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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

17、TPP

――国会決議違反、食・農・地域経済への打撃、ISD条項、食料主権

2016年6月


 自民党安倍内閣は、2013年の日米会談で、「あらかじめ関税撤廃を約束するものでないことが確認された」として、TPP(環太平洋連携協定)交渉への参加を強行し、大筋合意に突き進み、2016年2月に協定文に署名、2016年の通常国会で、TPP協定批准案と関連法案を提出。衆議院に特別委員会を設置して審議を開始しました。

 安倍政権は、交渉参加に際して守秘義務が課せられたことを理由に、TPP交渉の経過を何一つ明らかにせず、表題以外はすべて黒塗りの資料を提出し、ことごとく答弁を拒否しました。まさに、戦後の国会史上でも前例のない異常な秘密主義のもとで批准を強行しようとするものです。「国民への十分な情報提供」を求めた「国会決議」を完全に無視する暴挙であり、情報を公開できないような協定は撤回しかありません。

 衆議院ではじまったTPP審議は、政府の異常な秘密主義と全面黒塗りの資料提出、熊本大地震の発生、参議院選挙との関連で延長がむずかしい国会情勢などから、採決できず継続審議になりました。政府・与党は、参議院選挙後の臨時国会での批准、関連法案の採択をねらっており、参議院選挙の結果がTPPの今後をきめることになります。

TPP批准・関連法案ごり押しの2つのウソ

 安倍政権がTPP協定の批准をごり押しする手法は、次の2つのウソで国民を欺こうとしていることです。

国会決議違反、公約違反を覆い隠す――1つは、「聖域を守る」とした国会決議、自らの選挙公約をも踏みにじっていることを覆い隠していることです。

 交渉参加をめぐって2013年に採択された国会決議では、農産物の重要5品目―コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖は、関税撤廃は認めず、「除外」または「再協議」にするとしていました。また、自民党は12年の衆院選挙で、「TPP断固反対。ウソをつかない、ぶれない自民党」のポスターまで貼りだし、13年の参議院選挙の公約(注)では、「自然的・地理的条件に制約される農林水分野の重要5品目等やこれまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度などの聖域(死活的利益)を最優先し、それが確保できない場合には脱退も辞さないものとします」などを掲げました。

(注)自民党の参院選の公約(Jファイル)で、TPPについて掲げた「6項目――①自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要5品目(米、麦、牛肉、豚肉、乳製品、甘味資源作物)等の聖域を確保する、②自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない、③国民皆保険制度を守る、④食の安全安心の基準を守る、⑤濫訴防止策を含まない国の主権を損なうようなISD条項は合意しない、⑥政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

 ところが、安倍内閣は、アメリカとの事前交渉で、入場料といわれるアメリカの要求を受け入れるとともに、「あらかじめ関税撤廃を約束されないことが確認された」などとして、交渉参加を強行、交渉を通じても、さまざまな分野で譲歩を続け、大筋合意にしゃにむに突き進んだことが明らかになっています。政府が、署名したTPP協定で日本は、農林水産品2594品目のうち2135品目(82%)で関税の撤廃を約束、聖域とした重要5項目でも29%の品目で関税を撤廃、残った品目でも特別輸入枠の設定(コメ、麦)や関税の大幅引き下げ(牛肉。豚肉)をうけいれています。

 野菜、くだものなどは、圧倒的な多くの品目で関税撤廃を約束するまさに農林水産物の総自由化と言えます。しかも日本のみが農産物輸出国との間で、7年後に再交渉することを義務づけられているのです。しかも、国会論戦で政府は重要5品目で無傷の品目はないことを認めました。これで「国会決議は守った」「聖域は守った」などと言えないことはあきらかです。

 TPP交渉で安倍内閣が果たした役割は、関税交渉とともに「非関税障壁」でも、アメリカ式ルールを日本と参加各国に持ち込む先導的役割であり、売国的な態度と言わなければなりません。

TPPの効果を大きく描き、国民への打撃を小さくみせる――もう1つは、農業や関連産業、地域経済への深刻な影響を「ない」ものと正反対に描きだすまやかしの「経済効果試算」なるもので国民を欺こうとしていることです。2013年に政府が発表した影響試算では、TPPによるGDPの押上効果が3・2兆円、農林水産物の生産額の減少が3兆円としていました。ところが、大筋合意後の影響試算では、GDPの押上効果は14兆円と4倍に膨らみ、農林水産物へのマイナス影響は1300億円~2100億円と20分の1であり、TPP対策を実行すれば農業生産は維持され、食料自給率も低下しないというのです。政府は、関税が撤廃・削減され、「非関税障壁」が緩和されれば、輸出が増え、雇用が増え、設備投資も増えて、賃金も上がるなど、日本の経済はすべてうまくまわりからGDPは大幅に増える。農産物の関税撤廃・削減による影響については、国内価格の低下は予想されるが規模拡大などの対策をとれば影響は軽微ですむというものです。

 しかも、対策の中心は、大幅に関税を引き下げる牛肉・豚肉の価格低下時の補てん制度(マルキン)を充実させる以外は、米の輸入枠拡大分の備蓄米買い入れ増、経営規模拡大など生産者に自助努力で輸入価格と競争させる構造改革の押しつけであり、現実に生産を担っている大多数の生産者の生産や経営を維持するものではありません。

 結局、日本へのアメリカをはじめとした多国籍企業の進出や日本企業の低賃金国への移転、国際競争のもとでの低価格競争、労働条件の悪化など、TPPがつくりだすと思われる悪影響はいっさい無視し、すべてうまくいくという前提で事態をバラ色に描き、国民をだますものです。

国内農業に壊滅的打撃――国民が生きていく土台を崩していいのか――関税交渉の結果からも、TPP批准が日本の農林水産業に壊滅的打撃を与え、国民への安定的な食料供給と食の安全を土台から崩さずにおかきません。TPP参加と食料自給率の向上は、絶対に両立しません。自国での農業と食料生産をつぶし、もっぱら外国にたよる国にして良いのか、この国の根本的なあり方が問われています。

 TPP参加による農産物貿易の主な競争相手は世界で最も農産物価格が安いアメリカとオーストラリアです。一戸当たりの耕作面積が日本の100倍のアメリカ、1500倍のオーストラリアと、「競争できる強い農業」などというのは、国土や歴史的な条件の違いを無視した暴論にすぎません。米農務省が、TPP合意で2025年までに関税が完全撤廃になった場合に12カ国の農産物貿易がどう変わるかを予測した結果(13年11月13日日本農業新聞)によると、輸出額が85億ドル増え、そのうち33%をアメリカで占め、58億ドル増える輸入額の70%は日本が占めるとしています。日本にとってまさに、外国食料の氾濫であり、安全な国産食料をという国民の願いを真っ向から踏みにじることになります。

 安倍内閣は、重要農産物を関税撤廃から守ったと言いますが、協定書は、「関税撤廃が原則」とされ、除外の規定はありません。しかも、重要5項目の29%の品目で関税撤廃をうけいれ、米では77万㌧のミニマムアクセス米にくわえて、年7万8000㌧もの輸入枠をアメリカ、オーストラリアに保障し、麦では、25.3万㌧もの輸入枠をアメリカ、オーストラリア、カナダに約束しています。牛肉・豚肉も関税を大幅に引き下げます。政府は、米は備蓄米としれ隔離するから国内産に影響させない、牛肉。豚肉は、価格低落時の補てん割合を引き上げるから影響は防げると言います。しかし、米生産者の現状は、生産者米価の下落が続く中で、大規模農家や生産法人などまで経営の存続さえ危ぶまれており、新たな輸入拡大が深刻な影響を与えずにおきません。酪農家や肉牛生産も経営数や使用頭数の減少が止まっていません。

 さらに農業者の生産意欲を奪、地域農業に打撃を与えるのが、突如あきらかにされた野菜、果物を含む多くの農林水産品の即時、あるいは期限を切った関税撤廃です。政府は、国産は品質が良いから影響は軽微だと言いますが、生鮮食料は、豊凶変動や輸入の増減が価格の乱高下を引き起こしており、10%以下の関税が多いとはいえ、輸入増大による市場攪乱は、地域農業と地域経済に大打撃を与えずにはおきません。このようなごまかしは断じてゆるせません。

大震災からの復興への希望を奪う――東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県、今年発生した熊本での大震災も農林水産業に大打撃を与えました。東北と九州の農業県、日本有数の"米どころ"、畜産産地への打撃ははかりしれません。三陸の主要産品であるワカメ、コンブ、サケ・マスなど水産業にも甚大な被害が及びます。被災地の基幹産業である農林水産業への大打撃となるTPP参加の強行は、被災者の生活と生業再建の基盤を壊し、復興への希望さえも奪ってしまいます。

環境や国土の保全など農林水産業の多面的な役割も失う――農林水産業は、環境や国土の保全など、多面的な役割を果たしています。日本学術会議は、農林水産業の多面的機能について、洪水防止機能、土砂崩壊防止機能、水質浄化機能、生態系保全機能などで年間約90兆円の効果があると試算していますが、TPPは、こうした多面的機能も喪失させます。

破たんした「アメリカ型ルール」の押しつけ――くらしと経済のあらゆる分野に

 TPPは、第1章で、「協定の規定に基づいて自由貿易地域を設定する」ことを宣言し、市場アクセス(関税撤廃)をはじめ、28項にわたって、農業と食料はもとより、自動車、医薬品、政府調達、金融、投資、環境、労働など暮らしと経済のあらゆる分野で貿易拡大に必要な規制緩和―ルールの変更をすすめるものです。

 日本共産党は、TPPは、アメリカと多国籍企業の利益を再優先する協定であり、経済主権をアメリカに開け渡すことになると批判してきました。ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授は、日本での講演で「TPPは悪い貿易協定である。国際企業の最悪利己性が強調される」述べていますが、アメリカや関係国で、市民団体や労働組合が反対の声をあげているのも、そこに原因があります。とくに、食の安全、医療、官公需・公共事業の発注、金融・保険、労働などで、国民の生活や安全を守るルールと監視体制、中小企業を支援する制度などが大きく崩されることが危惧されています。しかも、TPP協定について、マスコミが「生きた協定」「進化す協定」と報じているように、「自由化に向かうエンドレスゲーム」であり、際限のない自由化に踏み出すことを意味します。

食の安全を脅かす――アメリカ政府は、BSE対策であるアメリカ産牛肉の輸入制限の緩和を要求してきました。安倍内閣は、TPP交渉参加の事前交渉とあわせ、13年4月からアメリカ産牛肉の輸入規制を30か月齢以下に緩和し、国内産牛肉の全頭検査までやめようとしています。

 米国通商代表部は、「外国貿易障壁報告書」(2013年)の「対日要求」で、輸入食品・農産物の検査、遺伝子組み換えなどの食品表示などがアメリカの規制より厳しいと批判し、残留農薬や食品添加物などの規制緩和を要求しています。TPP協定は、これら食品にたいする「衛生植物検疫措置」が「貿易に対して不当な障害にならないようにする」ために、輸入規制に厳密な科学的証拠をもとめています。そのうえに各国の独自の基準を設ける場合に、他国の利害関係者(食品企業など)を検討に参加さなければなりません。また、アメリカとの2国間の交換文書では、日本が「食品添加物としてポストハーベスト農薬として統一して承認、効率化をはかる」ことを日本が認めるなど、食料の安全に対する規制緩和が大きく進む内容になっています。

 遺伝子組み換え産物について、貿易の拡大、透明性、協力をすすめるための情報交換の委員会を設置することになっていることも、現在の安全性への配慮や表示を主にしたルールから貿易拡大に力点が置かれ、栽培規制も緩和されるなど、遺伝子組み換えの栽培、貿易などを主にするルールに変えられる危険があります。

 安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――TPP交渉で、「知的財産」の章で、医薬品の知的財産権の保護を強化する制度がアメリカと発展途上国の対立点となり、アメリカはバイオ薬品(抗がん剤や新薬のC型肝炎の治療薬など)の特許期間13年を要求、5年にすべきという発展途上国と対立しました。その結果、特許期間は、少なくても8年又は5年+他の措置とされました。あわせて、①特許期間の延長、②特許が切れたバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、③ジェネリック薬(後発医薬品)承認決定に特許権者に特許権を侵害していないかを確認するリンケージ制度を設けています。

 これら規定は、ジェネリック薬品の市場への参入を長期化させることになり、日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が手に入りにくくなる状況は改善されません。しかも、参加国の政府が薬価決定する際に、「直接影響をうける申請者」が、不服審査を開始することができることが規定されており、今後、アメリカの製薬企業などが利害関係者として、医薬品・医療機器の保険扱いの可否や公定価格の決定に影響力を強めることが懸念されます。

地元中小企業向け官公需発注が困難に――「投資」「政府調達」の章では、地元から雇用、物品や物品、サービスの調達を求めるなど、「現地調達」を要求してはならないと規定。地方自治体が地域の中小企業を支援するための「中小企業振興基本条例」や労働者の最低賃金の支払いや地域貢献をもとめる「公契約条例」などが規定できなくなる可能性があります。その適用範囲の拡大や基準額引き下げのため、発効3年以内に再交渉することも明記されています。

 自主共済も廃止に追い込まれる――「金融サービス」章の定義は広範で、すべての保険、銀行、その他の金融サービスが含まれます。たとえば、JA共済や全労済なども、保険業務に含まれるので適用されます。アメリカ政府は、相互扶助機関として保険商品を提供している協同組合である共済について、金融庁の規制のもとにある外資系保険会社と同じ「規制と競争」のもとにおけと要求、14年の「外国貿易障害報告書」でも、規制されていない共済を金融庁の監督に服させることを「日本政府は、実施を遅延している」と指定しています。

 また、日米交換文書は、日本郵政の販売網へのアクセスや、日本郵政グループが運営する「かんぽ生命」が民間保険会社より有利になる条件の撤廃に「認識が一致した」と明記しています。 

ISD条項をはじめ、主権侵害の毒素条項が盛り込まれる

 TPP協定の「投資 」章のISD条項は、外国の投資家が、投資した相手側の国の措置によって損害を被った場合、救済を求めて仲裁続きを利用することができる制度です。安倍政権は、日本企業が発展途上国に進出する場合に有効だとして、積極的に導入に動きました。

 この条項は、すでにアメリカ、カナダ、メキシコ3国による北米自由貿易協定(NAFTA)にあり、アメリカ企業が多額の補償金を得た例が出ています。国の規制措置の目的が正当であっても違反とされたこともあり、勝訴しほとんどの企業がアメリカをはじめとした多国籍企業です。仲裁判断を下す仲裁人は、双方の仲裁人と第3者となっていますが、第3者には、日ごろISDで訴えを起こす多国籍企業を依頼主とするような国際投資を専門とする弁護士などがなる場合が多く、相手国に不利な判断を下す危険があります。安倍内閣は、日本企業の相手国進出に必要と言い。濫訴防止条項があると言いますが、日本政府や自治体がアメリカ企業から訴えられる危険は少なくありません。韓国がアメリカと結んだ米韓FTA(自由貿易協定)にこの条項があり、国内では、この条項の適用を避けるための自主規制や制度の変更まで行われているといわれています。

 「越境サービス}章にあるラチェット条項も各国の自主権を侵害するものです。この条項は、発効後の各国の規制や法律の自由化水準を低めてはならないというきまりです。適用される分野では、企業の規制強化や民営化したサービスを再公営化することもできません。暮らしにかかわる公共政策が自由化の方向だけにきめられてしまうことになります。 

TPPは、「成長戦略」どころか、地域経済と雇用、内需に大打撃となる

  安倍内閣は、TPPをアベノミクスの重要な柱と位置付けて批准を強行しようとしており、日本経済連など財界の早期の発足をもとめています。しかし、「恩恵」を受けるのは、一部の輸出大企業をはじめとする多国籍企業で、農業と食料、地域経済と雇用、国民生活は、犠牲だけが強いられることはあきらかです。安倍内閣は、大筋合意後の試算で、TPPによるGDPの押上効果を3・2兆円から14兆円に、農林水産物の生産額の減少を3兆円から1300億円~2100億円と20分の1に減ると発表しました。しかし、東京大学の鈴木宣弘教授が、大筋合意に元図いて2年前の政府試算と同じ手法で試算した結果、GDPの増加額は5000億円(0.069%)、農林水産業の生産減少額は、1兆5594億円になり、関連産業への波及を加えると3兆6237億円減少し、就業者も、農林水産業で63万4000人、全産業で76万1000人の減少が見込まれます。影響が軽微とする農林水産物への影響も、各県やJAの試算では、政府試算を大きく上回る影響があります。

 TPPは、米国を中心とする巨大多国籍企業の飽きない利益追求のために、関税を撤廃するとともに、食の安全、医療、保健・共済、政府調達など、あらゆる「非関税障壁を撤廃し、ISD大きな条項によって、多国籍企業が政府や自治体の施策に干渉・介入する「権利」を保障するものです。国民生活と地域経済に大打撃となり、日本経済全体にも大被害をもたらします。

 日本は、一部の輸出大企業をはじめ多国籍企業だけが巨額の富を蓄積し、国民の所得が奪われ、日本経済全体は長期低迷したままです。TPPは、この悪循環を深刻にするだけであり、日本経済のまともな発展の道を閉ざすものです。

 TPP協定の批准をただちにやめ、国民生活応援・内需主導への政治にきりかえ、日本経済の健全な成長とつりあいのとれた発展をはかることこそ重要になっています。

食料主権、経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係の発展を

  TPPが「自由貿易」「投資の自由化」の名で押しつける市場原理、規制緩和至上主義は、新しい貿易や投資、経済関係の前進どころか、世界でも、日本でも、破たんしています。地球規模での飢えと食料危機打開に向けた国際的な努力、地球環境をまもる取り組みと規制の強化、パナマ文書で明らかにされた富裕層の課税逃れの根絶、世界経済を混乱させる投機マネーへの規制など、各国の経済主権を尊重し、民主的で秩序ある経済の発展をめざす投資と貿易のルールづくりこそが、世界で求められていることです。

食料主権を尊重した貿易ルールを――自国の食料確保のあり方は、その国で決めるという食料主権、関税などの国境措置の維持強化は国際的な要請です。国連人権委員会でも「各国政府に対し食料に対する権利を尊重し、保護し、履行する」勧告が再三決議されています。食料不足と飢餓の拡大のもとで、各国が食料増産、自給率の向上を求められており、貿易ルールにおいても食料主権を尊重することが求められています。豊かな発展の潜在力を持っている日本農業を無理やりつぶして、外国から大量に食料を買い入れ、輸入依存を高める―これは国際正義、人類的道義にも反する行為です。

 「金融自由化」から投機マネーの規制へ――TPPは、投機マネーの規制ではなく、投資の「自由拡大」をいっそうすすめようとするものになっています。しかし、世界の流れは、アメリカが先頭にたってすすめた「金融自由化」が、目先の利益だけを追い求めて世界中を動き回る巨額の投機マネーを生み出し、世界的な金融・経済の混乱を引き起こしていることを反省し、金融取引税の導入をはじめ投機規制の強化を探求しています。投機マネー」による円の乱高下に苦しんでいる日本経済を真剣に考えるなら、こうした流れに合流することこそ求められています。パナマ文書は、富裕層の課税逃れに対する規制が重要な国際課題になっています。日本経団連は、調査に反対し、日本政府も消極的ですが、適正な課税、納税は、貧富の格差の是正にとっても不可欠です。

 経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係の発展をめざす――TPP交渉で安倍内閣が果たした役割は、アメリカと協力して、大筋合意を先導することでした。それは、環太平洋諸国、アジアに向かって「開かれた国」にするのではなく、経済主権、食料主権を投げ捨て、経済面でもアメリカの属国になる道にほかなりません。

  日本に求められているのは、アメリカ一辺倒から抜け出し、アジアを含む各国と経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係を発展させることです。貿易や経済関係を拡大すること自体は、悪いことではありません。しかし貿易の拡大の中でも、農業、食料、環境、労働など市場だけに任せておいては成り立たない分野があります。

 新しい世界の流れは、各国の経済主権を尊重し、それぞれの国の民主的で秩序ある経済の発展をめざす、互恵・平等の投資と貿易のルールづくりにあります。とりわけ自国の食料のあり方については自国で決定するという食料主権の尊重は、世界の流れとなっています。この道をすすんでこそ、アジアを含む各国と経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係を発展させることができます。日本は、こうした互恵・平等の経済関係を発展させる貿易・投資のルールづくりをこそ、アジアのなかで進めていくべきです。

国民的な共同の先頭に立って、TPP批准阻止、廃案をめざす

  TPPの道では、日本の未来はないし、世界の未来もありません。米国を中心とする巨大多国籍企業に日本をまるごと売り渡す、亡国のTPP協定の批准を阻止するため全力をあげようではありませんか。安倍内閣が交渉経過の資料を全面黒塗りで出し、答弁をことごとく拒否したことは、内容を明らかにできないような協定はおかしいという世論が大きく広がっています。日本農業新聞のアンケートで90%の関係者が国会決議違反とし、影響が軽微でなどありえないとみています。消費者団体、地方政界、医療団体、法曹界、学者・研究者と民主団体によるTPP批准阻止の運動も粘り強くとりくまれています。

 交渉参加国でも、農業団体、市民団体、環境NGOなどの中に反対の声が広がり、批准阻止にむけた国際的な連帯行動もとりくまれています。アメリカでは、大統領選挙の予備選挙で、多くの候補者がTPP反対を表明、民主,共和両党の大統領候補も反対の立場を明確にしており、批准・発効の見通しもたっていません。

 日本共産党は、TPP交渉への参加反対の一点で、国民の共同、国会内での共同を広げるとともに、国際的な連帯も広げ、TPP協定の批准阻止参加に全力を挙げます。参議院選挙は、自公政権・安倍政権の異常な秘密主義、ウソとごまかしによるTPP協定の批准と関連法案を廃案に追い込むチャンスです。何としても安倍自公政権の与党を少数に追い込みましょう。

 

 

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