99、万博、カジノ――ただちに中止せよ
万博開催、カジノ計画はただちに中止を。 ギャンブル依存症(賭博中毒)問題
2024年10月
来場客の安全と健康の脅威に――夢洲での万博開催とカジノ誘致
大阪・関西万博は2025年4月の開業まで半年余となりました。さらに2030年のIR=カジノ誘致まで5年余となっています。
この間、万博の開催が迫るほどに、会場となった夢洲の危険と矛盾が次つぎと明らかになっています。来場客の安全と健康、生命のためにも万博開催はすぐにも中止すべきです。カジノ施設は、万博以上に半恒久的施設となるために、その危険性がたえず継続することは避けられません。万博の中止だけでなく、カジノの誘致もただちにストップさせるべきです。
万博会場としての問題点
夢洲を万博会場とすることは、箇条書き的にまとめただけでも、以下のような問題点があります。
1、地中からのメタンガスが発生し続けている
2024年3月には夢洲1区の会場予定地(東トイレの地下ピット)で爆発事故が発生。労働者を退避させなければならない濃度のメタンガスが3カ月で76回も検知。うち17回は着火によって爆発する濃度に達していました。1区にある83本のガス抜き管からは、1日約1.5~2㌧のメタンが出ています。
2、想定を超える災害被災の恐れ
人工島である夢洲でもっとも心配されるのが災害による被害です。災害時の危険について専門家は、護岸の倒壊や沈下、津波の遡上、建設残土の液状化などの危険を指摘しています。
夢洲への陸上ルートは、橋とトンネルの2カ所しかありません。地震などで通行不能となれば、ピーク時には1日20万人を超える来場者が孤立する危険もあります。
落雷の危険もあります。万博協会は大屋根リングの上や会場内の樹木のそばに人がいる場合、雷が飛び移る危険(側撃雷)があるとしています。
風水害も、2018年の台風21号並みとなれば、樹木、照明・スピーカー柱などが横転し、トラックの横転、建物の外装材が飛散する危険もあります。
3、学校行事としての子ども動員の危険
日本政府や大阪府・市は、万博に学校行事として子どもたちを動員する計画です。しかし、この動員計画については、大阪教職員組合・大阪府立高等学校教職員組合・大阪府立障害児学校教職員組合が、大阪府知事と大阪府教育長にたいし中止を求めています(6月5日)。その理由は、〝子どもたちの安全が保証されていない〟というもの。その主な内容(要旨)は、次のとおりです。
「本来、学校の校外学習は安全に行われるのが大前提であり、そのため、トイレの場所や交通手段、時間設定、見学などのルート、避難ルート、病院との連携など様々なことを確認して計画します。しかし、万博会場予定地の夢洲は、土壌汚染、貧弱な交通体制であり、避難計画が作成されておらず、爆発事故も起きています。下見の時期も、どのパビリオンに行けるかも未定、緊急時の医療体制などの不安もあります」
〝万博成功〟を演出するために、子どもたちを事実上の〝人質〟に取るようなやり方はすべきでありません。
4、軟弱地盤でパビリオン建設がすすまず
「万博の華」といわれるのが「タイプA」のパビリオン。これは海外の参加国が自前で建設するものです。しかし、当初60カ国の出展予定は約2割減の47カ国に。資材高騰や人手不足などにより建設業者との契約が難航し、さらに軟弱地盤という夢洲特有の影響もあって、いまだに着工できないパビリオンも残されています。
上記のほかにも、会場建設費が当初の2倍近くに膨れ上がり、今後、前売り券の販売次第では新たな負担が住民・国民に転嫁される危険性があります。
ただでさえ物価高と低賃金にあえいでいるもとで、会場の危険性が指摘されている万博に巨額の税金を投入することはゆるされません。税金の投入というなら、あいつぐ深刻な自然災害に見舞われている能登半島の復旧・復興と被災者の生活支援、生業の確保にこそ力をそそぐべきです。
カジノ問題――人の不幸のうえに「税収増」や「経済振興」は許されない
夢洲の問題は、万博だけではなくカジノにも密接にかかわる問題ですが、とくにカジノは〝博奕(ばくち)〟で得た利益を「税収増」や「経済振興」に振り向けるところに最大の特徴があります。これは、人が不幸になればなるほど、地域の利益につながるというものです。
しかも、カジノが当初の計画通りにすすむという保証はありません。
過大な訪問客の見通し
大阪の誘致計画では、カジノを含むIR(統合型リゾート)施設への年間の来場客数を2,000万人と見込んでいます。そのうちの6割、1,200万人がカジノ以外の国際会議場やイベントに足を運ぶと想定しています。
しかも、カジノ業者は、このほとんどが日本人客で占められることを明らかにしています。大阪カジノに進出する企業のパートナーであるオリックスは、「客は全員日本人、日本人だけでどれだけ回るか、その前提でプランニングを作っている」(2021年11月4日、決算説明会)とのべています。
カジノ客を除いての来客数1,200万人という数字は、日本国内のこれまでのイベントと比べてもけた外れに大きな数字です。たとえば、2022年6月6日に新国立競技場で開かれたサッカーの試合は、日本対ブラジルというまれにみるビッグゲームだったこともあり、観客数は約7万人となりました。IRへの誘致客の予想1,200万人という数字は、こういうゲームを1年の約半分――2日に一度の170日間開催して初めて達成できる数字です。
また、日本のプロ野球の観客動員数が過去最高となったのは、コロナ禍前の2019年ですが、1試合平均では約3万人でした。仮に2019年と同じ規模の観客で1年365日毎日試合をしたとしても、合計でようやく1,095万人となるだけです。
こうした数字と比較しても、1,200万人の来客数がいかに過大で非現実的な見積もりかは明らかです。
カジノのために格安賃料で用地を引き渡しすることは許されない
大阪府と市は10月1日、カジノを運営するIR事業者(大阪IR株式会社)に、貸し出す土地を引き渡したことを発表しました。市は月額約2億1,000万円で市用地を貸し出す契約です。(1㎡当たり月額428円)
この格安賃料での契約にたいし、本来、月額4億7,060万円と見積もられる本来の賃料が半額以下とされたことで、約35年間で約1,000億円の損害になるとして、市民約500人が松井一郎前市長やIR事業者らに賠償を求める監査請求をおこしています。
また、大阪市は本来負担する必要のない液状化対策などの土地対策費として、最大788億円を負担しようとしています。
カジノ業者のために、府民・市民の血税をつぎ込むようなことは、ただちにやめるべきです。
24時間営業する日本最大の〝パチンコ店〟の登場
大阪へのカジノ進出を申請したMGM・オリックス企業連合が2021年12月23日に提出した計画によれば、「電子ゲーム約6,400台をゲーミング区域内に適切に設置する」としています。ここでいう電子ゲームとは、大規模集積回路(LSI)によって制御されるソフトウェア内蔵型のゲーム機のこと。子どもたちがゲーム場で遊ぶ射撃(シューティング)ゲームや、レーシングゲームなども電子ゲームですが、カジノのゲーム機は、〝多額の掛金を伴うゲーム〟、すなわちパチンコ、スロットマシンなどを指します。
インターネットで検索すると、現在、日本最大のパチンコ店はさいたま市にあり、ゲーム機は3,030台(パチンコ1,584台、スロット1,446台)となっています。一方、大阪で最大のパチンコ店は約1,000台とされます。
しかも、これらのパチンコ店の営業時間は、県によって異なりますが、ほとんどの場合午前9時から、午後11時までです(一部の県は24時まで)。
ところが、大阪・夢洲のカジノでは、日本最大のパチンコ店の2倍以上のゲーム機をもち、営業時間も終日の24時間営業です。
これらの数字を比較しただけでも、どれだけの〝お化けパチンコ場〟になるかは明白です。
カジノはギャンブル依存症をふやすだけ
パチンコ、公営ギャンブルも賭博性をめぐって問題の解決を
カジノ導入にともなうギャンブル依存症の問題は看過できません。
厚生労働省は2024年8月、「令和5年度 依存症に関する調査研究事業 ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」(速報値)を公表しました。これは18歳以上75歳未満の、日本国籍を有する人を対象とした調査です。(調査対象18,000人、回答者9,291人)
それによると、「過去1年におけるギャンブル等依存が疑われる者」は、全体で1.7%(男性2.8%、女性0.5%)でした。これを国勢調査人口と推計すると、日本全国で146万人(男性122万人、女性21万人)がギャンブル依存と考えられます。
しかも、この調査で「最もお金を使ったギャンブルの種類」としたのが、1位パチンコ(男女合計46.5%)、2位パチスロ(同23.3%)、3位競馬(9.3%)、4位競艇(4.7%)、5位競輪(3.1%)となっています。(証券の信用取引、先物取引市場への投資などを除く)
かねてから日本のギャンブル依存症の比率は、他国と比較しても異常に高いことが指摘されてきました。この最大の要因となっているのが、世界に例をみない遊技であるパチンコです(スロットマシンを含む)。前述の厚労省の調査結果もそれを示しています。
上記で指摘したように大阪のカジノの特徴は、サイコロやカードなどの本来のカジノ賭博だけでなく、日本最大級のパチンコ・パチスロの遊技台が設置されることです。このことは、カジノによるギャンブル依存症だけでなく、従来、日本で大問題となってきたパチンコ・パチスロによる依存症患者を激増させる結果になることは、火を見るよりも明らかです。
カジノの開業の前に、カジノをストップさせることが、市民・住民の生活と健康を守るだけでなく、地域社会の健全な発展にも重要となっています。