85、武器輸出
「死の商人国家」への変質を許さない
2024年10月
1976年に当時の三木政権が表明した「武器輸出三原則」は、「国際紛争を助長しない」という「平和国家」としての理念にもとづき事実上武器輸出を全面禁止し、81年には衆参両院本会議は同三原則の厳格な運用を求める決議を全会一致で可決しました。自民党政府のもとでも、これが日本の「国是」となってきたのです。
ところが2014年4月、当時の安倍政権は「武器輸出三原則」を撤廃し、武器や関連技術の輸出を包括的に解禁する「防衛装備移転三原則」へと大転換させる閣議決定を強行しました。それでも、殺傷武器の輸出については基本的に認めていませんでした。
それをさらに「大転換」させ、日本を「国際紛争助長国家」「死の商人国家」へと完全に変質させたのが岸田政権でした。2022年末に閣議決定した「安保3文書」が「防衛装備移転の推進」を掲げたことを受け、同政権はまず、23年12月に外国企業からライセンスを得て日本が生産した殺傷武器を、ライセンス元国へ輸出できるようにする閣議決定を行いました。さらに今年3月には、日英伊が共同開発・生産する次期戦闘機の日本から第三国への輸出を可能にする閣議決定を強行したのです。
日本にとってF2戦闘機の後継となる次期戦闘機は、防衛省資料によれば「いずれの国においても実現されていない新たな戦い方」に対応する最新鋭機であり、殺傷武器の最たるものです。英伊にとってはユーロファイターの後継ですが、英伊独西が共同開発・生産した同機はサウジアラビアに第三国輸出され、それがイエメン内戦(2015年~)への軍事介入に投入された結果、多数の民間人が犠牲になったことは厳然たる事実です。次期戦闘機が第三国に輸出された場合、さらに破滅的な攻撃に使用される危険性があることは明白です。
政府・与党はこの閣議決定について、「3つの歯止め」――輸出するのは次期戦闘機に限る、輸出先は日本と「防衛装備品・技術移転協定」を締約している国に限る、「現に戦闘が行われている国」は除外する――を設けたとしていますがまったく歯止めになりません。
輸出は次期戦闘機に限るといいますが、これだけの殺傷能力を持つ武器の輸出を可能にしておいて、その他は輸出できないという理屈は成り立たず、今後、際限なく殺傷武器輸出が拡大していくことは必至です。また、日本と「防衛装備品・技術移転協定」を結んでいる国はいま15カ国ですが、これは国会の関与なく政府の一存で決められるので、締約国もいくらでも増やすことができます。さらに、現在は戦闘していない国であっても、日本が戦闘機を輸出した後に開始する事態は十分ありえます。実際、サウジアラビアがイエメン内戦に介入したのは、ユーロファイター輸入後のことでした。このように、日本が開発・生産に加わる次期戦闘機が無辜の市民の命を奪うとともに、戦闘機をはじめとする殺傷武器の輸出競争を激化させて逆に地域の安定を脅かす可能性はまったく排除されていません。
政府が第三国への輸出について「市場が大きくなり効率化する」としていることも重大です。これは、販路拡大でコストを安くし、多売により儲けを増やすということに他ならず、軍需産業を稼がせるためなら命の犠牲もいたしかたないといっているに等しいことになります。次期戦闘機は日本側では三菱重工が開発・生産の中心をになうことになりますが、同社は自民党への大口献金企業であり、その会長はさらなる大軍拡のために防衛省が設置した「有識者会議」のメンバーでもあります。これを「死の商人国家」への堕落といわずに何というのでしょう。
――殺傷武器輸出の閣議決定を撤回させ、「武器輸出三原則」の立場に戻します