88、被爆者
日本被団協がノーベル平和賞を受賞
原爆被害にたいする国家補償を求め、被爆者の援護施策の抜本的改善をすすめます。
2024年10月
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、今年のノーベル平和賞を受賞しました。
日本共産党の田村智子委員長は「被爆の実相、核兵器の非人道性を語り続け、核兵器全面禁止を求める国際的な大きなうねりを生み出してきた被爆者のみなさんに心からの敬意を表します。」との談話を発表しました。➡https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-10-12/2024101201_02_0.html(2024年10月11日)
広島と長崎の被爆者のみなさんは、原爆投下による筆舌に尽くしがたい被害とともに、その後も放射線の影響をはじめとする様々な病や健康の不安、さらには社会的な差別や経済的な困難などを強いられてきました。被爆者健康手帳を保持する被爆者(※)は昨年から約7千人減って10万6,825人となり、平均年齢も85.58歳と高齢化がすすんでいます(2024年3月、厚生労働省)。しかし、国は原爆被害を放射線による影響に限定し、援護対象の地理的な範囲も狭く線引きするなど、原爆被害を過小評価する姿勢をとってきました。
日本共産党は政府にたいし、被爆者が求める国家補償と被爆者施策の抜本的改善、に一刻も早く踏み切ることを求めます。
※被爆時に一定の範囲の地域にいた者、原爆投下2週間以内に入市した者、被爆者救護などをおこなった者、またそれらの胎児。手帳交付により、医療費が無料となり健康診断などがうけられる。しかし、実際に原爆の被害を被った人々は、これよりも広範囲に存在する。
原爆症認定制度の抜本的改善を
被爆者の長年にわたる運動や原爆症認定集団訴訟(2003~2009年)などによって、2009年8月、麻生太郎総理大臣(当時)は「今後訴訟の場で争うことのないよう、定期協議会の場を通じて解決を図る」との「確認書」を取り交わしました。
現在、被爆者が疾病にかかった場合には、健康管理手当(毎月36,900円)が支給されます。それが原子爆弾の放射線に起因する原爆症と認定されれば、医療特別手当(毎月150,020円)が支給されます。しかし、原爆被害を狭める政府厚労省は、原爆症認定を少数に限定してきました。認定された被爆者は2024年4月末現在、5,165人にとどまっています(厚生労働省)。被爆者全体のわずか4.8%にすぎません。これは政府が、内部被ばくの影響を軽視するなど、認定の幅を意図的に狭くしているからです。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は、狭い「認定基準」による「足きり」をやめ、被爆の実態にふさわしく、全ての被爆者に一定の手当てを支給したうえで、障害の度合いに応じて加算する、という合理的な提言を出しています。認定制度を直ちに抜本的に改善すべきです。
日本共産党は、被爆者の要求を支持し、原爆症認定制度を、現行法の改正を含め、被爆者の実情・要求にそったものとするために尽力します。
広島への原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」による健康被害をめぐる訴訟では、広島高裁で国側敗訴の判決が確定しています(2021年7月29日)。判決は、被害を矮小化する国の姿勢を断罪し、被爆者を幅広く救済することを求めました。しかし、政府・厚労省は、長崎では広島判決の精神に背をむけ、新たに一部の「黒い雨」地域で被爆者を認めた長崎地裁の判決にたいし、控訴しました。政府は広島高裁の判決に従って、一刻も早く全ての被爆者の救済を進めることを要求します。
被爆二世の健康不安などにたいして無料健康診断などの対策を直ちに実現することを要求します。また海外に住む被爆者が日本に住む被爆者と同等の援護措置を受けられること、被爆実態に見合った被爆者手帳交付条件の見直し(被爆地域の拡大)を求めます。
ビキニ水爆実験被災者への支援と賠償を
1954年にアメリカがマーシャル諸島ビキニ環礁でおこなった水爆実験で、1,000隻にものぼる日本のマグロ漁船の船員が被爆しました。第五福竜丸の船員が急死したことは大きな社会問題となり、水爆禁止を求める署名が当時の有権者の半数近く3,500万に達しました。これを背景に、翌1955年には第一回原水爆禁止世界大会が開催されました。
反核世論の広がりを恐れた日米政府は、被爆の全容を明らかにしない「政治決着」をはかりました。米国の「好意」によるわずかな見舞金で、損害賠償責任を免除し、被爆調査を打ち切ったのです。被災者はなんら救済もなく放置されました。
被災漁民の苦難、人権侵害、さらにその実態を隠蔽、放置してきた政府の責任は重大です。日本共産党は、政府が被災の全容を明らかにするとともに、高齢化がすすむ被災者に救済措置をとることを要求します。
原爆被害への国家補償を
広島と長崎への原爆投下は、核兵器が無差別殺戮の非人道的兵器であり、その使用は国際人道法をはじめとする国際法違反であることを示しています。
本来なら、この不法行為にたいする賠償は、核兵器を使用したアメリカが行うべきですが、日本政府はサンフランシスコ講和条約によって、賠償請求権を放棄しました。したがって、日本政府が補償を行わなければなりません。国家補償とは、被爆者と死没者への補償とともに、原爆投下を不法行為と認め、このような惨禍を繰り返させないとの、国の決意と反省がこめられたものです。日本被団協は一貫して、この国家補償を求めてきました。
しかし、政府は、戦争の犠牲はすべての国民が等しく甘受しなければならないという立場(「戦争被害受忍論」)にたって、国がおこした戦争による被害への責任を認めない姿勢をとってきました。被爆者をはじめとする粘り強い運動は、援護施策を拡充させてきましたが、原爆症認定を却下された被爆者や「黒い雨」訴訟のように、原爆被害にあいながら国の援護施策から排除された被爆者が多くいます。被爆者が訴訟をおこさなければならない状況がつづいている根本には、政府のこの姿勢があります。
国家補償を拒否する政府の姿勢を世論と運動、そして政治の力で変えることが求められています。日本共産党は被爆者の運動と連帯し、国家補償の実現をめざして力を尽くします。