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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

40、歴史認識・靖国・「慰安婦」

――靖国参拝問題、安倍政権と「靖国史観」、「慰安婦」問題と「河野談話」

2016年6月


歴史に逆行し、戦後の国際政治の土台を覆す侵略戦争の肯定・美化は許されない

 戦後日本の原点と日本の侵略戦争・植民地支配にどのように向き合うかという問題は、国際社会とりわけアジア諸国との関係で、たえず日本が問われ続けている課題です。ところが、安倍政権は依然として日本の過去の侵略戦争と植民地支配を美化し、正当化する立場に固執しており、諸外国との関係で大きな矛盾をかかえつづけています。

<侵略戦争に無反省のまま植民地支配を正当化した70年談話>

 安倍首相は2015年8月15日、戦後70年にあたっての「内閣総理大臣談話」を発表しました。「安倍談話」は、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫び」などの文言がちりばめられていますが、日本が「国策を誤り」、「植民地支配と侵略」を行ったという「村山談話」に示された歴史認識はまったく語られず、「反省」と「お詫び」も過去の歴代政権が表明したという事実に言及しただけで、首相自らの言葉としては語らないという欺瞞に満ちたものとなりました。

 暴力と強圧をもって韓国の植民地化をすすめた日露戦争を、「植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけた」とのべていることは、乱暴きわまりない歴史の歪曲にほかなりません。

 全体として「安倍談話」は、戦後50年にあたって「村山談話」が表明した立場を、事実上、投げ捨てるにひとしいものでした。

 戦後70年の首相談話が、このような有害な内容となった根底には、安倍政権が、侵略戦争を肯定・美化し、歴史を偽造する極右勢力によって構成され、支えられているという問題があります。戦後の世界秩序は、日独伊3国による戦争は侵略戦争だったという判定の上に成り立っており、それを否定するものは国際政治に参加する資格がありません。

<閣僚の靖国神社参拝を取りやめるよう求めます>

 歴史認識についての安倍首相の姿勢を疑いようもなく明らかにしたのが、2013年12月の靖国参拝でした。靖国神社は、戦争中は、国民を戦争に動員する役割をにない、現在も、過去の軍国主義による侵略戦争を"自存自衛の正義のたたかい"、"アジア解放の戦争"と美化し宣伝することを存在意義にしている特殊な施設です。侵略戦争を引き起こした罪を問われたA級戦犯が、"連合軍による一方的な裁判で濡れ衣(ぬれぎぬ)を着せられた犠牲者"として合祀(ごうし)されています。この施設への閣僚の参拝は、侵略戦争を美化する立場に自らの身を置くことを、世界に向かって宣言するものにほかなりません。

 靖国神社への安倍首相の参拝にたいし、アメリカ政府は「失望した」との異例のコメントを発表。批判の声は中国政府、韓国政府のほか、国連事務総長、EU、ロシア政府、シンガポール政府など世界中に広がりました。安倍首相はその後、直接の参拝は避けつつも、真榊奉納は続け、閣僚が参拝を続けています。

<日本がすすめた戦争は「侵略戦争」だとした「ポツダム宣言」は戦後の世界秩序の出発点>

 国際社会に再度衝撃を与えたのは、安倍首相が、戦後の国際秩序形成の出発点になった「ポツダム宣言」について、「つまびらかに読んでいない」と述べたことです。日本共産党の志位和夫委員長との党首討論での発言でした。

 「ポツダム宣言」は、第2次世界大戦末期の1945年7月26日、米・英・中の三国が、対日戦の終結、日本の降伏の条件を定めたものです。それは、「反ファシズム、民主主義擁護の戦争」という連合国の理念の具体化として位置づけ、領土不拡大と政府の形態を選ぶ人民の権利の承認、武力の放棄と一般的安全保障機構の設立をうたった大西洋憲章以来の流れを継承したもので、戦後の国際秩序の在り方をかたちづけたものでした。「つまびらかに読んでいない。論評は差し控えたい」という安倍首相の発言は、日本の戦争を侵略戦争と断罪するとともに、植民地支配の清算を求めたポツダム宣言を認めたくないという思いとともに、戦後の世界秩序の出発点としてのポツダム宣言に背を向ける歴史逆行の態度を浮き彫りにしています。安倍首相が「ポツダム宣言」が「原子爆弾を二発落とした後にたたきつけた」ものだと述べて、押し付けられた「宣言」のイメージをつくりあげようとしています。

 しかし、「ポツダム宣言」は1945年7月26日に発せられましたが、広島、長崎への原爆投下は同年8月6日と9日です。「ポツダム宣言」は、安倍首相のいうように、「原子爆弾を二発落としたあとに叩きつけた」ものではなく、原爆投下「前」のことです。安倍首相は、歴史的事実さえ誤認しているのです。

 憲法学者の樋口陽一東京大学名誉教授は、戦争法案に反対する国会前の抗議行動でのスピーチで、安倍氏のこの発言について、つぎのように痛烈に批判しました。

 「ポツダム宣言が発せられてから原爆投下まで11日間、いたずらに過ごしたがために日本は、アメリカに世界が始まって以来の非人道的な武器を使う不当な弁明のチャンスを与えた。ポツダム宣言と広島、長崎、どっちが先か、どっちが後かということも知らないで、戦後(レジーム)からの脱却をはかる(という)。これじゃまずいんじゃないか」。

 日本は資本主義世界の中でアメリカに次ぐ経済大国である日本が、過去の侵略戦争、植民地支配にどう向き合うか、「ポツダム宣言」に正面から向き合えるかどうか、国民はもとより、国際社会が厳しい目を向けています。

 <戦後70年にあたっての日本の政治が取るべき基本姿勢>

 日本共産党は、戦後70年という節目の年が、日本とアジア諸国との「和解と友好」に向かう年となることを強く願い、そのために、日本の政治がとるべき次の五つの基本姿勢を提唱しています。

 第一は、「村山談話」「河野談話」の核心的内容を継承し、談話の精神にふさわしい行動をとり、談話を否定する動きに対してきっぱりと反論する。

 第二は、日本軍「慰安婦」問題について、被害者への謝罪と賠償など、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出す。

 第三に、国政の場にある政治家が靖国神社を参拝することは、侵略戦争肯定の意思表示を意味するものであり、少なくとも首相や閣僚による靖国参拝はおこなわないことを日本の政治のルールとして確立する。

 第四は、民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置を含めて、政治が断固たる立場にたつ。

 第五は、「村山談話」「河野談話」で政府が表明してきた過去の誤りへの反省の立場を、学校の教科書に誠実かつ真剣に反映させる努力をつくす。

 日本共産党は、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いた党として、歴史を偽造する逆流を大本から断ち切り、日本とアジア諸国との「和解と友好」を実現するために全力をつくします。

<日本軍「慰安婦」問題と「河野談話」>

 日本軍「慰安婦」問題は、日本がおこした侵略戦争のさなか植民地にしていた台湾、朝鮮、軍事侵略していた中国などで女性たちを強制的に集め、性行為を強要した非人道的行為です。当時の国際法規からみても違法行為です。

 昨年12月の日韓外相会談で、日本政府は「当時の軍の関与」を認め、「責任を痛感している」と表明し、日本政府が予算を出し、韓国政府と協力して「全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業」を行うと発表しました。その後、岸田外相は「性奴隷」というのは適切ではないと述べ、安倍首相も官憲による強制連行を示す記述はなかったとの閣議決定を維持するとのべるなど、女性たちの意に反して軍のつくった慰安所に入れ、性奴隷状態にしたことを否定する態度をとっています。2016年2月におこなわれた国連女性差別撤廃委員会の日本報告審査でも、日本政府代表は〝強制連行はなかった〟〝性奴隷という表現は事実に反する〟などの主張を展開しました。

 女性の人間としての尊厳を踏みにじった歴史の真実に対して、「性奴隷制」の加害の事実を認め、被害者への謝罪と賠償の責任をはたすべきです。

 安倍首相らにとって、日本の過去の侵略戦争の正当化をはかるうえで、この問題の存在と過ちを認めることはどうしても避けなくてはならないのです。

 こちらもご覧ください。

○志位和夫「歴史の偽造は許されない―『河野談話』と日本軍『慰安婦』問題の真実に」(「しんぶん赤旗」2014年3月15日)

「歴史を偽造するものは誰か――「河野談話」否定論と日本軍「慰安婦」問題の核心」(「しんぶん赤旗」2014年9月27日)

 <極右勢力とつながる自民党政治家>

 この間、安倍内閣と自民党の幹部が「ネオ・ナチ」(新ナチズム)を自任する団体の幹部や、ヘイトスピーチをくり返し、差別をあおる団体の幹部と〝癒着〟していることが明らかになりました。

 高市早苗・現総務相、稲田朋美・現自民党政調会長(前行革担当相)らが、2011年にナチス・ドイツの主義主張を信奉する「国家社会主義日本労働者党」の代表とともに、「日の丸」をバックに写真をとっていたことが明らかになりました。高市氏はさらに、ヒトラーをたたえる本に推薦文を寄せていたことも判明しています。

 この問題について、元駐日英国大使のヒュー・コータッツィ氏は、「イギリスの閣僚がもしホロコーストを引き起こした犯罪者を支持すると取られかねないような発言をすれば、大衆から抗議が沸き起こって問題の閣僚は辞職させられることだろう」(「ジャパン・タイムズ」2014年10月31日付)と指摘し、次のようにのべています。

 「日本政府内で過激論者の影響が明らかに高まった結果、海外における日本のイメージと威信は傷ついている。〔歴史〕修正主義者たちによる虚偽の歴史の宣伝を食い止め、日本の民主的な手続きが反民主的過激論者の個人や団体によって脅かされないようにすることは、非常に日本の国益にかなうものになる」

 さらに、山谷えり子・国家公安委員長(拉致問題担当相兼任)が、2009年2月に在特会関西支部長らとならんで写真を撮っていたことが判明。この件が明らかになった後の2014年9月、山谷氏は外国特派員協会で会見をしましたが、本来のテーマが拉致問題であったにもかかわらず、質問の大半が在特会との関係に集中。外国人記者からは、「在特会やその理念を否定するべきでは」などの質問がくりかえされたにもかかわらず、山谷氏は「いろいろな組織についてコメントをするのは適切ではない」などとのべるだけで、追及した記者からは「在特会を一度も正面から否定しなかったことに驚いた。米国なら『大臣と問題団体の関係について疑惑が深まった』と大きく報じられる」との批判があがりました。

 自民党幹部や閣僚が極右団体の幹部と写真に納まっていたことは、日本の政治の時代錯誤性を象徴する問題として、欧米各紙で大きく報じられています。「山谷氏は在特会との関係、高市、有村両氏は極右的な見解が批判されている。この3人が靖国神社に参拝したことは、日中首脳会談実現に暗雲を落としかねない」(米紙「ニューヨーク・タイムズ」同前)

 第3次安倍改造内閣の閣僚は、首相を含めて20人いますが、そのうち日本最大の極右改憲勢力である「日本会議国会議員懇談会」に名前を連ねているのは13人、「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属しているのは15人で、重複をのぞけば17人となっています。安倍政権は、首相を筆頭に〝靖国史観〟を信奉する閣僚で占められていることが明らかであり、そうしたことが、閣僚を含む政権幹部と極右勢力との昵懇の関係として表に出てきているのです。

<侵略戦争と植民地支配の歴史を直視し、日本軍「慰安婦」問題などの解決を>

 日本がアジアと世界から信頼され、国際社会で名誉ある地位を占める国になるためには、過去の侵略戦争と植民地支配の誤りをきっぱりと認め、その負の遺産を清算する立場にたつことが不可欠です。

 ――首相、閣僚の靖国神社参拝をはじめ、日本政府の責任ある立場の政治家が、侵略戦争を肯定・美化するような行動、言動をとらないことを求めます。靖国神社への参拝はきっぱりと中止すべきです。

 ――日本軍「慰安婦」問題では、日本政府として公式に謝罪し、被害者の尊厳の尊重、個人補償をはじめ問題の全面的解決をはかるための真摯な対応と誠実な協議を重ねることが求められます。

  ――日本の侵略戦争と植民地支配の歴史を子どもたちに正しく伝え、アジアと世界の国ぐにと平和・友好の交流を積極的におしすすめることが必要です。公教育で侵略戦争や日本軍元「慰安婦」問題、強制連行・強制労働などを事実にもとづき正しく伝えること、戦争の美化・肯定を意図した科書検定や教科書出版社への政府の介入や圧力をやめること、日本共産党は、こうしたことを日本政府に強く求めます。良識ある国民のみなさんとともに力を尽くします。

<「北東アジア平和協力構想」をよびかけます>

 日本がある北東アジアは、北朝鮮の核兵器開発、尖閣諸島などの紛争問題、歴史問題をめぐる対立と相互不信が続いています。この地域に平和的環境をつくる外交努力を追求することは緊急で重要な課題です。

 日本共産党は、平和で安定した地域の発展のために、「北東アジア平和協力構想」を呼びかけています。東南アジアで発展している平和の地域共同体を、北東アジアでも構築しようと提案しているのです。

 北東アジアの平和と安定を築く基礎となるのは信頼です。信頼は、歴史の真実に正面から向き合い、誠実かつ真摯に誤りを認め、未来への教訓とする態度をとってこそ、得ることができる――これが私たちの確信です。

 日本共産党は、どんな問題も外交的解決に徹する、そのために憲法9条の精神に立った平和の外交戦略を日本が確立することを訴え、次のような「北東アジア平和協力構想」を提唱しています。

 (1)北東アジア規模の「友好協力条約」を締結する。(2)北朝鮮問題は、困難はあっても「6カ国協議」の枠組みで解決する。(3)この地域に存在する領土に関する紛争問題をエスカレートさせない行動規範を結ぶ。(4)日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、地域の友好と協力のうえで不可欠の土台となる。

 これは、ASEAN諸国が東南アジアで現に実践している地域の平和協力の枠組みを北東アジアにも構築しようというものです。この「構想」は、安保法制=戦争法に対する「平和的対案」として、戦争法が施行されたもとで、いよいよ重要となっています。

 

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