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日本共産党

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赤旗

➡各分野の目次

16 貧困

日本社会のあらゆる分野に広がる、貧困と格差を是正します

2019年6月

 現在、日本の貧困率(相対的貧困率)は15・6%、子どもの貧困率は13・9%でOECD加盟国平均を上回り、とくに、ひとり親家庭の貧困率は50・8%と、断トツの高さとなっています(2015年調査)。

 安倍首相は、日本の相対的貧困率が、前回調査(2012年調査)よりわずかに低くなったことを根拠に、「アベノミクスで貧困が改善した」といいました。しかし、相対的貧困率は、全国民の所得の真ん中(中間値)を基準に、その半分しか所得がない人を「貧困層」と定義し、全体に占める割合を示したものです。2012年から2015年の間に数値が変動したのは、中間層の所得が落ち込んだため、「貧困層」にあたる人の割合が見かけ上、少なくなったからで、生活困窮者の所得や生活はなんら改善していません。むしろ、中間層が所得を減らし、貧困層は放置され、国民生活はますます落ち込んでいるのが実態です。

 実際、「ワーキングプア」「下流老人」「子どもの貧困」などの言葉がマスメディアをにぎわすように、今の日本では、あらゆる年代・階層が、失業や病気などで所得が減れば、たちまち生活が行き詰まり、貧困におちいる危険と隣りあわせで暮らしています。これらの事態は、労働法制の規制緩和による雇用破壊と賃金下落、年金・医療・介護など社会保障の連続改悪、中小企業や地場産業の切り捨てによる地域経済の荒廃など、自民・公明政権の悪政の積み重ねによって引き起こされたものです。

 「貧困と格差」の是正は、すべての国民に生存権を保障した憲法の規定にもとづき、日本社会の健全な発展をすすめる重要な課題です。同時に、それは家計という経済の最大のエンジンをあたため、日本経済に好循環を生みだして、持続的な経済成長を実現するうえでも、不可欠の課題となっています。

 日本共産党は、くらしと景気を壊す消費税10%への増税中止とともに、家計を応援し、格差・貧困を是正する緊急の政策として、「くらしに希望を――3つの提案」をかかげて、参議院選挙をたたかいます。

8時間働けばふつうにくらせる社会に

 〇最低賃金を全国どこでも1,000円引き上げ、1,500円をめざす、〇残業代ゼロ制度を廃止し、長時間労働を是正、〇労働者派遣法の改正で正社員化をすすめる、〇保育・介護・福祉労働者の賃金を国の責任で引き上げる

くらしを支える社会保障を

 〇マクロ経済スライドを廃止して「減らない年金」に。低年金を底上げする、〇国保料(税)の引き下げ、〇子ども医療費無料を国の制度に、〇低所得者の介護保険料の軽減、〇生活保護の支給水準の回復、〇障害者・児の福祉と医療の無料化

お金の心配なく、学び子育てができる社会を

 〇大学・短大・専門学校の授業料を半額化、〇70万人に給付制奨学金、〇すべての奨学金を無利子に、〇私立学校の負担軽減、高校教育の無償化、〇学校給食の無償化、義務教育の完全無償化、〇幼児教育・保育の無償化、認可保育所30万人分の増設

「働く貧困層」をなくします――雇用のルール確立、セーフティネット構築を

 「先進国」のなかで賃金が下がっている国は、日本だけです。1997年と2018年の21年間の賃金を比較すると、イギリスは93%、アメリカは82%、フランスは69%、ドイツは59%増えています。日本は▲8%です。

 この間、非正規労働者は増え続け、労働者全体の4割に達しています。その多くが年収200万円以下の「ワーキングプア」(働く貧困層)です。

 貧困と格差をただすには、安定した雇用と継続的な賃上げを実現する、雇用政策の根本的転換が不可欠です。ところが、安倍政権は、2015年9月、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」に道をひらく労働者派遣法の大改悪を強行し、さらに、無制限の長時間労働を可能とする「残業代ゼロ」の導入を強行するなど、労働法制のさらなる規制緩和の道をひた走っています。

 日本共産党は、安倍政権の労働法制の大改悪を阻止し、「くらしに希望を――3つの提案」の「8時間働けばふつうにくらせる社会に」の改革を突破口に、人間らしく働けるルールを確立します。

最低賃金の大幅引き上げで「働く貧困層」をなくす

 最低賃金を全国どこでも時給1,000円に引き上げ、1,500円をめざします。そのために、中小企業の賃上げ支援予算を1,000倍の7,000億円に増額し、社会保険料の事業主負担分を減免します。

長時間労働を是正、サービス残業を根絶する

 残業代ゼロ制度を廃止します。すべての労働者を対象に、「残業は週15時間、月45時間、年360時間まで」と上限を労働基準法で規制します。

 勤務間に最低11時間の連続休息時間を確保するインターバル規制を導入します。

 1日2時間を超える残業、連続3日以上の残業は、残業代の割増率を、現行の25%から50%に引き上げ、長時間・連日残業の常態化を防ぎます。

 「サービス残業」を根絶するため、違反をした企業名の公表、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせる罰則の導入などをすすめます。「名ばかり店長」「名ばかり管理職」への残業代の不払いを許さず、裁量労働制で働く人などの時間管理を厳格に行わせます。

労働者派遣法の抜本改正をはじめ、非正規労働者の正社員化をすすめる

 製造業への派遣や日雇い派遣の禁止、常用代替を目的とした派遣の禁止など、労働者派遣法の抜本改正を行います。無期雇用への転換が迫られる5年を前に非正規労働者を解雇するという違法・脱法行為を厳しく取り締まる労働行政を確立します。

保育・介護・障害福祉労働者に国の責任で、ただちに月5万円の賃上げし、一般労働者との格差をなくす

 保育・介護・障害福祉労働者は、公定価格や報酬で政府が賃金水準を決めますが、低く抑えられています。国の責任でただちに5万円の賃上げを行い、引き続き、全産業平均との賃金格差をなくしていきます。

若い世代が安心して就労できる環境をととのえる

 学生や高校生の就職難を打開し、若い世代が貧困に落ち込むことを防止するために、就職活動のルールをつくります。

 会社説明会やエントリーシートの受付、面接の開始日など、就職活動への社会的なルールを確立し、違反企業には企業名公表などのペナルティを科すようにします。

 新卒未就職者への職業訓練の提供などの対策を、国の責任で強化します。

 「新卒者雇用確保・促進法」を制定し、採用計画の策定、内定取消の防止など、企業の社会的責任を明確にします。

失業者・生活困窮者に対する公的支援を抜本的に強化する

 “生活保護以外に貧困への支援がない”という日本の社会保障制度の問題点を是正し、失業者や「ワーキングプア」を対象とした総合的な貧困対策をすすめます。

 雇用保険制度を抜本的に改善し、失業給付期間の拡充、受給資格期間の短縮、退職理由による差別の是正などを行います。失業者に対する扶助制度を充実し、職業訓練の拡充や訓練期間中の生活援助の強化を図ります。

 公共住宅・公営住宅の増設と借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度など、失業者や「ワーキングプア」への生活支援を強め、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設します。

 政府の不十分な雇用創出制度を抜本的に拡充し、国と自治体の責任で、効果のある公的就労事業を確立します。

 同時に、憲法25条の生存権保障を体現する「最後のセーフティネット」として生活保護を改善・強化します。

 安倍政権が推進する保護費減額を中止し、改悪前の支給水準を回復します。生活保護法を「生活保障法」に改正し、保護申請の門前払い(水際作戦)の根絶や、捕捉率の向上などの改革をすすめます。

社会保障の再生・充実をすすめます

 高齢者の生活苦と貧困の広がりが社会問題となり、「下流老人」「老後破産」「老人漂流社会」などの言葉がメディアをにぎわす、かつてない状況が生まれています。

 現在、「生活保護相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」は推定600~700万人にのぼると推計され、政府の報告でも、「65歳以上」は「30歳未満」と並んで、貧困率が最も高い年齢層とされています。これは、世界でもっとも高齢化がすすんだ国=日本において、社会全体に悪影響とゆがみをもたらす重大な問題です。

 日本共産党は、貧困を解消し、国民の生活苦と将来不安に歯止めをかけるため、社会保障を削減から充実へと転換し、年金・医療・介護・福祉制度の立て直しをすすめます。

年金7兆円削減計画=マクロ経済スライドをやめ、減らない年金・頼れる年金に

 金融庁の審議会が、“厚生年金だけでは足りないから2,000万円の老後資金が必要”という「報告書」を出したことが国民に衝撃を与えました。「年金は100年安心」という政府・与党の宣伝がウソで、「自己責任」で老後資金を準備しないと生活ができないと、政府の「報告書」が認めたのです。

 自公政権がいう「100年安心」の中心は、「マクロ経済スライド」という年金給付の水準を減らし続ける仕組みです。日本共産党の追及を受けるなかで、安倍首相は、「マクロ経済スライド」が続けば、2040年代には「7兆円」の年金削減となることを自ら明らかにしました。これが実行されれば、現在でも月6万5,000円に過ぎない基礎年金の満額は約3割、月2万円分も削られ、月4万5,000円の水準にされてしまいます。

 「マクロ経済スライド」による年金の7兆円削減か、それとも、この仕組みを廃止して「減らない年金」に変えるのか、参議院選挙の重大争点となっています。

 日本共産党は、「マクロ経済スライド」を廃止して、「減らない年金」を実現します。そのために、①高額所得者優遇の保険料を見直し、1兆円規模の財源をつくる、②巨額の年金積立金を給付に活用する、③現役世代の賃上げと正社員化すすめ、保険料収入と加入者を増やす――という3つの改革をすすめます。

 年金額が基礎年金満額(月6万5,000円)以下の低収入の年金生活者に、一律月5,000円・年間6万円を、現在の年金額に上乗せして給付します。

 将来的には、最低保障年金を実現し、無年金・低年金問題を解決します。

高すぎる負担の軽減で、必要な医療が受けられる制度に改革する

 市町村が運営する国民健康保険は、加入世帯主の4割が年金生活者などの「無職」、3割が非正規労働者という、低所得者が多く加入する医療保険です。ところが、平均保険料は、「所得250万円の4人世帯」で35万円を超えるなど、高すぎる国保料(税)が貧困に追い打ちをかけています。国保料(税)を滞納した人が、保険証を取り上げられて重症化・死亡する事件や、わずかな預貯金を差し押さえられて、さらなる困窮に叩き落される事件も各地で起こっています。

 国保に1兆円の公費投入増を行ない、事実上の人頭税である「均等割」「平等割」を廃止して、高すぎる国保料(税)を抜本的に引き下げます。生活困窮者からの保険証の取り上げを中止し、貧困に追い打ちをかける収納対策をやめさせます。

 「現役世代=3割、高齢者=1~3割」という医療費の窓口負担を引き下げ、他の先進国並みの“窓口負担ゼロの医療制度”をめざします。保険診療を拡充し、差額ベッド代など高額な保険外負担の問題を解消します。

 後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げをやめ、差別制度を廃止して、負担の軽減をすすめます。

高齢者も現役世代も安心できる介護制度に

 特養ホームなど介護施設の計画的増設により、待機者問題を解消します。利用料・保険料の減免、要支援者・軽度者からの保険給付取り上げの中止、介護報酬の増額による介護職員の賃上げ・待遇改善などをすすめ、高齢者も現役世代も安心できる介護制度に改革します。

福祉・セーフティネットを充実させる

 保護費の減額や“門前払い”の強化など、生活保護を切り縮める制度改悪をやめ、生活保護法を「生活保障法」に改正して、国民のくらしと人権を守る制度として再構築します。

 介護保険の導入以来、後退を続けている自治体の高齢者福祉を再建し、虐待被害・貧困・孤立など“民間任せ”“介護保険任せ”では解決しない、高齢者に係わる事案を、自治体が直接解決していく取り組みを強化します。

「女性の貧困」を打開します―生活困窮の解決、男女間の差別・格差の解消を

 雇用の非正規化や賃金引き下げなど格差拡大の経済路線と、日本社会に根強く残る女性差別が結びつくなか、働く女性の貧困が深刻な広がりをみせています。子育て支援が貧弱すぎるなかでのシングルマザーの困窮、現役時代の低賃金を要因とする高齢女性の低年金も重大問題です。こうした「女性の貧困」を打開するため、生活困窮の解決、男女間の差別と格差を解消する施策をすすめます。

若い女性、働く女性の貧困を打開する

 女性労働者の過半数は非正規雇用で、その8割以上が年収200万円未満となっています。学校を卒業して仕事に就く女性の26%はパート労働者で、多くの女性が、低賃金でボーナスや昇給もないなど劣悪な労働条件で働いています。解雇や失業を繰り返し、風俗産業で働かざるをえない若い女性、ホームレス状態におちいる女性も少なくありません。

 労働者派遣法の抜本改正、有期雇用の対象業務の限定、同一労働同一賃金や均等待遇の法律への明記など、非正規雇用の「使い捨て」をやめさせ、「非正規から正規へ」の流れをつくる、雇用のルールの確立をすすめます。諸外国と比較しても異常な男女の賃金格差、昇進・昇格差別などを是正します。

 最低賃金をいますぐどこでも時給1,000円にし、1,500円をめざします。

 住宅手当や公営住宅の保障、雇用保険の適用条件の改善、失業・半失業状態にある女性への雇用相談窓口の拡充、生活保護のすみやかな支給など、貧困状態を放置せず、社会的・政治的に支援する取り組みをすすめます。

シングルマザーへの経済的支援を拡充する

 母子家庭の母親の81%が働いていますが、そのうち5割近くが、パート、アルバイト、派遣社員など非正規雇用です。母子家庭の平均年収は179万円、両親と子どもがいる世帯の平均年収の3割にも届きません。働く女性の雇用・賃金を立て直す改革とともに、母子家庭への公的支援の拡充が喫緊の課題となっています。

 児童扶養手当を、支給開始5~7年後に半減させるという措置をやめ、支給額の抜本的な引き上げや所得制限の見直しをすすめます。

 母子家庭の母親が安定した仕事に就けるよう、長期の雇用確保にむけた就労支援、保育所の優先入所、安価で良質な公営住宅の供給など、くらしへの支援を強めます。

 結婚歴のないシングルマザーにも寡婦控除が適用されるよう所得税法を改正します。法改正以前にも、保育料の算定、公営住宅利用の手続きなど、寡婦と同等の控除を受けられるようにします。

女性の無年金・低年金問題の解消をすすめる

 現役時代の賃金格差や昇進・昇格差別など、女性の地位の低さがそのまま影響し、女性の厚生年金受給額は男性の6割です。基礎年金(国民年金)だけの受給者の大半は女性であり、その受給額は月3~4万円が最多となっています。国連社会権規約委員会は、日本の高齢女性の年金は適格な基準を満たしていないと指摘し、改善を求めています。国連女性差別撤廃委員会も、最低保障年金の創設を日本政府に勧告しています。

 低額年金を底上げし、全額国庫負担の最低保障年金を創設して、低年金・無年金の打開をすすめます。最低保障年金を導入し、その上に、払った保険料に応じて年金額が増えていく仕組みができれば、「第3号被保険者問題」など、現行の年金制度の矛盾解決にも道が開かれます。

 女性の低年金問題を解消するために、男女の賃金格差の是正、非正規労働者と正規労働者の均等待遇、業者女性の働き分を正当に評価する税制への改善などをすすめます。〇パート労働者に社会保険加入の権利を保障する、〇遺族厚生年金を、女性が働き納めた保険料が受給額に反映する仕組みに改善する――など公平な年金制度にします。

DV被害者への支援を強化する

 DV被害者が貧困におちいる事態を防ぐため、救済と保護、自立支援の充実、暴力を防止するための施策の強化をすすめます。DV防止法を改正し、保護命令期間の延長をすすめます。国の予算を増やし、関係諸機関との連携協力・ネットワークづくりと切れ目のない支援、配偶者暴力相談支援センターの増設、24時間相談体制の確立などをすすめます。民間シェルターへの委託費、運営費への財政的支援を強め、施設条件の改善をすすめます。中長期滞在できるステップハウスへの助成、公営住宅への優先入居など、被害者の自立、生活再建のための支援を強めます。

先進国でワースト上位の「子どもの貧困」の打開をすすめます

 日本における、先進国でワーストレベルの「子どもの貧困」は、1990年代以来の、労働法制の改悪による若い世代の雇用・賃金の破壊によって急速に深刻化しました。

 また、児童扶養手当や就学援助など、生活に困窮する子育て世帯への支援が貧弱すぎることや、子どもの教育や医療にかかる自己負担が重すぎることも、貧困に拍車をかける重大な要因となっています。

 この状況を打開するには、若い世代の雇用・賃金の立て直しとともに、子育て世帯の困窮を解決し、くらしと育児を応援する総合的な対策をすすめることが必要です。

 2013年に成立した「子どもの貧困対策推進法」は、「子どもの貧困」の解決に社会全体で取り組む第一歩となるものですが、同法には、「貧困」の定義や貧困率削減の数値目標などは盛り込まれていません。同法に基づいて国が決定した「子どもの貧困大綱」も、「親から子への貧困の連鎖を断ち切る」ことをうたう一方、あげられている施策の多くは実効性が乏しく、間接的な支援ばかりです。

 「子どもの貧困」の打開に向けた、実効性ある施策の早急な実施を求めます。

貧困の実態を把握し、削減目標を設定する

 政府が、貧困率の削減目標を持ち、貧困対策に取り組むようにします。国として責任をもって貧困の実態調査を行い、当事者や支援団体の協力を得ながら、貧困の解決のための体制を整備します。自治体にも、実態の把握・調査の取り組みを求めます。

低賃金・不安定雇用をなくすために、雇用のルールを確立する

 貧困拡大の大きな原因は、労働者派遣法の改悪など労働法制の規制緩和で、低賃金と不安定雇用が大幅に拡大したことです。ひとり親家庭の貧困がとくに深刻なのは、“正社員ならば長時間労働が当たり前”という働かせ方が横行し、一人で子どもを育てる人は低賃金の非正規雇用しか就ける仕事がないからです。

 「くらしに希望を――3つの提案」でかかげた、最低賃金の引き上げ、長時間労働の是正、非正規雇用の正社員化をすすめます。

就学援助を拡充する

 子育て世帯の貧困が急速に広がるなか、義務教育の子どもの給食費・学用品代・修学旅行費などを援助する就学援助の利用者は、小中学生全体の15・39%(2014年度)、6人に1人となっています。支給額を実態にあった水準に引き上げるなど、制度の改善・拡充をすすめます。

 政府が2005年、生活保護に準ずる世帯(準要保護世帯)の就学援助に対する国庫補助金を打ち切り、一般財源化したために、支給額や基準などを後退させる自治体も出ています。準要保護世帯への国庫補助金を復活・拡充させます。

 さらに、安倍政権が強行した生活扶助基準引き下げで、準要保護世帯の所得基準も下がることを受け、就学援助の対象を狭める自治体が出てきています。援助を必要とする貧困世帯が排除されることがないよう、国・自治体に対応を求めます。

子育て世帯を狙い撃ちにした生活保護改悪をやめさせる

 政府は、「貧困の連鎖を断ち切る」という宣伝文句とまったく逆に、2018年度からの生活保護費の改定で、子どもの多い世帯ほど削減額が大きくなる生活扶助費の削減や、母子加算の減額、0~2歳児の児童養育加算の減額などを進めています。

 これらの改悪を中止し、子育てをする保護世帯への給付を、実態にふさわしく増額・改善します。保護世帯の子どもが、世帯分離をしなくても大学に進学できるよう、制度の改善をすすめます。

児童扶養手当の拡充を

 105万世帯を超えるひとり親世帯が受給する児童扶養手当を抜本的に増額します。とくに、全体の6割を占める第1子のみ世帯への支援を拡充します。年3回の分割支給を毎月支給に変え、現行18歳までの支給を20歳までに延長します。

 支給開始後5~7年で手当額を最大2分の1まで削減する仕組みを撤廃します。

授業料の無償化、給付制奨学金の実現を

 「くらしに希望を――3つの提案」の「お金の心配なく、学び子育てができる社会を」の改革をすすめます。

 すべての学生を対象に、大学・短大・専門学校の授業料を、すみやかに半分に値下げし、段階的に無償化をはかります。

 給付奨学金は、政府案の低所得者を対象にした制度に加えて、月額3万円(年額36万円)の給付奨学金制度をつくり、全体で70万人(現利用者の半分程度)の学生が利用できるようにします。すべての奨学金を無利子にします。

 私立高校の負担の軽減をすすめ、高校教育の無償化をすすめます。

 学校給食の無償化をはじめ、義務教育で残されている教育費負担をなくし、憲法26条にそくして完全無償化をはかります。

 「幼児教育・保育の無償化」を消費税増税に頼らず実施します。

子どもの医療費の無料化

 「くらしに希望を――3つの提案」の一環として、小学校就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する国の制度をつくります。その共通の土台の上に自治体の助成制度を加え、小・中・高校生への無料化を推進します。

 子どもや障害者・児への医療費無料化(現物給付)を実施する自治体に、国保の国庫負担削減のペナルティを科す「地単カット」の全面撤廃を進めます。小学生以上の子ども、障害者・児、ひとり親家庭、妊産婦、生活困窮者、高齢者など、住民の医療費負担軽減に向けた自治体の努力を推進・応援します。

子どもの学習・生活・居場所づくりへの支援を

 生活保護世帯などの学習支援(無料塾)に取り組む自治体は300市町村を超えていますが、2015年度から生活困窮者自立支援法の任意事業として自治体の2分の1負担が定められたために、実施をためらう自治体が少なくありません。「生活困窮世帯への学習支援事業を実施する」という国の「子どもの貧困大綱」の文言にてらしても、国の全額負担を実施するべきです。

 「子どもの貧困大綱」にも位置づけられているスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーを、すべての小中学校に正規職員として毎日配置できるよう、国の予算措置を求めます。

 学童保育の増設と指導員の処遇改善により、待機児童問題の解決と、詰め込みの解消をはかります。すべての学童保育を6年生まで利用できるようにし、子どもたちの放課後の生活を支援します。

 無料・低額で利用できる「子ども食堂」が全国に広がっています。食事にとどまらず、遊びや学習もできる“居場所”づくりの取り組みが、ボランティアやNPOによって推進されています。こうした努力に自治体の施設を提供するなど、自治体が積極的に協力することや、国・自治体による財政支援を求めます。

児童への社会的養護の充実を

 児童養護施設、乳児院、自立支援ホーム、里親など社会的養護のもとで生活する子どもたちは4・6万人にのぼります。きめ細やかな支援ができるよう、施設の小規模化、支える職員の配置基準の見直し、専門職の配置などを行います。職員の処遇改善も急務です。

 施設を退所する若者に、公営住宅の優先利用など住まいを保障し、進学・就労を支援します。社会的養護の若者については、条件付きの貸付奨学金ではなく、すみやかに給付制奨学金の支給を行うべきです。これらの若者がどんな問題でも相談できるアフターケア事業を全国ですすめます。

 児童相談所や、自治体の児童家庭相談窓口への、専門性のある児童福祉司などの配置を増やし、保護者と子どもの支援をすすめます。

「消費税に頼らない道」で財源を確保します

 雇用・労働、社会保障、教育・子育て支援など、国民のくらしを立て直し、貧困を打開する施策の財源は、大企業と富裕層に応分の負担を求めるなど、「消費税に頼らない別の道」で確保します。

 中小企業の法人税負担率は18%ですが、大企業は優遇税制があるため10%しか負担していません。大企業に中小企業並みの負担を求めれば4兆円の財源がつくれます。

 所得が1億円を超えると、所得税の負担率が逆に下がります。富裕層に有利な証券税制の是正と最高税率の引き上げで3・1兆円の財源になります。

 米軍への「思いやり予算」や辺野古の新基地建設費など、国民の税金を使う必要のない予算を廃止して0・4兆円の財源をつくります。

 トランプ米大統領いいなりでF35を100機以上も購入する安倍政権の計画も大問題です。F35戦闘機1機116億円をやめただけで、保育所なら4000人分、特養ホームなら900人分、学校のエアコン設置なら4000教室が可能になります。

 

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