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日本共産党

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赤旗

2013年参議院選挙各分野政策

17、公共事業

新規建設から、防災・老朽化に備えた維持・更新へ、大型開発より雇用に役立つ小規模事業、住民生活密着・地域循環型へ――国民の命・暮らし守り、地域経済再生に役立つ公共事業政策に転換します

2013年6月


大型開発事業を主役に復活=アベノミクス、骨太の方針

2012年12月に発生した中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故は、道路、橋、トンネル、水道管といったインフラ(社会基盤)構造物の点検、維持修繕・更新など老朽化対策が喫緊の課題であることを浮き彫りにしました。1960~70年代の高度経済成長期に数多く建設された多くのインフラが、寿命を迎えつつある状況のもとで、新規建設を抑制し、維持・更新事業へ公共事業政策を転換することは、まさに待ったなしとなっています。

 ところが、復活した安倍内閣・自公政権は、アベノミクス〝三本の矢〟のひとつとして、公共事業による財政出動を経済対策・景気対策と位置付けました。その中身は、防災や老朽化対策など必要な事業もありますが、「国際競争力の強化」と称して、高速道路や巨大港湾など新規の大型開発事業に多額の予算が投入されています。

 6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針 ~脱デフレ・経済再生~(骨太の方針)では、今後の社会資本整備について「国際競争力を強化するインフラ(首都圏空港・国際コンテナ戦略港湾・三大都市圏環状道路等)、民需誘発効果や投資効率の高い社会資本を選択し集中投資する」と明記しています。

 「コンクリートから人へ」と大型事業を見直すと公約した民主党は、公約を裏切り、八ッ場ダム建設や東京外環道(関越~東名)、新名神、整備新幹線などの大型開発事業を相次いで復活させましたが、安倍自公政権は、さらに前のめりになって、大型開発事業への投資を経済政策・公共事業政策の主役に押し上げようとしています。

「景気対策」を理由にした公共事業は、バブル崩壊後の低迷した経済を立て直すとして実施した90年代のやり方と同じです。結局、巨額の公共投資で膨大な借金=〝負の遺産〟を抱えました。その二の舞になりかねない危ないものです。

「国土強靭化」政策の本質

 これらは、自民党が政権公約に掲げていた「国土強靭化」政策の具体化です。10年間に200兆円を投資するとしています。5月には「防災・減災等に資する国土強靭化基本法案」を自民・公明が国会に提出しました。昨年、自民党が提出した「国土強靭化基本法」にあった「多極分散型の国土の形成」複数の国土軸の形成」など全総計画を彷彿させる文言や高速自動車国道や新幹線鉄道網の構築など具体的事業名は削られています。

しかし、法案が規定する「国土強靭化」の目的は、大規模災害に備えた事前防災や減災・迅速な復旧復興のための強靭な国土づくりとともに、国際競争力の向上に資する強靭な国土づくりです。この「国際競争力の向上に資する」事業とは、高速道路や新幹線、港湾、空港など巨大開発事業に付けられる修飾語にほかなりません。

また、基本方針には「国家及び社会の重要な機能の代替性の確保」と規定されています。「代替性」との理由付けは、外環道や圏央道、新名神など大都市圏環状道路や、14000kmの高速道路網をつなぐ建設事業の口実とされてきたものです。9兆円の事業費がかかるリニア中央新幹線建設も認めてきました。ダム建設事業は、水害・防災対策として建設促進されかねません。

 さらに、社会インフラ老朽化の危険から国民のいのち・安全を守ることは、国土強靭化の目的にはなっていません。他の国土計画関係法と同様に、環境保全や自然再生の視点や住民参加の仕組みもありません。結局、防災・老朽化対策の重視とは名ばかりで、大規模災害を口実に、新規の大型開発事業を見直すどころか、継続・拡大させる根拠にされるものにならざるをえません。

 これら新規の建設事業費は、13年度以降、ダムの建設で3兆2454億円、整備新幹線は3兆7600億円、国際コンテナ戦略港湾に4200億円、高速道路は約33兆円、あわせて約40兆円を超え、リニア新幹線建設費など含めると約50兆円もの規模になります。人口減少や危機的な財政状況、大規模災害、社会資本老朽化が進行する時代に、こうした大型開発事業のために、公共事業予算を増額すべきではありません。新規・新設の大型開発事業を中止・抑制し、防災・老朽化対策など維持管理・更新事業へ予算の使い道を切り替えれば、大幅に予算を増やす必要はありません。

新規を抑制し、維持・更新を 大型から小規模生活密着型へ

 日本共産党は「公共事業=悪」という立場はとりません。公共事業政策で大事なのは、国民のいのち・安全、暮らしに必要な事業は何か、何を優先すべきかを見定めることです。新規の高速道路や新幹線建設は、優先度は高くありません。いま最優先しなければいけないのは、耐震化対策や老朽化対策など既存社会資本の維持管理・更新です。

 中央自動車道笹子トンネル崩落事故をはじめ、1960年代に建設された首都高速や東海道新幹線などの老朽化が進行し、その対策が喫緊の課題になっています。道路橋や学校施設など公共施設の老朽化対策も遅れ、市町村では10%にも満たない状況です。

 維持管理・更新費は、今後50年間を見ても、数百兆円は必要になってきます。耐用年数が迫ったコンクリート構造物などが急増し、施設の維持・更新費用がかさむからです。国交省所管の施設の更新費だけでも190兆円、維持管理費を含めると360兆円にのぼると試算されています。他に水道施設は今後40年間におよそ39兆円、公立小中学校は、今後30年間に約30兆円~38兆円の更新費がかかると試算されています。

 こうした維持・更新費用を低減する長寿命化対策など急ぐ必要がありますが、それでも膨大な額にのぼることは避けられません。

そのため、公共事業政策は、財界・大手ゼネコンなどの国際競争力強化を軸にした産業政策や大型開発依存型の地方活性化策から、国民の命・安全、暮らしを守り、地域経済再生に役立つ方向へ根本的転換をはかる必要があります。

 

(1)ダム・高速道路など新規建設を抑制し、防災・老朽化に備えた維持・更新事業を優先します。

建設さきにありき”の建設計画を根本から見直し、新規建設を抑制します。

 事業中を含む新規に建設されるダムや高速道路は、多くが20~30年前の4全総計画をもとに計画されています。高速道路網の高規格幹線道路14000km、地域高規格道路約7000kmなど、いまだに全総計画を改定した国土形成計画に盛り込まれています。社会経済情勢の変化に関係なく、建設計画だけを推進するやり方を改めます。

・八ッ場ダム、東京外環道(関越道~東名)、新名神高速の凍結2区間、整備新幹線の未着工3区間の凍結解除・建設継続方針を撤回し、中止・凍結を含めて見直します。

公共事業の徹底した見直しをすすめるため、「公共事業改革基本法案(仮称)」を制定します。

 情報公開の保障、双方向性の市民参加の保障、環境保全優先性、国と地方公共団体の役割分担、審議会改革、独立・中立の「第三者機関」によるチェック、不正行為の禁止、費用便益分析算定データの公表などを内容とし、既存の公共事業を徹底検証できるようにします。

既存公共施設の老朽化対策、防災・耐震化を急いですすめます。

 全国の自治体で、道路橋、トンネル、上下水道、学校施設など既存施設の老朽化が深刻になっています。また、南海トラフ地震の被害が想定される地域の既存の海岸・河川堤防の4割~6割が耐震化されていません。

 既存施設の老朽化実態把握、修繕・更新費用の試算、長寿命化計画を急いで策定し、老朽化対策を実施します。堤防など既存施設の耐震化計画を早急に策定し、対策を実施します。

地方自治体管理の公共施設の維持管理にも補助できるようにします。

 公共施設の維持管理は、地方自治体の単独事業とされています。社会資本整備総合交付金など国の補助金の対象とするには大型工事に括るなど制約されています。地方自治体が管理する公共施設の維持管理にも、直接補助できるようにします。」

 

(2)大型開発事業より雇用に役立つ小規模事業、住民生活密着・地域循環型へ切り替え、住民の命と暮らしを守り、地域経済再生に役立つ公共事業政策をすすめます。

 生活に身近な小規模事業を優先してこそ、地域経済・雇用も守ることができます。公共工事の規模と雇用数の関係について「規模が上がるにつれ、労働者の数は減るという相関関係がございます」(2009年2月24日衆院予算委員会、国土交通省総合政策局長答弁)と政府も認めているように大規模工事より小規模工事の方が労働者の雇用効果が大きいのです。維持補修など身近な小規模工事は地域の中小企業が受注し、仕事起こしにもなり、地域の雇用拡大につながります。小規模事業への手厚い支援こそ、雇用対策、地域経済活性化に役立つのです。

<参考>2013年参院選挙各分野の政策、18、交通の(3)、通学路の安全確保・・・自動車走行優先から歩行者優先へ

 

(3)国民のいのち・安全を守るための身近な防災・減災対策事業を優先します。

 東日本大震災後、被災地の復興や防災対策、道路や鉄道幹線の代替網などインフラ整備が注目されています。三陸の高速道路が津波を防いだことや東北新幹線の復旧が早かったことなどから、これを“錦の御旗”に高速道路網や整備新幹線の整備などを正当化しようとしています。

 防災や減災に向けたインフラ整備は必要ですが、それは、より生活に身近なところから整備をすすめるべきです。巨額の費用を投じて、防災に本当に役立つかどうか疑問もある高速道路や新幹線整備を優先する必要はありません。

 たとえば、大深度に建設される特殊な構造の東京外環道は、大震災発生時に避難路とはなりえず、救援活動にも過度の期待を寄せることはできません。入出路が限られてしまう高速道路の整備よりは、避難所へアクセスする一般道路の沿道建築物の耐震強化、不燃化対策を優先させる方がより重要です。

 防災・減災対策を理由にすれば、なんでもいいとものではありません。国民のいのち・安全を守るための身近な防災・減災対策事業を優先すべきです。

防災・減災対策は、生活道路、上下水道、学校など、より住民に密着した事業を優先します。

 

(4)ダム・河川事業

脱ダム依存=「ダムに頼らない治水」の立場で、すべての事業中ダムを見直します。

 民主党政権のもとで再検証を始めた83ダムのうち、もともと必要性のない18ダムを中止しましたが、八ッ場ダム、サンルダム(北海道)、山鳥坂ダム(愛媛県)、石木ダム(長崎県)など35ダム建設を継続としました(13年1月現在)。国交省や県など管理・建設主体を事務局に据え、検証メンバーは都道府県など建設推進派だけで実施する再検証のやり方では、まともな検証はできません。また、小豆島の内海ダム(香川)など本体工事段階のダムや天ヶ瀬ダム(京都)など再開発事業のダムを再検証からも除外しました。集中豪雨など近年の水害・洪水対策は、貯水して洪水調整するダムに頼るのでなく、河川堤防や河道を修繕・改修する流域治水こそ重視すべきことを示しています。

ダム建設ありき」を改め、住民参加を徹底し、「流域住民が主人公」の河川行政への転換を求める」(2008年10月22日 日本共産党国会議員団)

 

スーパー堤防は事業の廃止を含め根本的に見直します。

河川・海岸堤防など耐震化・老朽化対策を優先してすすめます。

 

(5)高速道路

○ 大都市圏環状道路・国土ミッシングリンクの解消への予算の重点化をやめ、計画の見直しをします。

○ 高速道路網は、計画の白紙を含め抜本的に見直します。

 高規格幹線道路計画14000kmのうち10548km(13年3月末時点)、地域高規格道路(「計画路線」186路線)6950kmのうち2219kmが供用されています。(12年3月末時点)。残延長は約8183km。事業中区間に限った残事業費は、高規格幹線道路で約7兆円、地域高規格道路は約3兆円。合わせて約10兆円ですが、計画路線を加えた残事業費は33兆円を超えます。不必要なもの、急がないものなど情報公開、住民参加の徹底を前提にして見直すことが必要です。

○ 6大海峡横断道路計画など地域高規格道路の候補路線(110路線)を直ちに廃止します。

 海峡横断道路計画は、国土形成計画(全国計画)(2008年7月)に、「湾口部、海峡部等を連絡するプロジェクトについては、長期的視点から取り組む」と記載されていいます。これを含む地域高規格道路の候補路線(110路線)は廃止すべきです。

○ 首都高速や阪神高速など都市高速道路の新規・新設は行わず、老朽化対策を優先させます。

  その際、大深度地下化など新規事業と変わらない更新は、道路路線の存廃を含め検証します。

 ◌ 高速道路の無料化先送りではなく、新規路線の建設を見直します。

05年の道路公団民営化の際、高速道路建設の借金は、2050年までに返済し、その後は無料化する計画でした。ところが、笹子トンネル事故を受け、高速道路各社が試算した老朽化対策に必要な大規模修繕・更新の工事費用は総額7兆~12兆円にのぼり、これが民営化時の債務返済計画に織り込まれていませんでした。そのため借金返済計画を見直して、無料化を先送りしようとしています。

もともと、大規模修繕・更新費用を想定していなかった民営化のずさんさを物語るものですが、新規路線の建設を削減・縮小すれば大規模修繕・更新費用は賄えます。この方向で見直します。

 

(6)新幹線・空港・港湾

18、交通(2013年参院選挙各分野政策)

 

(7)住宅・建築

住宅 19、住宅・マンション(2013年参院選挙各分野政策)

建築行政

耐震偽装再発防止のために 建築基準法等改正案の審議にあたっての提案(2006年4月13日 日本共産党国会議員団)

エレベーター事故の再発防止対策に関する申し入れ(2006年6月28日 日本共産党国会議員団 国土交通部会)

 

(8)都市再生・まちづくり

 政府は、東京一極集中を加速させ、住民追い出しなど大都市住民の暮らしを破壊した小泉内閣時代の「都市再生」政策を、何の反省もなく、押しすすめようとしています。大都市の国際競争力の強化のため、国際的ビジネスの拠点をつくる国際競争拠点都市整備事業などに重点的かつ集中的に支援するなどとしています。

 住民不在の都市再生政策を抜本的に見直し、都市計画法、土地区画整理法など住民参加を徹底させる法改正をすすめます。流通施設建設ラッシュなど都市のスプロール化を加速する高速道路建設など見直します。

 

(9)建設労働者の賃上げを確実に保証する公契約法の制定を

 建設産業では、若者の入職が減り、技術継承が危ぶまれています。この危機を打開するため、国交省が、公共工事設計労務単価を15・1%(平均値)引き上げ、建設業団体に賃上げを要請しました。実施状況について、現場労働者の賃金水準をきめ細かく実態調査する必要があります。

 同時に、要請しただけでは、確実に賃上げが実現する保証はありません。重層的下請け構造による「中抜き」の常態化の是正、ダンピング受注の排除などが必要です。そのため、末端の労働者の適正賃金額を決めて元請け業者に支払いを義務づける「公契約法」を制定します。

 

◌ 公共工事の発注は、地域の建設業者や工務店に直接、発注する機会を増やすなど改善します。

◌ ダンピングの受注を排除するため、受注企業に適正な賃金の支払いの保証を求めます。

◌ 政労使の協議会を設置するなど、建設産業労働者の適正な賃金等に関する話合いの場を設けます。

◌ 入札要件として「地元への貢献度」等がTPPの非関税障壁として規制対象にならないようにします。

 

 各地の公共工事をめぐっては、中小零細企業と営業と地元経済を維持・繁栄させるため、公契約条例をつくっているところも生まれています。

 たとえば、東京の国分寺市議会が2012年6月25日に全会一致で採択した公契約条例があります。この条例は、予定価格9,000万円以上の公共工事、その他の1,000万円以上の委託事業については、市が決めた最低基準の単価を下回らないことを定めています。このほか、公共事業に従事する労働者の賃金を保証するための公契約条例も、全国各地で制定されています。

 日本共産党は、こうした条例を全国に広げるために奮闘します。

 

 

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