26 中小企業
中小企業憲章と小規模企業振興基本法を活かして中小企業支援を抜本的に強め、全国津々浦々の地域を元気にします
2019年6月
中小企業は日本経済の根幹であり、「社会の主役として地域社会と住民生活に貢献」(中小企業憲章)する存在です。企業の99.7%を占め、働く人の3人に2人が働いている雇用の担い手でもあります。地域の持続的発展が大きな課題となっているなかで、地域に根をおろし、ものづくりやサービスでの需要にこたえ雇用を生み出している中小企業の役割はますます大きくなっています。
この中小企業が元気になってこそ、全国津々浦々の地域が元気になり、日本経済の未来にも道がひらけます。“大企業がよくなれば地域経済、中小企業もよくなる”という、大企業中心の経済政策を根本的にあらため、中小企業を地域経済の主役、日本経済の根幹に位置づけ、それにふさわしい支援策を抜本的に強めるときです。
安倍自公政権のすすめてきた経済政策は、中小企業と地域経済の未来に深刻な影を落としています。2014年の消費税増税による物価上昇、日銀の「異次元金融緩和」によってつくりだされた円安は、原材料費などの値上がりで中小企業の経営を圧迫しました。金融緩和で円安と株高がすすんだだけで、経済の現場に資金が供給されることはなく、中小企業に対する資金繰りでは信用保証協会の保証が部分保証に改悪されました。 また、国や自治体の官公需や中小企業支援策を「非関税障壁」などとして排撃するTPPへの参加、TPP以上の自由化を求める米国との貿易交渉は、巨大多国籍企業に日本市場を明け渡し、中小企業の仕事を奪う、まさに中小企業つぶし、地域経済つぶしの道です。
多様な中小企業の維持・発展を底支えし、地域経済の疲弊に歯止めをかけます
中小企業憲章、小規模企業振興基本法を第一に据えた政策を実行します
中小企業憲章が2010年6月閣議決定され、2014年6月には小規模企業振興基本法が全会一致で可決・成立しました。これは、中小企業経営者や自営業者が求めてきた運動の成果です。
1999年の中小企業基本法改悪は、それまでの中小企業と大企業の「格差是正」、「不利の補正」の理念を投げ捨て、中小企業政策を創業、急成長型のベンチャー支援に重点化するものでした。そのもとで日本の中小企業者数、特に小規模事業者は大きく減少し、1999年には423万者だった小規模事業者が2016年には305万者と118万者も激減しています。このことは、地域での雇用の場の喪失、従事者の納税額減少、ものづくりの集積、地場産業、商店街の縮小など地域経済の疲弊に直結しました。農林水産業の困難と衰退と相まった地域の疲弊のなかで、若者や現役世代が都市部へと移動して労働力不足をもたらし、地域の活力が失われる悪循環となっています。
こうした現状を打開しようと多くの中小企業団体関係者などが運動し、2010年に中小企業憲章が閣議決定され、2014年に小規模企業振興基本法が制定されました。小規模企業振興基本法は、「成長発展」だけではなく、「事業の持続的発展」の重要性を明確にし、個人事業主、従業員5人以下の「小企業者」などを「地域経済の主役」と位置づけています。日本共産党も国会や地方議会などで積極的に取り上げ、多くの皆さんとの共同をすすめてきました。しかし、安倍政権が進めている政策は消費税増税やTPP・日米交渉の推進など憲章や基本法との矛盾を深めています。
小規模企業振興基本法に基づく「基本計画(第Ⅱ期)」では「事業者の持続的発展」に加えて、「地域の持続的発展」も重要項目に追加しました。小規模企業振興基本法のさらなる深化・発展を求めます。
日本共産党は、中小企業憲章と小規模企業振興基本法を生かして、抜本的に中小企業支援を強め、経営の負担を思い切って軽減し、地域循環・生活密着型の公共事業、住民合意に基づいた再生可能エネルギー普及に本格的に取り組むことなどにより雇用を創出し、地域経済の疲弊に歯止めをかけます。政府が閣議決定した中小企業憲章を国会決議し、その理念と内容を具体化します。
中小企業の社会保険料負担を軽減し、賃上げを応援します
地域経済の低迷を打開するうえで最低賃金(最賃)の引上げが重要です。最賃をただちに全国どこでも1000円に引き上げ、1500円をめざし、全国一律の最低賃金制度を創設します。その実現には中小企業支援がカギになります。売上総利益に占める社会保険料負担の割合(2017年)は大企業が9.5%、中堅企業が13.3%、中小企業が13.6%で、中小企業ほど社会保険料の重い負担に苦しんでいます。日本商工会議所のアンケート(2019)でも、最賃引き上げのために必要と考える支援策は「税・社会保険料負担の軽減」が65.2%で最も多くなっています。
しかし中小企業の最賃引き上げ支援策の「業務改善等助成金」の予算額は2014年度の35.9億円から2019年度(当初予算)は6.9億円へ、交付件数も14年度2767件から18年度655件へと減少。安倍政権が打ち出した「賃上げ減税」は2017年実績で3849億円。半分以上は大企業に回り、中小企業はわずか4%程度にすぎません。
予算規模を、現在の1000倍の7000億円へと抜本的に拡充し、労働者を雇用すれば赤字でも負担する社会保険料の事業主負担分を、賃上げ実績に応じて減免する中小企業賃上げ支援制度をつくります。また適正な単価や納入価格の保障、過度な競争の規制、「公契約法」「公契約条例」の実現とあわせ、中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくります。
消費税10%への増税を中止させます
安倍首相は、「増税の一部を教育・子育てにまわす」などと、切実な願いを逆手にとって、2度も延期した消費税率10%への大増税を、今度こそ国民に押し付けようとしています。2014年の消費税8%増税を皮切りに、実質家計消費は年25万円も落ち込み、労働者の実質賃金は年10万円も低下。さらに内閣府が発表した景気動向指数が6年2か月ぶりに「悪化」となるなど、政府自身も景気悪化の可能性を認めました。こんな時に、10%への大増税をやれば、経済もくらしもどん底に突き落とします。売り上げが減るうえに、消費税の増税分を転嫁できず、納税のために〃身銭を切って〃やりくりせざるを得ない中小企業にとって、10%への増税は死活問題です。さらに事業者に大きな実務負担を強いる「軽減税率」と「キャッシュレスポイント還元制度」、そして合計620万にのぼる免税事業者と簡易課税制度利用事業者を廃業に追い込む「インボイス制度」は、中小企業と小規模事業に大きな打撃となります。消費税の10%への増税はきっぱり中止すべきです。
増税というならば、アベノミクスによって莫大な利益をえている富裕層や大企業にこそ、応分の負担を求めるべきです。
大企業と中小企業の公正な取引を保障するルールをつくります
「優越的地位の濫用」や下請けいじめをなくすため、独占禁止法と下請2法を強化します
「買いたたき」や「価格決定権」の侵害などの不公正な取引で、親企業が下請企業を締め上げるようなやり方が横行しているのは世界でも日本だけです。日本にしか見られない下請取引の異常をなくすことをめざします。 安倍政権は2016年9月に「未来志向型の取引慣行に向けて」を「世耕プラン」と称し、下請取引適正化策の強化に取り組んでいると喧伝しています。しかし下請法違反の疑いがあるとして公正取引委員会が着手した件数は、2018年7898件、うち違反行為があると認めたのが7717件ですが、是正勧告は7件に過ぎません(2019年5月 公取委公表資料)。重層的下請構造のもとで、下請事業者から親事業者に対して取引条件の見直しや告発を求めることは大変困難です。公正な取引を実現するために抜本的な改善が必要です。
適正な単価を保障するため、「振興基準」を実効あるものとします――下請振興法は、下請単価は、「下請中小企業の適正な利益」を含み、「労働条件の改善」が可能となるよう、親企業と下請企業が「協議」して決定しなければならないと定めています(同法第3条「振興基準」)。下請振興法に実効性をもたせ、「振興基準」に照らして取引の実態を総合的に調査します。
「主導的に検査に入る」しくみをつくるなど下請検査を改善します―― “申告待ち”“書面調査頼み”という現在の下請検査のやり方を転換し、抜き打ち検査など主導的に検査に入るシステムをつくります。立入検査等の強い権限がある専任の下請検査官は、2019年度は公正取引委員会で107人、中小企業庁・経済産業局で59人にとどまっています。「下請けGメン」は消費税転嫁対策官に時限的な任務を付与したものにすぎません。公正な取引関係を構築するため専任の下請検査官の大幅増員は急務です。
罰金を引き上げ、親会社の挙証責任を強化します――下請代金法の罰金額を引き上げるとともに、課徴金を設ける、被害救済の違反金制度(被害額の3倍等)を創設するなど、不公正取引が「割の合わない」ようにします。アメリカには、不公正取引による損害額の3倍を賠償請求できる仕組みがあります(クレイトン法4条)。契約書の作成や単価決定の交渉記録の長期保存を親企業に義務付けるなど、下請代金法違反ではないことを立証する親企業側の責任を強化します。資本金規模によって適用範囲を限定する現行制度を見直し、発注元企業や元請企業までさかのぼって不公正取引の調査等ができるようにするなど、下請2法の改正・強化をすすめます。2016年12月、党議員の国会質問などを受け下請2法の運用が改善・拡充されました。これが実効あるものとなるようにします。
独禁法に基づく調査の「秘匿特権」の拡大に反対します――2019年の独占禁止法改正にあわせ、カルテルや談合をめぐる調査対象企業と弁護士とのやりとりを秘密にするいわゆる「秘匿特権」が導入されます。この対象を、「優越的地位の濫用」など事業者が単独で一方的に行うものにまで拡大すれば、違反事実が全く明らかにならず、下請けなど弱い立場の中小企業に泣き寝入りを強いることになりかねません。「秘匿特権」の対象はカルテル・談合に限定し、それ以外に拡大することに反対します。
コンビニ業界の健全な発展をはかるため「コンビニ・フランチャイズ法」を制定します
コンビニエンスストア(コンビニ)は約5万7000店舗にのぼり、地域の生活と密接に関わる存在です。しかし本部による24時間営業の強制、特定地域への集中出店などにより「コンビニ経営の危機」が起きています。背景には本部と加盟店が対等な関係でなく、不公正なフランチャイズ契約で縛られていることがあります。既存の法規制は不十分で、このままでは本部との交渉力の格差は解決しません。日本共産党はコンビニの持続的な発展のために「コンビニ・フランチャイズ法」を制定します。
※詳しくは、「コンビニ・フランチャイズ法提案」をご覧ください
東大阪市のセブンイレブン加盟店が人手不足とオーナーの過重労働のためにやむにやまれず時短営業に踏み切ったところ、本部から多額の違約金を提示されました。もはやオーナーと家族の人権にかかわる問題です。営業時間・日数は加盟店の独自の判断を尊重し、加盟店の意に反して本部が強制することを禁止します。また、本部が既存加盟店の近隣・商圏内に出店することを原則として禁止すること、人件費の上昇など社会情勢の変化に応じて、ロイヤルティ(上納金)を見直す機会を設けることなどを法律に盛り込みます。
海外では、米国・アイオワ州法で、本部が既存の加盟店の近隣に新規出店して、既存加盟店の売上に悪影響を与えた場合、本部に対して損害賠償請求権が認められるなどの事例があります。本部に対して立場の弱いオーナーを保護するための法規制が急務です。コンビニで働く労働者やコンビニを生活の支えとしている消費者のためにも、加盟店の営業と権利を守るルールの確立をめざします。
大型店の身勝手をゆるさないルールをつくり、商店街・小売店を活性化します
「大型店・まちづくりアセスメント」を義務付けるなど、まちづくりのルールをつくります――大型店の身勝手な出店・撤退は、地域の商店街・小売店を衰退させ、各地で「買い物難民」を生むなど、地域の存亡にかかわる問題を引き起こしています。欧米では、自治体が大型店を規制するルールが各国で具体化されています。大型店の出店・撤退等による生活環境や地域経済への影響評価と調整・規制を行う「大型店・まちづくりアセスメント」などのルールをつくります。規制対象となる大型店の床面積を現行の1万平方メートル超から3000平方メートル超にするなど、「まちづくり3法」の抜本改正をすすめます。
中小企業と地域経済に貢献する金融に転換します
「地域金融活性化法」を制定し、資金繰りを円滑化します――短期のもうけを最優先するアメリカ型の金融自由化路線を見直し、中小企業をはじめ実体経済に貢献する金融へ転換します。メガバンクをはじめとした貸し渋り・貸しはがしをやめさせます。「地域金融活性化法」を制定し、金融機関の地域への貸し出し状況を公表させるなど、資金供給を円滑化するルールをつくります。短期的な経営指標に基づく債務者区分を規定していた金融庁の「金融検査マニュアル」廃止は当然です。さらに「金融仲介機能のベンチマーク」のなかに小規模事業者への円滑な資金供給に配慮する項目を加えます。
2017年の民法改正が踏み込まなかった第三者保証の全面禁止を実現します。経営者個人保証や担保に依存しない金融システムを推進します。
信用保証などのあり方を見直し、政策金融本来の役割を果たさせます――政策金融と信用保証を見直し、中小企業の資金繰りを下支えするという、本来の役割を果たさせます。「一般保証」制度とセーフティネット保証5号に導入された「部分保証」を「全額保証」に戻します。リスクに応じた保証料率をあらためさせます。政府は、信用保証制度を、「生産性向上」対応や中核企業支援、海外展開等に集中させるとともに、部分保証割合を5割まで引き下げることを打ち出しています。中小企業の選別と切り捨てを迫るものであり、絶対に許せません。信用保証協会に補助されてきた「制度改革促進基金」が2015年度に廃止されました。信用保証協会の経営・財政基盤を危うくするだけでなく、「保証渋り」につながりかねません。代位弁済時に保証協会に財政損失が出ないよう、全額国庫負担とするなどの改善こそ必要です。政府系金融機関の貸し渋りをやめさせます。商工中金の完全民営化方針を撤回し、業務や組織形態などを、政策金融本来の役割に応じたものに見直します。
中小企業支援を抜本的に強めます
中小企業予算を抜本的に増額し、経営支援を抜本的に強化します
中小企業予算を1兆円規模に増額します――国の中小企業対策費(当初)は、1967年に一般歳出比でピークの0.88%を記録して以来減少傾向にあり、2019年度は0.29%の1740億円と史上最低水準を更新しました。中小企業に冷たい予算のあり方を転換し、当面、一般歳出の2%、1兆円規模に増額し、日本経済の「根幹」にふさわしい本格的な施策をすすめます。
中小企業の支援策は、省庁ごとの縦割り、単発・細切れで使い勝手が悪くなっています。申請手続きの煩雑さも大きな負担です。現行の支援策を改善し、経営者が使いやすい制度に改善します。中小企業からの「相談待ち」ではなく、行政職員や支援機関の相談員などが、直接中小企業や業者を訪問して要望を聞き、相談にのる体制をととのえます。
省庁横断的に中小企業施策を実施するために、「中小企業政策会議」をつくるなど、必要な法整備をおこなう――「縦割り」ではない横断的な中小企業政策をすすめるために、総理大臣のもとに中小企業・自営業者などの代表が参加する「中小企業政策会議」をつくります。同会議では、「中小企業憲章」実施の進ちょく状況等を検討するとともに、規制緩和など従来の政策が中小企業に与えた影響を調査し、施策に反映させます。省庁横断的に「どんな問題も中小企業の立場で考え」、施策を実行できるよう、法整備を行い、中小企業担当大臣を設置します。現在の中小企業庁の職員は約200人であり、公安調査庁約1500人の7分の1、宮内庁約1000人の5分の1にすぎません。中小企業庁を中小企業省に昇格させ人員を抜本的に増員します。
ものづくり補助金、持続化補助金の整備・拡充――ものづくり補助金を「先端設備等導入」や「経営革新」に偏ることなく、幅広い中小・小規模事業者に門戸が開かれ、より使いやすい補助金に改善し、予算を増額します。「持続化補助金」についても国の制度として予算を増額し、小規模事業者の販路開拓など事業の持続化につながる取り組みを広く支えるために恒久的な制度とします。
地域経済循環の要である中小企業の仕事づくりを支援し、雇用の増加、くらしの改善をはかります
農商工連携のとりくみを支援し、地元産物の利用をすすめます――地元の農林水産物などを活用し、その生産・加工・販売・流通など各段階で地域に仕事と雇用を生み出します。「農・商・工」連携のとりくみへの支援を拡充し、地元農水産物の給食材への活用、地元木材の公共事業などへの活用をすすめます。消費者と結んだ直売所・産直センターなどへの支援をつよめます。
住宅リフォームへの国の支援をつよめます――地方自治体が実施している「住宅リフォーム助成制度」は573自治体、「店舗リフォーム助成制度」は107自治体が実施しています(2018年、全商連調べ)。環境の改善整備で住民に喜ばれるとともに、波及効果の大きさで地域経済対策としても大きな威力を発揮しています。国の緊急経済対策の交付金がきっかけとなった自治体も少なくありません。助成制度の具体的な設計と実施は、地方の自主性にゆだね、これを国が財政的に支援することが求められています。地域の業者と住民の利益が守られる制度が一層重要になっています。
「空き店舗」対策、商店リフォーム助成など、商店街・小売店の振興をすすめます――商店街・小売店を「地域の共有財産」と位置づけ、商店街振興対策予算を拡充します。「空き店舗」の借り上げ、改装費などへの補助を拡充します。群馬県高崎市が、2013年4月に創設した「まちなか商店リニューアル助成事業」が、全国で広がっています。個々の商店の改装や店舗等で使用する備品の費用などへの助成を行います。お年寄り、障害者、子ども等の生活圏(ライフ・エリア)を単位に、生鮮食料品を買える店舗、商店街、学校、医療機関、保育施設や官公署、公共交通などを整備します。朝市、ポイントカード、共同配達など、自ら努力している商店街を支援します。
地場・伝統産業の産地・集積地への支援をつよめます――地域の雇用や文化の土台を担っている地場産業・伝統産業への支援をつよめます。ネットワークの強みこそ産地の競争力の源であり、それを生かすために、産地・集積地全体を「面」として支援する自治体ごとの振興計画をつくります。新製品・デザイン開発や他産業とのコラボレーションを支援し、常設展示施設の整備、インターネットの活用など販売支援をつよめます。
環境・福祉など、社会的ニーズにこたえた製品開発・販路開拓などを支援します――再エネの利活用や省エネ、環境や福祉、建築分野では、社会的要請にこたえた製品やサービス、建築などで、中小企業の挑戦がすすんでいます。わずかな風力でも動く小型風車、木質繊維の断熱材、リハビリ効果を高める「足こぎ車いす」の開発など、多彩な取り組みが行われています。
ものづくりでは、連携して社会的ニーズにこたえようとする中小企業のネットワークも広がっています。
こうした中小企業の取り組み―製品・サービスを国や自治体が率先して購入し、その評価を広く知らせ、海外もふくめ販路が広がるよう支援します。
日本古来の木造建築技術を見直し、大手ハウスメーカーに都合の良い「建築確認」審査の仕組みをあらため、森林組合と提携した地場の工務店の取り組みを支援します。ヨーロッパですすんでいるエネルギー・パス(住宅のエネルギー消費量の認定)による建築物の省エネのとりくみを制度化し、支援します。
トライアル発注制度など新分野開拓を支援します――環境でも、福祉でも、中小企業がものづくり技術を生かし、社会的要請にこたえた製品やサービスの提供に努力しています。しかし、中小企業の場合、ブランド力がなく、なかなか普及できない場合が少なくありません。中小企業製品やサービスを購入して「試し」に使用しその評価を公にする「トライアル発注」(お試し発注)制度を国や地方自治体が取り入れ、中小企業の新分野開拓を支援します。
生活密着型公共事業への転換をすすめ、「公契約法・条例」で人間らしい労働条件を保障します
保育所・特養の建設、学校・道路などの維持補修をすすめます――生活密着型公共事業への転換をすすめ、保育所・特別養護老人ホームの建設、学校・福祉施設の耐震補強、道路・橋梁(きょうりょう)の維持補修、個人宅の耐震補修・リフォームなどを支援し、中小企業の仕事と雇用の増加につなげます。
官公需を増やし、ダンピング競争をなくします――国と自治体の中小企業向け官公需発注比率を引き上げます。中小企業への発注率を高めるために、分離・分割発注をすすめ、「小規模工事希望者登録制度」の活用、ランク制の厳格実施などをすすめます。インターネットを利用して入札価格の競り下げを競い合う「リバースオークション」には反対します。果てしないダンピング競争をなくすため、独禁法など現行のルールを厳正に執行するとともに、最低制限価格制度を導入して適正化をはかります。建設業法が定める元請け責任を厳格に守らせ、工事代金の未払いなどをなくします。
生活できる賃金などを保障する「公契約法・条例」を制定します――千葉県野田市では、2010年4月から全国初の「公契約条例」が施行され、市の公共工事等を受注した企業や下請け業者等は、市が定める賃金以上を支払うことが義務付けられています。川崎市、相模原市などの政令指定都市を含む全国の自治体に広がっています。発注する公的機関と受注者等の間で結ばれる契約(公契約)において、生活できる賃金をはじめ、人間らしく働くことのできる労働条件を保障する「公契約法」「公契約条例」の制定をすすめます。
創業・開業を応援し、中小企業の採用と人材育成を支援します
積極的な創業・開業を応援し、研究機関等との連携をすすめます――ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、アメリカ、韓国などでは、自営商工業者が大幅に増えているのに対して、日本では1980年比で3分の2に減っています。新規開業者が利用できる起業支援制度を拡充し、低利で返済猶予期間を備えた開業資金融資制度を創設します。大学、高等専門学校、専修学校、研究機関等との連携を促進します。
中小企業の採用と人材育成を支援します――中小企業経営の発展にとって採用と人材育成が決定的に重要です。中小企業が共同でおこなう求人活動や社員教育活動への支援を強めます。各分野のすぐれた技能者・職人の認定制度、報償金制度を整備・拡充し、すぐれた技術を継承します。経営者同士が学び・交流できる場、各地の商店街や市場関係者が学び・交流できる場をつくります。同業種間、異業種間の学びと交流を応援します。
中小企業に就職した若者の奨学金返還を支援します――多くの学生が奨学金を利用するなか、中小企業に就職した若者の奨学金返還は大きな問題です。石川県、京都府、兵庫県、大分県では、社員の奨学金返還を助けている中小企業に対して補助制度を創設しています。こうした取り組みを国が支援し、全国に普及させます。
学校教育で中小企業に触れ、学ぶ活動を支援します――学校教育での中小企業での職業体験・インターンシップを重視し、子どもたちが中小企業の現場に触れて地域の産業や経済について学ぶと同時に、労働観や職業観を形成できるよう支援します。大学での中小企業論講座の増設を支援し、大学生が中小企業について学ぶことができる機会を増やします。
産業集積・町工場を守るため、固定費補助などの緊急・直接支援をおこないます
産業集積を担う町工場は、金型・成形・切削・研磨・プレス・熱処理・メッキ・鍛造・鋳造など、基盤技術の集積を形成している日本独特の中小企業・自営業者のネットワークです。日本が世界に誇るものづくり技術を支える‟公共財“の役割をも果たす、創造と技術革新の「宝庫」です。
ところが、日本一の集積を誇る東京都大田区では2003年から2014年の間に、従業者数で1~3人以下の小規模事業所が半数以上を占める工場数が5040から3481へと約3割も減少してきています(大田区ものづくり産業等実態調査による)。優れた技術・技能を失うのみならず、雇用の場を奪うことになります。地域と日本経済全体にとっても大きな損失です。
町工場の固定費の負担軽減のため、リース料の支払い猶予を広げるとともに、機械設備のリース料や借り工場の家賃に対する直接補助を実現します。
東京都大田区で実施されたような自治体独自の緊急・直接の支援策「ものづくり経営革新緊急支援事業制度」を国としても支援し、産業集積地の振興をはかります。
被災地での生業、中小企業の復旧・復興を全面的に支援します
東日本大震災と福島原発事故から8年余が経過しました。熊本地震や九州北部豪雨、大阪北部地震、北海道胆振東部地震、西日本豪雨に加え台風などによる豪雨・暴風・高潮被害、火山噴火など、自然災害が相次いでいます。今年6月19日には、山形沖地震が発生しました。
選別と切り捨ての「復興」ではなく、生業を含む地域産業全体を再建します。仕事と雇用を担う中小企業と生業の全面的な復旧・復興が決定的に重要です。被災事業者への直接支援となる「グループ補助金」を広く適用し、さらに希望したグループ全体にゆきわたるよう、柔軟に対応することを求めます。経産省は西日本豪雨でのグループ補助金を、民間保険からの支給額を控除するように改悪しました。中小企業庁は「復旧は自助努力が基本」と、保険加入による自己努力を促す立場を鮮明にしています。復旧・復興に「自助努力」押し付けをやめさせ、被災した中小企業、自営業者の復旧・復興を全面的に支援します。自然災害への事前対策(事業継続計画=BCPなど)が一部の企業にとどまらず、小規模企業を含めて面として広がるようきめ細やかな支援を行います。
東京電力福島第一原発事故の収束も見えないなか、「10年を区切り」などとして、被災者支援の縮小・打ち切り、被災地の切り捨てを進めることは許されません。営業損害を認めず、一方的に賠償を打ち切ることは、事業の継続への展望を奪うものです。生業裁判など福島県民や被災住民のたたかいを支持し、ともに粘り強く要求実現へ運動をすすめます。
中小企業を支援する税制と社会保障のしくみをつくります
事業承継税制の一段の拡充を実施します
法人版と個人版の「事業承継税制」の一段の拡充をはかります。事業承継税制は10年という期間限定は撤廃し、相続税・贈与税の「猶予」ではなく「免除」とします。また担保・質権設定額にかかる利子税(利息相当額)は廃止します。一方で、そもそも後継者が決まらなければ事業承継税制を活用できません。第三者承継の支援について、事業引継ぎ支援センターの体制を強化し、特に小規模企業に対する支援を拡充し、事業承継税制の活用を進めます。
中小企業を支援する税制・税務行政に転換します
大企業優先の税制から中小企業・自営業者を支援する税制に転換します――消費税の増税計画を中止するとともに、消費税の延納措置を認め、免税点を引き上げます。所得税法56条を廃止し、事業主、家族従業者の働き分(自家労賃)を経費と認めます。法人税に累進制を導入し、中小企業の一定範囲内の所得については現行より税率を引き下げます。中小企業法人所得税の軽減税率を守り、減価償却の定率償却方式を維持します。繰越控除制度の縮小、中小企業経営者の給与所得控除の引き下げに反対します。
「納税者憲章」を制定し、納税者の権利をまもります――消費税納税にあたっての仕入れ税額控除否認、機械類への償却資産課税の強化、倒産に追い込む差し押さえの乱発など、国と地方の過酷な徴税・税務調査が横行しています。「事前通知を要しない」との例外を定めるなど、改悪された国税通則法でも、事前通知を原則義務としており、納税者の人権、権利が守られなければなりません。
経済協力開発機構(OECD)加盟36カ国のうち、納税者権利憲章や納税者権利保護法がないのは日本だけです。「事前通知や調査理由開示の義務付け」、「第三者の立会人及び調査内容の記録や録音」、「生存権的財産の差し押さえ禁止」など、納税者の権利を保障する「納税者憲章」を制定します。
国保料をはじめとした中小業者の負担を軽減し、共済制度等への支援をつよめます
税・保険料の分割納付制度(申請型)をより活用しやすくします――国税を一括納付すると事業の継続や生活が困難になる恐れがある場合に、申請により納税を猶予し延滞税が低減される「換価の猶予」制度は10万件の業者が活用しています。党議員の国会質問を受けて、税務署の窓口にチラシや申請書が設置され、さらに中小企業庁の『2019年度版中小企業施策利用ガイドブック』に紹介されました。周知をさらに強めると同時に、事業者の実態を踏まえた納付制度に改善します。
公費を1兆円投入して、国保料(税)を抜本的に引き下げます――市町村国保の高すぎる保険料(税)が、中小業者のくらしを脅かしています。国保は、加入者の4割が年金生活者、3割が非正規労働者であり、所得の低い人が多く加入する医療保険です。ところが平均保険料は、4人世帯の場合で、同じ年収のサラリーマンの健康保険料の2倍にもなります。しかも安倍政権が2018年度から開始した「国保の都道府県化」によって、今でも高すぎる国民健康保険料(税)の負担がさらに引き上げられようとしています。
全国知事会、全国市長会、全国町村会などは、加入者の所得が低い国保が他の医療保険より保険料が高く負担が限界に達している「国保の構造問題」を解決するために、公費投入を増やして国保料(税)を引き下げることを国に要望し続けています。
国保には、「均等割(人数割)」「平等割(世帯割)」という勤労者の医療保険にはない「人頭税」があり、高い保険料(税)の大きな要因になっています。公費負担を1兆円増やせば「均等割」「平等割」をなくせます。それによって、所得250万円(給与換算380万円)の4人世帯の国保料(税)は、全国平均で35.4万円から20.2万円に下がります。給与年収180万円(所得108万円)の単身者の国保料(税)も、12.8万円から7.0万円に下がるなど、大幅な負担軽減となります。
滞納者への脅迫まがいの督促、情け容赦のない財産調査・差し押さえ、生活困窮者からの機械的な保険証とり上げなど、加入者の人権を無視した国保行政をやめさせます。出産や病気・ケガのときにも安心して休めるように、出産・傷病手当金の制度をつくります。
国保組合の国庫補助をまもり、負担軽減のとりくみを応援します――不況による生活悪化と健康破壊が深刻化するなか、中小業者が自主的に運営し、負担軽減や健康づくりにとりくむ、国保組合の役割はますます重要です。ところが政府が2017年度から建設業での社会保険加入指導をいっそう強化するなか、現場では上位企業による協会けんぽへの加入指導や、建設国保の排除が起きています。上位企業や関係機関に指導するとともに、国保組合への国庫補助をまもり、負担軽減・健康保持のとりくみを応援します。
社会保険料の猶予・軽減制度を整備し、公的支援が受けられるようにします――不況で経営難におちいった事業所が、社会保険料の事業主負担を払えず、その結果、滞納を理由に雇用調整助成金、信用保証、制度融資などの公的支援が受けられない事態も起こっています。経営困難な事業所の社会保険料を猶予・軽減する制度をつくり、企業の経営と従業員の社会保障を守るとともに、公的支援制度を利用できる環境をつくります。
小規模共済制度・中小企業退職金共済制度などを改善します。自主共済は、保険業法の対象外とします――社会保障の相次ぐ改悪で将来不安が増しているいま、中小企業の各種共済制度を充実させることが必要です。小規模共済制度や中小企業退職金共済制度などの改善をすすめます。「助け合い」の精神でつくられている「自主共済」を保障するよう、法整備をはかります。
自治体の「中小企業・小規模企業振興条例」制定を推進し、地域中小企業政策を発展させます
中小企業数は約358万者(うち小規模事業者は305万者、2016年)にのぼりますが、一つ一つが多彩な個性をもち、固有の歴史的・文化的特徴を備えています。したがって、国が「中小企業憲章」と「小規模企業振興基本法」に基づいて基本政策を実施することとあわせて、各地域の人々が主体となった地域中小企業政策を発展させることが重要です。
「中小企業・小規模企業振興条例」の制定を推進し、地域中小企業政策を発展させます――2019年5月現在、全国自治体の約25%(46都道府県439市区町村)で「中小企業・小規模企業振興基本条例」(名称はさまざま。以下「振興条例」)が制定(中同協調べ)されており、中小企業振興に大きな力を発揮しています。各自治体で「振興条例」を制定し、その地域の中小企業施策の基本理念を定めます。
全事業所実態調査を行い、施策に反映します――全国に先駆けて1979年に「振興条例」を制定した東京都墨田区では、制定の前年、係長級職員165人が、区内製造業9314社に足を運んで実態調査(悉皆〈しっかい〉調査)を行いました。この調査で、「ひどい環境で、家族労働に支えられ、それでも税金を払っている。健康破壊や、長時間労働への対策・支援が急務」など、区長・職員の認識が一変しました。それまで中小企業対策は、商工部だけの「縦割り」行政でしたが、調査後は、福祉や教育を含む横断的事業として区政に位置付けられました。「全事業所調査」を行い、自治体が地域の中小企業の実態を把握し、得られた情報を施策に生かします。その際、商工施策だけでなく、福祉やまちづくりなど自治体の幅広い施策に反映させます。
経営者・業者などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業の声を生かします――「振興条例」が単なる「飾り」ではなく、実際に役立つものになるためには、中小業者・金融機関・自治体職員などが主体的に実践をすすめることが不可欠です。北海道帯広市では、2007年に「中小企業振興基本条例」を制定した後、条例を具体化するために1年で74回に及ぶ議論を重ねました。その中で、経営者・業者自身が中小企業や地域の値打ちに「気づき」、工場誘致などの「呼び込み型」から「内発型」の地域振興に軸足を移すことが重要だという認識が広がっています。「振興条例」の推進体制として、経営者、金融機関、自治体職員などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業の声を生かします。
愛媛県松山市では2014年に制定した「松山市中小企業振興基本条例」に基づき、市の職員、研究者、学校教員、中小企業経営者等の協力のもとで、子どもたちが中小企業について学び・考えるための授業用教材を開発し、2016 年から小学校の授業で活用されています。条例を生かして中小企業への理解が深まり、地域が一体となって中小企業を応援する取り組みを推進します。