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日本共産党

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51 大学改革、科学・技術

大学の危機打開へ、「学問の自由」を尊重する政策に転換し、基礎研究を重視した科学・技術の振興をはかります

2019年6月

 自民・公明政権が十数年来推進してきた「大学の構造改革」路線によって、大学の教育・研究の現場に疲弊とゆがみがひろがり、とりわけ若手研究者の減少と非正規雇用の蔓延をうみだしました。大学教員のなかでは、“改革疲れ”や“無力感”とともに、「学問が存続できるのか」、「優秀な研究者は海外に出ていく」との強い危機感がひろがっています。

 安倍政権は、2013年6月に「10年間で世界大学ランキングトップ100に10校入れる」と打ちだし(「骨太方針2013」)、一連の「大学改革」を推進しましたが、日本の科学論文数や論文の国際シェア(質の高さを示す)は大きく減少しました。国際学術誌であるネイチャー(2017年3月)が「日本の科学研究が近年失速している」と指摘し、政府の科学技術白書でも2018年版、2019年版と連続で「研究力に関する国際的地位の低下の傾向」を認めました。安倍政権の「大学改革」の破たんは明らかです。

 ところが安倍政権は、「イノベーションを生み出すための大学改革」をいっそう強権的な方向で推進しようとしています。

 第一は、「戦略的な経営」を大学に求めるために、国立大学運営費交付金や私立大学経常費助成のような基盤的な経費を、国の評価で傾斜配分する競争的な資金へと根本的に変更することです。「改革しないなら基盤的経費を減らす」という脅しによる「兵糧攻め」です。

 第二は、大学の再編・統合をテコに、大学を「学問の府」から、戦略的な経営を優先する「企業的」組織へ変質させることです。

 第三に、「アベノミクス」や「戦争する国づくり」という国策研究への集中投資を官邸主導で推進していることです。

 こうした「大学改革」が推進されれば、「研究は民間資金で、教育は学費値上げで」という動きが本格化することは必至です。民間資金をとりにくい基礎科学の研究や地方の大学の存続は行き詰まり、学費値上げにふみだす大学が増えるなど学生へのしわ寄せも広がります。大学予算を増額し、「学問の自由」「大学の自治」を尊重する政策に転換することは急務です。

「学問の府」にふさわしい改革をすすめます

 大学は、「学術の中心」(学校教育法)であり、わが国の知的基盤として社会の知的・文化的な発展、国民生活の質の向上や地域経済などに大きな役割をはたしています。大学が担っている基礎研究は、自然や社会へのより深い理解をもたらし、学術の全体が発展する根幹となっています。とりわけ人文・社会科学系の学問には、現在の人間と社会のあり方を相対化し批判的に省察する独自の役割があり、学術の総合的な発展という観点から、人文・社会科学の振興を積極的にはかるべきです。

 欧米では、大学の多くが国公立で国や州が手厚い財政支出をしています。大学進学率も上昇し、大学が国民に開かれた教育機関として充実しています。わが国は高等教育への公費支出が先進国でも最低水準であり、高い学費負担のために大学進学率は5割にとどまっています。大都市圏以外の地域の進学率や、女性の進学率は、さらに低くなっています。しかし、NHKの「日本人の意識・2018」調査によれば、国民の86%がわが子に大学・短大以上の教育をうけさせたいと望んでいます。大学教育の充実は、国民の願いです。

 大学が、深刻な危機から抜けだし、社会の知的基盤としての役割を全面的に発揮することは、21世紀の社会発展にかかわる国民的な課題です。そのためには、経済効率優先の「構造改革」から抜け出し、国民の立場から「学問の府」にふさわしい改革に転換することが急務です。日本共産党は、その実現のために力をつくします。

大学の日常的運営に必要な経費(基盤的経費)を増額し、じっくりと教育・研究できる大学へ条件整備をはかります

国立大学の運営費交付金の傾斜配分や「類型化」を廃止し、教育・研究をささえる基盤的経費として十分に確保します――国立大学の運営に必要な経費をささえる運営費交付金は、法人化された2004年度に比べ、年額で1444億円も減額されています。これをただちに回復し、増額をはかります。「10%分」の「経営実績」に応じた傾斜配分や「類型化」は廃止します。各大学の標準的な経費をもとに積算し、教育・研究費や人件費などを十分に確保するしくみに変更します。地方大学や文科系、教員養成系大学など財政力の弱い大学に厚く配分するなど大学間格差を是正する調整機能を持ったしくみにします。国立大学法人の施設整備補助金を増やし、老朽施設を改修します。

私立大学への「公費負担」原則を確立し、「経常費の2分の1助成」を実現する――大学生の8割近くを擁する私立大学がはたす公共的役割にふさわしく、私学への国の支援を抜本的に強めます。国立との格差を是正するため、私立大学にも国公立大学と同様に公費を支出する「公費負担」の原則を確立します。格差是正の第一歩として、公費負担によって私大の授業料を半額化し、国公立大学との格差を縮めます。

 1975年の国会決議が求めた「私立大学の経常費の2分の1を国庫補助」をすみやかに実現します。「定員割れ」の大学に国庫助成を減額・不交付する措置は直ちに廃止します。中小私大、地方私大には増額配分し、定員確保の努力を支援する助成事業を私学の自主性を尊重しつつ抜本的に拡充するなど、私立大学の二極化の是正をめざします。「経営困難」法人への指導と称して私立大学の運営に国が不当に介入することに反対します。政府が決めた東京23区での大学の定員増を原則として認めない方針は、大学の発展をそこなうものであり、反対します。

公立大学への国の財政支援を強める――公立大学は、学術の進歩に貢献し、住民要求にこたえた高等教育を行い、地域の文化、経済の発展に寄与しています。地方交付税の大学経費を引き上げるとともに、公立大学に対する国庫補助制度を確立するなど、国の財政支援を強めます。

21世紀の日本を担う豊かな社会人へと成長できる大学教育に――変化する世界の中で、若い世代が新しい知識や技術、多様な価値観を身につけ、自らの将来を築いていくために、また、日本社会の発展にとっても、大学教育の充実はきわめて重要になっています。しかし、自民党政治のもとで、各大学では国の競争的資金を獲得できるような改革が優先され、良識豊かな社会人を育てる根幹となる教養教育が軽視されてきました。学生の8割近くを擁する私立大学などでは、マスプロ授業の蔓延など劣悪な教育体制が放置されています。大学教育を抜本的に充実させる必要があります。

①人間形成や学問の基礎をつちかう教養教育を再構築します。学力に応じたわかりやすく学びがいある授業づくりへ、大学の改善努力を励ます支援策を強めます。

②少人数教育の本格的な導入や勉学条件の充実のために、大学予算を増やして教員の増員をはかり、非常勤講師の劣悪な待遇を改善します。

③私立大学がはたしている公共的な役割をさらに高めるために、大学の設置基準の緩和を見直し、設置審査を厳正な基準で行うように改善します。

④政府が2020年度から実施する「大学入学共通テスト」で、民間の英語試験や記述式採点の民間委託については、評価の公正さや受験生の経済負担などの点から問題が指摘されており、関係者の合意をえずに拙速に実施することに反対します。

国が各大学の改革を誘導する資金を廃止し、独立した配分機関を確立する――「スーパーグローバル大学」支援や「指定国立大学」制度、「私立大学等改革総合支援事業」など、一部の大学・大学院に対して多額の資金を投入し、文科省の関与も強めるような予算配分のあり方を見直します。大学に対する競争的な資金については、文科省の裁量で配分する仕組みを廃止し、大学関係者、学術関係者を中心にした独立した機関を確立し、審査内容の公開をはかるとともに、公正な評価にもとづいて配分するようにします。

年俸制や任期制の導入に歯止めをかける――成果主義賃金、その典型である年俸制の導入は、いっそうの給与削減と過度な競争に大学教員を追い込むものであり、教育研究や支援業務の健全な発展を妨げます。国による誘導策をやめさせ、導入に歯止めをかけます。大学教員、研究員の任期制は任期制法の廃止を含めた見直しを行い、大学においては正規雇用を基本にすべきです。大学や研究機関が期限のある国の資金でプロジェクト研究を行う場合に、その資金で有期雇用される研究者や職員を期限終了後も雇用するための国の財政支援を実施します。

有期雇用の5年・10年経過後の無期転換を促進する――改正労働契約法による無期転換ルールへの対応で、少なくない大学や公的研究機関において、無期転換免れをねらった大量の「雇止め」が強行されました。

 日本共産党はくり返しこの問題を国会で取り上げ、無期転換ルールへの対応は、それぞれの大学が行うものという立場をとっていた文科省の態度を変えさせました。「対応状況に関する調査」を2年連続で実施させ、法改正の趣旨に則った対応を求める「通知」を出させました。こうしたなかで、一部の国立大学や理化学研究所で、非常勤職員の雇止めの撤回・無期転換が実現しました。

 無期転換権の発生を特例で10年に延長している有期雇用の研究者・職員が大量に雇止めとなる危険が4年後に迫っていることを踏まえて、国にさらなる調査を実施させます。

 有期雇用の大学教職員、研究者、非常勤講師に契約更新5年上限を予め求めることは法改正の趣旨に反する行為であり、やめさせます。有期契約が1回以上反復されて5年経過した雇用を無期契約に転換した場合に、国が大学に対して財政支援する奨励制度をつくります。

大学職員を増員し、教育・研究・診療への支援体制を充実させる――大学は、教員だけでなく、技術、事務、医療などの職員によって支えられています。大学の基盤的経費を増額して職員を増員するとともに、雇用は正規が基本となるよう促します。

留学生に魅力ある環境を整備する――留学生が安心して勉学できるよう、低廉な宿舎の確保、奨学金の拡充、日本語教育の充実、就職支援などの体制を国の責任で整備します。

国立大学附属病院の基盤整備をすすめ、債務の軽減をはかる――国立大学附属病院は、医師の養成と先端医療の開発を担い、地域の高度医療のとりでとなっています。病院への交付金を法人化前の水準に直ちに戻すとともに、法人化の際に背負った病院債務を軽減します。施設整備に必要な資金は、国が責任をもって確保する体制を維持します。

授業料をただちに半額にし、若手研究者の支援を充実させます

 政府は、通常国会で、「大学等修学支援法」を可決させ、「高等教育無償化」と称していますが、看板に偽りがあります。支援の対象は学生全体の12%に限られ(住民税非課税世帯)、ほとんどの学生には、消費税増税による負担増が襲いかかろうとしています。しかも政府は、各大学が増税の影響で学費値上げに踏み切ることを容認しています。大学が支援対象となるには、法人理事に産業界などの外部人材を複数任命するなどの4つの要件を満たさなければなりません。学生支援策を大学改革の誘導に使うのは全くの筋違いです。

大学・専門学校の授業料をすみやかに半額にし、段階的に無償化にする――国際人権規約が定めた高校・大学の段階的無償化条項が、国民世論と運動におされて留保撤回されました(2012年)。これは高等教育無償化を国際的に約束したものであり、無償化にむけた学費負担軽減の第一歩として、大学・専門学校の授業料をすみやかに半額にし、段階的に無償化をはかります。

“学生ローン”でなく、まともな奨学金に。月額3万円(年間36万円)の給付奨学金を70万人に――若者の人生の門出で、「奨学金」という名の多額の借金を背負わせる社会をあらためます。給付奨学金は、政府案の低所得者を対象にした制度に加えて、月額3万円(年額36万円)の給付奨学金制度をつくり、全体で70万人の学生が利用できるようにします。すべての奨学金を無利子にします。

大学・研究機関の人件費支出を増やし、若手研究者の採用をひろげる――大学教員にしめる35歳未満の割合は10.3%に低下し、将来の学術の担い手が不足しています。国立大学法人が「総人件費改革」で5年間に削減した人件費だけで、若手教員1万6千人以上の給与に相当します。国立大学や独法研究機関が削減した人件費分を回復するために、国から国立大学や独法研究機関への運営費交付金を大幅に増額し、若手教員・研究者の採用を大きくひろげます。

博士が能力をいかし活躍できる多様な場を社会にひろげる――公務員の大学院卒採用枠を新設し、学校の教員職や科学に関わる行政職、司書や学芸員などに博士を積極的に採用します。博士を派遣や期間社員で雇用する企業に対して正規職への採用を促すとともに、大企業に対して博士の採用枠の設定を求めるなど、社会的責任をはたさせます。

若手研究者の待遇改善をはかる――ポスドクなどの若手研究者がいだく不安は、雇用の不安定です。大学や独法研究機関が、期限付きで研究者を雇用する場合に、テニュアトラック制(期限終了時の審査をへて正規職に就ける制度)をさらに充実させ、期限終了後の雇用先の確保を予め義務づける制度を確立します。そのために必要な経費は国が責任をもちます。ポスドクの賃金の引き上げ、社会保険加入の拡大をはかります。

研究費支援では、若手研究者に――定額の研究費を国が支給する特別研究員制度を大幅に拡充します。とくに、博士課程院生のうち7.3%しか適用されていない現状を改善し、20%まで採用を増やします。大学院生に対する給付制奨学金を創設します。

専業非常勤講師の処遇を抜本的に改善する――大学非常勤講師で主な生計を立てている「専業非常勤講師」の処遇を抜本的に改善するため、専任教員との「同一労働同一賃金」の原則にもとづく賃金の引き上げ、社会保険への加入の拡大など、均等待遇の実現をはかります。また、一方的な雇い止めを禁止するなど安定した雇用を保障させます。

女性研究者の研究条件の改善をはかり、ジェンダー平等を推進します

 研究者のなかで女性の比率は16.2%、大学教員では24.8%(国立大学は17.2%)と世界のなかでも極めて低い水準にとどまっています。大学においては、助教、講師、准教授、教授と昇格するにつれて女性の割合が低くなる一方、専業非常勤講師のような不安定雇用職では女性の割合が5割を超えるなど、女性研究者は男性に比して劣悪な地位におかれています。家事・育児・介護など「家庭への責任」の大部分を女性が担っていること、出産・育児期間後の研究への復帰が困難なこと、採用・昇進などで男性が優先されやすい評価体制など、女性にとって不利な条件は数多くあります。これらを解決し、大学・研究機関においてジェンダー平等と男女共同参画を抜本的に推進します。そのために、以下の政策を推進します。

①女性差別撤廃条約が求める「家庭及び子の養育を男女及び社会全体が担うべき」という考え・意識をひろげていきます。すべての大学・研究機関が男女共同参画推進委員会などを設置し、教員、研究員、職員の採用、昇進にあたって女性の比率を高めるとりくみを、目標の設定、達成度の公開をふくめていっそう強めることを奨励・支援します。各大学・研究機関における男女格差是正のための暫定的措置(ポジティブ・アクション又はアファーマティブ・アクション)の運用を推奨し、女性研究者のキャリア形成を支援するプログラムの形成を促します。大学・研究機関が、男女共同参画の促進やセクシャルハラスメント・アカデミックハラスメント・パワーハラスメントなどの人権侵害を防止する専門家を専任で配置することへの支援を強めます。

②出産・育児・介護にあたる研究者にたいする業績評価での配慮、育児休業による不利益あつかいの禁止、育児支援資金の創設をはじめ休職・復帰支援策の拡充、大学・研究機関で働き・学ぶすべての者が利用できる保育施設の設置・充実など、研究者としての能力を十分に発揮できる環境整備促進に力を尽くします。文科省が実施している女性研究者支援のための補助事業を大幅増額するとともに、採択枠を文系・理系を問わずすべての分野に拡大し、保育所の設置・運営なども経費負担に含めるなど現場の実情に即して柔軟に利用できる制度に改善します。非常勤講師やポスドクについても出産・育児にみあって採用期間を延長し、大学院生に出産・育児のための休学保障などの支援策をひろげます。

③民間企業の研究者における女性の比率は9.6%でとくに低いことから、企業に対しては、研究・技術職に女性を積極的に採用すること、昇進・昇格・仕事内容において性差別をしないことなどを求めます。

④大学・研究機関のなかで、LGBT(性的マイノリティ)の差別をなくし、個人の尊厳とSOGI(性的指向・性自認)に関する多様性を尊重する環境をつくります。医科大学での女子受験生の減点が問題になったことをふまえ、入試などでの女性差別を根絶します。大学におけるジェンダー平等教育や研究の充実、大学構成員への啓もう、LGBTへの相談・支援の態勢(就職活動支援や性についての専門相談員の配置など)などのとりくみを支援します。

大学の「生命」といえる“自治と民主主義”を保障するルールを確立します

「日の丸」「君が代」の押しつけなど、政府による大学への干渉をやめさせる――文科大臣による「日の丸」「君が代」の「要請」(2015年4月)は、「学問の自由」「大学の自治」を侵すものです。入学式などでの国旗掲揚、国歌斉唱の調査など、大学への干渉行為はやめさせます。国立大学の学長選考で行われている教職員の意向投票は、文科省の通知(2014年8月)でも禁止されておらず、文科大臣もわが党議員の国会質問に「意向投票の実施の有無は各大学の判断」と答弁しています。「ガバナンス改革」として、大学に意向投票をやめるよう政府が誘導することは許しません。

「大学の自治」を尊重するルールを確立する――世界で形成されてきた「大学改革の原則」は、「支援すれども統制せず(サポート・バット・ノットコントロール)」であり、「大学の自治」を尊重して大学への財政支援を行うことです。国公私立の違いを問わず、大学に資金を提供する側と、教育・研究をになう大学との関係を律する基本的なルールとして、また、大学運営の原則として確立します。大学評価は、第三者機関により各大学の自主的な改革に資するために行われるべきであり、政府による改革誘導に利用する制度としては廃止します。また、大学における教育研究をはじめ財務・人事・組織などの運営、学長の選考などは、教授会の審議を基礎にし、すべての教員・職員・学生・院生など大学構成員の意思を尊重して決定すべきです。

「柴山イニシアティブ」を中止し、国民の立場にたった大学改革プランを確立す――昨年6月の「骨太方針2018」をふまえ、文科省は「柴山イニシアティブ」(2019年2月)、「研究力向上改革2019」(2019年4月)にもとづき、「手厚い支援」と「厳格な評価」を制度化するとしています。しかし、「手厚い支援」といってもすでに破たんが明白な従来型の「選択と集中」です。「研究力向上改革2019」で「すそ野の広い富士山型の研究資金体制」をうたっていますが、基盤的経費については大学や研究機関が自ら外部資金を増やせという方向しかありません。こうした計画を中止し、国民の立場からの大学改革プランを確立します。

 大学改革の基本原則として、大学を「学問の府」として充実させるにふさわしい研究・教育条件の向上をはかること、大学の「生命」というべき“自治と民主主義”を保障することを土台にすえます。そのうえで、大学の現状と問題点を分析し、改革の方向を検討すべきです。そのさい、大学関係者の意見を尊重するとともに、ひろく国民各層の意見を反映させることは当然です。

国公立大学の一方的な統合に反対する――国公立大学の再編・統合に一律に反対するものではありませんが、教育・研究を充実させる見地に立って、学内合意を基礎にした大学間の自主的な話し合いと、地域の意見を尊重することを前提とし、「一県一国立大学」の原則を守ってすすめるべきです。教員養成系大学・学部の県をまたいだ統廃合には反対します。大阪維新の府・市政が押し付ける大阪市立大学・府立大学の統合による大学リストラは、政治権力による大学への介入であり撤回させます。

国立大学法人制度を抜本的に見直す――国立大学が法人化されて15年余がたち、様々な問題が噴出しています。国立大学法人法は、2019年に法人の長と学長の分離を可能にし、複数の外部理事を義務付けるように改定されました。文科大臣が任命する法人の長が経営の最終決定を行い、学長は外部理事と同等の発言権しか持たないなど、大学の意思決定が経営優先で行われる危険があります。法人化がもたらした現状と問題点を、今回の改定も含めて検証し、大学関係者の意見を尊重して、法改正を含む制度の抜本的見直しを行います。

 大学がどのような目標・計画をたてるかは、国が決定するのではなく、大学の自主性にゆだね、国に対しては届出制とします。国が大学の業績を評価して予算を削減する制度を廃止します。

私立大学の公共性と教育研究の質をさらに高めるため私立学校法の改正を含む改革をすすめる――私立学校法において学校法人が教育・研究に介入する余地のある条項を見直すとともに、学校法人の役員(理事、監事)は基本的に評議員会において選任・公表する、評議員会を学校法人の重要事項の議決機関とする、財務資料の公表をはかるなど、私学関係者の合意をふまえて法改正を含む学校法人改革をすすめます。まともな教育条件を保障できない株式会社立大学の制度は廃止し、私立大学(学校法人)として再出発できる環境を整備します。大学の設置審査の緩和を見直し、私学のもつ公共性をさらに高めるにふさわしい基準で、設置審査を厳正に行うように改善します。特定の学校法人の経営者が政治家と癒着し、「留学生ビジネス」や「入試における不正」など、教育を食い物にする事件が明るみに出ています。大学設置認可の機能を強め、こうした事例を見逃すことのないように、文科省による調査と厳正な指導がなされるよう求めます。安易な廃校による教職員の解雇を防止するため、私学の「募集停止」も報告事項にせず審査の対象にします。

大学への公費支出を欧米並みにひきあげます

 わが国の大学がかかえる最大の問題は、大学関係予算がGDP(国内総生産)比で欧米諸国の半分の水準にすぎず、そのことが主な原因となって、教育研究条件が劣悪で、学生の負担が世界に例をみないほど重いことです。学術、教育の発展は「国家百年の計」であり、将来をみすえた大学への投資こそ、次代を担う若者を育み、21世紀の社会発展に貢献します。欧米諸国は、この10年で大学への研究開発費を3~5割増やし、韓国は2倍化、中国は4倍化し、学術論文数が飛躍的に増えています。教育研究条件の整備をはかることは国の責任であり、欧米並みの大学予算を確保するために全力をつくします。

 その財源は、消費税増税によるのではなく、別の道―税金の集め方、使い方をかえる「改革」によって生み出します。第一に「『税金は負担能力に応じて』の原則に立った公正で民主的な税制への改革」として、「アベノミクス」で大儲けした富裕層と大企業への優遇税制を改め、応分の負担を求める税制改革を行います。もっぱら大企業が利用している研究開発減税をはじめ各種の優遇税制があるために、大企業の法人税実質負担率は10%にすぎず、18%程度を負担している中小企業より低いという「逆転現象」が起きています。大企業に、中小企業並みの税負担を求めます。また、富裕層に対しても、所得税の最高税率を引き上げ、高額の株取引や配当への適正な課税を行うなどの課税を強化します。第二に、税金の使い方を変えます。海外で戦争をするための大軍拡をやめ、5兆円を超える軍事費を削って、社会保障、教育、子育てに優先して税金を使います。これによって、大学の授業料半額化や教育・研究への国のとりくみの抜本的強化も可能となります。

経済効率と軍事利用の科学技術政策から、非軍事・学術発展へ調和のとれた振興策に切り替えます

 科学、技術は、国がその多面的な発展をうながす見地にたって、研究の自由を保障し、長期的視野からのつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩にひろく貢献することができます。とりわけ、基礎研究は、目先の経済的利益につながらなくとも、科学、技術の全体が発展する根幹であり、ここにこそ国の十分な支援が必要です。基礎研究が枯れてしまえば、政府がいうイノベーション(新しい社会的価値や技術の創造)も望むことができません。

 わが国の研究開発費(民間を含む)にしめる基礎研究の割合は15.7%と、欧米諸国に比べても低い水準です。また、業績至上主義による競争を研究現場に押し付けたことから、ただちに成果のあがる研究や外部資金をとれる研究が偏重されるようになり、基礎研究の基盤が崩れるなど、少なくない分野で学問の継承さえ危ぶまれる事態がうまれています。

 ところが安倍政権は、研究機関と大学を財界の求める「科学技術イノベーション政策」に総動員するための新たな研究体制づくりをすすめ、研究のあり方をさらに大きく歪める危険が強まっています。

 安倍政権は、2019年度の「科学技術予算」が“過去最大になった”と宣伝していますが、これは、国際比較される政府研究開発予算には入らない「科学技術を用いた新たな事業化」などの予算を2016年からさかのぼって集計するとともに、先進技術を活用した公共事業などを「イノベーション転換事業」として2018年度から計上する、2重のかさ上げによるものです。安倍内閣の発表する「科学技術予算」は、過去と比較できなくなり、政府による研究開発への投資の実態が分かりにくくなってしまいました。

 さらに、大学・研究機関の防衛省との軍事協力や科学・技術の軍事利用を強めていることは、「海外で戦争する国づくり」のために科学・技術を軍事利用し、学問研究の自由を脅かすものです。安倍政権が、第5期科学技術基本計画において「国家安全保障上の諸課題に対し…必要な技術の研究開発を推進する」などと初めて軍事研究を位置づけたことは重大です。とりわけ防衛省が2015年度予算から大学・研究機関に公募している「安全保障技術研究推進制度」は、大学等を軍事研究の下請け機関へ変質させ、「学問の自由」をじゅうりんする、極めて危険な制度です。日本学術会議も「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」(「声明」2017年3月24日採択)と批判し、応募を認めない大学が広がっています。こうした制度は廃止し、科学・技術の平和利用と研究における非軍事を国の政策の原則とすべきです。

 日本の研究者が相次いでノーベル賞を受賞していることは、日本の基礎研究の国際的な水準の高さを示しています。この水準をさらに高め、わが国が「科学立国」として発展するために、日本共産党は、経済効率優先・軍事利用の科学技術政策を転換し、科学、技術の多面的な発展をうながすための振興策と、研究者が自由な発想でじっくりと研究にとりくめる環境づくりのために力をつくします。

基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展と国民本位の利用をはかります

人文・社会科学を含む科学・技術の総合的な振興計画を確立する――国の科学技術関係予算の配分を全面的に見直し、人文・社会科学の役割を重視するとともに、基礎研究への支援を抜本的に強めます。また、防衛省の軍事研究費、高速炉開発など原発推進予算、大企業への技術開発補助金など、不要・不急の予算を削減します。

 研究者が自由に使える研究費(大学・研究機関が研究者に支給する経常的な研究費)を十分に保障するとともに、任期制の導入を抑え、安定した雇用を保障する制度を確立するなど、研究者の地位を向上させ、権利を保障します。欧米に比べても極端に少ない研究支援者を増員するとともに、その劣悪な待遇を改善します。そのためにも国立大学法人・独法研究機関の人件費を増額します。

 指定国立研究開発法人制度は、成果が上がる見込みのない場合は責任者を解任できるようにするなど、政府による統制を強化し、研究所の自主性・自律性を奪うものであり、見直すべきです。

 科学技術基本計画を経済政策に従属させて、官邸主導で策定するやり方をあらため、日本学術会議をはじめひろく学術団体の意見を尊重して、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立します。

軍学共同に反対、科学・技術の利用は非軍事と「公開、自主、民主」の原則で――大学や公的研究機関に対する軍事機関(防衛省や米軍など)からの資金提供や研究協力をはじめ、科学・技術の軍事利用は、憲法の平和原則に反し、「学問の自由」を脅かすものであり、禁止すべきです。防衛省の「安全保障技術研究推進制度」を廃止し、偵察衛星など宇宙の軍事利用もやめさせます。科学・技術の研究開発は、非軍事・平和目的に限定し、その成果を暮らしと産業の発展のために広く活用します。軍事機密を理由にした研究成果の公開制限や秘密特許の導入に反対し、宇宙基本法や原子力基本法の「安全保障」条項を削除します。

 科学・技術の研究、開発、利用への国の支援は、非軍事とともに「公開、自主、民主」の原則にたっておこない、大企業優遇ではなく、平和と福祉、安全、環境保全、地域振興など、ひろく国民の利益のためになされるべきです。大企業のためのイノベーションから中小企業を中心にした多面的なイノベーション、地域に密着したイノベーションに支援の重点を移します。

筑波研究学園都市の研究施設整備と宿舎の確保をはかります――政府の「国家公務員宿舎の削減計画」は、つくば市の研究者むけ宿舎の約7割の削減を一方的に決めるもので、職員と周辺住民からの反対が続出し、わが党の追及によって、一部宿舎の退去期限の延期をかちとることができました。引き続き、「筑波研究学園都市」の発展をはかる見地から、研究者とりわけポスドクなど非正規雇用を含めた若手研究者が安心して研究に打ち込めるよう、「筑波研究学園都市建設法」にのっとり国の責任で研究施設の整備と宿舎の確保などの条件整備をすすめます。

公正で民主的な研究費配分を行い、研究における不正行為の根絶をはかります

科学研究費補助金を大幅に増額し、配分の偏りを是正する――国が大学や研究者などに交付する競争的資金は、この10年余で倍増しましたが、大幅に増えたのは新技術に直結する研究への支援や、一部の大学への巨額の資金投入などです。一方で、基礎研究を支援する科学研究費補助金は2,371億円(19年度予算)にとどまっています。科学研究費補助金を大幅に増額し、採択率を抜本的に引きあげます。

 また、研究費の配分がより公正で民主的になるように、審査のあり方を改革します。(1)人文・社会科学を冷遇したり、旧帝大系など一部の大学に集中したりするような資金配分の偏りを是正し、研究のすそ野を思いきってひろげます。(2)業績至上主義の審査ではなく、研究計画も十分考慮した審査に改めます。(3)科学者で常勤の審査員を大幅に増員し、将来性ある研究、萌芽的な研究を見極める「目利き」のある審査、公正な審査を充実させます。

過度の競争を是正し、研究における不正行為を根絶する――研究における不正行為は、科学への社会の信頼を裏切る行為です。不正事例は、競争的資金の重点配分や任期制など競争的環境が強まった2000年前後から急増しています。不正の根絶をはかるために、科学者としての倫理規範の確立を促すとともに、不正の温床となっている業績至上主義とそれを助長する過度に競争的な政策をあらためます。大学・研究機関における外部資金の管理を厳格におこないます。

産学連携の健全な発展をうながします

 産業と学術が連携し、協力しあうことは、互いの発展にとって有益なことです。同時に、福島原発事故で明るみにでた原子力産業と一部大学との癒着にみられるように、大企業の利潤追求に大学が追随するような連携は、大学本来の役割が弱められ、研究成果の秘匿や企業との癒着などの弊害がうまれるため、制限すべきです。

 産学連携の健全な発展のために、国からの一方的な産学連携のおしつけでなく、大学の自主性を尊重し、基礎研究や教育など大学の本来の役割が犠牲にされないようにします。また、産学連携を推進する国の事業(共同研究への補助など)は、地域や地場産業の振興にも力を入れ、中小企業の技術力向上への支援を拡充します。

 大学と企業との健全な関係をむすぶため、以下の点で国のきちんとしたガイドラインを作成します。(1)企業との共同研究の際、学会などでの研究成果の公開が原則として保障され、だれでもひろく使えるようにする。(2)共同研究や委託研究での相当額の間接経費や、共有特許での大学の「不実施補償」を、企業側が負うようにする。(3)企業から受け入れた資金は、大学の責任で管理、配分し、公開することを原則とし、研究者と企業との金銭上の癒着をつくらない。

 

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