18、子どもの貧困
子どもの貧困の解決に力を合わせてとりくみます
2024年10月
貧困は、一人ひとりの子どもの成長の可能性を阻むだけでなく、貧困が次の世代に引き継がれる危険をつくりだしているという点でも、日本の未来にとって重大な問題です。
親などが貧困の状態にある家庭で育つ18歳未満の子の割合をしめす日本の子どもの貧困率は11.5%(2021年時点)です。なかでも深刻なのがひとり親世帯で、貧困率は44.5%(2021年)、ひとり親家庭の半数の子どもたちが貧困状態にあることを示しています。内閣府が2021年におこなった「子どもの貧困調査」は、世帯収入の水準や親の婚姻状況によって、子どもの学習・生活・心理など様々な面が影響を受けていること、収入のより低い世帯やひとり親世帯が親子ともに多くの困難に直面していることが明らかになりました。
ひとり親世帯は新型コロナウイルス感染症の影響、さらには近年の物価高騰によってさらに厳しい状況に直面させられています。
深刻な「貧困と格差の拡大」を生み出し、広げたのは、自己責任論をふりまき、働くルールを壊し、低賃金で働く非正規雇用の労働者を増やし、軍事費を増大させる一方で社会保障を削減してきた政府の施策にあります。日本の家族分野への社会支出は、対GDP(国内総生産)比で1.7%、イギリス2.4%、スウェーデン3.4%、フランス2.7%、ドイツ2.4%に比べて、極めて低い水準です(2019年データによる比較)。
憲法25条で、すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すること、国は社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上と増進に努めなければならないとうたっています。子どもの権利条約は、「子どもの最善の利益を主として考慮すること」(第3条)を基本とし、子どもの生存権・発達の権利を保障したうえで(第6条)、子どもの身体的・精神的・道徳的・社会的な発達のために相当な生活水準についての権利(第27条)を規定しています。
日本共産党は、憲法と国連子どもの権利条約にもとづき、子どもに健康で文化的な生活と明日への希望をもてる政治への転換をはかります。子育て世帯の困窮を解決し、くらしと育児を応援する総合的な対策をすすめます。
子どもの貧困を解決・改善するための経済的支援、社会的支援を強めます
国と自治体の責任で小中学校給食の実施・無償化、義務教育の完全無償化、児童手当の拡充をすすめます。お金の心配なく学べる環境をつくることは政治の責任です。「高校生等奨学給付金」(年額数万円~十数万円程度)の拡充、学費ゼロを目指し大学・短大・専門学校の学費の半額、入学金ゼロ、給付中心の奨学金へ抜本的拡充をすすめます。お金の心配なく誰もが学べる教育の実現は、「貧困の連鎖」を断ち切るためにも、政治の重要課題です。子どもの貧困の解決にむけ、経済的支援、社会的支援を強めます。
就学援助を拡充します
義務教育の子どもの給食費・学用品代・修学旅行費などを援助する就学援助制度は経済的な困難をかかえる子どもに義務教育を保障するための命綱です。就学援助利用者は約125.7万人、小中学生全体の約14%(7人に1人)が利用しています(22年度)。ところが、「子どもの貧困」が深刻な問題になっているときに、自公政権が制度への国庫負担を廃止し、各地で就学援助の縮小を引きおこしました。
国庫負担制度をもとに戻し、対象を生活保護基準×1.5倍まで広げ、支給額も増額するとともに、利用しやすい制度にします。
生活保護を拡充します
2018年に削減された、母子加算、児童養育加算、学習支援費を復活・拡充させます。
児童扶養手当を拡充し、ひとり親家庭への支援を強めます
ひとり親世帯は134万世帯にのぼっています。暮らしについて「苦しい」「大変苦しい」とこたえた母子世帯は75.2%(国民生活基礎調査2022年)、物価高が押し寄せ、さらに暮らしを圧迫する事態が起きており、困窮世帯への支援の拡充が急がれます。児童扶養手当の所得制限を緩和し第1子から拡充します。第2子、第3子以降への加算額についても大幅に引き上げが必要です。年6回の支払い回数を毎月支給へさらに改善をすすめます。現行18歳までの支給を20歳未満にします。
ヤングケアラーの支援を強めます
大人に代わり家族の世話や介護を担う子どもたち(=ヤングケアラー)は、年齢や成長の度合い以上に重い責任を負わされ、生活や学業、進学にも大きな影響を与え、ひとり親家庭では経済的な苦しさも重なります。国による支援事業が進みだしことは前進で、子どもの状況を的確につかめるよう、相談・支援体制の強化が必要です。家族のケアを家庭内の責任・自己責任として子どもを追い詰める政治を改め、医療・介護・福祉行政を拡充し、子どもたちによるケアを軽減できる支援を強めます。
離婚後の養育費問題などの解決をはかります
離婚後の子の養育費問題の解決はひとり親家庭の子の暮らしを改善するうえでも重要です。日本では、養育費の取決めをしている母子世帯は約46%、取決めどおりに支払われているのは28%しかありません。スウェーデン、ドイツ、フランスなどで行われている国による養育費の立替え払い制度、養育費取り立て援助制度などの確立をすすめます。
離婚後共同親権になることで別居親の収入が合算され、高校無償化などの制度の対象から外される可能性があることが、2024年通常国会の審議を通じて明らかになりました。それ以外のさまざまな支援制度、税制上の控除制度などでひとり親世帯の福祉が後退することがないよう求めます。
子育て世代向けの公共住宅の建設など子育て世代の住宅支援を強めます
低額家賃で入れる公営住宅は、管理する地方自治体が貸与年数を迎えた住宅を建て替えないため減り続けています。子育て世代向けの公共住宅の建設や「借り上げ」公営住宅制度、家賃補助制度、生活資金貸与制度などの支援を特別に強め、子育て世代を支援します。
貧困問題の根本解決のためにも、安定した雇用と賃金を保障する労働のルールを確立します
日本社会に貧困が広がった大きな要因の一つは、低賃金で不安定な非正規雇用が拡大していることです。労働者派遣法の改悪など労働法制の規制緩和が拍車をかけ、子育て世代の生活に深刻な影響を与えています。異常な長時間労働は、子育てを困難にし、子どもが安心して暮らすことができる権利を奪っています。ひとり親家庭の子どもの貧困がとくに深刻なのは、「正社員なら長時間労働は当たり前」とする働かせ方が横行し、子どもを育てるためには低賃金労働しかない、という状況が広がっていることにあります。政府が児童扶養手当などの経済的支援を削減し、一方でますます低賃金で働かせ続ける社会をつくってきたことが、貧困を拡大し、深刻化させたことは明らかです。
子どもの貧困問題の解決のためにも、安定した雇用と賃金が保障される労働のルールが必要です。
長時間労働を是正し、子どもたちが安心して過ごせる社会をつくります
子どもを持つ労働者が、仕事と子育てを両立でき、子どもと向き合う時間をもてる働き方のルールをつくることは、子どもたちが安心して、生き、成長できる何よりの保障です。
日本共産党は賃上げと一体に1日7時間、週35時間労働をすすめる「自由時間拡大推進法」を提案しています。
➡賃上げと一体に、労働時間の短縮を 働く人の自由な時間を拡大するために力を合わせましょう(2024年9月20日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2024/09/post-987.html)
男女を問わず、単身赴任や長時間通勤を伴う転勤を原則禁止し、看護休暇や育児介護休業制度を拡充します。残業は本人同意を原則とします。
非正規雇用の労働条件改善と均等待遇を進め、非正規から正社員への流れをつくります
労働法制の規制緩和によって、女性の非正規雇用化が進みました。しかも今は家計補助ではなく、家計の主たる担い手となる非正規雇用の女性が増えているのが特徴です。非正規で働く女性のうち世帯主、単身者は約2割、288万人になり、とくにシングルマザーの非正規比率は42%です。これがひとり親家庭で明日の食事にも困窮する事態をつくりだす原因になっています。日本共産党は、不当な雇い止め、解雇をなくし、非正規ワーカーの雇用の安定をはかること、非正規ワーカーへの差別・格差をなくすことなどを内容とする「非正規ワーカー待遇改善法」を提案しています。
➡「非正規ワーカー待遇改善法」の提案 ――パート、派遣、契約社員、非正規公務員、ギグワーカーの皆さんへ 明日に希望が持てる、人間らしい労働条件とジェンダー平等の働き方の実現へ(2023年10月18日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2023/10/post-968.html)
非正規への不当な差別・格差をなくすことは、希望する非正規ワーカーの正社員化をすすめる力にもなります。労働者派遣法を抜本改正し、派遣は一時的・臨時的なものに限定し、常用雇用の代替を防止します。
社会の連帯と共同のとりくみを支援します
子どもたちに食事を無料・低額で提供する子ども食堂や、生活保護世帯の子どもたちの学習を支援する無料塾の取り組み、食料支援やフードバンクの取り組みが広がっています。しかし、物価高騰の中、運営にも大変な苦労があり寄付を募りながら必死にがんばっています。
――フードバンク、子ども食堂など民間の食料支援の取り組みに、助成や場所の提供など公的な支援を拡充します。
――若年女性への支援を強化します。居場所がなく街をさまよう少女たちを性的搾取から守ろうと奮闘している民間の被害者支援団体、女性自立支援施設(旧・婦人保護施設)、児童相談所や一時保護施設などの公的支援への予算を抜本的に拡充します。