性格」が「子どもの肉体的および精神的な健康に否定的な影響を及ぼし、子どもの最大限可能なまでに発達することを妨げている」(2004年)、「自己に関わるあらゆる事柄について自由に意見を表明する子どもの権利が尊重されていない」(2019年)など、どれも条約の根本にかかわる非常に厳しい評価です。しかし日本政府はそれらの勧告を長期にわたって無視し続けてきました。

ユニセフの調査(2020年)では、日本のこどもの精神的幸福度は、先進国38カ国の中で下から2番目です。「今の生活に満足している」と答えた15歳の割合が62%と低く、15~19歳の自殺率も平均を上回っています。子どもが長時間をすごす学校が息苦しい場になり、不登校は増え続けています。いじめも深刻です。日本は子どもたちにとってとても生きづらい国になっているのです。

日本共産党は、日本を子どもの権利が保障される国に転換するために力を尽くします。

教育での競争と管理を是正し、豊かな条件整備を

国連子どもの権利委員会は、1998年の最初の日本への勧告から、過度に競争的な教育システムが子どもの身体的及び精神的健康に悪影響を与えていると厳しく指摘し、適切な処置をとるよう強く勧告しました。その後も繰り返し、同様の勧告がおこなわれています。にもかかわらず、現在は全国学力テストで点数での序列化がはかられるなど、学校現場にはますます過度な競争主義がもちこまれています。全国学力テストについては、全国知事会でも「都道府県で順位をつけても意味がない」など疑問の声があがっています。

―――教育を数値で評価し競わせる競争主義や「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ)」などの管理主義が学校を息苦しい場にしています。こうした競争主義、管理主義を子どもの権利条約の立場で是正します。教育の自由、自主性を保障し、学校を子どもも教職員も安心できる場にします。

―――OECD諸国で最低水準の教育予算を抜本的に増やし、中学校35人学級をすみやかに実施し、さらに30人以下の小人数学級をめざすなど、教育条件を改善します。

―――教員の異常な長時間労働は、一人ひとりの子どもを丁寧にみることを困難にし、教員不足の大きな要因にもなっています。教職員定数を抜本的に増やします。教員を労働基準法の残業規制の対象外とし長時間労働を野放しにしてきた「残業代不支給制度」をやめ、残業制度を適用します。

➡詳しくは各分野の政策「67、教育」をごらんください。

子どものための社会保障を拡充します

――子どもの貧困の改善へ、数値目標を明確にして、必要な給付等にとりくみます。児童手当の拡充をさらにすすめます。

――保育所の設置基準や保育士の待遇の改善をはじめ、学童保育、社会的養護施設、児童相談所、児童館など子どものための公的施設を抜本的に拡充します。

――高校卒業までの子ども医療費無料化を国の制度として実施します。

➡詳しくは各分野の政策「16、子ども・子育て」「18、子どもの貧困」「25、保育」「26、学童保育」をごらんください。

子どもの参加、意見表明権の保障を

社会が子どもの参加、意見表明権を保障することは、子どもの権利にとって何より大事です。ところが社会問題となった校則ですら、政府は「子どもの意見表明権の対象外」だと答弁しており、2024年国会で可決した離婚後共同親権導入の民法改正においても、条文で「子の利益」をいう一方、子どもの意見表明権は明記されていません。

国連・子どもの権利委員会は一般的意見第7号(2005年)で、「乳幼児は条約に掲げられたすべての権利の保有者である」「乳幼児期はこれらの権利の実現にとってきわめて重要な時期である」と強調しました。出生時からのすべての子どもの意見表明権を保障することが求められています。

―――国や地方自治体の施策、学校の運営などにおいて、子どもの意見表明権を保障する制度と体制をつくります。こども基本法で定めた「こども施策」策定等での意見表明の機会と意見の尊重、子どもの参加を、教育行政をふくめ全面的に実施させます。

―――子どもの権利条約の子どもとおとなへの普及を本格的にすすめます。学校教育の中で、子ども自身が子どもの権利条約について学習する機会をつくることはもちろん、すべての教職員が研修等で、理解を深めるための取り組みを充実します。ガイドブックを作成・普及し、保護者はもちろん子ども施策に関わる大人たちにも学ぶ機会を促進し、社会全体への普及に取り組みます。

すべての子どもたちの権利が大切にされるために

―――人権や個人の尊厳が本当に大切にされる社会の土台を築くため、年齢・発達に即した、科学的で人権に立脚した世界水準の「包括的性教育」を公教育に導入します。

―――子どもの貧困が広がっています。病気や障害、LGBTQ(性的マイノリティ)など、社会的支援を必要とする子どもたちの人権が守られていない状況が多々あります。すべての子どもたちの権利が保障されるよう、あらゆる努力をはかります。

―――外国籍の子どもを仮放免や在留資格がないまま放置し送還すること、医療を受けさせないことなどは、子どもの権利条約違反です。子どもと家族に在留特別許可を出し、日本で安心して住み続けられるようにするべきです。国際人権基準に沿った人権尊重の制度に徹底的に見直します。

―――子どもたちの権利を大切にするためにはおとなの働き方の改革が不可欠です。保護者がゆとりをもって子育てにあたれるよう、賃上げと一体に労働時間を短縮します。また保育園、幼稚園、社会的養護施設などの配置基準を拡充します。

 ➡詳しくは「賃上げと一体に、労働時間の短縮を――働く人の自由な時間を拡大するために力を合わせましょう」(2024年9月20日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2024/09/post-987.html)をごらんください。

「離婚後共同親権」を導入した民法を見直す

多くの反対と危惧の声を押し切って「離婚後共同親権」の導入が強行されましたが、父母間の合意がない「共同親権」を家庭裁判所が強制すれば、適切な親権の行使ができず、子の利益を害する重大な危険があります。国会審議での成果を生かし、DV被害者をふくめ、不本意な「共同親権」が強制されて子どもの利益が害されることのないようにしていくことが必要です。

―――子どもの権利擁護の立場から、戦前の明治民法下で戸主が家族を支配していた時代の名残である「親権」そのものを見直します。民法の「親権」にかんする規定を抜本改正し、子どもの権利と福祉を実現する親と社会の責任・責務という位置づけを明確にします。子どもの意見表明権を明記します。父母の合意がないもとで家庭裁判所によって共同親権を指示されることがないよう改正します。

―――家庭裁判所の体制強化、大幅増員や子どもの意思・心情を尊重する徹底した研修、特にDV・虐待ケースでは専門家が意思の確認を行う仕組みをつくります。

―――面会交流を改善します。国が立て替え払いし不払い親へ求償するなど、養育費の支払い確保をすすめます。

児童虐待をなくす

―――児童虐待をなくす施策をすすめます。児童相談所が対応する虐待相談件数は20万件(年間)を超えており、深刻な状況が続いています。児童相談所が十分に役割を発揮できるよう、専門職員の養成と相談員の増員、職員の正規化など処遇の改善、相談所の増設など抜本的に拡充します。

―――被害を受けた子どもの心身の回復にあたる社会的養護の環境を改善・拡充します。

―――親の更生や学びを支援するとともに、虐待の根本にある貧困と社会的孤立の解消に力を入れます。

子どもを性虐待・性的搾取からまもる

2023年、故・ジャニー喜多川氏による半世紀にわたる子どもへの性加害が明らかになりました。名乗り出た被害者は1,000人を超えており、前代未聞の性加害事件です。

内閣府の「こども・若者の性被害」調査(2023年6月)によると、16~24歳の4人に1人以上が何らかの性暴力被害を受けており、性交を伴う被害に遭った人のうち、最初の被害年齢は中学生以下が24%とたいへん深刻です。

―――子どもへの性暴力は罪を加重します。子どもの頃に性被害にあった場合には、それが性被害だったと気づく頃には時効を迎えている場合も少なくないことから、子どもが被害者の場合は時効を停止するなどの見直しを行います。

―――仕事で子どもと接する人について、学校や民間教育保育事業者に性犯罪歴の確認を義務付ける「日本版DBS」制度が2026年をめどに始まりますが、子どもに性的嗜好(しこう)を持つ者が未認定事業者に集まる可能性があること、初犯は防げないことなど、DBSだけで子どもを守ることはできません。個人情報の漏洩などを防ぎながら法の有効性を高めると同時に、事業者の研修、教育現場での養護教員やスクールカウンセラーの増員、再犯防止プログラムなど加害者更生の継続的支援、性犯罪治療への支援も含め、子どもを性加害から守るとりくみを進めます。

―――新宿・歌舞伎町に集まる「トー横キッズ」など、家庭などに居場所がなく繁華街で夜をすごす少女たちを性風俗業者や暴力から守ることは政治の責任です。民間でとりくまれているアウトリーチ活動の自主性を尊重しつつ補助を抜本的に拡充します。相談体制を強化します。

―――18歳未満の子どもを被写体とする児童ポルノは、子どもの人権を侵害する性虐待・性的搾取であり、断じて容認できません。児童ポルノ事犯の被害児童数は、2016年以降、毎年1,000人を超え、ここ3年は1,400人以上にのぼっています(警察庁調べ)。児童ポルノの製造・提供・公開などについて、現行法に基づく厳正な対応が求められます。

児童ポルノ禁止法における児童ポルノの定義を「児童性虐待・性的搾取記録物」と改め、重大な人権侵害からあらゆる子どもをまもることを立法趣旨として明確にし、実効性を高めることを求めます。

スマホとインターネットを悪用した「デジタル性暴力」の被害が深刻化しており、送った画像を悪用したリベンジポルノや性的脅迫(セクストーション)で追いつめられる被害者の多くが10~20代の子ども・若者です。相談体制を抜本的に強め、現行法、条例などを駆使して厳正に対処するとともに、インターネットサービスを提供する企業への義務強化、アプリ運営者、プラットフォーム会社の責任を強化する国際的なとりくみを求めます。

―――「性は人権」「ジェンダー平等」の立場で、互いの性を尊重する人間関係を築くことを目指す包括的性教育を、子どもはもちろんおとなも学ぶとりくみを進めます。

子どもの権利を保障する独立機関をつくる

―――政府から独立した子どもの権利救済機関(子どもコミッショナー)を設置します。政府から独立した立場で政府を監視・評価し、個別事案の相談・救済にあたる機関は、子どもの権利を保障するために不可欠で、すでに70カ国以上で、子ども施策を担当する省庁とは別に設置されており、国連子どもの権利委員会も日本に設置を勧告しています。