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日本共産党

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➡各分野の目次

35 交通運輸

いのち・安全、国民の足をまもる交通運輸政策へ

2019年6月

安全を大前提に公共性を重視した交通政策に転換し、人と環境に優しいまちづくり・交通体系をめざします

交通・移動の権利を保障し、安全を大前提に公共性を重視した「交通基本法」に改めます

 交通は、人やモノの交流や活動を支え、国民生活にとって欠かせないものです。交通を取り巻く社会経済情勢は、地方の過疎化の進行や、地域社会の高齢化、人口減、地球環境問題の深刻化などにより大きく変化してきています。

 とりわけ、これまで住民の足となってきた鉄道・バス・フェリーなどの路線廃止が相次ぎ、地域公共交通が衰退し、自家用車を利用できない高齢者等、移動が大きく制限される「移動制約者」が増大しています。無秩序な郊外型開発による都市のスプロール化、中心市街地の“空洞化”がすすみ、“買い物難民”を発生させるなど交通弱者の日常生活を困難にしています。

 また、軽井沢スキーバス事故をはじめ、JR尼崎脱線事故など鉄道事故、航空機のトラブルなど相次ぐ公共交通機関の事故・トラブルの背景に、安全より利益を優先する規制緩和があったことも明らかになっています。

 自民党政権のもとで進められてきたモータリゼーション推進、自動車優先・道路偏重の交通施策が、道路公害の発生や、地域公共交通の衰退など様々な弊害をもたらしたことは明らかです。

 地域公共交通の利用者の減少により、路線を維持できない交通事業者の厳しい経営状況を見れば、民間事業者に委ねるだけでは、地域公共交通の衰退に歯止めをかけることが困難になっています。地球温暖化対策を強化することも喫緊の課題となっています。

 いまこそ、自動車優先・道路偏重の交通施策を根本的に見直し、住民の足を守り、人間を優先した政策に転換すべきです。

 2013年に制定された「交通政策基本法」は、「移動権の保障」を盛り込まず、国際戦略港湾、首都圏空港、大都市圏環状道路など「国際競争力の強化」のための高速交通網の整備を想定したものでした。「交通政策基本計画」では、リニア中央新幹線の建設も明記し、大規模開発事業が目白押しの内容になっています。

 こうした状況を踏まえ、交通・移動の権利を保障することを明記し、交通の安全確保を基本理念の第一に据え、公共性を重視して「規制緩和」等市場競争優先から脱却することを内容とした「交通基本法」に改正します。

住民の足を守るため交通・移動の権利を保障する

 交通・移動の権利は、日本国憲法が保障した居住・移転の自由(第22条)、生存権(第25条)、幸福追求権(第13条)など関連する人権を集合した新しい人権です。国民が安心して豊かな生活と人生を享受するためには、交通・移動の権利を保障し行使することが欠かせません。

 地域公共交通の衰退を止め、維持確保改善することは、もはや、事業者任せにできません。国と地方公共団体など行政府が、財源の補助を含めて努力すべきです。そのための「財源」の確保や「行政の不作為」などの責任を放棄させないためにも交通・移動の権利を保障することが重要です。

『安全大前提』――安全の確保を何よりも優先することを国や事業者等の責務として明確にする

 軽井沢スキーバス事故等、相次ぐ公共交通機関の事故を踏まえて、安全に対する考え方を明確にすることが必要です。「利益なくして安全なし」など、利益を優先して安全を軽視する経営の考え方を厳しく批判します。

 そのため、「交通基本法」の基本理念として、安全確保を大前提にすることを冒頭に盛り込みます。国・地方自治体、事業者の責務として、安全確保を大前提にすることを明確に規定します。あわせて、運転者等の運行従事者の賃金・労働条件の適正化なくして、安全確保はできないことを明確にして、そのための施策をとるようにします。

 「交通安全対策基本法」や運輸関連の各事業法を見直し、安全を大前提とすることを明確に位置付けるとともに、安全の直接的な担い手である運転者等の運行従事者の賃金・労働条件の適正化を図ります。

「国際競争力の強化」など「規制緩和」・市場競争優先から脱却する

 地方路線の廃止や公共交通機関の事故の要因や背景にあったのは市場競争原理主義のもとに進められた「規制緩和」路線です。交通権(移動権)を保障し、安全を大前提にした交通施策を実施する上でも、公共交通の安全や公共性と相対立する規制緩和・市場競争優先から脱却することが必要です。そのため、象徴的な文言となっている「国際競争力の強化」を基本法などから削除します。

クルマ社会から人と環境にやさしい社会へ

 高度経済成長期以来、自民党政権のもとで進められてきたモータリゼーション推進、自動車優先・道路偏重の交通施策が、交通事故や道路公害の発生、地域公共交通の衰退、さらには、地球環境汚染、都市のスプロール化など様々な弊害をもたらしたことは明らかです。

 いまや政府でさえとらざるを得なくなっているモーダルシフトなどの施策は、クルマ社会から人と環境にやさしい社会へ転換するうえで重要です。

 モーダルシフトは輸送・交通手段の転換を図ることです。一般的には、トラックや航空機による貨物輸送を鉄道や船舶に、自家用車を公共交通機関に、といったように、より環境負荷の少ないものに代替することを目指します。

○モーダルシフトなどの施策を推進するためにも、大都市圏環状道路など高速道路の建設を見直します。

 大都市圏環状道路など高速道路の新規建設によって、その周辺に大型物流施設をはじめとした大型商業施設の出店が相次いでいます。貴重な農地をつぶすなど都市郊外に大型開発事業が復活しています。これでは、都市のスプロール化を加速させるとともに、トラック輸送を増大させることは目に見えています。

○自転車専用道路の設置を推進し、環境にやさしい自転車の活用を促進します。

  温室効果ガス削減に向け、自転車の活用を促進することは重要です。自転車活用を促進するうえで自転車専用道路の整備が欠かせません。

 自動車優先の道路整備を改め、歩道の整備とともに、自転車専用道路の設置を推進する必要があります。

地域公共交通、移動の権利を保障


住民の足、地域社会の基盤、地域公共交通の再生めざして

○これ以上の衰退に歯止めをかけ、地域の社会経済基盤の再生、活性化を

 バス路線廃止など地域公共交通の衰退、地域住民の足がなくなるという深刻な事態が進行しています。

 2007年度から10年の間に全国で廃止された路線バスの距離は、1万3991kmにのぼります。地域鉄道の廃止路線の距離も294.5kmになります。地域公共交通の衰退に歯止めがかかりません。そのもとで、住民の足が奪われ、高齢者等の移動が制約され、住民の日常生活や地域社会活動に支障をきたしています。

 今後も進行する高齢化のもとで、高齢運転者による事故が多発し、17年、18年には40万人を超える運転免許証の返納者がおり、今後も増え続ける状況にあります。自家用車を運転ができなければ、公共交通など他の移動手段に頼らざるを得なくなります。

 政府は、「地域における公共交通の利用者数は以前からモータリゼーション等により減少し、維持することが困難な路線も発生している。今後の人口減少の下で利用者数が一層減少し、維持困難な路線が一層増加するおそれがあることを踏まえ、地方部を中心に、真に必要な地域公共交通ネットワークの確保・維持・改善を図る必要性が高まっている。」(2018年版交通政策白書)としています。

 地域公共交通のこれ以上の衰退に歯止めをかけ、地域の社会経済基盤の再生、活性化を目指して、取り組みを強めなければなりません。

地方自治体の取り組み状況、地域公共交通の活性化支援策の現状

 路線バスなど地域公共交通を取り入れている自治体は17年度、1400を超え8割以上にのぼります(総務省の地方交付税算定額で措置されている自治体数)。そのうち、1280を超える市町村が、コミニティーバスを導入し、デマンド型乗合タクシーも535市町村が導入しています。2011年から地域公共交通活性化法による支援が始まり、17年度には700以上の事業者が支援を受けています。都市と都市を結ぶ幹線バス路線は、県など広域的協議会が主体となり、地域内フィーダー路線は市町村が担っています。定時に決まった停留所のある路線を運行する定期路線バス、事前予約しドアtoドアで運行するデマンド乗合タクシーなど地域住民の実情に合った形態での運行が実施されています。国土交通省は、デマンド乗合タクシーの実施目標を2020年までに700自治体で実施する目標を掲げています。

 一方、制度の導入に踏み出せない自治体もまだ残されています。制度を導入している自治体でも、運行路線でカバーできない地域や停留所から遠い地域、便数不足など過疎地域、交通不便地域が残されたまま、増加しているところもあります。
 政府は、コンパクトなまちづくりを地域公共交通と連動させながら進める「コンパクトシティー+ネットワーク」政策を推進しています。自治体に居住誘導の「立地適正化計画」と交通再編の「地域公共交通網形成計画」を一体的に策定するよう求めていますが、18年8月末時点で適正化計画に具体的に取り組んでいる420市町村のうち、交通網形成計画を持っているのは、195市町村にとどまっています。(地域公共交通網形成計画は、2019年3月末までに500件が策定され、地域公共交通再編実施計画は、33件が国土交通大臣により認定されている。)

 国の支援制度としては、地域公共交通維持確保改善事業が取り組まれています。うち、陸上交通では、幹線バス路線と地域内フィーダー路線への支援があります。赤字となる路線を廃止せずに、運行継続するバスやタクシー会社や自ら運行する自治体や協議会に対して、赤字分の1/2を国が直接補助します。残りを自治体等が補填する仕組みです。国の補助を受けるには、自治体や公共交通協議会が、公共交通維持確保計画を策定する必要があります。

 2011年度導入時は305億円の補助金が計上されましたが、19年度は220億円に減らされています。バスやタクシーへの補助は、120億円程度で総額は維持されているものの、事業者数が増加しており、個別配分額は減少を続けています。

地域公共交通の再生の必要性、政策方向

〇地域公共交通を地域住民の移動権を保障する制度として位置づける

 地域住民が、いつでもどこでも自由に、安全に移動することは、健康で文化的な最低限の生活を営むうえで欠かせないものです。憲法に保障された生存権、移転の権利、幸福追求権などをもとに移動する権利を保障する施策が国や自治体に求められています。地域公共交通をめぐる深刻な状況をみれば、住民の移動権を実質的に保障する施策を進める必要があります。

 EU諸国では、「移動権の保障」を明文化しているかどうかにかかわらず、住民の自由で安全な移動を支える施策を進めています。地方バス路線等を公共インフラ(社会基盤)として位置づけ、公的に支える制度が設けられています。フランスでは地域の公共交通を維持するために、労働者の通勤などで受益がある地域内の事業者から約4000億円(2012年)の交通税を徴収し、バス事業等に補てんしています。ドイツでは、エネルギー税(ガソリン、石油製品、石炭等に課税)を地域公共交通分野に配分するなどして、連邦政府として1兆円を超える財政援助を続けています。

地域の足である地域公共交通を守るため、必要な財源を確保する

 地方の鉄道、公営バス、コミュニティバス、LRT、離島航路・フェリーなど、生活に欠かせない地域公共交通を維持します。そのため、国と地方公共団体、事業者等の責任と共同により、地域公共交通を維持するために必要な財源を確保します。

――地域公共交通の確保維持改善事業の国の予算は、年間約300億円です。当面、これを1000億円まで増額します。

――財源を確保するため、フランスの事例など参考に、JRなど大手事業者等からの拠出による「地域公共交通を守る基金」を創設します。

事業者任せ、市場に依存した事業制度から自治体が主体の事業に

 住民の足、生活基盤である地域公共交通を地域社会経済基盤として再生するには、運賃など事業収益が低下、採算が取れず公共交通事業からの撤退、路線廃止、減便が相次いでいる現状を考えれば、事業者任せでは展望は開けません。EU諸国のように、事業運営の財源を確保し、公共団体が主体的に関与する事業制度を検討するべきです。

<別項目>(2019年参院選挙政策 各分野の政策「13 交通安全対策」)---こども・高齢者等を事故から守る、自動車優先から歩行者優先へ

鉄道政策

国民の足を守り、安全・公共性の確保を前提とした鉄道行政に転換する

 鉄道は、大量の人とモノの移動を支える足であり、環境にもやさしい公共交通機関です。クルマ中心・道路偏重行政のもとで、赤字路線が増え、地方ローカル鉄道や都市部の電車など相次いで廃止されてきました。高齢化や人口減、地球環境問題、過疎化など社会経済情勢の変化に伴い、鉄道のもつ重要な役割を改めて位置付け、安全と公共性の確保を前提とした鉄道行政への転換がもとめられています。

 とりわけ、JR北海道とJR四国、及びJR貨物の経営は、発足当初から厳しく、国による政策的経営支援スキームである経営安定基金(完全民営化を決めたJR九州を含め合計で1兆2781億円)からの運用収益で、かろうじて経営を維持しているのが実情です。車両火災、レール異常放置と検査改ざんなど事故・トラブルが相次いだJR北海道が、経営難から安全投資を削っていた事態は見過ごせません。

――鉄道災害復旧基金をつくり、災害を原因とする鉄路廃止をなくします

――全国の鉄道網を未来に引き継ぐために、知恵と力をあわせることをよびかけます

 鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために――国が全国の鉄道網を維持し、未来に引き継ぐために責任を果たす 2017年04月28日

鉄道施設の安全対策バリアフリー化を緊急課題として促進する

 2006年、新しいバリアフリー法(バリアフリー新法)が制定され、2018年に、理念として、「共生社会の実現」、「社会的障壁の除去」を明示するなど改正されています。「誰もが自由かつ安全に移動・利用することは基本的権利である」という考え方にたち、「事業者まかせ」ではなく、国として、国民の足の確保、交通・移動の権利を保障しうる施策を計画的に実施することが必要です。

・公共施設はもちろんのこと、多数が利用する施設、歩道、地方の駅や利用者数の少ない駅などのバリアフリー化をすすめます。

・法基準の見直し、計画づくり、実施には、利用者、住民、NPOなどの参加と協働を広げます。

○鉄道駅にホームドア(可動式ホーム柵)を緊急に設置します。

 相次ぐ駅ホームからの転落事故を防止するため、ホームドア設置は喫緊の課題です。ホームドア設置を安全対策と位置づけ、鉄道事業者に設置を義務付けます。転落の危険性が特に高い駅を優先して直ちにホームドアを設置し、800駅の設置目標を引き上げます。技術開発を含め補助額・率を引き上げます。ホームドア設置完了前においても、鉄道事業者が責任をもって、ホームの安全対策の人員を配置するよう指導を強めます。

○鉄道駅のエレベーター・エスカレーターの設置などバリアフリー化を急ぎます。

 1日当たり3千人以上が利用する3,542駅で、段差が解消されている鉄道駅は、86%(16年3月末)です。500駅近くがまだ整備されていません。一日5,000人が利用する駅でも226駅がまだ未整備です。早急に設置をすすめます。

○大規模地震に備え、新幹線等の安全対策を緊急課題として強化します。

 熊本地震でJR九州の新幹線が脱線した原因は、脱線防止ガードが未設置の区間でした。JR九州では全延長に対して一割に満たない脱線・逸脱防止対策となっており、JR北海道では94%、JR東日本は30%、JR東海で35%、JR西日本は30%と、軒並み脱線・逸脱防止ガードが設置されていません。新幹線は高速で走る乗り物だけに安全対策は欠かせません。早急な対応が必要です。

自動車(バス・トラック、タクシー)

「規制緩和」を見直し、バス・トラック業の安全を担う労働者の賃金・労働条件を改善します

 高速ツアーバスや軽井沢スキーバス事故、山陽道トンネル内トラック事故など重大事故が相次いでいます。人命を運ぶ自動車運送事業の安全・安心が脅かされているのです。国交省は、2012年4月の関越道高速ツアーバス事故を受け、夜間・長距離運行する貸切バス等の交替運転者の配置基準を670キロから実車距離500キロ以内に改めるなど過労運転防止対策や監査のあり方など一定の改善を行いました。しかし、この教訓が生かされず、2016年1月の軽井沢スキーバス事故の惨事を引き起こしました。法令違反を繰り返す事業者の参入規制や運転手の安全確保に必要な労働環境改善などが不十分であったことを鮮明にしました。

 事故の背景にあったのは、安全性・公共性を軽視し、市場競争を優先する規制緩和政策でした。規制緩和は、免許制から許可制にし、需給調整をなくし、市場競争原理を導入しました。行政が責任を持つべき安全確保のための監査制度など、事前チェックを事後チェックに切り替えました。さらには、派遣法改悪など労働法制の規制緩和とも相俟って、労働集約型の運転手の低賃金化、非正規・派遣、技能・経験不足など安上がりな労働力供給を可能にしました。

 その結果、新規参入する事業者が急増し、過当競争、運賃のダンピング競争が激化し、法令を守らない違法業者がはびこりました。「3K」職場として若者から敬遠され労働者不足も深刻になっています。人命を運び安全を担う運転手の賃金、労働条件が悪化し、過労運転など安全運行が確保できない状況を生み出しました。 

 行政による監査・監督は、12万もの自動車運送事業者に対し、わずか365人の監査官しかおらず、常態化している法令違反に対応すらできませんでした。監査で質を担保することには無理があります。

 事業者に安全を確保させるための規制を強化することが緊急に求められています。

――トラック・バス事業の過当競争を激化させた事業分野の規制緩和、安上がりの労働者供給に道を開いた労働分野の規制緩和を抜本的に見直します。運転手の健康面を含めた過労防止対策や安全運行管理体制の整備など、参入や更新時の要件を強化します。悪質不良業者の参入や更新を阻止するためにも入口規制の強化が必要です。

――運転手の日雇い・アルバイトなど非正規雇用禁止を徹底し、安全運行教育・訓練など正規社員としての育成を義務付けます。

――荷主などによる低運賃発注や下請け重層化による“中抜き”をやめさせ、運転手が安全・安心できる賃金の確保など適正運賃が授受できるよう運賃ダンピング競争を排除します。

――バスを発注する旅行業者の発注者責任を明確化し、低運賃や無理な運行(旅行行程自体が改善基準の拘束時間をオーバーしているもの等)を押し付ける旅行業者への監督・指導と法令違反に対する罰則を強化します。

――法令違反を繰り返す悪質な運行事業者を排除し、法令違反を一掃するため監査・罰則を強化します。

――貸切バス等の夜間・長距離運行の交替運転者の配置基準について、回送距離を含めるなど、より実態に即して見直します。

――「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を改善し法制化します。

   当面、①拘束時間1日13時間以内、②休息期間11時間以上、③運転時間1日7時間以内、④連続運転時間2時間以内に改善します。

――安全運転で生活できる賃金・労働時間を保障する「自動車運転者安全賃金法」を制定します。

 交通機関にあって安全を担保するのは、直接、運転に携わっている運転労働者です。この労働者の労働条件を改善して、安全運転で生活できる賃金・労働時間を保障しない限り、真の安全は確保できません。そのため、オーストラリアで制定されているような、自動車運転者が安全に働くことのできる最低賃金・労働条件を設定する裁定機関を設置します。

国民の命・安全、運転者のくらしを守るタクシー行政への転換を求めます

 2002年、「改正」道路運送法の施行により、タクシー事業の需給調整が撤廃され、新規参入や増車が自由化されるなどの規制緩和が実施された結果、タクシー台数が増え、運転者の賃金・労働条件が低下し、交通事故増加など安全運行を脅かす事態が深刻化しました。そのため、規制緩和政策を見直す動きが現れ、2009年、タクシー供給過剰の是正をはかるため、協調的減車を認める「タクシー適正化・活性化法」が制定されました。

 しかし、同法による減車は、あくまで事業者の自主的な取り組みであったため、減車に協力しない事業者が残されるなど不十分さがありました。そこで、2013年秋の臨時国会で、都市部などの過当競争地域を国土交通大臣が「特定地域」に指定し、減車措置に強制力を持たせるなど規制を強化する同法改正が行われました。2015年1月に「特定地域」の指定が行われましたが、指定基準は「実働実車率が2001年と比べて10%以上減少」など条件が狭く、東京23区や名古屋市は規制地域の候補から外されました。

――タクシー輸送の安全・安心の確保のため、改正法にもとづき適切に「特定地域」の指定を行い、供給過剰を是正します。

――供給過剰の解消・防止へ、適正な需給調整規制を含めた手立てを講じます。

――過度な運賃競争を解消し、適正な運賃制度を確立します。地域の実情に応じて、地域ごとに認可できるようにし、同じ地域であればどのタクシーに乗ってもすべて同じ運賃(同一地域同一運賃)制度を含め、地域が自主的に制度を選択できるようにします。

――運転者が誇りと働きがいをもてる賃金・労働条件の改善を図ります。

――名義貸し、リース制、乗務員負担制度をやめさせ、タクシー経営者に、企業の社会的責任を果たさせます。

――労働者保護及び安全運行規定に違反する事業者への行政処分を厳格に行います。

――長時間労働を招く累進歩合制度の廃止、「改善基準」告示、労働関係法の順守を徹底するため、労働行政とも連携して、運転者の賃金・労働条件の改善をはかります。歩合給の合理的改革を図る方策を検討します。

――福祉・介護タクシー等への助成制度を設けます。

――運転手の社会的地位の確立、資質の向上を図るため、タクシー運転免許の法制化を実現します。

 ※ 規制緩和政策を根本的に改め、国民の命・安全、運転者のくらしを守るタクシー行政への転換を求めます――タクシー政策の改定に当たっての日本共産党の提言と要求(2008年9月26日 日本共産党国会議員団)

利用者のいのち・安全を脅かすライドシェア導入など規制緩和に反対します。

 一般ドライバーがスマートフォンアプリを介して利用者と契約し、自家用車で運ぶライドシェア(相乗り)の導入に向けて経済界や政府の動きが加速しています。「利用客の安全が守れない」とタクシー労働者らの批判が高まるなかでの推進は、あまりに危険です。安全性を確保するために、一般ドライバーが自家用車で乗客を有料で送迎することは、道路運送法で原則禁止されています。営業許可のあるタクシーは緑地のナンバープレートであるのに対し、無許可車は白地ナンバープレートのままなので、「白タク行為」とされ、取り締まりの対象です。ライドシェアは「白タク行為」そのものです。タクシードライバーに必要な二種免許を必要とせず、「免許取得後1年以上経過」「認定講習の受講」などの条件をあげるだけで、運転前のアルコールチェックの義務付けもしません。乗客の安全を保障するしくみはぜい弱です。すでにライドシェアを解禁している各国では業務停止命令や訴訟が続き、国際労働機関(ILO)も問題視しています。

 ライドシェアは副業を想定したしくみです。価格破壊が容易に起こり、今でさえ早急な改善が必要なタクシー労働者の低賃金と劣悪な労働条件はさらに悪化します。相次ぐバス事故に明らかなように、乗客の命を危険にさらすライドシェア導入など規制緩和に反対します。政府は、国家戦略特区での自家用車による観光旅客等運送事業を解禁しました。これはライドシェア導入に道を開くものであり、撤回させます。

大規模開発・産業中心から国民生活中心の交通・運輸政策に転換します

――リニア中央新幹線、新幹線建設、首都圏空港問題、国際コンテナ港湾

〇国際競争力強化、市場競争化を加速する交通政策

 安倍政権のアベノミクス、成長戦略のもとで、交通政策が、国際競争力強化、市場競争化を加速させています。「国土形成計画(全国計画)」や「交通政策基本計画」では、「国際競争力の強化」「選択と集中」と称し、財界・大企業に奉仕する交通インフラの大規模開発事業を鮮明にしています。

 とりわけ、国土形成計画(全国計画)は、「国土のグランドデザイン2050」を踏まえ、首都圏・中部圏・近畿圏を一体化した拠点とする世界最大のスーパー・メガリージョンを構想し、三大都市圏を結ぶリニア中央新幹線を核に据え、首都圏空港、国際コンテナ戦略港湾、首都圏3環状道路を始めとする大都市圏環状道路、整備新幹線など高速交通網の整備をすすめています。「交通政策基本計画」でも、これら大規模開発事業が明確に位置付けられました。

 こうした国際競争力強化を口実にした高速交通網の整備は、過大な需要予測を平気で振りかざしており、建設費だけでなく膨張する将来維持更新費用を含め国民に巨額の「債務」を押しつける危険が大きくなっています。それだけでなく、環境破壊と地球温暖化、交通の安全性・公共性の軽視、大規模地震等の災害リスクなど、たくさんの「負の遺産」を積み込んだ暴走列車になろうとしています。また、人口減少社会のもとで、いっそう東京一極集中を加速させ、ストロー効果により地方を衰退、疲弊させ、地域間格差を拡大させることにもなります。

リニア中央新幹線の建設に反対する

 安倍政権は、13年発足後、リニア中央新幹線建設を成長戦略に盛り込み、“国家的プロジェクト”と位置付けました。さらに、16年6月、名古屋~大阪区間の建設開業を前倒しするため、財政投融資を活用し、JR東海に建設資金3兆円を貸し付けました。JR東海の自己資金での建設という当初からの方針を、公的資金投入に事実上変更しました。

 今世紀最大の巨大プロジェクトにも関わらず、JR東海を事業主体に指名し、環境影響評価手続き、工事実施計画を認可(2014年10月17日)するなど建設事業を進めさせています。JR東海は、2027年の東京―名古屋間の開業を最優先し、自然環境・生活環境への悪影響を懸念する沿線自治体や住民の疑問や意見、環境保全協定の締結などの要望に何ら応えないまま、ひたすら走り続けています。

 しかし、環境影響評価手続きの中で、リニア中央新幹線の建設が、かつてないほどの環境破壊を広範囲で引き起こすことが明らかになっています。長距離の大深度地下、南アルプス山岳地の貫通など86%ものトンネル掘削、それに伴う発生残土の問題、残土運搬など大量の工事車両による生活環境破壊、生態系や自然環境破壊、大井川の毎秒2トン減水など流域に深刻な影響を及ぼす水枯れ、異常出水、水源地、地下水への影響、未解明の電磁波の影響問題、東海道新幹線の3倍を超える電力消費量、切迫する首都直下型、南海トラフ地震のもとでのいくつもの活断層横断による大震災リスク、災害・事故時の安全対策、乗客の避難誘導対策、地元自治体に負担を強いる駅予定地周辺の大規模再開発事業などなど枚挙にいとまがありません。これらに対する懸念は、リニア建設を推進してきた地方自治体からも出されています。

 また、JR東海は、14年10月17日工事実施計画(その1)認可、18年3月2日、同(その2)認可、18年10月17日大深度地下の使用認可を受け、事業説明、調査・測量を経て、用地買収など地元地権者と具体的交渉を進めるとしていますが、そもそも、JR東海に広範囲の用地買収業務を遂行できる能力・人材は存在しません。そのため、地方自治体との連携・協力を要請し、地方自治体の職員を駆り出しています。

 しかし、巨大プロジェクトだけに範囲も広く、対象も多く、そして、何よりも納得のいく説明もないため、具体的な交渉において地権者等の合意を得るめどはたっていません。

 そもそもなぜ、9兆円を超える巨額の投資を行ってまで、リニア中央新幹線を建設しなければならないのか。この根本問題についての疑問がいっそ大きくなり、リニア中央新幹線建設に反対し、説明を求める運動が急速にひろがっています。2016年5月20日、沿線各地から738名の住民が、国土交通省の認可の取り消しを求め、東京地裁に提訴しました。駅周辺や車両基地、トンネル非常口、走行トンネルなど沿線地域では、JR東海の不誠実な対応に怒り、建設そのものに反対する地域も生まれ、山梨や相模原では、立木等のトラスト運動も起こっています。発生残土の運搬や置き場に関して、沿線各地の自治体からも批判が相次いでいます。国民的な世論でも、安倍政権の前のめりの姿勢に対し、「拙速に進める必要はない」(朝日新聞)「このまま進めていいのか、慎重に判断する必要がある」(読売新聞)など、メディアにも慎重意見が出ています。

リニア中央新幹線の工事をやめ、建設計画の是非について検証し、中止を含め見直します

 9兆円もの巨額投資は今世紀最大の超巨大開発事業であり、国家的プロジェクトなのに、なぜJR東海という一民間会社に任せられるのか。リニア中央新幹線が、世界最大のスーパー・メガリージョンを結ぶ役割を果たすことで、東京一極集中を加速、ストロー効果により、中間駅をもつ地方も含め地方活性化の障害となります。駅を中心に新たなアクセス道路の整備、駅周辺再開発などまち壊しと自治体財政の圧迫、住民負担を増大させます。これのどこが地方活性化につながるのでしょうか。同時に、今世紀最大の自然環境・生活環境の破壊となる事業を認めるわけにはいきません。“夢の超特急”どころか、子子孫孫にわたって“負の遺産”を遺すことになりかねません。

東海道新幹線の大規模改修など老朽化対策、大規模災害リスクに備える対策を優先させます

 政府も、JR東海も、大規模災害に備えた交通ルートの二重系化をリニア中央新幹線建設の理由にしています。ところが、建設中の北陸新幹線も、東京~大阪を結ぶ大動脈の二重系化、大規模災害の備えを「目的」の一つにしています。そもそも、人員輸送が主のリニア中央新幹線は、災害時などに必要な物資の輸送には適しません。人員・物資輸送には船舶・航空機、第二東名高速などで代替機能を果たせます。むしろ、直下型地震や南海トラフ地震による災害で、品川・名古屋などの地下駅が安全だという保障はどこにもありません。

 リニア建設ルートには糸魚川―静岡構造線など、熊本地震を引き起こしたのと同等の危険性を有する活断層が多く存在しており、時速500キロという超高速走行中に、活断層が大きく‟ずれる”地震が直撃するリスクは避けられません。JR東海は、活断層の‟ずれ”に対する対策は何も取っていません。

 リニア建設や残土処理によって南アルプスなど地形が大きく変わり、災害を拡大させる危険を警告する研究者も少なくありません。「災害に強い国土づくり」にも逆行しかねない無謀なリニア建設に道理はありません。いま急がれているのは、老朽化がすすむ東海道新幹線の大規模改修です。JR東海が最優先で取り組むべきは同じく危険な活断層を通過する既存の東海道新幹線や在来線などの老朽化対策であり、そこに投資を集中すべきです。

地域住民の「足を守る」公共交通機関として、在来線の安全性・利便性の確保へ投資を振り向けさせます

 「リニア新幹線だけでは採算がとれない」とJR東海の経営トップも明言しています。人口減少社会の到来のもとで、世代別の需要も考慮していない需要予測が、過大であることは明白です。建設中に費用の不足が生じる懸念もあります。そうなると、政府による財政支援(税金の投入)の可能性もあります。JR東海の経営が悪化すれば、公共交通機関としての安全性や公共性がおろそかになる可能性も否めません。とりわけ、JR東海が管轄する在来線の切り捨て、運行本数減などリストラ・効率化の対象にされかねません。

 現在でも、無人駅化が進み、ホームドアの設置すらされていない在来線に投資を振り向けさせます。

環境アセス、住民への説明と合意形成など徹底し、強引な工事着工、開発事業を改めます

 リニア中央新幹線建設事業は、これまでと同じように、結論ありきの開発手続きが行われてきました。環境影響評価や住民への「丁寧な説明」は大前提です。しかし、自治体や住民の意見や要望が、全く反映されないで進められています。

 リニア駅周辺などの再開発についても、地元住民の意見・要望はほとんど無視されています。こうした開発手法を止めさせ、住民参加と合意が徹底され、住民が納得できる開発事業に改めます。

 <参考>

 「リニア新幹線の建設に反対する――東海道新幹線の地震・津波対策、大震災の鉄道復旧こそ

 (2012年05月17日)

整備新幹線と並行在来線

〇 整備新幹線の新規着工区間、延伸計画は見直します

 整備新幹線の新規着工区間は、北海道新幹線の新函館-札幌、北陸新幹線の金沢-敦賀、九州新幹線長崎ルートの諫早-長崎の3区間で、その総事業費は3兆400億円にのぼります。そのうえに、北陸新幹線が2263億円(19%増)、九州長崎新幹線も1188億円(24%増)の追加費用が発生しています。さらに、建設費は2兆1000億円と言われる北陸新幹線の敦賀~大阪間のルートが決められ、国が調査費をつけるなど建設に向け動きがすすんでいます。

 整備新幹線の建設財源は、国・地方自治体の負担とともに、運行中の新幹線施設の貸付料収入などを充てます。この貸付料収入は、新たな新幹線建設費に充てるべきではありません。国の借金に付け替えられた旧国鉄の長期債務(約18兆円)の返済などに充てるべきです。

 また、国交省の試算でも新規建設に係る費用便益比(B/C)は、1.1とギリギリで、採算性についても疑問視されています。18年度の試算では北陸新幹線が0.9、九州長崎新幹線が0.5に低下。もはや建設継続の正当性が問われる事態になっています。高速道路や空港など既存の交通インフラとの関係をどう整理するかなど総合的な議論もないままです。

 さらに、この3区間をめぐっては、JRからの並行在来線の経営分離に“同意”することを沿線自治体に強要し、並行在来線の存廃も、経営形態もあいまいなまま、多くの住民の批判を無視して建設着工を認めてしまいました。こうしたやり方を含め、建設計画の見直しを求めていきます。

〇 並行在来線の経営分離を前提とせず、JRに社会的責任を果たさせる

 整備新幹線着工の条件として、並行在来線をJRから経営分離することが前提とされています。経営分離は、JRに地方ローカル線の切捨てを認め、儲けを保障する企業優遇策です。地域住民の足を守るのは、行政府の責務であるとともに、公共交通機関であるJRの社会的責任でもあります。そのため、経営分離を前提とする「政府与党合意」を見直し、JRに社会的責任を果たさせます。

航空・空港

安全・公共性を優先した航空・空港政策を

 これまでの自民党政権による交通・運輸政策は、大企業・財界の産業支援が政策の中心で、過大需要予測に基づく空港・港湾を全国各地につくってきました。一方で、グローバル化が進展し、中国、韓国などでハブ空港・ハブ港湾化がすすみ、物流等の拠点機能は、アジアの主要都市に移行しました。これに対抗できる空港・港湾の再興をめざし、大都市圏空港の拡張整備、スーパー中枢港湾整備などへ重点投資してきました。

 民主党政権後の安倍自公政権は、「国際競争力の強化」をかかげ、首都圏空港整備や国際コンテナ戦略港湾などグレードアップ化、投資の絞り込み、重点化を「骨太の方針」に示して、この方向をいっそう強力に推し進めています。

 政府は、LCC(格安航空会社)の参入促進をはじめとした徹底したオープンスカイを推進するため、100項目の安全規制の緩和や首都圏空港を更に容量拡大するなど、前のめりの姿勢を強めています。

首都圏空港の更なる増便・拡張ありきを改め、空の安全、住民の生活環境を優先し、一極集中の是正を

~羽田空港の都心ルート変更、成田空港の深夜飛行制限の緩和を撤回し、「機能強化」の見直し・転換を求める~

 安倍政権は、「首都圏空港の機能強化」として、羽田空港と成田空港の発着回数8万回増便(2020年までに)と滑走路増設を計画しています。羽田空港は、国際線の昼間時間帯を年間3.9万回増便するために、現在の海上ルートから都心上空に飛行ルートを変更して、新宿や渋谷、品川など都心部から埼玉県南部の市街地上空、川崎コンビナート上空を超低空で飛行させようとしています。5本目の滑走路を増設することも検討しています。成田空港は、年間約4万回を増便し、3本目の滑走路増設とあわせて、夜間に航空機を飛ばせない時間を7時間から4時間半に短縮する夜間飛行制限の緩和を提案しています。

 首都圏空港は、今でも混雑しています。航空機が住宅の密集する都心上空を低空で飛行すれば、騒音被害や落下物の危険をまき散らすことになります。これ以上、深夜の飛行制限を緩和すえば、静かな夜、睡眠時間を奪うなど生活環境を破壊します。最近の航空機パネル落下事故が相次ぎ、住民は、心配し、大きな不安を訴えています。

〇住民との約束を反故---住民無視、不在の住民合意のないまま強行することは、絶対認められない

 もともと空港整備は、航空機の騒音、墜落、落下物など住民生活、環境に対する配慮、住民との合意形成が前提です。そのため、羽田空港は、沖合展開の際に、都心上空ルートを避け、東京湾海上のルートを選択し、自治体と「確認書」を結んできました。成田空港も、周辺住民の生活環境を守るため、周辺自治体や住民との協議において、2013年に「確認書」を結び、夜間飛行を制限する措置をとってきました。

 ところが、今回、政府は、増便・増設を前提にした説明に終始し、一方的に住民や自治体に政府案を押し付けようとしています。これまでの住民との約束を反故にし、根底から覆すものと言わざるを得ません。住民無視、不在の住民合意のないまま強行することは、絶対認められません。

〇首都圏の空の安全を脅かす---混雑状態を緩和し、余裕を持って運航できる安全最優先の機能強化を

 政府の航空需予測では、首都圏空港の空港処理能力(75万回)が限界に達するのは、2020 年代前半だと見込んでいます。2020年までに4000万人の訪日外国人客を受け入れる目標は、容量拡大しなくても現状のままでも可能です。あえて20年までに8万回増便する必要はありません。羽田空港は、航空会社が要望する昼間時間帯が混雑し満杯状態にあるからです。成田空港は、夜間飛行制限の緩和による増便はカウントされておらず、24時間利用できる空港に近づける狙いがあるからにほかなりません。首都圏空港の現行の処理能力は、都心上空飛行禁止や夜間飛行制限など生活環境を守る約束のもとで許容されてきたものです。航空会社などの要望に応えるために、住民に犠牲を強いて処理能力を向上させるというのは本末転倒です。

 政府は、「東京湾上空は大変混雑」「新しい滑走路を作ったとしても、それだけでは便数を増やすことはできません」(羽田のこれから)と、都心上空ルート変更の必要性を説明しています。航空管制の指示で離発着する航空機の混雑は、瞬時の判断を一歩間違えば、大事故につながる危険性も高くなります。都心上空ルートに変更することで、混雑、危険度を軽減できるわけではなく、墜落や落下物の危険を増すだけです。

 羽田空港の機能強化で優先すべきは、増便のための容量拡大ではありません。今やるべきは、首都圏空港の混雑状態を緩和し、管制も機長も余裕を持って運航できる安全最優先の機能強化です。

〇地方の活性化、東京一極集中の是正、安全安心の機能こそ強化を

 首都圏空港にヒト・モノ・カネが集中すれば、東京一極集中を加速することは目に見えています。国際金融都市構想など外資系金融会社等の誘致など都市再生・再開発事業が目白押しで、超高層オフィスビルも都心のいたるところで建設されています。首都圏空港を国際線と国内線との中継拠点とする「際内航空ネットワーク」を強化すれば、地方の活性化や一極集中の是正にも役立つどころか、地方から東京へ流出するストロー現象も加速されるだけです。

 訪日客の多くが東アジア、東南アジアなど近隣諸国である現状からすれば、地方の空港へ直行する航空路を結ぶことは難しくありません。多くが赤字経営の地方空港に、直結する航空旅客が増えることのほうが地方活性化に役立つのは明白です。

 安倍政権の成長戦略により、航空需要の増加を理由にして、空港の容量を拡大して、増便や拡張をすすめるなら、次から次へ野放図な税金・公的資金の投入が懸念されます。いま、緊急に求められているのは、首都直下型地震など大地震に備えた羽田・成田空港施設の耐震改修や老朽化対策など空港機能の安全安心です。テロ対策などセキュリティ、保安対策、航空管制の体制強化なども重要です。

地方空港――空港の民営化(コンセッション方式)に反対する

 国と地方が管理する空港は、全国に98空港もあります。採算を度外視した過大な需要予測によってつくられましたが、その多くが、いまでも採算が取れず赤字経営を続けています。

 政府は、空港の事業運営権を民間に売却する(コンセッション契約)などで採算がとれる空港経営をめざしています。しかし、実際には、採算の取れる事業分野を民間企業に売却し、利潤獲得のために利活用させるもので、空港の安全性や公共性を確保する公的な責任をあいまにするものです。

 「民活」方式の失敗で巨額の負債を抱えた旧関西空港と国直轄の伊丹空港を民営化・統合し、新関西国際空港(株)が発足しました。仙台空港も民間売却しました。福岡空港や高松空港、神戸空港なども動き出しています。

――離島航空路など住民の空の足を確保する公共交通として必要な空港は、維持・存続させ、支援を強化します。

――空港の民営化(事業運営権売却・コンセッション方式)に反対します。

――空港の安全対策、航空機の騒音対策など住民が安全・安心して暮らせる周辺対策を優先して取り組みます。

日航問題 安全脅かす不当解雇

 2010年1月に会社更生法の適用を受けた日本航空は、企業再生支援機構による3,500億円の出資など公的支援を受けて、12年9月に再上場を果たしました。

 日本航空は、11年3月期連結決算では1,884億円の営業利益をあげ、更生計画を大幅に上回りました。さらに、2012年3月期には、2,049億円もの利益となり、13年3月期も1,952億円となりました。

 これだけの大儲けをあげた最大の要因は、1万6000人の人員削減などリストラによるコスト削減にあります。このリストラは、すでに人員削減目標も達成し、更生計画を上回る利益(10年12月時点で1586億円)をあげ、稲盛会長が解雇の必要がないことを認めていながら、165人のパイロットと客室乗務員を12月31日に解雇を強行するという不当極まりないものでした。「退職強要」の人権侵害や労動組合への支配・介入する不当労働行為など繰り返したうえの暴挙でした。この「整理解雇」は、たたかう労働者・労動組合を狙い撃ちにした労働者・国民の権利を奪う攻撃であるともに、航空の安全運航を支えてきたベテラン労働者を対象にした航空の安全を軽視する『利益なくして安全なし』を実践するものでした。不当解雇撤回闘争に立ちあがった労働者の闘いは、航空の安全、国民のいのちと安全を守るたたかいでもあります。

 日本航空は再上場しましたが、安全性と公共性の確保を大前提にした経営こそ求められています。人員削減のやりすぎとベテランの不当解雇によって、現場では過密労働がはびこり、不安や喪失感がひろがり、退職者が急増し、人員不足が深刻になっています。骨折したパイロットがそのまま操縦するなど利益優先で安全を軽視する運航も散見されます。

――日本航空が公共交通機関として、航空の安全と公共性の確保を最優先するよう監督・指導を強めます。

――日本航空に不当解雇したベテラン労働者を職場に戻すよう指導させます。

港湾・海運政策

国際競争優先から国民生活、地方経済重視の港湾・海運政策へ

 国際物流では、コンテナ貨物船やバルク(バラ積み)貨物船など船舶の大型化が急速に進むなか、これに対応できる国際戦略港湾(京浜港・阪神港)を整備し、2018年度末までに6、217億円が投入されています。総事業費も大幅に増大しています。「我が国の『港湾力』を最大限に発揮し、アジア・世界からの成長を取り込むため」としていますが、近隣諸国の大型港湾に奪われた貨物を取り戻すため、というのが本音です。

 コンテナ貨物を集荷するために、高規格道路の整備などもすすめるとしています。国交省は、地方港湾の貨物を、内航フィーダー輸送(支線輸送)の強化で、国際戦略港湾に集約するなどとしています。しかし、自動車産業が釜山港等の活用を考えて九州に事業所を集約するなど、円高等による輸送のコスト削減圧力が強まっている状況の下では、簡単な話ではありません。

 また、「港湾運営会社」を設立するなど、港湾運営の民営化を進めています。国際競争力強化や効率化と称して、もともと公共財である港湾を、特定の民間事業者の儲けの場として提供する懸念が払拭できません。これまでも規制緩和がすすみ、コスト削減競争が激化し、港湾で働く労働者に犠牲が押し付けられてきましたが、民営化で更に労働者の雇用・労働条件は深刻化することが危惧されます。

 港湾整備事業も90年代以降、アメリカの要請などによる公共投資拡大策で、「船の来ない港」「1,000億円の釣堀」など揶揄される港を全国各地につくってきましたが、既存の港湾をどのように活用していくか検討する必要があります。釜山などアジアのハブ港湾を中継すれば、直接、地方都市への貨物輸送が可能になり、三大都市圏の港湾に荷揚げあされた荷物を陸路でトラック輸送しなくても済みます。モーダルシフトとしての内航海運の利活用の促進にもつながります。

――国際戦略港湾事業は中止を含め抜本的に見直します。新規の大型港湾開発事業から、既存港湾の耐震化・老朽化対策など維持更新事業に重点を切り替えます。

――港湾運営の「規制緩和」・民営化に反対し、労働者の雇用労働条件を守ります。

――物流貨物の大都市圏港湾集中から、地方に直結した物流へ転換します。

――近隣国の港に奪われた「荷物を奪還する」など競争至上主義の発想ではなく、すでにハブ港となっている近隣諸国の港湾を活用し、日本の既存地方港湾と直接結ぶ輸送を重視するなど、「協調」による物流戦略に転換します。

――モーダルシフトや地域の循環型経済を推進するため、内航海運の振興を強めます。

  

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