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日本共産党

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赤旗

➡各分野の目次

57 歴史認識・「徴用工」・「慰安婦」・「靖国」

侵略戦争と植民地支配の反省の上に、アジア各国との友好・信頼関係の構築を

2019年6月

 日本が過去におこした侵略戦争と植民地支配の歴史にどう向き合うかは、国際社会とりわけアジア諸国との関係で、たえず日本が問われ続ける課題です。安倍政権は過去の侵略戦争と植民地支配に対する責任を明確にせず、逆に正当化する立場に固執しており、その誤った歴史認識が、周辺国や国際社会との関係で大きな矛盾や問題を生み出しています。

韓国の「徴用工」訴訟に、日本政府・企業は誠実に向きあうべき

 第2次世界大戦中、日本の植民地支配のもとにあった朝鮮半島から、多くの朝鮮人が日本本土に連れてこられ、日本企業の工場や炭鉱などで強制的に働かされました。いわゆる「徴用工」と呼ばれた人たちです。虐待や食事を与えられないなど過酷な環境で重労働を強いられ、死傷者も少なくありませんでした。賃金が支払われなかった例も多くあります。韓国政府が認定している被害者の数だけでも22万人に上ります。

 韓国大法院(最高裁判所)は2018年秋、元徴用工の訴えを受け、「日本の植民地支配と直結した反人道的不法行為」との判断を示し、企業の賠償責任を認めました。

 これについて日本政府は、1965年に締結された「日韓請求権協定」で、両国間の問題は「完全かつ最終的に解決している」と判決を拒否し、韓国を非難する態度をとっています。

 日本政府の態度には重大な問題があります。

 日本政府がいうように、仮に「日韓請求権協定」によって、日韓両国間での請求権の問題が「解決済み」だとしても、被害にあった個々の人たちの請求権までを消滅させることできません。そのことは、日本政府が国会答弁などで公式に繰り返し表明してきたことです。1991年、当時の柳井俊二外務省条約局長は、「日韓請求権協定」で、両国間の請求権の問題が「完全かつ最終的に解決」されたとのべていることの意味を問われ、「これは日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということ」であり、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と答弁しています。政府だけではありません。日本の最高裁判所も同様の判断を示しています。中国の強制連行による被害者が日本の西松建設を相手に起こした裁判(2007年)で、日本と中国は共同声明を結んだ際に、「(個人の)裁判上訴求する権能を失った」としながらも、「(個人それぞれの人の)請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではない」と判断をしめし、さらに、「任意の自発的な対応をすることは妨げられない」と述べて、西松建設が被害者に謝罪し、和解金を支払う和解につながりました。

 日本政府、日本の最高裁、韓国政府、韓国の大法院の4者が、いずれも、被害者個人の請求権の存在は認めているのです。日本共産党は、この一致点を大切な、解決への糸口になると考えています。国家間の請求権と個人の請求権をきちんと分けた冷静な議論をすること、それをふまえて冷静に、解決の方法を探るべきです。

 解決は、日本政府だけでできるものではなく、日韓両国の双方が、被害者の尊厳と名誉を回復するという立場で冷静で真剣な話し合いを行っていく努力が求められます。

 国際労働機関(ILO)も2009年、日本政府に「年老いた強制労働者が訴えている請求に応える措置をとることを望む」との勧告を発表しています。

植民地支配の不法性を認めず、謝罪も反省もなく

 もう一つ見ておくべきは、「日韓請求権協定」の交渉過程でも、日本政府は植民地支配の不法性を認めず、謝罪もしていない事実です。韓国大法院の判決は、こうしたもとで結ばれた「請求権協定」が、強制動員された被害者の慰謝料を請求する権利までは否定しているとは見られないとしています。韓国最高裁の判決は、原告の求めているのは、未払い賃金や補償金ではなく、朝鮮半島に対する日本の不法な植民地支配と侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為――非人道的労働に対する慰謝料を請求したものだとしています。

 「徴用工」の問題は、劣悪な環境、重労働、虐待などによって少なくない人々の命を奪ったという、侵略戦争・植民地支配と結びついた重大な人権問題であり、日本政府や該当企業がこれらの被害者に対して明確な謝罪や反省を表明してこなかったことも事実です。日本政府と該当企業は、この立場にたって、被害者の名誉と尊厳を回復し、公正な解決をはかるために努力をつくすべきだと考えます。

日本軍「慰安婦」問題と「河野談話」

 日本軍「慰安婦」問題は、日本が起こした侵略戦争のさなか植民地にしていた台湾、朝鮮、軍事侵略していた中国などで女性たちを強制的に集め、性行為を強要した非人道的行為です。当時の国際法規から見ても違法行為です。

 この問題について、2015年12月の日韓外相会談で合意がかわされました。しかしこの合意には、元「慰安婦」はもとより、韓国社会全体からの批判が続いています。すべての「慰安婦」被害者が人間としての尊厳を回復してこそ真の解決です。そのために日本政府は韓国政府と協力して誠実に力を尽くすべきです。「慰安婦」問題で「軍の関与と強制」を認めた「河野談話」(1993年)は、「歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さない」と明記しており、子どもたちに歴史の事実を語り継いでいくことは、わが国の責務です。

 日本共産党はこの間、見解「歴史の偽造は許されない」の発表(2014年3月)など、日本軍「慰安婦」問題での逆流に徹底的な批判をくわえ、歴史の真実を明らかにしてきましたが、こうした努力を引き続き行っていきます。女性の人間としての尊厳を踏みにじった歴史の事実に対して、「性奴隷制」の加害の事実を認め、被害者への謝罪と賠償の責任を果たすべきです。

靖国神社参拝問題

 安倍首相は2019年4月、「内閣総理大臣」の肩書で靖国神社に真榊を奉納しました。靖国神社は、「日本の戦争は正しかった」という侵略戦争を正当化する歴史観、戦争観をもち、戦争行為をたたえることをその「使命」としている神社です。首相がどのような「信念」をもっていようとも、日本政府の責任者である人物が、そうした神社に参拝し、奉納することは、靖国神社の戦争観に、日本政府の公認のお墨付きをあたえることであり、「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起こることのないように」という憲法前文の精神や政教分離などの憲法原則に照らしても決して許されないものです。

 安倍内閣の閣僚によって靖国神社参拝が繰り返され、首相自身も玉ぐし料・真榊の奉納を続けていることは、侵略戦争美化の立場に身を置く行動として、近隣諸国はもとより、アメリカや豪州など、国際社会からも厳しい批判もうけています。

侵略戦争に無反省のまま植民地支配を正当化した70年談話

 安倍首相は2015年8月、戦後70年にあたっての首相談話(「安倍談話」)を発表しました。同談話には、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫び」などの文言がちりばめられましたが、日本が「国策を誤り」「植民地支配と戦争」をおこなったという「村山談話」(1995年)に示された歴史認識の核心的内容はまったく語られませんでした。「反省」と「お詫び」も過去の歴代政権が表明したという事実に言及しただけで、首相自らの言葉としては語られないという欺瞞に満ちたものとなりました。また、暴力と強圧をもって朝鮮半島の植民地化をすすめた日露戦争を賛美したことは、乱暴きわまりない歴史の歪曲であり、植民地支配正当化論でした。

 この談話は、戦後50年にあたって「村山談話」が表明した立場を、事実上投げ捨てるものとなりました。「安倍談話」によって「村山談話」を“過去の文書”にしてしまい、日本政府の歴史認識を大きく後退・変質させることは許されません。日本共産党は、「村山談話」の核心的内容を、今後とも日本政府の歴史認識の基本にすえ、その精神にふさわしい行動をとることを強く求めます。

 戦後70年の首相談話が有害な内容となった根底には、安倍首相本人はもちろん、安倍政権の閣僚のほとんどが、侵略戦争を肯定・美化し、歴史を偽造する勢力によって構成され、支えられているという問題があります。「日本会議国会議員懇談会」「神道政治連盟国会議員懇談会」などに加盟歴のある「靖国」派で占められています。安倍政権に対し、侵略戦争の正当化を改め、国際社会が共有する歴史認識のもとに、アジアの平和と安定のために力を注ぐことを強く求めます。

 歴史逆行の問題では、小池百合子都知事が2017年9月におこなわれた関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典に、石原慎太郎氏を含む歴代都知事が毎年送ってきた追悼文を送らなかったことも重大です。1923年の関東大震災では、「朝鮮人が井戸に毒を流した」などの流言が広げられ、軍隊や警察が数千人といわれる罪のない朝鮮人を虐殺しました。小池知事の対応は歴史的事実の隠蔽に他ならず、大きな批判にさらされたのは当然です。

歴史問題にあたって日本の政治がとるべき基本姿勢

 日本共産党は、戦後70年の節目となった2015年、日本とアジア諸国との「和解と友好」に向かう年となることを強く願い、そのために、日本の政治がとるべき5つの基本姿勢を提唱しました。

 第一は、「村山談話」「河野談話」の核心的内容を継承し、談話の精神にふさわしい行動をとり、談話を否定する動きに対してきっぱりと反論する。

 第二は、日本軍「慰安婦」問題について、被害者への謝罪と賠償など、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出す。

 第三に、国政の場にある政治家が靖国神社を参拝することは、侵略戦争肯定の意思表示を意味するものであり、少なくとも首相や閣僚による靖国参拝はおこなわないことを日本の政治のルールとして確立する。

 第四は、民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、政治が確固たる立場に立つ。

 第五は、「村山談話」「河野談話」で政府が表明してきた過去の誤りへの反省の立場を、学校の教科書に誠実かつ真剣に反映させる努力をつくす。

 日本共産党は、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いた党として、歴史を偽造する逆流を大本から断ち切り、日本とアジア諸国との「和解と友好」を実現するために全力をつくします。

 

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