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42 国家戦略特区問題

「国家戦略特区制度」は廃止します

2019年6月

 安倍首相の「腹心の友」が理事長を務める学校法人にだけ獣医学部新設が認められた「加計学園問題」につづいて、国家戦略特区制度を利用した利権隠しの疑惑が、今年6月に新聞報道で明るみにでました。

「国家戦略特区ワーキンググループ(WG)」は利権のブラックボックス

 昨年(2018年)の臨時国会で成立させられた漁業法改悪の背景に、真珠事業者が、漁協・漁業者から沿岸漁場の優先的な管理権をとりあげる「規制改革案」を提案していたことがありました。しかも、この事業者は、「規制改革」を提案・審査する「国家戦略特区ワーキンググループ(WG)」の座長代理からの助言をうけ提案しており、座長代理は事業者から指導料を受け取っていたのです。

 ところが、政府は、WGが行った事業者ヒアリングさえ隠ぺいし、日本共産党の田村智子参院議員が17年6月に提出した「WGのヒアリング実施状況」についての質問主意書に対する政府答弁書でも事実を偽っていました。

 この重大な疑惑に対し、5野党・会派は直ちに「国家戦略特区利権隠ぺい疑惑」合同ヒアリングをおこない、漁業法をめぐる国家戦略特区の審議過程が「ブラックボックスになっている」と指摘し資料の提出を迫りました。特区制度を所管する内閣府は「非公式な『打ち合わせ』であり、記録はない」と強弁しましたが、野党の追及をうけ、水産庁は「国家戦略特区WGヒアリング概要」を提出し、事業者ヒアリングの事実を認めました。

 「加計学園問題」でも会議録が非公開とされました。安倍首相や官邸の働きかけで加計学園有利で進められたのではないかという国家戦略特区制度を利用した「国政私物化」の疑惑の真相は、いまだに解明されていません。

 安倍首相は、「加計学園問題」での追及に対し、「国家戦略特区ワーキンググループは透明性の高いしくみ」「議論は全てオープン」と答弁しましたが、これがまったくのでたらめだったことは明らかです。

首相のトップダウンで財界が要求する規制緩和を押し付ける「国家戦略特区制度」は廃止します

 そもそも国家戦略特区制度は、第2次安倍内閣が鳴り物入りで導入(2013年12月国家戦略特区法施行)したものです。

 2013年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」は、国家戦略特区制度について「地域の発意に基づく従来の特区制度とは異なり、国が主体的にコミットをし、(中略)国家戦略の観点から内閣総理大臣主導の下、大胆な規制改革を実行するための強力な体制を構築して取り組む」と位置付けました。

 「国家戦略特別区域諮問会議(諮問会議)」(議長:内閣総理大臣)は、首相が指定する国務大臣や首相が任命する財界人らのメンバーで構成され、「国家戦略特別区域会議(区域会議)」が作成する区域計画や規制改革メニューの追加を、きわめて強い権限をもって調査、審議し、決定します。

 国家戦略特区担当大臣の下に設置されている「国家戦略特区ワーキンググループ」は、省庁に規制緩和を厳しく迫る主舞台となっています。利害関係があってもWGの議論に参加することが可能で、提案者から利益供与を受けることさえ禁止されていません。WGメンバー自らが提案し、それをもとに自ら省庁に規制緩和をもとめることも可能です。

 これまでも、諮問会議委員の竹中平蔵氏などが、外国人材活用のための提案等を行い、同氏が会長を務めるパソナが事業者として指定を受けていることが明らかになっています。国家戦略特区制度は、政権に近い特定の人物や事業者を対象に、地域を指定し規制緩和を行い、特別の利益をもたらす、利権あさりと国政私物化の制度と言わざるを得ません。

 安倍政権は、農業、医療、教育、保育、労働などの分野で、国民生活や安全にかかわる規制を「岩盤」と称し、「岩盤規制」に穴をあける「ドリル」として国家戦略特区を利用し、財界が求める規制緩和を「国家意思」として、トップダウンで一方的に押し付け、推進しているのです。

 日本共産党は、財界の利益優先のための規制緩和を、地域住民や主権者国民の声を排除してひたすらに推進する国家戦略特区制度の廃止を求めます。

国が果たすべき「ナショナルミニマム」を投げ捨てる規制緩和を許しません

 国家戦略特区制度だけでなく、「地方からの提案」に応える(提案募集方式)という形で、社会保障などあらゆる分野で、国民の命と暮らしを支えるために国が果たすべきナショナルミニマム(最低基準)を投げ捨てる規制緩和が進められていることも重大です。

 安倍政権は、「第9次地方分権一括法」に盛り込まれた「児童福祉法改正」で、放課後児童健全育成事業(学童保育等)のために配置される職員数(職員配置基準)を自治体が条例で定める場合には、国の基準に「従うべき」という現行規定から国の基準を「参酌」さえすればよい、とする法改正を強行しました。

 学童保育等の職員配置基準は、保護者や関係者の広範な運動で、「全国的な一定水準の質」を確保するために初めて設けられたもので、各支援単位に2人以上の配置(うち1人を除き補助員の代替可)を定めています。

 子どもたちの命と安全、安心できる生活の場を全国的に一定水準の質で確保することは、保護者の強い願いです。子育て、教育、社会保障などに携わる自治体職員の数を財政措置まで動員して、一貫して削減してきたのは自民党政権です。

 職員が不足し、待機児童が深刻化すると今後は、「地方からの提案だから」と、国がしっかりと守られなければならない配置基準を「参酌化」してもよいとするのでは、子どもたちの命、安全、安心は守れません。

 日本共産党は、国が果たすべきナショナルミニマム(最低基準)を投げ捨てる規制緩和を許しません。

 

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