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日本共産党

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赤旗

➡各分野の目次

31 エネルギー

再生可能エネルギー本格導入、省エネ徹底、電力の「自由化」

2019年6月

 エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤ですが、日本のエネルギー自給率はわずか8%(2017年度、原発は含まない)にすぎません。

 日本共産党は、再生可能エネルギーを本格的に大量に導入するとともに、むだなエネルギー需要を削り、エネルギー効率の引き上げや省エネの徹底で、地球の環境・資源の上で持続可能な社会を目指します。それによってエネルギーの自給率の引き上げを図ります。

 2011年3月11日の東日本大震災で東京電力福島第一原発が爆発し、それによる広い地域への放射能の飛散によって、「原発ゼロ」を望む国民の世論が高まっています。安倍政権は、2018年7月、国の中長期のエネルギー政策の指針となる第5次エネルギー基本計画を閣議決定しました。計画では、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、永久化する姿勢を示しながら、他方で、再生可能エネルギーについて、初めて「主力電源化」と明記しました。ところが2030年度の電源別発電量の割合では依然として原発が20~22%で、再生可能エネルギーによる電力は22~24%にすぎません。これでは、福島の原発事故以前と大差ないままです。安倍政権のエネルギー政策は、国民多数の原発ゼロの願いに反するのみならず、既存の原発の更新(リプレース)や新増設を見越したものとなっており、重大です。

すべての原発からただちに撤退する政治決断を――「即時原発ゼロ」を実現する

 各分野の政策「30、原発問題」をご参照ください。

再生可能エネルギーの大量導入を図り、2030年までに電力の4割に

  2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、2020年から地球温暖化対策の「枠組み」となるパリ協定が採択されましたが(2016年11月発効)、同時に再生可能エネルギーをめぐって大きな変化がありました。COP20までは化石燃料を焦点に、自国経済への制約や負担回避を目的とした駆け引きが繰り返されていたのですが、COP21では再生可能エネルギーの大量導入で、エネルギーの変革を進める取り組みが主流となりました。今や温暖化対策は、成長と雇用増加と地域振興へのステップと位置づけられているのです。

 たとえば「RE100」は、目標年を定めて、使用する電力のすべてを再生可能エネルギー由来の電力で賄うことを公約した企業の連合体ですが、すでに世界で179社以上が加盟し、アップルやヒューレット・パッカードなどのグローバル企業が名を連ねています。こうしたグローバル企業は、各国に工場や下請け企業を持っており、各工場や下請け企業にも、再生可能エネルギーの電力を使うことを条件づけてくることが予想されます。その条件が満たされなければ、工場移転や下請け関係の打ち切りが懸念されます。日本企業ではリコー、ソニー、富士通、イオン、丸井、城南信金など19社が加盟しています。RE100の取り組みが拡大していけば、再生可能エネルギーの電力供給が豊富であることが、グローバル企業にとっても拠点選びの重要なポイントになります。国内メンバーとアップルは「2030年の日本の電源別発電量の再生可能エネルギーの比率を「22~24%」から「50%」に引き上げるべきだと提言しています。

 安倍政権の原発輸出政策がまれにみる失敗に終わったように、発電コストにおける原発の高騰、再生可能エネルギーの低下・優位は、もはや明らかです。世界ではすでに太陽光・風力は原発よりも安く、1kW時あたり10円未満で供給されています。資源エネルギー庁の資料でも、「世界では…太陽光発電・陸上風力発電ともに1kW時あたり10円未満での事業実施が可能になっている」と明記しました。政府の極めて低い見積もりである原発の発電コスト1kW時あたり10.1円を下回りました。「原発の発電コストは安い」という主張を、政府自身が否定したことになります。日本の政府・財界が気候変動の問題を依然として、化石燃料か原発かという枠組みでとらえていることは、国際的な動きとの間にズレを生んでいます。日本の多様で豊かな再生エネルギーの潜在力を生かし、再生可能エネルギー大国へと切り替えます。

 再生可能エネルギーに本格的に取り組んできたEU諸国とくらべ、導入実績で大幅に後れを取りました。日本の電力供給にしめる再生可能エネルギーの比率は18%(2018年)です。デンマークの59%、ドイツの41%、スペインの38%、イタリアの35%、イギリスの33%などを、大きく下回っています。

 それにもかかわらず、大手電力会社は、「電力が不安定になる」などという口実で、再生可能エネルギー電力の接続を制限・拒否し、政府もこうした電力会社の姿勢を容認・支援しています。現に、九州電力は昨年10月13日に初めて再生可能エネルギーの出力抑制を実施し、それ以来、玄海原発3号機が定期点検に入る前日の今年5月12日まで、7か月間に68日も抑制を実施しました。日本ではドイツはじめ欧州のような再生可能エネルギー“優先接続・優先給電”ではなく、“原発優先給電”の仕組みになっており、「原発固執政治」が、再生可能エネルギー普及の最大の障害となっています。

 安倍政権は、原発の抱える深刻な問題点をわきに置いたまま、再生可能エネルギーと原発を合わせて“CO2のでない”「非化石電力」として一くくりにした取引市場や、原発・石炭火力の電力を、「安い電気」として大手電力から新電力会社に供給する「ベースロード電源」市場を創設しようとしており、世界の動きに反して原発・石炭火力の延命を図るものです。

 今後の目標として、電力供給における自然エネルギーの割合を、ドイツは2030年までに65%、フランスは2030年までに40%、EU全体は2030年までに50%以上、アメリカでもカリフォルニア州は2030年までに60%、ニューヨーク州は50%を目指しています。

 日本の地域それぞれの条件にあった再生可能エネルギーの開発・利用を計画的に拡大することに、エネルギー政策の重点をおきます。太陽光・熱、小水力、風力、地熱、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。この再生可能エネルギーの活用を地元の中小企業の仕事や雇用に結びつくように追求し、そこから得られる電気やガスを販売することで地域に新たな収入が生まれます。事業の成果や副産物を地元に還元したり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化に役立ちます。ドイツでは、地域の電力供給を担う公的企業「シュタットベルケ」が各自治体に設立され、地元の住民が地域の再生可能エネルギー開発に関与し、収益を公共サービスで還元するなど、地域で生み出したエネルギー資源を地域の財産と生かし、エネルギーの「地産地消」、地地域の活性化、地域経済の発展に重要な役割を果たしています。

 東電福島第一原発事故の前(2010年度)、使用されている原発が全国で54基体制のときでも、原子力関係従業者数は、約4万6,000人でした(政府系研究機関の5,300人は含まない)。一方、ドイツの再生可能エネルギー(発電と熱利用を含む)の雇用状況は現在、2017年で、33万2,000人の従業者がいます(IRENA[国際再生可能エネルギー機関])。再生可能エネルギーには優れた雇用効果があります。

 「原発ゼロ」の決断と一体に、再生可能エネルギーの飛躍的普及をはかるべきです。日本共産党は、2030年までに電力需要の4割を再生可能エネルギーで賄うという目標をもち、それを実行に移す手だてを着実にとります。この目標は、世界の再生可能エネルギー先進国に追いつくための最低限の目標です。

乱開発を規制するため、環境アセスメントの抜本強化と住民合意の義務化を

 再生可能エネルギーの導入・普及は、温暖化抑制のためにも喫緊の課題であり、一層の推進が求められています。しかし、持続可能な発展をめざすための一環であるはずの再生可能エネルギーの取り組みも、環境面や土地利用に関する規制の弱い日本では、きちんとしたルールや規制が未整備のまま、地域外資本や外国資本による利益追求を優先した乱開発が起き、住民の健康・安全や環境保全にかかわる問題を引き起こしています。再生可能エネルギーの健全な発展のためにも、解決が急がれます。
 そのために、事業の立案および計画の段階から情報を公開し、事業者、自治体、地域住民、自然保護関係者、専門家など広く利害関係者を交え、その地域の環境保全と地域経済への貢献にふさわしいものとなるようにします。

 各地で住民・自治体からの批判が高まり、ようやく大型太陽光施設(メガソーラー)も環境アセスの対象となりましたが、対象をさらに拡大することが必要です。太陽光発電施設の建築物や土地の区画形質の変更として扱うなど、きちんとした法的な位置づけを明らかにします。環境基準を定めて、環境アセスメントの手続きの中に組み込んでいくことが必要です。十分に調査・検討した環境基準を早急に設定し、環境アセスメントの強化を図ります。

 風力発電も大規模化・集中化によって、騒音、低周波、シャドーフリッカー、基礎工事の巨大化による安全面や周辺環境への影響など、住民の不安・不満は高まっています。環境省は2017年に「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」を作成しましたが、1基あたり出力2000kWの風車を想定した調査をもとにしており、最近では1基4000kW以上の出力の風力発電計画が増えているもとで、「指針」の見直しが必要です。とくに集中立地にともなう累積的影響を検討すべきです。

 地域での乱開発を防ぐ手法として、環境保全を優先するエリア、風力発電の導入促進が可能なエリクに区分けするゾーニングの導入も有効であり、環境省はマニュアルを作成していますが、国として住民の健康・安全や環境保全を脅かす恐れがある地域への立地を規制することが、必要です。

原発前提をやめ、広域連携で、再生可能エネルギーの買い取り量を増やす

 九電電力の再生可能エネルギーの出力抑制の状況が示すように、大手電力会社が、再生可能エネルギーによる発電の接続を止めたり、新規買い取りを拒否する事態が続いています。安倍政権が「ベースロード電源」だとする原発について、再稼動と高い稼働率を設定して原発の発電量を算出した結果、再生可能エネルギーの買い入れ契約の設備量が少なくなっています。原発再稼動をきっぱりやめ、優先給電の仕組みを、“再生可能エネルギー優先接続・優先給電”に切り替えるべきです。

 電力量では東京電力の1.1倍ほどのスペインでは、15分単位で更新される気象予報による発電予測、12秒単位で更新される風力発電状況のデータ、水力発電やガス火力なども含めた統一的な調整によって、大量の再生可能エネルギーの電力を取り込んでいます。より精密なシミュレーションをおこなうシステムの導入をいそぐべきです。

 また9電力(沖縄電力を除く)に分割されたエリア内での電力運営では、再生可能エネルギー発電の潜在能力の高いエリアと、大都市圏を抱えて電力需要量が膨大なエリアが、ばらばらに運営されて、せっかくの再生可能エネルギーによる電力供給力が生かされません。最大限に再生可能エネルギー電力を導入するためにも、9電力の電力運用について、電力の大量消費地である大都市部を含めた広域レベルで、揚水ダムや送電網を最大限活用し、統一的な調整・運用をするシステムを構築すべきです。

再生可能エネルギーの豊富な地域に送電網を整備し、FIT制度を改善する

 自然エネルギーによる発電が期待できるのにもかかわらず、人口が少なかったために送電網が不十分な地域もあります。また十勝地方の畜産にかかわるバイオマス発電でも、送電網が使えないために、せっかくの発電能力が生かせないという悩みもあります。国がイニシアチブを発揮してこうした地域に、送電線の建設を進め、既存の送電網を有効利用を図ります。そのさい、現状の9電力(沖縄電力を除く)の地域割を越えて、より広域的な送配電網とそのシステムの整備を進めます。

 再生可能エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度があります。電力多消費業種として賦課金を減免される対象範囲や、買い取り対象の規模、買取価格の水準の見直しなど、国民への情報提供と論議をつくすべきです。

 FIT法は2020年に改定が予定されていますが、次のような改善が必要です。

 送電事業者の買い取り義務を復活させる――改定で削除された送電事業者による買い取り義務の項を復活させ、再生可能エネルギーによる発電施設の設置者の立場を守ることが必要です。経産省は、大手電力会社に、東日本大震災前の原発の供給力(廃炉決定済みや建設中も含む)を算出させ、それを前提に、再生可能エネルギー電力の「接続(受け入れ)可能量」を計算させました。動いてもいない原発を想定した発電量が、再生可能エネルギー電力の買い取り拒否の口実になっており、いわば原発による「空押さえ」です。買い取り義務規定の削除は、電気事業法にも、再生可能エネルギー電力を優先するという規定はない以上、あきらかに普及のブレーキとなります。

 送電網を増強・活用する――送電網を運営する一般送配電事業者には、送電網の増強する「系統拡張義務」を課します。ドイツでは、前項の優先接続と系統増強の義務が課されていて、送変電設備の容量不足などの解消の責任を課されており、容量不足で再生可能エネルギー電力の接続を拒否できないことになっています。ところが日本では、接続拒否だけでなく、送配電網への接続を求めるさいに、送電線や変電施設の整備の費用を負担するよう要求され、小規模な再生可能エネルギー発電事業者には参入への高いハードルになるという事態が起きています。2016年のFIT法の改定にあたり、日本共産党は、ドイツの例をみならって、送電会社に送電網の増強義務を課す修正案を提出しました。引き続き、実現を目指します。建設コストを抑えるためにも、情報公開と多面的な検討を国が進めるよう求めます、

 系統強化に電源開発促進税を活用する――電力利用者の負担を軽減するために、電源開発促進税を系統強化費用に充てるようにすべきです。すでに電気料金には電源開発促進税という 電源を生み出すための税金が含まれており、年間3,300億円(2019年度予算)も、電力使用者は負担しています。いまはこの財源が主に、原発のために使われています。日本共 産党は国会でも提案したように、この財源を系統増強に充てることで、ユーザーの負担を抑えるように使います。

 買取価格の算定の改善や対象をしぼり、賦課金負担を抑える――FIT法の改定で、買取価格を低減するとして、入札制度が導入されました。条文上は、「一定の導入量」を低い価格で落札した事業者から順番に調達することになっていますが、対象となる電源も規模も明示されず、経済産業省は大規模太陽光発電やバイオマス発電で実施しています。拡大されると地域密着型・中小規模の再生可能エネルギー事業社の参入を阻害する恐れがあります。

 今年11月以降順次、余剰電力買取制度の適用を受けた住宅用太陽光発電設備の買い取り期間10年が満了となります。地域にとっては「地産地消」の電源の典型であり、各家庭にとっては再生可能エネルギーへの関心をたかめ、電力消費の節約意識の喚起や災害時の電源確保としても重要です。住宅用太陽光発電、市民の共同による取り組みをFITの重要な柱として、位置づけます。

 地域密着型・「地産地消」型の再生可能エネルギー利用をすすめるために、大規模開発や大型太陽光発電(メガソーラー)の偏重是正も考慮して、買取対象を見直すべきです。地域・自治体主導の取り組みで、地域経済への寄与を評価して、優遇する仕組みを導入すべきです。

 世界では太陽光発電、風力発電を中心に1kW時あたりの発電単価の低下が大幅に進んでいます。日本でも買取制度導入以来、低下していますが、それでも日本の発電単価は、海外と比べると高くなっています。発電パネルや発電タービン、建設費や建設の熟練度合いなど、分析的に評価し、発電単価の削減にむけて誘導していくことが大事です。それによって、買取価格は下がります。廃止された小型風力の買取価格を、復活させます。

 また、再生可能エネルギーの普及をさらに促進するために、家庭用の太陽光発電の設置に対する国の補助で公的助成を高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、再生可能エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。

バイオ燃料の開発は、食料生産と競合せず、環境保全を重視したものに

 日本共産党は、バイオ燃料の開発・導入を再生可能エネルギーの重要な柱であると考えています。その具体化にあたっては、食料需要と競合しない植物資源などに限定する、国内産・地域産の資源を優先的に活用する(「地産地消」)、生産・加工・流通・消費のすべての段階で環境を悪化させない持続可能な方法を採用する など、新たな環境破壊をひきおこさないためのガイドラインを設けます。車両の燃料や、熱源としてバイオ燃料の普及を促進します。輸入したヤシ殻での火力発電を、バイオ発電とする例が増えてきましたが、日本の森林など国内資源を活用する方向で、進める必要があります。

温室効果ガス排出の実質ゼロにむけて、石炭火力から計画的に脱却を

 昨年10月にIPCCが公表した「1.5度特別報告」は、気温の上昇が産業革命以前に比べて、すでに1度上昇しており、1.5度をこえれば、災害など大きな打撃が各地で起こると警告しています。1.5度以内に気温上昇を抑えるためには、2050年前後には、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするよう求めています。

 石炭火力発電から撤退する国々が集まって「脱石炭連盟」が結成され、ベルギーが2016年に石炭火力ゼロを達成したのを皮切りに、フランスは2021年、スウェーデンは2022年、イギリス・オーストラリア・イタリアは2025年、オランダ・カナダ・デンマークは2030年までに石炭火力ゼロを達成するとしています。国内の豊富な石炭資源で発電をしているドイツも、2038年までに石炭火力ゼロを達成することを正式決定しようとしています。

 「1.5度特別報告」を踏まえれば、石炭火力を新設する余地は、残されていません。ところが日本では、2030年度目標で石炭火力の発電比率は原発や再生可能エネルギーを上回って26%もあり、現在、新たな石炭火力の建設計画が25基も存在していて、いまから建設されれば2050年まで運転が続くことになり、「実質ゼロ」は不可能になります。

 石炭火力発電からは、投資を引き上げる「ダイベストメント」が広がり、石炭火力には投資・融資はしないと宣言する金融機関も増えています。そのなかで安倍政権は、石炭火力の輸出に、インフラシステム輸出政策の柱として取り組んでいます。日本の公的機関である国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)が、今も石炭火力にかかわる世界最大規模の公的資金を投入する金融機関として名を連ねていると批判されています。日本の現状は、世界の流れにまさに逆行しています。

 「1.5度特別報告」が提起している2050年に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」に向けて、石炭火力の新規建設計画を中止し、既存の石炭火力についても、計画的に廃止するべきです。

省エネを徹底し、エネルギー消費量を大幅に削減する

 再生可能エネルギーの爆発的導入とともに、低エネルギー社会を実現するのに、重要な柱となるのがエネルギー効率の引き上げ、省エネの徹底です。

 年間の発電量は、2007年度を最大として減少する傾向にあり、いまでは16%程度減っています。ピーク時の電力も、電力需要量の4分の3が業務と産業が占めています(東京電力)。この部分で、エネルギー利用の効率化を図ることによって、電力需要や化石燃料の需要を減らすことができます。

 日本の火力発電のコストは依然として高すぎます。アメリカでのシェールガスの開発・輸出の動きは、LNGの国際価格を引き下げる効果を持っています。天然ガス産出国と大商社・電力大手による国際カルテルにメスを入れるとともに、国内の大口ガス需要者や他のLNG輸入国と協調して、LNGの値下がりを買い入れ価格に反映させるよう、政府の取り組みを強めます。

 LNG 火力発電の旧型設備ではエネルギー利用率は約40%です。残りの6割のエネルギーが廃熱として、捨てられています。しかしコンバインド発電にした最新鋭の 設備なら60%にエネルギー利用率は高まっています。同じ電力を発電するのに、最新型なら旧型よりLNGの消費量が3分の1も節約できるのです。さらに 65%をめざす開発も進んでおり、いっそう効率のよい火力発電の促進で、燃料消費と二酸化炭素排出の削減をめざします。

 さらに発電所の廃熱を工場やオフィス、家庭へ送り、廃熱の3分の2(投入エネルギーの40%に相当)を有効利用すれば、エネルギー利用率は80%になります。現にスウェー デンでは発電と熱利用でエネルギー利用率が80%を超え、デンマークで65%、ドイツでも50%に達しています。ただし、廃熱を利用するには、これまでのような巨大な火力発電所ではなく、熱の利用者が近辺にいても大丈夫なような分散型の配置になります。

 同じ燃焼カロリーを得るのに、LNG が排出するCO2の量は、石油より30%減、石炭より45%減となります。同じ電力を得るのに最新型のLNG火力なら、旧式の石炭火力に比べて、排出する CO2を6割も削減できるのです。火力発電における燃料を、石炭・石油からLNGへ切り替えていきます。また旧型のLNG発電設備の最新型への置き換えを進めます。

 工場のボイラーや業務ビルの集中型空調施設などの取り組みで、15~20%のエネルギー削減の実績が上がっています。大手企業や大型の工場・ビル、大型公共施設について、省エネと温暖化ガスの排出削減の目標を明らかにさせ、中小企業への支援や、排出量取引なども活用して、最新の省エネ設備・機器への更新を促します。

 トップランナー方式の省エネ基準を高めることにより、省エネ商品の開発と普及を促進します。住宅など建物の断熱効果を高めることによって、冷暖房のエネルギーの大きな削減を図ります。なお、自動車メーカーによる燃費データの改ざんなどは論外です。

 廃熱を熱供給に利用すること(コジェネレーション=電気・熱併給システム)で、エネルギーの利用率を40%程度から70%台まで引き上げることができます。小規模・分散型利用を促進する制度を整備し、コジェネレーションやヒートポンプの導入を積極的に支援します。そのさい、低周波など周辺環境への影響に注意を払うのは当然です。

国民の立場から、電力システムを抜本的に見直す

 2016年4月1日から、電力の小売り「全面自由化」がスタートしました。それまで大手電力会社10社だけが販売してきた家庭や商店の分野(電力の約3割)に、同日から、大手電力会社以外の事業者も参加しています。2017年4月からは、都市ガスの小売「自由化」も実施されました。

 1990年代から大手電力会社や財界は、電力分野での規制を弱め競争原理の導入を図る形で、大口需要者向けの商社系発電企業や小売り企業の参入、料金引き下げを段階的に進めてきました。しかし、今回のような電力システムの全面的な「改革」となったのは、5年前の東日本大震災・福島原発事故がきっかけです。国民の側から、大手電力会社の独占的な支配力を弱め、原発の停止、再生可能エネルギーの普及をという要求が高まりました。他方で、規制を取り除き「自由化」することによって、エネルギーの種類別や地域別の経営を抜け出して、“総合的なエネルギー企業”を生み出すという政府や巨大企業の思惑が交錯しています。

 消費者側では、生活必需品である電気の料金が安くすむならと考えたり、原発の電気を買いたくないと思う人も多く、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を出す石炭や石油などの化石燃料ではなく、再生可能エネルギーの電力を使いたいと思う人もいます。

 しかし、今回の「電力自由化」で、消費者は自分が望む電気を、自由に買うことができるというわけではありません。さまざまな業種の企業が、小売り事業者として登録されましたが、発電所をもっている事業者やメガソーラーをやっている一部の携帯会社は別として、自分で発電所を持っていない小売業者の多くは、東電など大手電力会社から電力を買って、家庭や業者に販売することになります。

 もともと再生可能エネルギーによる電力はまだまだ少なく、大手電力会社は原発の再稼働を急ぐことで、原発の電気を売りたいと考えおり、また、今ある石炭火力発電所の総発電能力の5割に当たる石炭火力発電所の建設計画があり、CO2の排出量の多い電力の供給が増えることが懸念されます。

 そのため、消費者側から強い要望があるのは、業者が供給する電力が何から生み出されたものなのかの表示=「電源構成の表示」の義務付けです。政府は、表示することが望ましいとするのみにとどまっています。電力・ガス取引監視等委員会の「小売電力指針」を改正して、表示を義務付けるべきです。

 電力は、水道やガスと同様に、私たちの生活や経済活動を支える不可欠の公共インフラです。その電力インフラの基盤となる送配電網は依然として大手電力会社が独占しています。もし送配電網の利用に高い料金が設定されたり、接続を制限されたりすれば、再エネなどの発電事業者や小売業者が送配電網を自由に利用できず、一部の大手企業に再び集中し、競争が消え、大手企業の電源や料金を消費者が受け入れざるを得ない事態も懸念されます。先に自由化が進んだ欧米の経験では、多数の小売業者が出現したものの、やがて数社にまとまっていって競争が効かなくなったといわれています。手放しの自由化ではなく、消費者側が参加できる公的なコントロールが大事です。

 安倍政権は、福島の原発事故の賠償費用2.4兆円を2020年から40年間に渡り、沖縄電力以外のすべての電力消費者に負担させる仕組みを導入しました。再生可能エネルギーの電力を選択している電力消費者にも負担を強いるものであり、「自由化」の看板に逆行し、発電部門内の原発のコストとして計上されるべき賠償費用を、送配電部門に移し替えるものです。このような原発優遇は、やめるべきです。

 政府は、2020年度までに家庭や業者向けの料金についての規制を撤廃し、完全に「自由化」する方針ですが、送配電網の電気料金(託送料)の値上げ認可申請公聴会の対象から外されるなど、料金コストの情報公開が一層後退させられています。これまでの規制のもとでさえ、電気料金には放射性廃棄物の処理・処分費用をはじめ隠れた「原発賦課金」が電力料金の明細書への記載もなく含まれるなど、批判のある電気料金の根拠がいっそう不透明になりかねません。

 今求められているのは、消費者・需要家の選択肢の拡大と、系統運用など情報の全面的開示を両立させることのできる電力システムの制度設計です。そして、国民に開かれた公正な市場と競争条件の整備を進め、さらに新しい独立した強力な民主的規制機関の創設することによる国民的な監視の強化です。それによって、電力大企業への民主的な規制と再生可能エネルギーの本格的な推進、それによって地域へのメリットの還元する電力システムへの転換をめざします。

共同提案した原発ゼロ基本法案と再生可能エネルギー推進法案の実現を

 日本共産党、立憲民主党、国民民主党、社会保障を立て直す国民会議、社民党の5野党・会派は今年6月14日、再生可能エネルギー等の推進関連法案を衆院に共同提出しました。国会閉会を前に、法案は原発ゼロ基本法案とともに、継続審議となりました。

 地域の創意工夫による地産地消のエネルギーを推進する分散型エネルギー利用促進法案など4法案は、野党が昨年2017年に衆院に共同提出した「原発ゼロ基本法案」の実施法として位置付けられています。

 5野党・会派が合意した共通政策を受けて、法案を出したものであり、「脱炭素」社会を再生可能エネルギーで実現しようという世界の流れにかみあったものとして、力を合わせてその実現をめざします。

政策