87、核兵器
核使用の危険が高まるもとで、「人類の死活にかかわる核戦争の防止と核兵器の廃絶」(綱領)のために力を尽くします
2024年10月
日本被団協がノーベル平和賞を受賞
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、今年のノーベル平和賞を受賞しました。
「被爆の実相、核兵器の非人道性を語り続け、核兵器全面禁止を求める国際的な大きなうねりを生み出してきた被爆者のみなさんに心からの敬意を表します。核脅威が強まるもとでの受賞は、とりわけ大きな意味があります。今こそ、核兵器禁止条約を日本政府も批准し、核兵器廃絶を世界に働きかけるべきです。」(日本共産党 田村智子委員長)
「瀬戸際」といわれる危機的情勢
世界ではいま、核兵器が使用される現実の危険が高まっています。ウクライナを侵略するロシアが公然と核兵器による脅迫を繰り返し、ガザ攻撃を続けるイスラエルも核兵器をちらつかせています。他方、アメリカが核先制使用の政策をとり、同盟国と一体に「核抑止」の拡大・強化を進めていることも重大です。東アジアでも核保有国・中国やミサイル実験を繰り返す北朝鮮を巻き込んだ緊張と対立が続いています。まさに今、私たちは「瀬戸際」ともいわれる状況にあります。いまこそ「核兵器のない世界」へと前進することが求められています。
ヒロシマ・ナガサキが示す「悪魔の兵器」
核兵器によって平和は実現しません。それどころか核兵器は、一発でも使われれば、ヒロシマ・ナガサキのような破滅的な非人道的結末をもたらします。いかなる理由であれ、いかなる地においても、再び使われてはならない「悪魔の兵器」です。
核兵器は、人類の生存にたいする脅威ともなっています。近年の研究では、100発の核兵器が都市で爆発すれば、大気圏に舞い上がった粉塵によって気候変動が起き、農作物の不作などで、10年間で20億人が餓死するといわれています(核戦争防止国際医師会議「核の飢饉:20億人が危機に?」2013年)。それだけに、わが党は、「核戦争の防止と核兵器の廃絶」を気候変動とともに「人類の死活にかかわる」課題と位置づけて、とりくんでいます。➡党綱領(https://www.jcp.or.jp/web_jcp/html/Koryo/)
核兵器禁止条約を力に廃絶への展望をひらく
この危機的な状況を打開するうえで、史上初めて核兵器を禁止し、その廃絶をめざした核兵器禁止条約(2021年1月22日発効。以下、禁止条約)が「希望の光」となっています。
発揮される禁止条約の力
核大国の妨害にもかかわらず、禁止条約の署名国は93、批准国は70へと広がっています。署名国は国連加盟国(193カ国)の過半数に達しようとしており、世界の大きな流れとなっています。
禁止条約は、次のような点で力と実効性を発揮しています。
(1)核兵器使用が取りざたされる危険な状況にあっても、その使用を許さぬ壁となっている。
(2)いくつもの金融機関が核兵器関連産業からの投資引き上げを決定しているように、倫理的な力を発揮している。
(3)核使用と核実験の被害者への支援、汚染された地域の環境修復など、条約の6条と7条(※)に基づく具体的な活動がはじまっている。
※禁止条約は「核兵器の使用または実験によって影響を受けた」犠牲者にたいして「医療、リハビリテーションおよび心理的な支援を含め、年齢および性別に配慮した支援を差別なく十分に提供し、かつ、彼らの社会的かつ経済的包摂を提供する」と定めている。
(4)ジェンダー視点を盛り込んだはじめての核兵器に関する条約として、国連の平和軍縮活動全体に影響を与えている。
禁止条約の第3回締約国会議(2025年3月)はこれらの活動を前進させる機会となります。
禁止条約の成立に尽力した日本共産党
日本共産党は禁止条約の成立にも、また、その後の運用においても力を尽くしてきました。
禁止条約を交渉した国連会議(2017年)にはわが党も、志位和夫委員長(当時)を団長に参加し、志位氏が会議で演説しました。第1回締約国会議(2022年)、第2回会議(2023年)にも党代表が参加して、積極的な活動をくりひろげました。これらの会議に一貫して参加してきた日本の政党は、日本共産党だけです。日本政府が一貫して、これらの会議をボイコットしてきたもとで、わが党の参加は注目を集め、重要な意義をもつものとなりました。
諸国政府と市民社会の共同を
「核兵器のない世界」へと前進する根本的な力は、世界の世論と運動です。
禁止条約の成立と発効に、被爆者を先頭とする反核運動が大きな役割をはたしました。その教訓からも、核兵器廃絶をめざす諸国政府と市民社会(市民の運動、非政府組織、学者、議員など)の共同を発展させることが重要です。
禁止条約を力に、世論と運動をさらに発展させ、核兵器に固執する勢力を追いつめていくことで、核兵器廃絶への展望をきりひらくことが出来ます。日本共産党も、市民社会の一翼をになって力を尽していきます。
日本は一刻も早く禁止条約に参加すべき
日本政府が今、しなければならないことは、「核抑止」論から抜け出し、禁止条約に参加することです。
それは、被爆者をはじめとする多数の国民の願いです。全国の約4割にあたる687自治体が、政府に禁止条約への参加を求める意見書を採択しています(9月20日現在、原水爆禁止日本協議会調べ)。ところが自公政権は、この国民的世論に背をむけつづけています。
核抑止論からの脱却を
自公政権が禁止条約の参加に反対する最大の理由は、日本がアメリカの「核抑止力」=「核の傘」に依存しているからです(※)。
※「核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」(「国家防衛戦略」2022年12月)
日米両政府は、今年7月28日、「拡大抑止」に関する初の閣僚会合を開きました。「拡大抑止」とは、米国の核兵器使用の脅迫によって、相手国を抑え込むということです。米国がどのような場合に核で報復するか、日本への核持ち込みをどうするのかなどの「戦略」を具体化していくことになる危険があります。
このような合意を、被爆79周年を前に行ったことに、広島の中国新聞は「被爆地の思い踏みにじった」(社説)と強く批判しました。被爆地を愚弄(ぐろう)する行動に、日本共産党は強く抗議します。
「核抑止」論とは、いざという時には核兵器を使用することを前提にした議論です。いざという時には広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすこともためらわないという議論です。
日本政府は「核兵器の非人道性」を口にしますが、その一方で「核抑止力」を強化するというのは、根本的に矛盾しています。ただちに「核抑止」論、アメリカの「核の傘」から脱却すべきです。
禁止条約参加の決断を
日本政府は、「法的な理由で(禁止条約に)入れないということではありません」「(不参加は)我が国の方針です」(茂木敏充外務大臣、衆院外務委員会、2020年3月6日)と述べています。つまり、参加不参加は、政治判断だというのが政府見解です。核兵器の使用や威嚇を「援助、奨励、勧誘」しないなどの禁止条約の義務を履行しさえすれば、条約に参加することは可能です。「核抑止力」論から抜け出しさえすれば、すぐにでも決断できることです。
唯一の戦争被爆国である日本が参加すれば、禁止条約の政治的、道義的力はいっそう強まり、核兵器をめぐる危機的な状況を打破する力になるでしょう。そして、世界の世論と運動を大きく励まし、「核兵器のない世界」へと前進する力となるはずです。
来年は広島・長崎の被爆80周年です。日本共産党は政府にたいし、「核抑止」論の呪縛から抜け出して、禁止条約への参加を決断するよう強く求めます。
日米核密約の破棄を
「非核の日本」を実現するうえで、「日米核密約」を破棄し、非核三原則を厳守・法制化することが重要です。
日米間には、日本に寄港・飛来するアメリカの艦船・航空機の核兵器搭載については、「条約上の権利」として認めた秘密があります。日本共産党の不破哲三委員長(当時)は2000年の国会審議で、1960年の日米安保改定時に結ばれた合意(「討論記録」)を示して、この存在を暴露しました。
返還後の沖縄にも、「重大な緊急事態」には核兵器の再持ち込みの権利をアメリカに認めた密約も存在します(「日米共同声明に関する合意議事録」1969年)。この「権利」がいまも有効であることを示す米国防総省の文書が2015年に明らかになりました。この密約は、核兵器を再び持ち込む基地として、嘉手納、那覇などとともに、辺野古をあげ、「いつでも使用できる状態に維持」するとしています。
日本政府は、この「密約」は「有効ではない」などとして、破棄していません(外務省「有識者委員会」報告書2010年)。アメリカが必要と判断すれば、核兵器が持ち込まれ、核戦争の足場とされる危険があります。
日本は「核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず」の「非核三原則」を国是としてきました。日本共産党は、「日米核密約」を廃棄して、「非核三原則」を厳守・法制化するなど、名実ともに「非核の日本」に進む実効ある措置をとることを強く求めます。