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日本共産党

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➡各分野の目次

28 日米貿易交渉、TPP11、日欧EPA

多国籍企業の利益拡大優先、貧富の格差をひろげる自由貿易一辺倒の政策を転換し、経済主権、食料主権を尊重した互恵・平等の対外経済関係の発展をめざす

2019年6月

 4月と5月の日米首脳会談で、安部首相は、日米貿易交渉のいっそうの加速を約束しました。5月27日の会談後トランプ大統領は、「8月には両国にとって良い内容が発表できると思う」と述べるとともに、「TPPとは関係ない。何も縛られない」と述べ、「TPPの内容が最大限」としてきた安倍内閣の言い分を認めていないという意思をしめしました。安倍首相は、7月の参議院選前の決着(公表)を先送りし、大統領選挙が始まる前に、農産物に対する大幅な譲歩を約束しているのではないかという見方が広がっています。自公政権が、国内産業や国民の暮らしを犠牲にして、財界・多国籍企業の利益を優先して進めてきた、自由化拡大一辺倒の経済外交がきわめて重大な局面に直面しています。

 世界では、新自由主義と貿易拡大一辺倒の政策とともに、TPP(環太平洋経済連携協定)や、NFTA(北米自由貿易協定)、日欧EPA(経済連携協定)などが次々結ばれ、メガ経済連携と言われる状況にあります。一方、各地でそれに対する国民の批判・抵抗が強まっています。それは、際限のない市場開放が、多国籍大企業を潤し,競争を激化させ、中小企業や家族農業を衰退させ、貧富の格差拡大や地域経済衰退大きな原因になっているからです。

 ところが、安倍自公政権は、これらの批判、抵抗の強まりを「保護主義か自由貿易か」の対立であるかのように描き、世界でも異常な自由貿易推進の姿勢をとり続けています。RCEP(東アジア地域包括的経済連携―アジア・オセアニアの16か国が参加)交渉でも日本政府は、ISDS条項(投資家と国家の紛争処理)など、多国籍企業優先のルールを参加国に押しつけようとしています。

 経済外交をめぐっていま大事なことは、世界に起きている貧困の拡大と多国籍企業、少数の富者への異常な富の集積というゆがみと関税の撤廃や貿易障壁として撤廃・緩和を強行してきた自由化貿易偏重、市場原理一辺倒の政策を全面的に検証し、国民的立場で見直すことです。

 日本共産党は、事実上の日米FTAである日米貿易交渉の即時中止を求めるとともに、TPP11、日欧EPAなど、この間の経済連携協定の徹底的な検証を行い、平等・互恵、経済主権と食料主権を尊重する経済・外交の確立をめざします。

日米貿易交渉(日米FTA)はただちに中止する

造語までして国民を欺きアメリカの要求を受け入れる安倍首相――5月の日米首脳会談で、トランプ大統領は、日本に兵器の大量購入をもとめるとともに、農産物貿易交渉で参議院選挙後の8月には大きな前進があると言明しました。安倍首相は、全面的な貿易交渉である「日米FTAは行なわない」と言明してきました。昨年9月の貿易交渉開始の合意に際して、「物品貿易協定」(TGA)であり、「FTAではない」といいはりました。TGAなる用語は、共同声明にもない造語であり、偽造です。

 アメリカ政府の日米交渉に関する文書は、「物品とサービスを含むその他の重要な分野についての貿易協定」であり、22項目の交渉範囲がしめされています。トランプ大統領の「TPPに縛られない」と述べたことを証明しているといえます。日本政府は打ち消しに躍起ですが、安倍内閣の「過去の経済連携協定の内容が最大限」、農林水産品について「最も水準の高いものがTPP」という説明は、破綻しています。トランプ大統領に、参議院選挙さえを乗り切れば、なんでも受け入れると約束したと報じられているように、国民をだまして、アメリカや多国籍企業の利益に奉仕しようとしています。このような安倍自公政権の異常な経済外交は、食糧主権、経済主権を放棄し、格差と貧困をいっそうひどくし、地域社会や環境の破壊をもたらさずにおきません。

日本に全面的な自由化をせまるアメリカ――現在進められている日米交渉で、USTR(アメリカ通商代表部)のしめした交渉概要では、交渉目的は、対日貿易赤字の解消であり、交渉範囲は22項目に及び、物品貿易、衛生植物検疫措置、税関・貿易円滑化、原産地規制、知的財産、医療・医薬品の手続的公平性、政府調達、紛争解決,為替条項など全面的です(USTR2018年12月21日)。日米交渉のゴールがTPP水準ではなく、出発点であり、アメリカ第一主義による更なる市場開放が迫られることはあきらかです。当面は、自動車と農産物が焦点とされ、安倍政権が自動車産業を守るために農産物で大きな譲歩をすることが危惧されています。しかも、農産物貿易でアメリカは、TPP11や日豪EPA,日欧EPAの発効によって、農産物関税などでオーストラリアやカナダなどより不利になっています。アメリカ側がTPP以上の農産物自由を要求してくることはあきらかです。

アメリカの農業団体も“自由化は輸出の農業を歪める”と指摘――農産物の自由化は、日本の農業・農民への打撃だけではなく、アメリカの農業にとっても重大な打撃を与えます。アメリカの国際農業貿易研究所と全米家族農業者連合が、「両国の家族農業者の生計を蝕み、農村の主権を侵害する」として日米FTAに反対を表明しています。「両国の市場を開放し、農村経済に対する企業支配を強化する事のみに奉仕する協定」だからであり、「アメリカの輸出向け畜産部門(特に豚肉、牛肉)は、極めて集約的で、集中家畜飼育施設で育成され、牧草に基づく持続可能生産を脅かしていること。動物たちは劣悪な状態におかれて」おり、生産された食肉は、サルモネラ菌など危険な細菌で汚染されている恐れがあり、水の汚染や温暖化効果ガスの排出量を増大させて、健康と環境を破壊している。これ以上の自由化は、それをいっそう激しくするというものです。輸出国では、輸出向け穀物・果実などにたいしてポストハーベスト(収穫後農薬使用)が状態化しており、残留農薬の検出など、輸入国の食の安全を侵害している実態は繰り返し指摘されてきたことです。

 日米貿易交渉(FTA)は即時中止、RCEP交渉も、まず交渉内容を国民のまえに明らかにし、国会での徹底的な論議が先でなければなりません。

TPP11・日欧EPAなどの内容と経過を全面的に明らかにさせ、国民の立場から見直し、国民経済への悪影響を食い止める

 安倍自公内閣は、TPPをアベノミクスの主要な柱に位置づけて参加を強行、秘密交渉で譲歩を重ね、国会批准と国内関連法の強行可決を行いました。アメリカのトランプ大統領が脱退宣言した後は、11カ国で発効させる交渉を主導しました。関係各国が自国に不利な項目の見直しを行ないましたが、日本政府は、事前交渉でアメリカに約束した自由化内容をそのままにしました。そのため、米など農産物ではアメリカからの輸入を見込んだミニマムアクセス米や乳製品の低関税輸入枠をオーストラリアなど農業大国から輸入することになりました。日欧EPAでは、乳製品、ワインなどの品目でTPP以上の関税の引き下げ・撤廃を行いました。

 TPP11は2018年1月に日欧EPAは4月に発効しましたが、その直後から乳製品、食肉、ワインなどの輸入が急増し、19年4月から2年目に入ったため、同月の輸入量は牛肉、豚肉とも単月では過去10年間で最多(日本農業新聞5月31日付)であり、国内農業や地域経済にたいする影響が現れています。このまま、自由化がすすめば、日本政府が2010年に試算した、関税が全面的に撤廃された場合に、食料自給率が14%に落ち込み、米生産は90%減、豚肉・牛肉は70%減るという事態が現実になりかねません。

 これまでに発効した協定の交渉項目や経過を全面的に明らかにさせ、徹底した検証のうえに、協定内容の見直し、TPP11協定からの離脱、日欧EPAの協定に基づく終了通告による終了を検討します。

農産物をめぐる明確な国会決議違反

 TPPへの交渉への参加をめぐって2013年に採択された国会決議は、農産物の重要5品目―コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の関税撤廃は認めず、「除外」または「再協議」するとしていました。また、自民党は12年の衆院選挙で、「TPP断固反対。ウソをつかない、ぶれない自民党」のポスターまで貼りだし、13年の参議院選挙の公約(*)では、「自然的・地理的条件に制約される農林水分野の重要5品目等やこれまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度などの聖域(死活的利益)を最優先し、それが確保できない場合には脱退も辞さない」などを掲げました。

 ところが、安倍内閣は、アメリカとの事前交渉で、入場料といわれる諸要求を受け入れたうえ、「あらかじめ関税撤廃を約束されないことが確認された」などとして、交渉参加を強行、多くの分野で譲歩を続けました。その結果、日本は、農林水産品2594品目のうち2135品目(82%)の関税撤廃を約束しました。聖域とした重要5項目でも29%の品目で関税を撤廃、残った品目でも特別輸入枠の設定(コメ、麦)や牛肉・豚肉の関税大幅引き下げ、野菜、くだものの大部分の品目の関税撤廃、合板の関税引き下げなど、総自由化に近い内容でした。しかも日本のみが農産物輸出国との間で、7年後の再交渉を義務づけられているのです。これで「国会決議は守った」「農林水産業の再生産を可能とする国境措置をしっかり確保した」(2019年自民党農業パンフレット)などと言えないことはあきらかです。96%の農協組合長が安倍農政を評価できない(2019年1月4日日本農業新聞)と答えているのもそうした経過があきらかだからです。

でたらめな影響試算とおざなりな国内対策で関連法の採択、批准を強行――犯罪的なのは、農業や関連産業、地域経済への深刻な影響を「ほとんどない」ものとする「経済効果試算」を示して批准を強行したことです。2013年に政府が発表した影響試算では、TPPによるGDPの押上げ効果が3・2兆円、農林水産物の生産額の減少が3兆円としていました。大筋合意後の影響試算では、GDPの押上効果は14兆円と4倍に膨らみ、農林水産物へのマイナス影響は1300億円~2100億円と20分の1に減少させ、TPP対策を実行すれば農業生産は維持され、食料自給率も低下しないと強弁しました。日欧EPAについても国内対策を行えば、影響は乳製品、食肉など1部の産品に限られ、国内生産の縮小も自給率低下にも起きないとして強行批准しました。

 TPP、日欧EPAの受け入れをめぐって行なった政府の試算は、関税が撤廃・削減され、「非関税障壁」が緩和されれば、日本からの輸出が増え、雇用が増え、設備投資も増えて、賃金も上がるなど、日本の経済のすべてがうまくまわる。農産物は、関税撤廃・削減で、国内価格の低下は予想されるものの、規模拡大やコスト引き下げなどの対策をおこなえば影響は軽微にとどまるというものです。相手国の関税撤廃や政府の支援で農林水産物の輸出も少しずつ増えていますが、その一方で輸入はその数倍のテンポで増え、国民は好むと好まざると輸入食料への依存に陥らされているのです。しかも、国内対策は、農業者に体質強化・規模拡大を押しつけであり、それに対応できる農業だけが残ればよいというものです。

 TPP・日欧EPA、日米FTAなど、自由貿易による農産物貿易の主な競争相手は世界で最も農産物価格が安いアメリカとオーストラリアなどです。一戸当たりの耕作面積が日本の100倍のアメリカ、1500倍のオーストラリアと、「競争できる強い農業」などというのは、国土や歴史的な条件の違いを無視した暴論にすぎません。米農務省が、TPP合意で2025年までに関税が完全撤廃された場合に12カ国の農産物貿易がどう変わるかを予測した結果(13年11月13日日本農業新聞)は、85億ドル増える輸出額のうち33%をアメリカで占め、58億ドル増える輸入額の増加分の70%は日本がかぶるとしています。

 自由貿易の無限定な拡大は、日本はもとより世界の農林水産業のあり方を歪め、国民への安定的な食料供給と食の安全を土台から崩さずにおきません。自国での農業と食料生産をつぶし、輸出向けの汚染された食料、環境・国土を荒らして生産させた外国産食料にたよる国にして良いのか、この国の根本的なあり方が問われています。

環境や国土の保全など農林水産業の多面的な役割も失う――農林水産業は、環境や国土の保全など、多面的な役割を果たしています。日本学術会議は、農林水産業の多面的機能について、洪水防止機能、土砂崩壊防止機能、水質浄化機能、生態系保全機能などで年間約90兆円の効果があると試算しています。国連は自由貿易が格差・貧富を拡大し、地域社会と農林漁業がもつ多面的機能も喪失させているとして、2015年「持続可能な開発目標(SDGs)を決議しました。自由貿易一辺倒、新自由主義からの早急な転換が求められています。

非関税(ルール)分野の開放も国民の暮らしを破壊

 TPP協定は、第1章で、「協定の規定に基づいて自由貿易地域を設定する」ことを宣言し、市場アクセス(関税撤廃)をはじめ、28項にわたって、農業と食料はもとより、自動車、医薬品、政府調達、金融、投資、環境、労働など暮らしと経済のあらゆる分野で貿易拡大に必要な規制緩和―ルールの変更をすすめるものです。

 TPPにたいして、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授は、日本での講演で「TPPは悪い貿易協定である。国際企業の最悪利己性が強調される」述べましたが、アメリカや関係国で、市民団体や労働組合に反対の声が広がったのも、そこに原因があります。

 とくに、食の安全、医療、官公需・公共事業の発注、金融・保険、労働などで、国民の生活や安全を守るルールと監視体制、中小企業を支援する制度などが大きく崩される危険があります。なかでもISDS条項(投資家対国家の紛争解決制度)は、国の主権より多国籍企業の利益を上に置く主権侵害として厳しい批判がおきています。自民党も13年の参議院選挙ではこれらに反対を公約していました。

※自民党の参院選の公約(Jファイル)で、TPPについて掲げた6項目「――①自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要5品目(米、麦、牛肉、豚肉、乳製品、甘味資源作物)等の聖域を確保する、②自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない、③国民皆保険制度を守る、④食の安全安心の基準を守る、⑤濫訴防止策を含まない国の主権を損なうようなISD条項は合意しない、⑥政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる」

食の安全を脅かす――安倍内閣は、アメリカ政府のBSE対策によるアメリカ産牛肉の輸入制限の緩和要求にたいして、TPP交渉参加の事前交渉とあわせ、13年4月からアメリカ産牛肉の輸入規制を30か月齢以下に緩和し、今年にも廃止しようとしています。すでに国内産牛肉の全頭検査もやめてしまいました。また、アメリカとの2国間の交換文書では、日本が「食品添加物としてポストハーベスト農薬を統一して承認、効率化をはかる」こと約束、今回のUSTRの交渉目的に「科学主義」による食品の安全基準がとりあげられています。アメリカの「科学主義」なるものは、人が何人死んでいようが因果関係が特定できなければ規制してはいけない、というもので、EUの「予防原則」にも真っ向から対立する危険な内容です。

 TPPでは、遺伝子組み換え産物について、貿易の拡大、透明性、協力をすすめるための情報交換の委員会を設置することになっており、現在の安全性への配慮や表示を主にしたルールから貿易拡大に力点が置かれることになります。アメリカの輸出企業の向け農産物の多くが遺伝子組み換え作物になっていもとで「遺伝子組み換えでない」とする表示の規制など、国民への情報提供、選択の機会を奪われる可能性が大きいのです。

安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――USTRの交渉項目に医薬品・医療機器の手続きの公平性があります。TPPでは、「知的財産」の章の医薬品の特許などの保護を強化する制度をめぐってアメリカと発展途上国の最大の対立点となりました。アメリカはバイオ薬品(抗がん剤やC型肝炎の治療薬など)の特許期間13年を要求、5年にすべきという発展途上国と対立しました。結果は、特許期間は、少なくても8年又は5年+他の措置とされました。あわせて、特許が切れたバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、ジェネリック薬(後発医薬品)承認決定に特許権者に特許権を侵害していないかを確認するリンケージ制度を設けることが盛り込まれています。

 これら規定は、製薬大企業のための規制強化であり、ジェネリック薬市場への参入規制を長期化させるものです。日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が切望されていますが、手に入りにくい状況は改善されません。しかも、参加国の政府が薬価決定する際に、「直接影響をうける申請者」が、不服審査を開始することができるとされています。アメリカとの交渉が成立すれば、アメリカの製薬企業が利害関係者として、日本の医薬品・医療機器の保険扱いの可否や公定価格の決定に影響力を強めることが懸念されます。

地元中小企業向け官公需発注が困難に――TPPの「投資」「政府調達」の章には、地元から雇用、物品やサービスの調達を求めるなどの「現地調達」を要求してはならないとする規定があり、地方自治体が地域の中小企業を支援するための「中小企業振興基本条例」や労働者の最低賃金の支払いや地域貢献をもとめる「公契約条例」などが規制される可能性があります。適用範囲の拡大や基準額引き下げのため、発効3年以内の再交渉も明記されています。

自主共済も困難に追い込まれる――「金融サービス」章の定義は広範で、すべての保険、銀行、その他の金融サービスが含まれます。たとえば、アメリカ政府は、相互扶助機関として保険商品を提供している協同組合の共済について、金融庁の規制のもとにある外資系保険会社と同じ「規制と競争」のもとにおけと要求、14年の「外国貿易障害報告書」でも、共済を金融庁の監督に服させることを要求、日本政府は共済を金融庁の管轄にし、少なくない共済事業が廃止されました。農協共済、全労済などへの規制が強められています。

 また、TPPの日米交換文書には、日本郵政の販売網へのアクセスや、日本郵政グループが運営する「かんぽ生命」が民間保険会社より有利になっている条件を撤廃することで「認識が一致した」と明記され、日本郵政はアフラック商品を窓口で扱うなど、アメリカの生命保険会社の国内への進出に協力しています。

ISDS条項をはじめ、主権侵害の毒素条項が盛り込まれている

 TPP協定の「投資」章のISDS条項は、外国の投資家が、投資した相手側の国の措置によって損害を被った場合、救済を求めて仲裁続きを利用することができる制度です。仲裁判断を下す仲裁人は、双方の仲裁人と第3者となっていますが、第3者には、日ごろISDSで訴えを起こす多国籍企業を依頼主とするような国際投資を専門とする弁護士などがなる場合が多く、相手国に不利な判断を下す危険があります。安倍政権は、日本企業の相手国進出に必要と言い、濫訴防止条項があると言いますが、日本政府や自治体が外国企業から訴えられる危険は少なくありません。

 安部自公政権は、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)にもISDS条項を持ち込もうとしています。しかし、ISDSについてアメリカは、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、米加ではISDS条項を完全に削除、米ブラジル間でも対象を制限した内容で妥結しています。ここ数年、先進国、途上国を問わず、ISDSの問題点が意識されるようなっています。ISDSに固執する安倍内閣の姿勢は異常としかいえません。

 「越境サービス}章にあるラチェット条項も各国の自主権を侵害するものです。この条項は、発効後に各国は規制や法律で自由化水準を低めてはならないというきまりです。適用される分野では、企業にたいする規制強化や民営化したサービスを再公営化することもできません。暮らしにかかわる公共政策が自由化一辺倒と矛盾しない方向にきめられてしまうことになります。

貿易自由化一辺倒は、「成長戦略」どころか、地域経済と雇用、内需に大打撃となる

 自由貿易の拡大で「恩恵」を受けるのは、一部の輸出大企業など多国籍大企業と富裕層であり、農業と食料、地域経済と雇用、国民生活は、犠牲だけが強いられることになります。安倍内閣は、大筋合意後の試算で、TPPによるGDPの押上効果を3・2兆円から14兆円に、農林水産物の生産額の減少を3兆円から1300億円~2100億円と20分の1に減ると発表しました。しかし、東京大学の鈴木宣弘教授が、2年前の政府試算と同じ手法で行った試算では、GDPの増加額は5000億円(0.069%),農林水産業の生産減少額は、1兆5594億円、関連産業への波及を加えると3兆6237億円の減少、就業者も、農林水産業で63万4000人、全産業で76万1000人の減少が見込まれています。

 また、アメリカのタフツ大学世界開発・環境研究所が現実的予測として行った試算では、2015年起点にTPPが発効しない場合とTPP発効した2025年を比較すると、アメリカと日本のGDPはマイナスになり、他の参加国の経済成長も微々たるものという結果になったと発表されています。

 このように自由貿易拡大一辺倒では、米国や日本の巨大多国籍企業の飽きない利益追求のために、農業、食の安全、医療、保健・共済、政府調達など、あらゆる分野で多国籍優先のルールを押しつけ、ISDS条項などによって、多国籍企業が政府や自治体の施策に干渉・介入する「権利」を保障するものです。国民生活と地域経済に大打撃となり、日本経済全体にも大被害をもたらすにおきません。

 現在、日本は、一部の輸出大企業が、労働者と中小企業の犠牲のうえに、突出した「国際競争力」を強め、対米黒字をつくり出していますが、外需だのみの経済にしてきた結果、国内需要は縮小を続け、消費税増税がそれに拍車をかけています。それをさらに加速させるのが自由貿易一辺倒の政治です。一部の輸出大企業など多国籍企業が巨額の富を蓄積する一方で、国民の所得が奪われ、日本経済の長期低迷は避けられません。自由貿易一辺倒でなく国民生活応援・内需主導にきりかえ、日本経済の健全な成長とつりあいのとれた発展をはかることこそ重要です。

食料主権、経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係の発展を

 安倍自公政府や財界が「自由貿易」の名で押しつける市場原理、多国籍企業優先の貿易ルールの拡大は、新しい貿易や投資、経済関係の前進どころか、世界でも、日本でも、破たんしています。いま世界では、地球規模での飢えと食料危機打開に向けた「持続可能な開発目標」(SGDs)への取り組み、温暖化対策など地球環境をまもる取り組みと規制の強化、パナマ文書(2016年4月)、パラダイス文書(2017年11月)などで明らかにされた富裕層の課税逃れの根絶、世界経済を混乱させる投機マネーへの規制などの動きが強まっています。各国の経済主権を尊重し、民主的で秩序ある経済の発展をめざす投資と貿易のルールづくりこそが求められているのです。

経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係の発展をめざす――日本に求められているのは、アメリカ一辺倒から抜け出し、アジアを含む各国と経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係を発展させることです。貿易や経済関係を平等・互恵で広げることは当然ですが、農業、食料、環境、労働など競争原理、市場原理に任せることのできない分野があります。

 新しい世界の流れは、各国の経済主権を尊重し、それぞれの国の民主的で秩序ある経済の発展をめざす、互恵・平等の投資と貿易のルールづくりにあり、持続可能な社会づくりに貢献することです。この道をすすんでこそ、アジアを含む各国と経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係を発展させることができます。日本は、こうした互恵・平等の経済関係を発展させるための貿易・投資のルールづくりをアジアのなかで進めていくべきです。

食料主権を尊重した貿易ルールを――自国の食料確保のあり方は、その国で決めるという食料主権、関税主権にもとづく国境措置などは、国際的な課題です。国連人権委員会でも「各国政府に対し食料に対する権利を尊重し、保護し、履行する」勧告が再三決議されています。国連が今年から始めた「家族農業の10年」は、その流れの中で生まれ、世界の運動になろうとしているものです。食料不足と飢餓の拡大のもとで、各国の食料増産、自給率向上のとりくみを保障するためにも食料主権を尊重することが求められています。豊かな発展の潜在力を持っている日本農業を無理やりつぶして、外国から大量に食料を買い入れ、輸入依存を高める―これは国際正義、人類的道義にも反する行為です。

「金融自由化」から投機マネーの規制へ――自由貿易交渉では、投資の「自由拡大」をいっそうすすめようとしています。しかし、世界の流れは、アメリカが先頭にたってすすめた「金融自由化」が、目先の利益だけを追い求めて世界中を動き回る巨額の投機マネーを生み出し、世界的な金融・経済の混乱を引き起こしていることを反省し、金融取引税の導入など、投機規制の強化を探求しています。日本経済の前途を真剣に考えるなら、こうした流れに合流することこそ求められています。パナマ文書を契機に、富裕層の課税逃れに対する規制が重要な国際課題になっています。日本経団連は、調査に反対し、日本政府も消極的ですが、適正な課税、納税は、貧富の格差の是正にとっても不可欠です。

国民的な共同の先頭に立って、多国籍企業優先の貿易政策からの転換をめざす

 自由貿易拡大一辺倒では、日本の未来はないし、世界の未来もありません。米国を中心とする巨大多国籍企業に日本をまるごと売り渡す、国内でも多国籍化した大企業などに富を集中させる経済外交を転換させるために力を合わせようではありませんか。TPPをめぐって安倍内閣が交渉経過の資料を全面黒塗りで出し、答弁をことごとく拒否したことを契機に、政府の態度はおかしいという世論が大きく広がりました。日欧EPA、RSEPなどの交渉は、TPP以上の秘密交渉になっています。

 一方、メガ経済連携交渉の関係国が広がるなかで、農業団体、市民団体、環境NGOなどに自由貿易拡大一辺倒に反対する声が広がり、「1%のためでなく99%のために」の運動、「国連家族農業の10年」など、国際的な連帯行動もとりくまれています。

 広がる貧富の格差や地方の衰退への批判、自由貿易拡大への批判を「保護主義か自由貿易か」と対立的にとらえる自公政権やその補完勢力では、経済主権の養護も、真の国際的連帯もできません。日本共産党は、国民の共同、国会内での共同を広げるとともに、国際的な連帯も広げ、多国籍企業優先の経済外交の転換をめざします。参議院選挙で野党と市民の共同を大きく発展させ、安倍自公政権と与党勢力を少数に追い込みましょう。

  

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