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8 ハラスメント

ハラスメント禁止を明確にした法整備を

2019年6月

 「上司からのセクシュアルハラスメントで会社を辞めた」「過重な仕事を押し付けられ、休みもとれず、うつ病を発症した」――ハラスメントは、精神的身体的に労働者を傷つけ、時に命をも奪う重大な人権侵害です。身体的な攻撃、精神的な攻撃、過大な仕事を与える、過少な仕事しか与えない、人間関係から切り離す、私的なことに過度に立ち入るなど様々な形態で働く人々を痛めつける、許されないことです。

 就活生へのセクシュアルハラスメント(性暴力)で上場企業の労働者が逮捕された事件は、大きな衝撃を与えましたが、氷山の一角といわれています。

 ハラスメントによって、人々は職業や人生そのものを奪われ、社会は働き手を失います。企業にとっても、労働者が疾病、休業、自殺に追い込まれることは経済的損失でもあります。

 今年6月、国際労働機関(ILO)の年次総会において、労働の世界におけるハラスメント(セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントなど)を全面的に禁止する初めての条約を賛成多数――賛成票が92%(439票)と圧倒的な支持――で採択しました。世界的な#Me Too運動の盛り上がりを受け、働く場でのハラスメント対策への労使双方の、また社会的な関心が高まる中での採択です。

 日本政府代表は、賛成票を投じながらも、「国内法との整合性を検討する必要がある」として、条約批准に慎重な姿勢を示していますが、国内でも多数の労組・関係団体から寄せられた、ハラスメント禁止を明確にした法整備に向け、いま踏み出すべきです。

日本の法整備の著しい遅れ

 都道府県労働局に労働者から寄せられる相談内容では、職場における「いじめ・嫌がらせ」などハラスメントが急増し、ここ数年7万件台で推移していましたが、2018年度には前年度比14.9%増の8.2万件余と過去最高を記録しました。「自己都合退職」「解雇」「労働条件の引下げ」の相談を上回り、2012年度以降、7年連続トップです。

 セクシュアルハラスメントについては、労働政策研究・研修機構(JILPT)の2015年調査で、25歳~44歳の女性の28.7%が職場でセクシュアルハラスメントを経験したと回答しています。セクシュアルハラスメントの都道府県労働局への相談件数もトップで、2018年度は前年度比12.2%増の7,639件にのぼりましたが、被害に遭って相談できる人はごく一部にすぎません。被害者の約6割は誰にも相談できずにいます。

 そうした状況から、今年の通常国会では、ハラスメント防止対策を事業主の措置義務とする、女性活躍推進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法の改定が行われました。

 しかし、その内容は、極めて不十分です。昨年来のILO条約案の審議、セクシュアルハラスメントへの抗議運動を受けて、労働組合などは、国際水準のハラスメントの禁止を強く求めていました。ところが、厚生労働省労働政策審議会は、使用者側の言い分に沿って、禁止規定を見送りました。

 改定法には、ハラスメント行為の定義もハラスメントを禁止する規定もありません。ハラスメントは悪いことだという規範を国家が制定していません。その下で、防止や救済の制度が一定整えられても実効性はありません。

セクシュアルハラスメント防止措置の不十分さ

 セクシュアルハラスメントについては、すでに2006年の均等法改正で、事業主に対して相談窓口を設置する、事後に適切な対応をとるなどの防止措置義務を課しています。措置義務に違反した場合は、労働局は事業主に行政指導をすることができ、2017年度は、セクシュアルハラスメントに関して3,860件の是正指導を実施し、指導を受けた事業所は9割以上が是正しています。しかし、厚労省の2017年度調査では、相談窓口を設置している企業は39.4%、防止措置義務の実態はお粗末です。相談・苦情対応窓口担当者への研修を行った企業の割合は、わずか8.9%です。セクシュアルハラスメント防止対策の取り組んでいない企業の割合は34.6%と3割を超えています。しかし、労働者からの相談がなければ、労働局は基本的に違法を把握できず、指導することはできません。

 是正指導に従わなかった企業名を公表する制度はありますが、セクシュアルハラスメントに関する措置義務で公表された事例は1件もありません。

 国家公務員には人事院規則10-10が適用されていますが、2018年の財務省・福田事務次官(当時)のセクシュアルハラスメントと、それをかばい2次被害をもたらした麻生財務大臣の数々の発言をみるならば、実効的効果をあげていないことは明白です。こうした状況を変えるには、法に「セクシュアルハラスメント禁止」を明示すること、そして、労働者の訴えに対し、行為をセクシュアルハラスメントと認定し、迅速に救済をはかる実効性ある機関が必要です。

ILO条約を批准できる法改正を

 今年の法改定をへても、依然として日本は、セクシュアルハラスメント禁止規定がない世界189か国(地域)のうちの69か国(世界銀行調査)の一つという後進国です。

 国連女性差別撤廃委員会からは、職場のセクシュアルハラスメント防止のために、禁止規定と適切な制裁措置を盛り込んだ法整備を勧告されています。

 条約は、暴力やハラスメントを「身体的、精神的、性的、経済的損害を引き起こす許容できない行為や慣行、その脅威」と定義し、加盟各国に対し、国内法の整備、対策を促すものであり、その対象に、労働者のみならず、実習生、ボランティアも含めています。「ジェンダーの視点」の重要性も指摘しています。

 就職活動中、教育実習中のセクシュアルハラスメントの根絶は急務ですが、男女雇用機会均等法第5条は、募集に関する差別禁止が規定され、就職志願者が法の対象となっており、セクシュアルハラスメントにも適用する法改正は可能です。

 経団連は、「取引先や顧客、就活生、フリーランス」を対象とした条約原案に対して、求職中の人や採用選考の応募者は対象外とするよう求めていました。ILO総会で条約採択に棄権し、「パワハラと適正な指導の区別がつきにくい」などといっていますが、法律で明確に禁止になると、被害者から、企業の責任を問う訴訟が増えることを心配しているのが本音です。働く人々が健康で働き続けるための制度の確立に背を向ける、あまりに時代遅れで身勝手な態度といわねばなりません。

 今回、日本政府が労働者代表(連合)とともに賛成票を投じたのは、この1年間広がった運動の成果です。経団連は棄権しましたが、米国、英国、フランス、イタリアなど、ほとんどの先進国では、労組や政府だけでなく、経営者団体も賛成しています。

 政府が、使用者団体に忖度し、ハラスメント根絶の施策をこれ以上遅らせることがあってはなりません。

 労働政策審議会では、これから法の指針を議論しますが、ハラスメント根絶に向けて、条約の水準の法整備に早急に着手する必要があります。

迅速、簡易な実効ある救済機関の設置を

 女性労働者がひどいセクシュアルハラスメント被害を受けても、上司や社長からの行為など、事業所で適切な対応がとられないことは少なくありません。しかし、それを労働局に相談し、「紛争解決の援助」「調停」などの仕組みを利用しても、労働局には、個々の事例について、それがハラスメントに該当するかを判断する権限は法律上与えられていません。

 セクシュアルハラスメントであると認定し、加害者に、行為の中止や謝罪、慰謝料の支払いなどを求めることはできない法律です。

 司法に訴えたとしても、民法の不法行為の枠組みによって、被害者側の「過失」が問われることになり、加害者側は、不法行為の「過失相殺」で賠償金の支払いを減らすために被害者を徹底的に非難します。裁判に時間がかかる上に、被害者はさらに痛めつけられてしまいます。勝訴して、いくらかの賠償金を得たとしても、多くの被害者は職場を去っており、心身のダメージ、屈辱感、自尊感情の破壊、PTSDに苦しみ、被害回復には程遠いのです。

 被害者の要求は、①セクシュアルハラスメントであることを認められ、②謝罪を受け、③2度とセクシュアルハラスメントが起きないようにすることです。

 セクシュアルハラスメントをはじめハラスメントの定義と行為の禁止を明確にし、被害者がアクセスしやすく、迅速に調査・認定し、救済命令(行為の中止、被害者と加害者が接しない措置、被害者の雇用継続や原職復帰、加害者の謝罪と賠償など)を行う、政府から独立した行政委員会を設置することが不可欠です。

 行政委員会は、国と都道府県単位に設置し、ジェンダー差別問題、ハラスメント問題の専門家を委員に選任します。

教育、スポーツ分野などあらゆる分野で対策をすすめる

 内閣府男女共同参画会議女性に対する暴力専門調査会は今年4月、「セクシュアルハラスメント対策の現状と課題」を取りまとめました。そこでは、特に、教育、スポーツ分野において実態把握や取組状況の把握が十分でないと指摘されています。                      

 ハラスメントは、職場だけでなく、学校、大学、スポーツ団体などあらゆる分野で起きており、防止対策が急がれます。国としての実態調査と、それぞれの分野に対応した相談・支援体制をつくります。

  

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