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日本共産党

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32 環境

持続可能な経済・社会を実現するため、環境問題に真剣に取り組みます

2019年6月

 21世紀の世界を持続可能な経済・社会とするためには、温室効果ガスの大幅削減を実現する対策など地球環境の保全の見通しをたてるとともに、国内の原発事故への対応や公害被害の早急な救済、アスベスト対策や大気・土壌汚染対策など身の回りの環境対策に真剣にとりくむことが必要です。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守るとりくみを強化します。そのためにも環境汚染問題の解決には、少なくとも、(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3) 国民・住民の参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で次のようなとりくみを強めます。

温暖化被害の抑制のため、2050年に温室効果ガス排出「実質ゼロ」をめざす

 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)は2015年12月に、工業化前(1850年ごろ)と比べて気温上昇を、今世紀末に2度を大きく下回るようにし、1.5度に抑える努力をするというパリ協定を採択しました。今世紀後半にガス排出量を実質ゼロにすること(森林や海などの吸収分を上回る温室効果ガスの排出はしない)を決めた点と合わせて、「歴史的合意」と評価され、2016年に発効しました。先進国だけに削減数値目標を義務づけた京都議定書(1997年採択)と違い、途上国を含む世界のすべての国が温暖化対策に取り組むことで合意しています。

 現在すでに世界の気温は約1度上昇し、現在の各国の目標のままでは、100年後には3度の上昇になります。3度上昇すれば毎年45億人が熱波に苦しむなど、大きな影響が出るとされています。

 IPCCが昨年公表した「1.5度特別報告書」は、世界の平均気温の上昇が産業革命前に比べ2度上昇した場合、異常気象や海面上昇などによる被害リスクが、1.5度上昇の場合よりもはるかに高まることを警告しました。同報告書は、気温上昇を2度より十分低くして、1.5度に抑える努力をすることが焦眉の課題であり、2050年ごろには温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすることが必要だと強調しています。

 6月に開かれたG20(20カ国・地域首脳会議)で議長役を果たした日本には、温暖化対策で世界をリードする役割を求める声が広がっていましたが、安倍政権の後ろ向きの姿勢は変わりません。G20のエネルギー・環境関係閣僚会合は、プラスチックごみ削減の枠組みづくりなどを盛り込んだ共同声明を採択しましたが、地球温暖化防止の国際的枠組みである「パリ協定」の目標達成に向けた具体的方向性は示されませんでした。というのも、安倍政権は、G20を前に、国連に提出する「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定しましたが、世界の水準から大きく立ち遅れた内容だからです。政府が16年に決めた、50年までに温室効果ガスを80%削減するという目標を変えませんでした。2030年度の削減目標は2013年比でわずか26%です。主要国で最低レベルであり、引き上げようという姿勢が見られません。石炭火力発電「全廃」の言葉が、経団連など財界の圧力でなくなったと指摘され、大きな問題になっています。石炭火力発電は25基もの新増設計画があります。長期戦略はこの動きにもお墨付きを与えるものです。これでは、26%削減目標の達成さえ不可能となります。

 世界では多くの国が脱石炭火力発電に踏み出しています。英国とカナダの提唱によって17年に発足した「脱石炭連盟」は現在、欧州諸国やメキシコなど30カ国、ニューヨーク州など22自治体、大手民間企業など28社が加盟、多くの国が25~30年に石炭火力発電ゼロを掲げています。再生可能エネルギーの普及も加速し続けています。

 EUは、1990年を基準年にして、温室効果ガスを2050年までに80~95%を削減する、そのため30年までに40%削減するという目標を設定したのもその強い自覚があるからです。政府が後ろ向きの米国でも、多くの州政府は積極的な再生可能エネルギー拡大政策を展開しています。

 安倍政権の温室効果ガス削減目標は、2030年までに「2013年比で26%削減」ですが、これを国際的な基準である1990年比に直すと、わずか18%削減にすぎません。日本の対応の抜本的見直しが求められます。「長期戦略」では、あいかわらず「長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」のままですが、これは「1.5度特別報告書」が求める排出「実質ゼロ」には遠く、「実質ゼロ」の達成を目指すべきです。そもそも政府の2030年削減目標のスピードでは、2050年の8割削減さえ達成できません。NGOが、2030年までに日本が野心的に温室効果ガスを1990年比で「少なくとも40%~50%削減」すべきだと主張しているのは当然であり、日本共産党は、その実現に努めます。

 安倍政権は「長期戦略」で、国民の多くが反対している原発の再稼働について「国も前面に立ち」推進する立場を鮮明にしており、「原子力の利用を安定的に進めていく」としています。再稼働を進める九州電力が太陽光発電の「出力制御」をくり返しているように、原発は再エネ拡大の妨げになっています。原発固執はやめるべきです。また石炭火力については、世界的な「脱石炭」の流れのなかで、2050年まで運転の続く新規建設は当然やめるべきであり、既存の石炭火力についても計画的に廃止するよう取り組むべきです。

 カーボンプライシングを巡っては、CO2排出削減の有力な方策の一つです。これまでも「地球温暖化対策の課税」として、石油石炭税の上乗せ措置が実施されましたが、課税効果はほとんどなく、国際的にはまだ不十分なものにとどまっています。同時に、原油の価格の急騰などの際には、課税がなくともエネルギー消費抑制効果が十分にあることを考慮し、税率を柔軟に変動できる制度を検討します。

 HFC(代替フロン)は、オゾン層破壊効果はないが、高い温暖化効果があることからモントリオール議定書の規制対象物質に追加されました。先の国会でフロン排出抑制法が改正されましたが、業務用冷凍空調機器の廃棄時の回収促進だけにとどまりました。冷凍冷蔵庫や食品製造工場などでのノンフロン化、低GWP化を推進します。また、HFCの生産メーカーの段階的削減を前倒しに進め、脱フロン社会の構築を目指します。

原発事故による被害から住民を守る

 除染で取り除いた汚染土や、放射能を帯びた廃棄物の仮置き・処理については、住民の合意が大前提です。とくに仮置き場にある汚染土壌は本来、中間貯蔵施設に搬入する約束になっていたにもかかわらず、「実証事業」と称して路盤材などに「再生利用」することを国が上から押し付けるようなことは、あってはなりません。東電を免責した避難困難区域での除染への国費投入は容認できません。放射性物質汚染対処法の抜本的な見直しを求めます。東電と国が最後まで、責任をもって対応することを強く要求します。環境基本法における放射線例外規定の削除によって、放射能汚染も公害として扱われることになっていますが、廃棄物処理法や土壌汚染対策法など多くの実施法が未だに適用除外規定が存続しており、環境基準の設定など具体的な法整備が行われていません。必要な検討を行うべきです。  

 2012年6月、「原子力事故による子ども・被災者支援法」が制定されましたが、すべての被災者・被害者を対象とすべきであり、福島県の全域を対象とするのは当然ですが、上からの「線引き」を押し付けるようなことはせず、支援すべきです。被ばく推計をする場合、放射性の全核種を対象とし、内部被ばくも含めます。とくに子どもたちが生涯にわたって健康診断を受けるさい、乳幼児健診や学校診断、定期健診のなかに、これにかかわる健康診断を組み入れ、診断に必要な情報の状況など、実施のためのバックアップ体制を厚くし、さらに精密な検査、専門的な検査も可能になるようにします。具体的な支援として、民間借り上げ住宅・公営住宅の提供の期間の延長、避難・保養・検診・家族と会うための移動費補助など、被災者の実情に合った支援をします。そのため、行政だけでなく被災者・支援者の代表を含めた恒常的な協議機関を設置すべきです。

 ※原発政策については、個別分野政策「30、原発問題」を、再生可能エネルギーやそれかかわる環境保全、石炭火力、電力システムなどについては、「31、エネルギー」をご参照ください。

廃プラスチック対策を強化し、“焼却中心主義”から脱却し、ごみを出さないシステムの確立をめざす

 世界では年間3億8千万トンのプラスチックが生産され、その半分が一回限りの使い捨てとされています。毎年800万トンが陸から海へと流れ込んでいます。海洋生物がポリ袋やプラストローを飲み込み、衰弱し死に至るケースも出ています。プラスチックにはさまざまな有害化学物質が添加されているほか、海を漂っている間にPCB(ポリ塩化ビフェニール)など海水中の有害化学物質が付着し、付着したプラごみを飲み込んだ海鳥が毒される例もあります。5ミリ以下のマイクロプラスチックは魚や貝からも見つかっています。

 生態系に与える影響は深刻化しており、海洋プラごみをはじめプラごみ対策は、地球の将来がかかった大問題です。有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するバーゼル条約が5月に改定され、汚れたプラスチックごみが規制対象に加えられました。発効は2021年で、国内処理が原則となり、相手国の同意のない輸出は禁止されます。多くのプラごみの処理を輸出に委ねてきた日本は、従来の対策を大本から見直すよう迫られました。

 日本は、1人当たりの使い捨てプラスチックの廃棄量が米国に次いで2番目に多い国です。日本は年間900万トンのプラごみを排出し、約100万トンが東南アジアに輸出されています。ところが東南アジアなどの途上国に輸出された大量のプラごみが、きちんと処理されず、環境や海洋汚染を引き起こしていることが明らかになりました。

 中国が2017年末に輸入を禁止したため、日本国内の処理が追いつかず、プラごみが保管場所に山積みになったり、いまや国内の保管量の上限を環境省が2倍に引き上げるものの、不法投棄されたりするケースが相次いでいます。とくにプラごみの8割近くを占める産業廃棄物には対応しきれていない状態です。国は、山積みになった廃プラスチックを地方自治体の焼却炉で焼却するよう要請していますが、これでは排出事業者の責任が免罪されることになります。

 安倍政権は「プラスチック資源循環戦略」を決定し、6月に大阪で開かれたG20(20カ国・地域首脳会議)で海洋プラスチック汚染対策をテーマにしました。「戦略」では2030年までに使い捨てプラの排出を25%抑制することなどを打ち出しています。

 しかし、プラごみを焼却して、その熱を利用するとして、「リサイクル」の主力に「熱回収」をすえています。今も半分以上が熱回収です。この処理は「最終手段」だと政府自身もいっていますが、最終手段の「熱回収」に依存せざるを得ない方策では限界があります。プラスチックごみの拡散・流失を抑制するためにも、生産の段階から環境に負荷を与えるプラスチックを減らすことが不可欠です。焼却すればいいという姿勢では、自治体の焼却炉の運転の高温化、大規模化をもたらすことになり、処理が難しくなり、自治体財政にとっても重荷になります。ごみの発生を設計・生産段階から削減するためには、自治体と住民に負担を押しつける現行制度を、OECDも勧告している「拡大生産者責任」の立場で抜本的に見直すことが必要です。海へのプラごみ流出についても、日本の現行制度の、どこに欠陥があるのか、徹底した調査と検証を行い、本腰を入れた対策を急ぐべきです。

 世界では、使い捨てプラスチック製品の製造・販売・流通の禁止に踏み込む流れが広がっています。プラ製造企業の自主的努力に任せるのではなく、不必要なプラ製品を生産しないような発生元での削減対策に取り組むべきです。プラ製品の大量生産、大量消費という経済・社会のあり方の転換が求められます。レジ袋については、生産量・使用量を削減するのは当然ですが、消費者の負担増だけで対策とするのではなく、各地での先行する経験をふまえ、国民の理解を高め「マイバッグ」の普及促進などを図る取り組みを政府が行うことで、プラスチックの生産量・使用量の根本的な削減をめざすべきです。

 有害物質が混入した安定型処分場や土壌汚染処理施設による環境汚染、産業廃棄物の不法投棄に歯止めをかけます。違法行為の「やり得」を許さないために、都道府県が徹底した立ち入り検査を実施し、違反者への厳格な監督と行政処分をおこないます。不法投棄のルートと関与者の解明、違反者など排出者の責任による撤去など実効ある措置を実施させます。財源確保のための制度見直しを行い、早期処理を進めます。

 貧困の拡大で空腹を抱えた子供たち・高齢者が増えるのとは対照的に、大量の食品廃棄物に、多くの人が心を痛めています。各地に展開しているコンビニでは、オーナーが賞味期限を見計らって、売れ残りそうになった商品を値下げして売る「見切り販売」で、廃棄される量を減らしたいと思っているのですが、コンビニ本部がみずからの利益を増やすために、見切り販売を認めないため、大量の廃棄ロスを生む要因となっています。廃棄は一般廃棄物として処分されるため、環境への負担になるだけでなく、処分費用に少なくない税金が投入されています。こうした社会・環境への負担を減らすため、コンビニ本部がオーナーのみなさんの要望に応えるよう求めます。廃棄食品の不正転売を防止するため、国は規則の見直しを行いましたが、一連の再生利用の工程が適切に行われるよう、排出者である食品関連事業者の責任を法律上、明記すべきです。

アスベストなど、身近にある有害物質への規制を強め、化学物質基本法を制定する

 アスベスト(石綿)公害については、2008年の提訴以来、国の責任が繰り返し断罪され、国の責任を認める判決が10回も連続で出されています。5つの判決では建材メーカーの責任も認められました。これだけ国が敗訴する判決が相次いでいるのに、国は早期解決を図ろうとしません。

 建材メーカーと国とは、早くからアスベスト建材の危険性を認識しながら規制を行わず、利益のために使用を拡大するにまかせ、暴露防止対策を怠りました。それが、多数の被害者と今後の解体作業における重大な危険性を生じさせたのです。日本のアスベスト対策は、他の先進国に比べて著しく遅れてしまいました。

 アスベスト暴露による中皮腫、肺がん、石綿肺などの疾患は、重篤で進行が速い病であり、亡くなる被害者も多く訴訟の原告の約7割が遺族となっています。早期の救済は、被害者の切実な願いです。じん肺・アスベスト被害者の労働災害認定基準を大幅に緩和し、診断・治療のための医療機関への情報の提供を進めます。国と建材メーカーなどが拠出する資金で、迅速に救済する「被害者補償基金制度」の創設をめざします。

 アスベスト関連法制には、石綿障害予防則、大気汚染防止法、建築基準法などがありますが、いずれも抜本的に強化が必要です。アスベスト除去作業の資格制度化、厳格な調査・報告の義務付けは急務です。

 大規模災害では、事業所からの有害化学物質の流出や解体工事によるアスベストの飛散などが問題になります。阪神・淡路大震災では、解体工事にかかわり、アスベスト特有のがんを発症した労働者が労災認定されています。安全確保の規制を強化します。

 販売・譲渡元事業者に化学物質の有害性や取り扱い方法を示すよう義務付けた、国の「安全データシート(SDS)制度」には罰則がなく、作業で扱うすべての化学物質の内容を示された事業所は全国で半数にとどまっています。化学物質を扱う職場の詳細な実態調査の実施と、SDS制度の厳格化をもとめます。

 豊洲市場での土壌汚染に見られるように、京葉地区などの臨海部での土壌汚染対策が問題となっています。環境省は、産業界などの要望を受けて閣議決定した「規制改革実施計画」に基づき、臨海部の工場敷地内の土壌汚染に対して規制緩和を行っています。本来、工場操業によって発生した土壌汚染は、事業者の責任で処理業者に委託して適正に処理しなければならないのに、過去の埋め立てなどに由来する土壌汚染が点在する敷地内を事業者自らが移動させ、汚染状態を事実上放置できるようになっており、事業者の処理責任を曖昧にするものです。

 化学物質審査製造等規制法で新たに禁止された物質について、代替物質への転換を政府が責任をもって促すべきです。産業界の負担を軽減することを理由に、リスク評価の対象を約1,000種の物質に絞った「スクリーニング型評価」ではなく、危険性評価が必要な全化学物質(約7,000種)に対する網羅型評価を2020年までに終えるよう、取り組むべきです。産業界からの事業の効率化、低コスト化要求を優先にした「総量規制の見直し」を行った規制緩和は、国際的な合意にも逆行したもので許されません。また10億分の1メートル単位の微細粒子であるナノ物質については、健康被害を拡大したアスベストの苦い教訓を踏まえて、健康への影響について対策をとります。予防的原則を明文化し、化学物質の製造や使用量の削減、安全性のデータがない化学物質は市場での流通・使用を認めないなどの理念をもりこんだ化学物質基本法を制定します。

 化学物質による環境汚染がひきおこすとされているアトピーや化学物質過敏症、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックスクールやシックハウスなどへの健康被害の調査と安全対策を強化します。地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。工場跡地や不法投棄が原因とみられる地下水の汚染などの環境汚染にたいして、住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度などを求めます。

 電磁波による健康への影響について、WHO(世界保健機関)は、2007年6月、新たな環境保健基準を公表しました。各国での医学的調査を基に、平均3〜4ミリガウス(ガウスは磁界の強さの単位)以上の磁界に日常的にさらされる子どもは、もっと弱い磁界で暮らす子どもに比べ、小児白血病にかかる確率が2倍程度に高まる可能性を認めています。予防的考え方に基づいて磁界の強さについての安全指針作り、予防のための磁界測定などの対策をとるよう各国に勧告しました。日本でも、この勧告にもとづいて、電磁波に関する環境基準を早急に設定すべきです。そのさい、日弁連が提言したように、電力・電波を利用する側の企業を所管する総務省や経済産業省から独立した組織として「電磁波安全委員会」を設置し、中立・公平な立場から電磁波にたいする安全規制を行い、予防原則にたった暫定規制、住民協議や電磁波放出組織に関する情報公開を制度化し、取り扱うという方式は、原発事故の痛苦の教訓からも妥当です。携帯電話用の無線基地の建設など電磁波の発生源が急増しているなかで、国民の不安にこたえるためにも、電磁波の健康への影響にかんする研究・調査を積極的にすすめるよう求めます。

 高速道路の騒音、振動、低周波音によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。高速道路床全体の振動を抑える制振装置を設置し、低周波音の健康への影響については、調査・研究を強め、環境アセスメントでの影響調査に反映させるなど、本格的な対応が必要です。

水俣病被害者の全面的な救済に力を尽くす

 水俣病は公式確認から60年の歳月がたったいまもなお、補償、救済を求める被害者が多数存在しています。同じ魚を食べていたのに、住んでいる地域で線引きされ、患者と認められないために苦しんでいる人たちが大勢います。

 すべての水俣病被害者を救済するためには、一刻も早く、水俣病特措法判定における地域や年代ごとの申請件数や該当者数、非該当の判定理由、症状などを公表、分析することが必要です。何よりも不知火海沿岸の住民悉皆健康調査を実施することは不可欠です。

 公健法に基づく認定基準が厳しすぎるために患者として認められず、低額の一時金や医療費などの救済しか受けられなかった被害者が7万人以上います。今なお認定申請や裁判に訴える人も多数いるのは国の認定制度に問題があるからです。水俣病問題の全面解決とすべての被害者救済のために、患者や被害者の声に耳を傾け、国の新指針や認定基準をあらためます。被害者が高齢化しているなかで、一刻も早く救済が迫られており、すべての水俣病被害者を救済する恒久的枠組みの救済策が必要です。

 水俣病が深刻な健康被害や環境汚染をもたらしただけでなく、被害者への差別や住民間の軋轢による地域社会の疲弊など様々な影響を今も与えています。水俣病に対する偏見、差別を解消するため、水俣病問題で疲弊した地域で、人と人、人と自然の結びつきを再生し、普及啓発活動などを引き続き行っていくことが大事です。

 救済を求める被害者がいる中で、チッソが、100%子会社である「JNC株式会社」の株を他に譲渡することを認めることは、加害企業としての責任の放棄を認めることになり、到底認めることはできません。

 水俣病特措法以降も水俣病問題は深刻な状況にあり、超党派による「水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会」が活動を続けていますが、深刻な状況を十分知っている国会議員が多いとはいえません。被害者を一刻も早く救済するためにもさらに多くの議員の参加する場を設けることが必要です。

大気汚染患者を救済し、自動車メーカーに社会的責任を果たさせる

 大気汚染公害の裁判は大阪・西淀川、川崎、兵庫・尼崎、名古屋南部で判決があり、2007年には東京で和解が成立したにもかかわらず、解決はすすんでいません。大気汚染の被害者は、長期にぜんそくに苦しみ、重い医療費に苦しんできました。

 「全国公害患者の会連合会」や各地の大気汚染被害者94人が、全国一律の医療費助成制度を求めて、国、自動車メーカー7社を相手に、公害紛争を取り扱う公害等調整委員会に、公害調停を申し立てました。ぜんそくは治らないともいわれる病気で、発作のたびに入退院を繰り返し、薬代もかかります。

 東京都は和解が成立した後、国や自動車メーカーなどと協調して2008年から患者の自己負担を全額助成する独自の制度を始めました。しかし東京都以外では、医療費の助成制度がない自治体がほとんどで、今も未救済の患者が大量に発生し、放置されている全国一律の助成制度は不可欠です。都の助成額も縮小されてきて、2018年度からは月6,000円までは自己負担にされました。

 患者を放置してきた国に対して大気汚染公害医療費救済制度の創設を要求し、自動車メーカーには相応の財源負担を求めます。

大規模開発による環境破壊をやめさせ、生物多様性を守る

 長崎県の諫早干拓訴訟で、最高裁は6月、堤防の開門を認めない判決を出しました。2010年に福岡高裁の判決で確定した開門を命じる判決があり、あい反する内容の判決が併存する事態になりました。

 堤防閉め切りにより赤潮が増えてヘドロが堆積し、タイラギ漁ができなくなるなど漁業被害が広がり、漁民の収入も激減して、苦しい生活に追い込まれています。国は1,000億円投じて対策をとりましたが、水質は改善されず、有明海を再生するには開門しかありません。こうした大規模公共事業による環境破壊を繰り返してはなりません。

 リニア中央新幹線建設はJR東海が建設主体ですが、安倍政権は巨額の公的マネーを投入して、大阪開通を大幅に前倒しするとしています。しかし、リニア新幹線建設は、環境への深刻かつ重大な影響を及ぼそうとしています。環境省も「環境影響は枚挙にいとまがない」という意見書を出しています。地下トンネルで貫く工事によって大量発生する残土の処分先が決まっておらず、大深度地下工事による住宅地域での酸欠空気の発生、建設による水枯れの問題や、大規模工事の期間中多くの車両が行き交うことによる環境破壊などについて、沿線7都県(東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知)の住民や自治体などが多岐にわたる問題を具体的に指摘しています。ところが、JR東海も政府も、まともに答える姿勢がありません。リニア建設や残土処理によって南アルプスなど地形が大きく変わり、災害を拡大させる危険を警告する研究者も少なくありません。リニア建設ルートには糸魚川―静岡構造線など日本でも有数の活断層が多く存在しており、時速500kmという超高速走行中に、断層が大きくずれる巨大地震に直撃されたらどうなるのか、安全上も問題があります。本格着工前の今のうちに、政府は見直し・中止を検討すべきです。

 日米両政府は、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地の建設を強行しようとしていますが、名護市辺野古・大浦湾一帯が世界でも極めて生物多様性の高い貴重な地域です。その保全は、生物多様性条約の締約国である日本の責務です。新基地建設に反対し、辺野古沖の貴重な干潟やサンゴなどの保全のために力をつくします。またアメリカ軍がオスプレイの着陸帯を建設する沖縄県の北部訓練場は、国立公園の指定を受け(米軍基地をのぞく)世界自然遺産の登録の候補地となっている「やんばるの森」なかでも自然度が最も高い地域です。北部訓練場を除いて一部が返還され国立公園に指定されることになりましたが、着陸帯や軍事訓練で自然が破壊されることに断固、反対し、一括返還を要求します。

 東京オリピック・パラリンピックのために羽田空港の増便をするとして、東京都心部を低空飛行することを国は計画しています。低空飛行により、落下物や騒音、大気汚染など区民生活に大きな影響が想定され、住民の合意抜きに強行することに反対します。

 生物の遺伝資源を利用した医薬品などの開発によって得られた利益を、資源の提供国と利用国で配分するルールを定めた名古屋議定書が2014年に発効しました。関係各省の合意だけで国内担保法の制定には至りませんでした。名古屋議定書にふさわしい国内担保法の制定をめざします。先の国会で、海洋保護区10%の目標を達成するために、自然環境保全法を改正しましたが、海底資源開発による保護区の見直しを認める余地を残しており、十分な管理ができるのか懸念されます。

 これまで開発の対象と思われてきた湿地は、水の浄化など、自然の恵みをもたらすものであり、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の吸収にも重要な役割を果たしていると再認識されるようになり、保全が重視されてきています。登録ずみの湿地の保全にとどまらず、ラムサール条約を通して広い視野で、環境について考えることが求められています。諫早干拓計画を撤回し、水門の開放で有明海の豊かな海を回復するよう、政府はただちに実行すべきです。干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。

 人類生存の基盤である生態系を守るため、環境破壊をひきおこすような大規模開発をやめさせるとともに、改定された環境アセスメント制度に、欧米で導入されている「政策の検討段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の完全導入を求めます。電力業界の要望を受けて閣議決定した「新成長戦略」に基づく、「既存の石炭火力発電のリプレースだから」という口実で、一年以上アセス期間を短縮する環境アセス手続きの規制緩和が行われ、石炭火力発電所の建設計画に利用される懸念があります。大量のCO2し有害物質の排出で健康・環境破壊が懸念される石炭火力発電の環境アセスが、計画中止を含む実効あるアセスでないことは重大な問題です。温暖化対策に逆行する石炭火力発電所の計画はきっぱり中止すべきですが、環境アセスの制度としてもきちんと整備すべきです。電力業界の圧力に屈して、発電所を戦略アセスメントの対象からはずすようなことがあってはなりません。

 瀬戸内法ができて以降も埋め立ては続き、瀬戸内海の生態系に重大な影響を与えています。法律を改正しましたが、「埋め立ての禁止」「海砂利採取の全面禁止」「廃棄物の持ち込み禁止」をしていくものとはなっていません。ことが重要です。瀬戸内海などからの辺野古への埋立て土砂の搬出に反対し、あわせて、生態系の回復・復元を計画的に進めていきます。その際、回復・復元の過程での影響をよく検討し、住民もふくめた関係者(ステークホルダー)の英知を集め、たとえば藻場、干潟、砂堆などの形成過程や条件、それが生態系でどのような役割をもっているのかなどの基礎的な調査・研究とモニタリングを繰り返し、その結果を一段と新しい計画に適切に生かしていきます。岩国基地の拡大強化と艦載機移駐に反対し、瀬戸内海の静かな環境を守ります。

「オーフス条約」の早期批准で、環境保全・再生への市民参加を保障する

 「オーフス条約」は、1992年に合意された「環境と開発に関するリオ宣言」の第10原則に基づき、環境分野への市民参加の保障のため、情報へのアクセスや意思決定への市民の参加、裁判を受ける権利の保障などを盛り込まれています。2001年に発効し、EU諸国や旧東欧諸国など47の国と地域が批准を終えています。日本も早急に批准すべきです。

日本にも影響が及んでいる東アジアの環境保全のために、協力を強める

 東南アジアにおける海洋プラスチック汚染をはじめ、経済的なつながりをもつ地域としてのプラスチックごみ対策が問題になっています。また日本海や東シナ海を越えてくる黄砂や窒素酸化物が、日本国内の自動車排ガス対策の遅れと相まって、日本の国民ののどや鼻に影響をあたえ、酸性雨や光化学スモッグの原因になっています。モンゴルや華北地域の砂漠化がすすんでいることで悪化する黄砂被害や、急速な経済発展をすすめる中国での大気汚染の深刻化が、国境を越えて日本にも影響を与えているといわれています。

 東アジア全体の環境を保全するために、政府は、公害防止の経験や技術・研究の成果を生かし、緑化事業や東アジア諸国の人びとの健康を守るとりくみを提起し、実効性のある支援を強めるべきです。東アジア諸国に進出して活動している日本企業も、その国の環境にかかわる規制を遵守するだけでなく、適正な環境基準の設定に積極的に応じることで、社会的に貢献すべきです。

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