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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

42、盗聴法拡大・刑訴法「改正」問題、共謀罪

2016年6月


盗聴法拡大・部分録画の証拠利用・司法取引導入・共謀罪法案提出など国民監視・密告社会化の企みを許さない

 盗聴法拡大、司法取引の導入をはじめとする刑事訴訟法等改悪案が2016年5月24日、自民、公明、民進などの賛成多数で可決、成立しました。

 日本共産党は、一般市民や団体の活動を盗聴したり、第三者の虚偽供述を利用して、「犯罪事件」をでっちあげることが可能になるなど、国民監視、憲法違反の治安立法であるとして断固反対しました。

 そもそも刑事司法改革の出発点は、足利事件、布川事件での自白強要、郵便不正事件(村木事件)での証拠改ざんなど、検察・警察による違法・不正な捜査が暴かれる中、我が国の刑事司法に問われてきた根本問題である冤罪を根絶するには、全事件、全過程の取り調べの可視化、検察の持つ証拠の全面開示などが不可欠であるとして始められたものです。

 ところが、国会に提出された改革案は、取り調べの可視化は全事件のわずか3%に限定する一方、「盗聴の自由化」と言うべき盗聴拡大と、日本版「司法取引」導入など、国民や冤罪被害者が求めていた改革とは全く異なるものでした。そればかりか、「部分録画」は新たな冤罪を生み出すものです。

1.部分的な録音録画を許さず、全事件全過程の例外無き取り調べの可視化を

 法改悪により、捜査官の判断で、取り調べの部分的な録音録画を可能にし、有罪立証のための実質証拠とすることが可能となりました。取り調べの録音録画は、憲法38条の黙秘権の実効性を保障するため、全事件の全過程を義務づけるものとするのが当然です。ところが政府は、対象事件を裁判員対象事件と検察官独自捜査事件という、全事件のわずか3%に限定し、さらに、任意同行下での取り調べや、別件逮捕中の取り調べは、録音録画義務の対象にはならないとしています。これでは、違法な取り調べが抑止できないばかりか、逆に自白偏重の部分録画の『感銘力』は、新たな冤罪を生み出すものです。その危険が現実化したのが今年4月の今市事件判決です。

 今市事件の裁判員裁判では、被疑者取調べの一部の録音録画が法廷で再現され、物的な証拠は乏しいまま、4月、有罪判決が下されました。同事件で警察・検察は、商標法違反事件による起訴後の勾留下の取調べで、被疑者の自白を得ましたが、こうした別件起訴後勾留中の取調べは録音録画義務がありません。録画した約80時間のうち再生したのは7時間強。裁判に参加した裁判員は、「状況証拠のみだったら判断できなかった。最初の自白が抜けていて、やるならやるで録音・録画は全部徹底してやるべきだ」と語っています。

 衆院の参考人として出席した冤罪被害者の桜井昌司参考人は、今年4月には参院で、「昨年の6月の当時と、私たちの危機感は全く違います。刑訴法改正の部分可視化によってますます冤罪をつくるものという確信になりました」「私たち国民がどれだけ冤罪に苦しんだら、冤罪をなくす法律を作ってくださるのでしょうか」と訴えました。この怒りに背を向け、成立を強行した与党の責任は重大です。断じて許されるものではありません。

 日本共産党は、捜査機関の裁量による取り調べの可視化の例外を認めず、任意同行下での取り調べも含め、全事件、全過程の取り調べの可視化を実現するために力を尽くします。

2.警察による「盗聴の自由化」へ-盗聴法は廃止しかない-

 盗聴の本質は、犯罪に無関係の通信をも根こそぎつかむ盗み聞きであり、憲法35条の令状主義、31条の適正手続きの保障を侵害する、明白な憲法違反です。現行法は、1999年、厳しい国民的批判にさらされる中、対象犯罪を薬物、銃器、組織的殺人など、いわゆる暴力団関係の組織犯罪4類型に限定し、通信事業者の常時立ち会いの義務づけなどの与党修正によってかろうじて成立させたものです。ところが盗聴拡大により、盗聴対象は従前の組織犯罪4類型への限定を外し、窃盗、詐欺、恐喝、逮捕監禁、傷害等の一般刑法犯を含む極めて広範囲に拡大しました。このことは、広く一般市民が盗聴の対象となる危険があるのです。さらに、通信事業者の立ち会い義務を外すことにより、警察署内で第三者の監視もなく盗聴が可能になります。こうして得た情報は、あらゆる警察活動に利用され、国民監視の社会に変質させる危険があります。この「盗聴の自由化」というべき拡大は、携帯電話、メール、SNS等をも対象とし、広く国民のプライバシーを侵害し、憲法21条2項通信の秘密、13条プライバシーの権利を著しく侵害する違憲立法に他なりません。盗聴法は廃止するしかありません。

3.冤罪を広げる日本版司法取引を廃止する

 今回導入しようとする司法取引は、他人の罪を密告して、自分の罪を軽くしてもらう制度です。日本でもこれまで、他人の罪を語ることで、自分の罪を軽くしたいとの動機でウソの証言がされて、多数の冤罪が生まれてきました。取引として制度化・合法化されると、「自分の罪を軽くしたい」という動機がこれまで以上に強く働き、警察もそれを利用しようと考え、捜査が誤りやすくなります。しかも、証人の氏名等の秘匿措置が悪用されて、密告者の氏名住所を公判において被告人や弁護人に隠されれば、被告人の弁護が十分になされないまま判決に至る事態になりかねません。これでは、裁判においても冤罪を防ぐことがきわめて困難になります。司法取引制度は百害あって一利なしです。このようなえん罪を広げる危険なしくみは廃止すべきです。

4.安倍政権の狙う共謀罪の提出を阻止します

 共謀罪とは、2人以上の者が、犯罪を行うことを話し合って合意することを処罰対象とする犯罪のことです。刑法は犯罪行為の処罰が原則ですが、具体的な行為がないのに話し合っただけで処罰するのが共謀罪の特徴であり、捜査機関が一般市民の「心の中」に踏み込むことを可能にする重大問題です。共謀罪は、2003年当時から「刑法の大原則をゆがめ、内心の自由にまで踏み込むもの」として国民的批判を受け、三度廃案となった違憲立法です。政府は、2010年からこの間、法案提出は見送ってきましたが、共謀罪そのものについては「条約締結に伴い、進めていく必要がある」(2015年11月17日菅義偉官房長官)との立場です。これが盗聴法や司法取引と結びつけば、国家権力が秘密保護法や共謀罪違反で市民を取り締まりやすくなり、監視・密告社会がもたらされます。安倍政権が2013年に成立を強行した秘密保護法ではすでに共謀の罪が導入されています。国民の「知る権利」のため重要な情報を内部告発しようと数人で相談したときなど、処罰の対象にされかねません。

 日本共産党は、特定秘密保護法の廃止、共謀罪の提出阻止に向けて皆さんとともに力を尽くします。

5.公判中心主義にかなう刑事手続きに向けた抜本的な刑事司法改革を

 今回の刑事訴訟法の大改悪は、憲法の大原則を壊す重大な誤りです。そのもとで、自白の強要による冤罪や、日本共産党国際部長の緒方靖夫元参議院議員宅の非合法盗聴を始め、卑劣な権力犯罪を何度も断罪されながら、謝罪すらせず、何の反省もない捜査機関に運用を委ねるのはあまりに危険です。我が国に求められる刑事司法は、憲法に規定された公判中心主義にかなう刑事手続きであり、盗聴法、司法取引の廃止、留置施設での人権侵害や不当な扱い、違法不当な取調べの温床である代用監獄の廃止や、被疑者の長期拘禁を防ぐための起訴前保釈の導入、検察による証拠隠しを許さない証拠の全面開示、捜査機関の裁量による例外を認めない全事件、全過程の取り調べの可視化、取り調べに弁護人の立会いを認めるなど、冤罪を生み出す刑事司法の根本問題を徹底的に検証、究明した抜本的改革です。

 日本共産党は、国民のみなさまとともに、国民のための司法・警察制度に改革します。

 

 

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