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日本共産党

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赤旗

➡各分野の目次

19 障害者・障害児

憲法、障害者権利条約にもとづいた障害者施策を実現します

2019年6月

 障害者の差別をなくし、尊厳をまもることは、国際的にも大きな流れになっています。

 平和の中でこそ生きられる障害者のくらしをおびやかす憲法9条「改正」は、障害者にとっても大きな争点です。憲法と障害者権利条約の理念を地域の隅々に広げながら、だれもが安心できるインクルーシブ(排除しない)な社会の実現をめざします。

 国は「自助」と「共助(助け合い)を前提に、生産性と効率性の向上のために介護・障害者・子どもの分野を一括化する「地域包括ケアシステム」体制、生活困難者を他人事として放っておかず“縦割り制度”によらない包括的な支援体制をつくるという「我が事・丸ごと」政策をすすめようとしています。公的責任を投げ捨て、いっそうの社会保障予算の削減・抑制をねらうものであり、「我が事・丸ごと」政策は見直し、安心できる社会保障施策をめざします。

 障害関連予算は毎年増えているといっても、国際的に見ればGDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの4分の1(国立社会保障・人口問題研究所平成28年度「社会保障費用統計」)など低いものです。国際水準に見合った障害者予算の引き上げを求めます。

 日本共産党は障害者権利条約、障害者自立支援法違憲訴訟団と国が結んだ「基本合意」(2010年1月)、障害者自立支援法を廃止してそれにかわる障害者総合福祉法制を審議した総合福祉部会の「骨格提言(2011年8月)」にもとづき、以下のような15施策を提案します。

障害者権利条約の実現。障害者差別解消法、障害者基本法、虐待防止、成年後見制度の見直し

 「津久井やまゆり園」でおきた元職員による悲惨な事件(2016年7月)をきっかけに、“優生思想”が改めて問われています。旧優生保護法に基づく優生手術の被害者への国としての正式な謝罪・補償も急務です。今年4月に成立した「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案」は、優生手術を違憲とするなど一歩前進と言える面がありますが不十分です。早期に改正し、一時金を抜本的に増額するなど、国会の責任を果たすため力をつくします。優生思想をのりこえて、だれもが尊厳をもって生きられる社会をつくります。

 障害者権利条約の実現をめざし、障害は社会の側にあるという「社会的障壁」をなくし、社会全体で差別や虐待を許さず、障害者の人権保障のために力を合わせます。

障害者差別解消法――2016年から施行されている差別解消法を力に、法の周知や徹底を社会の隅々まで広げるとともに、不十分な点について改善します。

――省庁や自治体などの公的機関は、「水増し」雇用を厳しく反省し、差別解消と合理的配慮のとりくみの先頭にたつとともに、事業所や組織に対して正しく指導が行われるよう求めます。

――事業者による合理的配慮は「努力義務」とされていますが、法的「義務」とすべきです。

――地方自治体に相談や支援の窓口となる差別解消支援地域協議会の相談窓口に法律の専門家や障害当事者などの人材を充てられるよう、予算措置などの国の支援を求めます。

障害者基本法――2011年の改正は、障害者権利条約の水準からは不十分でした。さらなる改正が必要です。

――障害者権利条約の大事な柱の1つである「合理的配慮をおこなわないことは差別である」を明記します。

――「平等な社会参加のために『必要な支援を権利として保障する』」ことを規定し、「国と自治体の支援提供義務の明確化」などを反映させます。

――障害者政策委員会を、障害者権利条約の遂行を監視する真の“国から独立した機関”としての役割にふさわしく見直すとともに、国連に提出された「締約国報告」とNGOが準備するパラレルレポート(民間報告)をいかして、国内法の整備をすすめます。

虐待からまもる体制整備――2012年に障害者虐待防止法が施行されましたが、年々虐待件数が増えています。2017年度の被害者は過去最多で3544人にのぼりました。障害者の人権が尊重される社会をつくります。

――あらゆる虐待をなくすために、 市町村障害者虐待防止センターに専門知識を持つ職員の配置を促進し、緊急対応できる保護施設が確保できるよう、国の対策をすすめます。

――通報義務を学校や病院などにも広げます。

――被虐待者のケアとともに、事例を検証し、障害の特性をふまえた虐待者・施設への支援を強めます。

――附則に規定された「3年後の見直し」の時期を過ぎており、障害者虐待防止法を見直します。

成年後見制度の見直し――成年後見制度は権利擁護に一定の役割を果たしてきましたが、後見人による不正事件が急増するなどの問題も起きており、制度改善が必要です。障害者権利条約の批准を受け、抜本的な見直し・改革を求める議論も起こっています。

――家庭裁判所の後見監督体制の強化など、不正の防止・根絶に向けた取り組みをすすめます。

――障害者権利条約第12条にもとづき、さまざまな団体・有識者の意見も聞きながら、ある程度自己主張できる人も、意思表示がきわめて困難な人も、権利が守られ当事者の意思決定を支援する制度となるよう、現行制度の全面的な検討・見直しをすすめます。

総合的な障害者福祉法制の実現

 2020年は、障害者自立支援法違憲訴訟団と国が結んだ「基本合意」(2010年1月)から10年という節目の年となります。

 介護保険優先原則について、基本合意では「優先原則を廃止し、障害特性を配慮した選択制等の導入をはかること」と約束したにもかかわらず、国は従来の見解をくりかえしています。65歳になった途端に障害福祉サービスを打ち切った岡山市に対し起こされた浅田訴訟では、障害福祉サービスは「全ての国民が障害の有無にかかわらず個人として尊重されるものであるとの障害者基本法の理念にのっとり」必要な給付をするものだとして、市に損害賠償を命じました。

 障害者自立支援法を廃止してそれにかわる障害者総合福祉法制を審議した総合福祉部会の「骨格提言(2011年8月)」を尊重すべきにもかかわらず、政府は障害者との約束を破り、自立支援法を廃止するどころか、一部の手直しで障害者総合支援法を成立させました。「基本合意」や「骨格提言」を尊重した総合的な障害者福祉法を制定します。当面、総合支援法の抜本改革にとりくみます。

――応益負担はすみやかに廃止し、利用料は無料にします。世帯収入にかかわらず、本人所得のみの収入認定とします。

――総合支援法第7条の介護保険優先原則はすみやかに廃止します。介護保険の対象年齢でも従来から受けていた支援を継続して受けられるようにして、障害者が障害者福祉制度と介護保険制度を選択できるようにします。

――現在のサービス支給量抑制のためのしくみから、障害者参加で区分認定の制度内容を協議し、支援の必要量や本人の希望が保障されるしくみに転換します。

――支援が必要にもかかわらず福祉利用の対象からもれてしまう、または対象であるにもかかわらず適切な支援を受けることができない内部障害、発達障害、高次脳機能障害、難病・慢性疾患などのあらゆる障害者を、障害者基本法第2条1項の規定にもとづいて対象にします。

――事業所・施設は日額払いをやめ、月額払いにします。

――基本報酬を抜本的に引き上げて、加算で評価する報酬体系を改めます。

――通所施設における食事提供加算は当面継続し、恒久的な食費軽減策に見直します。

――地域生活支援事業の予算を義務的経費化し、必要なサービスの量と質を保障する抜本的な改正をめざします。

――相談支援をはじめすべての障害福祉サービスの抜本的な報酬の引き上げをはかり、障害のある人が安心した地域生活が送れるように改善します。

――人工呼吸器、胃ろう、在宅酸素療法などの医療的ケアの必要な障害者に対応できる通所施設をつくります。

――同行援護の利用時間の地域間格差をなくし、視覚障害者に対応できるヘルパーの養成を拡充し、十分な支給量を保障します。

――補装具・日常生活用具については、障害者の自立生活や社会参加を広げるものとして、障害の個別性に応じた必要な給付を行うことや実費負担をなくす等、制度の抜本的見直しを行います。

暮らしの場の保障

 障害福祉施策が長い間前提としてきた家族介護を脱却し、必要な支援を受けながら障害者が希望する場でくらせるよう、基盤整備をすすめます。

――入所施設やグループホームなどの待機者が増え続けています。多様な暮らしの場を公的責任で計画的に増やします。

――施設やグループホームなどの建設に公有地の活用をできるよう、国や自治体に求めます。

――バリアフリー対応の公営住宅を確保・建設します。

――在宅支援のためにも、家族の休息を保障するためにも、ショートステイの増設や、「医療的ケア」を必要とする人たちへの支援策を拡充します。

――ホームヘルプサービスや移動支援の拡充など、在宅支援を保障します。

――障害者・障害児世帯の孤立死や孤独死を防止し、日常生活における緊急時の支援システムを確立します。

所得の保障

 福祉的就労をする年収122万円以下の障害者が8割をこえています(「障害のある人の地域生活実態調査:きょうされん16年5月発表)。保険料などの負担増や、生活保護、年金の切り下げなど、「これ以上の生活苦に耐えられない」という悲痛な叫びがあがっています。雇用の保障とともに、障害年金を「自立できる」額に抜本的に引き上げます。

――障害年金は所得保障という観点から、支給額、認定基準、認定システムを抜本的に見直します。消費税増税によらず、すみやかに障害基礎年金一級・月6,500円、二級・5,000円を上乗せし、最低保障年金制度の実現で底上げをはかります。

――障害年金センターに一元化された審査によって生じている、「症状が変わらないのに障害年金が受給できない」「作業所の就労を理由に年金が打ち切られた」などの問題解決にとりくみます。

――無年金障害者への特別障害給付制度について周知徹底を求めます。国は自らの不作為や年金制度の不備を認めて障害基礎年金と同額に引き上げるとともに、国籍要件のために加入できなかった在日外国人など、支給対象をさらに広げます。

――障害のあるひとり親世帯が障害年金と児童扶養手当を併給できるよう求めます。

――特別扶養児童手当は、子どもの日常生活において適切に支給されるよう、認定基準を抜本的に見直します。

労働・雇用の保障

 中央・地方省庁は40年にわたって障害者雇用率をごまかしていました。実際の障害者雇用率はわずか1・19%に過ぎず、3460人が「水増し」されており、障害者、国民への裏切りです。原因の徹底究明と再発防止、採用方法や採用後の就労支援などが必要です。

 福祉的就労は、働いて得た賃金で生活できるしくみを確立します。一般雇用における最低賃金法の「減額の特例」による低賃金を解決します。

 職場の差別禁止や合理的配慮を徹底し、障害者の働く環境をまもります。

〈一般雇用〉

――国や自治体、民間企業の法定雇用率の厳守を徹底し、さらに法定雇用率を引き上げます。

――精神障害者の雇用義務化においての、雇用率を低く設定する5年間の猶予期間を中止し、早急に義務化します。

――最低賃金法第七条『最低賃金の減額の特例』(障害者除外規定)を廃止します。

――障害者雇用促進法における差別禁止と合理的配慮は法定義務です。事業者は障害者のはたらく権利を保障し、障害の特性に配慮した職場環境の改善をすすめます。

――障害者手帳のない難病・慢性疾患患者も法定雇用率や雇用の義務化の対象にします。

――障害者が職場に定着できるように、企業に対して障害特性に関する知識や支援方法等が相談できる機関を設置します。定着支援を適切におこなうためにジョブコーチ(職場適応援助者)の増員を行います。

――病状や障害が進行しても働き続けられるよう、通院や病気休暇を保障します。

――障害者、難病患者の移動支援において、通勤のためのヘルパー利用を認め、読み書きをサポートする職場介助者などを配置します。

――視覚障害者のあんま・はり・灸のはたらく場を確保します。

――官公庁の採用試験に点字・大活字・パソコン受験を位置づけます。知的障害者のへの採用試験における合理的配慮を実施します。

〈福祉的就労〉

――ILO条約や障害者権利条約にもとづき、総合支援法にもとづく就労支援の事業所で働く障害者にも最低賃金を保障できるよう、補てんのしくみを導入します。

――就労支援の事業所・作業所での利用料負担は廃止します。

――就労継続支援A型事業所の相次ぐ閉鎖により解雇された障害者の受け入れ先の確保を運営法人や自治体の責任ですすめます。国は解雇の実態調査をおこないます。

――就労継続支援B型事業所の、平均工賃が低いほど減少する基本報酬のしくみを見直し、重度の人や利用日数の少ない人の就労をまもります。

――低水準にある小規模作業所と地域活動支援センターに対する補助金を、当面就労継続支援事業の水準に引き上げます。

障害児の福祉・医療・保護者支援

 障害児の療育や福祉は、児童福祉法のもとであっても契約制度であり、応益負担が強いられてきました。政府がやろうとする幼保無償化に障害児施設利用、療育を受ける世帯も含みますが、本来、障害を自己責任にする応益負担はふさわしくありません。消費税増税によらず、契約制度や応益負担はやめて、無料で療育、福祉、医療を利用できるようにします。子どもの欠席や感染症流行により事務所運営を不安定にする日額報酬制を改めます。

障害の早期からの発見と行き届いた支援

――乳幼児健診は、民間委託による個別健診ではなく、市町村等による集団検診をすすめます。専門職を配置し、早期からの障害の発見と療育、保護者支援をおこなえるようにします。

通所施設・保育所等訪問

――障害が確定していない子どもたちを含めて、必要なときに身近な地域で、療育を受けられるよう、「親子教室」「児童発達支援」などの通所施設の整備を求めます。

――国は実態を調査し、支援の中核的な役割が求められる児童発達支援センターの地域格差のない設置と機能強化を保障します。

――医療的ケアの必要があるなど障害の重い子どもが、児童発達支援センターや児童発達支援事業の利用ができるように、条件整備をすすめます。

――保育所、幼稚園、学童保育所等への自治体ごとの巡回指導も引き続き保障します。

保育所・幼稚園

――障害児の保育所、幼稚園、認定こども園への入所・入園や保育条件の保障を求めます。慢性疾患児や医療的ケアの必要な子どものために看護師の配置をすすめます。

入所施設

――入所施設の子どもたちの障害の程度は、比較的軽度の障害、重度の障害とさまざまなであり、児童数から割り出される職員配置や設置基準では対応ができません。施設空間や生活集団の編成の困難を解決する職員配置にします。

相談支援

――発達・障害・生活を総合的に支援するために、障害児相談支援事業所の専門性を保障し、さまざまな相談に対応できるようにします。

保護者支援

――保護者の子育てやレスパイトを保障するための、障害児のショートステイやホームヘルプに対応できる施設・事業所を増やします。

――特別児童扶養手当は、子どもの日常の状況において適切に支給されるよう、認定基準を抜本的に見直します。

放課後等デイサービス

――利用児の障害の状態によってきめられる基本報酬のしくみを廃止し、支援の中身で評価され、子どもの遊びと生活を保障する放課後活動が可能となる専門的力量をもった正規職員の配置の保障ができるように、基本報酬を抜本的に引き上げた制度をつくります。

教育の保障

 教育現場における過度な競争、エリート主義、能力主義の進行により、障害のある子どもたちが通常学校に就学できない実態もあります。子どもに適した場を求めて、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室に通う子どもたちが増えているにもかかわらず、教育条件はいっそう劣悪化しています。特別支援学校の過大過密、教室不足も深刻です。教育条件を整備し、障害のある子どもたちに行き届いた教育をすすめます。

特別支援教育

――通常学校における特別支援教育の充実を図るため、一学級あたりの児童生徒数を引き下げ、通級指導教室の整備計画、施設整備の充実をはかります。個別のニーズにこたえる「合理的配慮」の提供ができる財政保障を求めます。教員定員基準を新設します。

――特別支援学校の行き届いた教育保障のために、一学級あたりの児童生徒数を引き下げます。異常な過大・過密を解決できるよう「学校設置基準」を策定します。

――教職員の増員や施設設備のバリアフリー化、エアコン設置など、十分な教育予算をとり、子どもに最適・最善の教育がなされるよう教育環境をととのえます。

病児・医療的ケアの必要な子ども

――病児学級・院内学級・病弱児特別支援学校での病児の教育の保障をすすめます。

――過重な負担になっている医療的ケア児の保護者の支援をおこない、在宅・学校などにおいての教育の権利を保障します。自治体まかせになっている福祉・教育・医療の垣根を取り払った支援を国の責任で強めます。

――小・中学校で生活が送れるように医療的ケア児が通う学校へ看護師の配置をすすめます。

高校・専修学校・大学

――高校、大学、専修学校などで、修学支援のための合理的配慮をすすめるために、国による補助金制度などの充実を図ります。

障害者の医療拡充

 憲法25条や障害者権利条約25条の立場から、障害・疾患の区別なく、窓口負担ゼロで医療を受けられる日本をめざします。当面、現行の窓口負担を引き下げて、障害者や難病患者・慢性疾患児の医療費は、優先してすみやかに無料にすることは当然です。

自立支援医療

――自立支援医療の低所得世帯のすみやかな無料を実施し、低所得世帯以外についても無料にします。

――育成医療と更生医療の「重度かつ継続」の経過的措置を恒久的な制度に見直します。「重度かつ継続」者の入院時食事療養費の負担をなくします。

――育成医療制度は「児童の健全育成」の観点から本来の児童福祉法に戻し、障害のある子どもとともに、「放置すれば将来障害が残ると予想される子ども」を今後とも対象に含むようにします。また、給付の対象を内科的治療まで拡大します。

――更生医療制度はリハビリテーション医療の観点から身体障害者手帳所持を条件からはずし、障害の除去・軽減のみでなく、状態を維持したり、これ以上の悪化や二次障害を防ぐための治療や予防も含めた治療にも適用できるよう対象を拡大します。「重度かつ継続」の対象範囲を拡大し、断続的であっても高額の医療費がかかる場合にも適用します。

重度心身障害者医療費助成制度

――重度心身障害者(児)医療費助成制度における窓口負担を無料化にさせるために、実施する自治体への国保の国庫補助金を減額するペナルティー制度を廃止します。

――重度心身障害者(児)医療費助成制度を国の制度として確立します。身体障害者手帳のない難病・長期慢性疾患をふくむすべての障害者を対象にします。

――難病・慢性疾患などにおける通院やその付き添い人のための交通費助成と宿泊施設の設置および運営費の補助を行います。

障害児者の入院

――重度訪問介護利用者でかつ支援区分6の人に限って医療機関でのヘルパー利用が可能になりましたが、看護師などに介助方法を伝えるだけで直接介助は認めていません。一部の重度者に限定せず、通院や入院時に介助を必要とするすべての障害児者に対して、コミュニケーションや日常生活を支えているホームヘルパー等が病院内での直接介助や見守り支援ができるよう、医療と福祉の垣根をはずし、実態的な支援がおこなわれるよう制度の拡充をはかります。

精神障害者の医療・福祉の拡充

 精神科病院の入院医療の監視強化や身体拘束・隔離の人権を損なう行為に歯止めをかけ、医療体制を手厚くするとともに、国際的な規範に即して精神障害者の地域のくらしを支えます。

――国は精神科病院での身体拘束や、強制医療を当事者の意見をふまえ解消します。

――他の診療科に比べ医師や看護師の配置が少なくてよいとしている「精神科特例」を見直し、診療報酬を引き上げて医療体制を厚くします。

――措置入院した患者の退院後の支援を話し合う「精神障害者支援地域協議会」への警察官の参加を中止します。個別ケース検討会議への本人や家族の参加を「必要に応じて」から、積極的な推進に転換します。

――社会的入院を解消します。精神科病棟の居住系施設への転換はやめて、地域にグループホームなど住まいの場を増設し、在宅での訪問支援を拡充します。相談支援を拡充し、就労支援をはじめとした所得保障などをすすめます。

――精神疾患患者・障害者の支援をおこなう経験者(ピア)の活用を制度化します。

――自立支援医療(通院公費)の低所得世帯のすみやかな無料を実施し、低所得世帯以外についても無料にします。

発達障害者の支援

 発達障害者支援法や障害者総合支援法にも発達障害が位置づけられていますが、社会的な理解や支援体制の整備はいまだ不十分です。全世代の問題として、生きづらさを抱えた人たちの支援にとりくみます。

――都道府県・指定都市においての発達障害者支援地域協議会に当事者やその家族の参加をすすめます。

――発達障害者支援センターをすべての都道府県に複数配置し、民間団体やハローワークなどと連携して相談・支援体制を拡充します。

――二次障害を予防する医療や、雇用、教育などすべてにわたって支援を拡充します。

――医療・支援機関に足を運べない人に、専門家が自宅を訪問する相談支援活動を広げます。

――発達障害者も障害者手帳を取得しやすいよう制度を改善します。

交通、バリアフリー、文化・スポーツ・余暇活動の保障、合理的配慮

――公共交通機関の料金割引制度の改善・拡充にとりくみます。とりわけ、精神障害者、てんかん、難病・慢性疾患などの障害者・患者を身体・知的障害と同等の運賃割引の対象にすることを求めます。

――駅のホームドア、可動式ホーム柵の普及をすすめ、駅員による転落防止等の対策を徹底します。ノンステップバスの導入をすすめ、交通や建物などのバリアフリー化をすすめます。障害者用・オストメイト対応の「多機能トイレ」を普及し、ユニバーサルシートをあわせて設置します。

――点字ブロック・音響式信号機・エスコートゾーンの整備をすすめます。

――障害者が安心して生活できる公営住宅を計画的に建設するよう求めるとともに、抽選なしの優先入居を制度化します。

――有料道路の割引制度を拡充するよう、関係事業者への指導を強めるよう求めるとともに、割引手続きを簡素化します。

――文化・スポーツ、余暇活動に誰もが親しめるよう、施設整備や環境づくりをすすめます。競技スポーツにとりくむ障害者アスリートの競技環境整備を支援します。

情報アクセス、コミュニケーションの保障

――手話言語法を制定し、障害者のコミュニケーション手段の自己選択・自己決定を尊重し、社会参加を保障する「情報・コミュニケーション法」を制定します。

――批准した「マラケシュ条約」の実現に向け、読書や文字の読み書きに困難がある人たちの「読書権」を保障します。「読書バリアフリー法」による点字、オーディオブック、電子書籍等の作品の複製などを推進します。

――公的機関などに読み書き(代読・代筆)情報支援員の配置ができるようにします。

――アクセシブルな情報通信技術(ICT)の調達を政府に義務づけるとともに、「新技術」の開発段階からの障害者の参加を保障します。

――障害者対応のATMの普及や、点字通帳や出入金明細書の発行、窓口対応の改善など金融機関の業務を改善します。

――サイズの差別化をはかり、さわってわかりやすい紙幣に改善します。

――テレビとラジオが聴取できる携帯品「テレビラジオ」を日常生活用具に指定します。

――人工呼吸器を装着した難病患者や重度障害者のコミュニケーションツールとして機器の開発を促進し、これらを補装具や日常生活用具の対象とします。意思伝達装置の入力スイッチ設定支援制度を創設し、専門機器が支援できる体制を整備します。

――テレビの解説放送や手話・文字放送を拡充します。

参政権の保障、司法の場における権利保障

 政治活動や選挙活動、司法参加の権利を保障します。

参政権

――障害者の参政権を保障するため、手話や字幕をすべての政見放送に義務づけます。

――点字による選挙広報などの改善、在宅投票制度の拡充や巡回投票制度の実施、投票所のバリアフリー化などをすすめます。

――被後見人が支障なく選挙権が行使できるよう、国や自治体の環境整備をすすめます。

――公職選挙法の「文書活動の規制」を撤廃し、ファクスの利用などを自由にします。

――選挙に立候補し、当選後の公務を遂行する権利の保障をおこないます。

司法権

――障害者が裁判を傍聴する場合や、原告・被告として裁判の当事者となる場合に不利益を生じることがないよう、意思疎通への配慮、障害者をまじえた職員研修など、司法当局が手立てをとります。

――裁判での点字文書の拡充や手話通訳費を公的に負担します。

被災時や復興の支援

 東日本大震災や熊本地震、異常気象の対応などの教訓をふまえて、支援をすすめます。

――障害者や高齢者などを受け入れるための「福祉避難所」指定施設が災害時、いつでも力を発揮できるように支援を強めます。

――被災地や避難先で暮らす障害者・高齢者の制度やサービスの利用、移動支援、仮設住宅や復興住宅などのバリアフリー化をはじめとした住環境の整備などの支援を、緊急かつ継続的におこなえるようにします。

――被災による障害者事業所・施設の減収を補償するよう求めます。そのためにも、日割により矛盾が生じている報酬制度は月割に戻します。

――防災、復興の部局に障害当事者が参加できるようにします。自治体の防災や災害時の避難などの計画づくりを促進するよう支援を強めます。

福祉労働者の処遇改善と事業所・施設の運営の保障

 全産業に比べて大幅に低い福祉労働者の抜本的な賃金引き上げや配置基準を見直した処遇改善をおこない、障害福祉報酬改定を引き上げます。社会福祉事業の行き過ぎた規制緩和を是正し、非営利・公益性にもとづいた本来の障害者・児の福祉を国の責任で支援します。

――日額払いから月額払いを基本とする報酬にして、正規職員の配置を中心とした雇用形態ができるよう、基本報酬を大幅に引き上げます。

――処遇改善加算を本体報酬に組み込むとともに、消費税によらず緊急に月5万円の福祉労働者の処遇改善をおこないます。

――放課後等デイサービスは充分な報酬に引き上げて専門性のある正規の指導員の配置が可能になるようにします。

――高い専門性に見合った手話通訳者、要約筆記者などの処遇改善をおこない、身分保障をおこないます。

――社会福祉法に課せられた無料・低額サービスを提供する「地域における公益的な取り組み」の責務を課すこと、地域住民の助け合いによる地域福祉課題の解消規定(理念規定)は、公的責任の縮小・後退につながるものです。これらの規定を撤廃します。

――人材確保に逆行する障害者施設職員の退職共済への公費助成廃止を撤回します。

政策