2013年参議院選挙各分野政策
6、生活保護・福祉
自公政権が推進する生活保護の大改悪を阻止し、貧困の打開、福祉の充実をはかります
2013年6月
安倍政権の生活保護改悪を許さず、必要な人すべてが受けられる生活保護へ
自民党は昨年来、生活保護を“不正受給だらけ”のように描き、制度や受給者を攻撃するバッシングを展開してきました。そして、自公政権の復活後は、生活保護を社会保障費削減の“最初の標的”とし、2013年度予算で生活保護費の切り下げを決め、生活保護法改悪案の成立をねらうなど、制度の大改悪に突き進んでいます。
生活保護基準は、住民税の非課税限度額、就学援助、最低賃金、国保・介護の負担減免、公営住宅の家賃減免など他の制度の基準とも連動し、その切り下げは、国民のくらしを支える制度の全面的な縮小に直結します。
安倍内閣が法案強行をねらい、国会終盤に廃案となった法改悪は、生活に困窮して保護を申請する人を窓口で追い返す、違法な「水際作戦」を“合法化”するものでした。いま、全国各地で、保護の申請を門前払いされた人が、餓死・孤立死に追い込まれ、遺体で発見されるなどの事件が相次いでいますが、「水際作戦」の強化はこうした悲惨な事態をさらに広げるものです。
生活保護は、国民の生存権をまもる“最後の砦”であり、保護費の水準は、国民生活の最低基準(ナショナル・ミニマム)を具体化したものとされています。生活保護の改悪策動は、憲法が保障した人権を国民から奪いとる攻撃にほかなりません。しかも、その手法は、受給者全体が「不正」をしているかのように事実をゆがめ、国民のなかに分断を持ち込んで、互いに「叩きあう」よう仕向けるものです。
日本共産党は、社会保障の縮小・解体をねらった自公政権の卑劣な罠を断じて許さず、生活保護の制度と、憲法25条が保障した国民の生存権をまもるためにたたかいます。保護申請の門前払いや強権的な保護の打ち切りなど、排除と切り捨ての保護行政をあらため、生活保護を国民の人権保障の制度として再構築していきます。
「水際作戦」の合法化を許さず、国民の受給権をまもります……安倍・自公政権が提出し、民主、維新、みんな、生活の党も賛成した生活保護法改悪は、生活保護を申請するときに「書類提出」を義務づけ、「書類不備」を理由に追い返せるようにしようというものです。いまでも、保護行政の現場では、支援を求めてきた人を単なる「相談者」と扱い、「働けるはず」「必要書類がそろっていない」などと圧力をかけて門前払いにする、「水際作戦」が横行しています。しかし、現行制度では、保護申請は口頭でも可能とされ、行政はそれに応じる義務を負っています。不当な門前払いが発覚すれば違法行為として裁判で断罪され、政府も是正を指導せざるを得ない仕組みとなっています。今回の改悪は、この「水際作戦」の“合法化”をねらったものでした。
さらに、法案には、親族による「扶養」を事実上の保護の要件とし、申請者の親・子・きょうだいに収入・資産を報告させ、取引銀行や勤務先にまで照会をかけるなど、申請者と親族に圧力をかけ、申請断念や保護費減額に追い込んでいく措置も盛り込まれていました。受給者の申請権を著しく侵害するとともに、家族関係に行政が介入していく改悪です。
2012年、札幌市で、失業中の姉と障害のある妹(ともに40歳代)が、病死・凍死の遺体で発見される、痛ましい事件が起こりました。姉は生前、3回も福祉事務所に足を運びましたが、行政側が、「まだ働ける」「親族にたよれ」などと口実をつけ、申請をさせなかったとされています。
安倍・自公政権は、参院選後の国会に、生活保護改悪法案を再提出すると公言しています。日本共産党は、憲法にもとづく申請権・受給権をはく奪し、餓死・孤立死などの悲惨な事態をさらに拡大する法改悪に反対し、国民のくらしと人権、命をまもるため全力をつくします。
「水際作戦」を許さない立場を国として明確にし、各自治体の保護行政の状況を調査して、違法行為の根絶にむけた指導を強めます。生活困窮者の支援に取り組むNPO、NGO、受給者などの意見を聴きながら「生活保護の実施要領」を改善し、自治体に徹底していきます。
国民の分断をねらった卑劣なバッシングを許さない……昨年、自民党議員が人気芸能人の親族の生活保護受給を問題視したことを“発火点”に、生活保護の受給者と制度を攻撃するバッシングが、自公民や維新・みんな、大手メディアをあげて展開されています。
しかし、生活保護の実際の不正受給は、支給総額の0・5%(2011年度)に過ぎません。しかも、不正受給と言われるなかには、「高校生になった子どもが、アルバイトを始めたのをうっかり届け出ていなかった」などの事例も少なくなく、悪質なものはごく少数です。それをあたかも、受給者全体が不当な特権を受けているかのように描くのは、事実をねじ曲げた、デマ宣伝にほかなりません。
洪水のような生活保護バッシングのなか、受給者のなかには、外出を控えたり、精神的に追い込まれている人が続出しています。もともと、生活保護受給者の自殺率は、受給をしていない人の2倍以上ですが、この間の“受給者叩き”がそれをいっそう深刻にさせかねないことも懸念されています。失業をした娘と要介護の母親が、一連のバッシング報道を見て「生活保護は受けられない」とあきらめ、心中をはかるという事件も起きています。貧困や病気で苦しむ人を“社会のじゃまもの”扱いし、絶望に叩き落として生きる場所を奪っていくキャンペーンは、ただちにやめるべきです。
日本共産党は、国民の人権にかけられた攻撃を、社会的連帯の力で跳ね返すたたかいの先頭に立ちます。
膨大な漏給、低すぎる捕捉率こそ改革を……日本の生活保護で、早急に解決がせまられているのは、収入が最低生活費未満の人が生活保護を受けている割合――捕捉率があまりに低いという問題です。
日本の生活保護利用率は、国民全体の1・6%、増えたとはいっても他の先進国より低い水準にとどまっています(フランス:5・7%、イギリス:9・3%、ドイツ:9・7%)。日本の捕捉率は約2割ですが、ドイツは6割、イギリスは5~6割(求職者)、フランスが9割(OECD基準)です。公的扶助予算も、日本がGDPの0・8%なのにたいし、ドイツ:2・0%、フランス:2・0%、アメリカ:3・7%、イギリス:4・3%です(埋橋孝文・同志社大学教授の調査)。
今年5月、国連の社会権規約委員会は、「スティグマ(恥辱)のために生活保護の申請が抑制されている」日本の現状に「懸念」を表明し、「生活保護の申請を簡素化」すること、「申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとる」こと、「生活保護につきまとう恥辱を解消する」手立てをとることを日本政府に勧告しました。これこそ、いま取り組むべき改革です。
国として捕捉率を向上させる年次目標を設定し、生活保護法にも違反した行為や無法な指導をやめさせ、必要な人がきちんと保護を受けられるようにします。生活保護は国民の権利であることを広く知らせる活動を、国と自治体ですすめます。「年越し派遣村」で注目を集めた、「ワンストップサービス」を継続し、どの窓口からでも必要な人には生活保護にアクセスできるようにします。急迫した人々には即時対応できる制度に改善します。安価で入居できる公営住宅の整備や就労支援など、生活支援を強めます。
保護基準の切り下げをやめ、給付の抜本的改善を……安倍内閣・自公政権が決めた13年度予算により、生活保護費の740億円もの削減が実行されようとしています。都市部に住む「40歳代の夫婦と子ども2人の世帯」で、保護費が月2万円減らされるなどの大幅削減が、受給世帯の96%に襲いかかります(今年8月開始。3年間で段階的に切り下げ)。12月に支給される期末一時扶助も、2人以上世帯で約6000円の減額となります。受給世帯の困窮に追い打ちをかける改悪です。
政府は、この引き下げが、就学援助や住民税の非課税限度額などに影響しないよう、必要な措置をとると説明していますが、具体策は不明です。また、生活保護基準はそれ以外にも、介護保険の保険料・利用料の減額ライン、障害者福祉の利用料の減額基準、生活福祉資金貸し付けの基準、公営住宅の家賃減免の基準、国保の窓口負担の減免対象の基準などに、直接リンクしています。未熟児の医療費補助、慢性疾患のある子どもへの医療費助成や日常生活養護の給付、児童入所施設の費用、私立高校の授業料減免など、子どもの支援にかかわる多くの制度の基準も、生活保護と連動しています。まさに、生活保護基準は「ナショナル・ミニマム」であり、その引き下げは、福祉の全面的後退を引き起こすのです。
自公政権の「構造改革」路線のもと、この間、生活保護の支給は、老齢加算の廃止や、持ち家がある高齢者に不動産を担保にお金を貸し付け、それを使い切るまでは保護を受けさせない「リバースモーゲージ=要保護世帯向け長期生活支援資金」導入など、さまざまな改悪にさらされてきました。
老齢加算の廃止は、保護を受ける高齢者の生活に大きな打撃となり、取り消しを求める「生存権裁判」も起こされています。2010年6月14日の福岡高裁では、老齢加算の廃止を「正当な理由のない保護基準の不利益変更にあたり違法」とする判決が下されました。
日本共産党は、老齢加算の復活、リバースモーゲージの中止など、改悪された制度を元に戻します。受給者をさらなる困窮に追い込み、他の福祉制度の縮小にも連動する、生活扶助基準の引き下げ、級地再編などの改悪に反対し、「ナショナル・ミニマム」にふさわしい水準への改善・向上をはかります。
自公政権や、民主・みんな・維新などの諸党は、生活保護基準が、最低賃金や国民年金の額を上回っていることを、保護費削減を正当化する“理由”としています。
しかし、賃金が生活保護基準より低いという事態は、異常な低賃金や際限のない賃下げを放置してきた、政治の怠慢が引き起こしたものです。最低賃金の引き上げ、正規雇用への転換、中小企業への支援強化など、賃金・雇用を立て直す改革こそ求められます。しかも、最低賃金はもともと「生活保護を勘案」して設定されています。保護基準を引き下げれば、賃金も上がらなくなり、保護費と賃金の“引き下げ合戦”が続くだけです。
年金と生活保護費の問題も、保険料を満額納めても国民年金が月6・5万円しか受け取れないという低年金をただす以外に解決策はありません。ドイツでは、公的扶助の受給者に占める高齢者の割合は1割台であり、生活保護受給の4割以上が高齢者という日本の状況は、低年金・無年金がいかに深刻かをあらわしています。日本共産党は、年金削減政策の中止と低年金の底上げをすみやかに行い、最低保障年金の導入で無年金・低年金を根本的に解消する改革をすすめます。
「就労支援」の名による切り捨てを許さない……昨年、自公民3党で可決した「社会保障制度改革推進法」は、生活保護費の切り下げと同時に、「正当な理由なく就労しない場合には厳格に処罰する措置を検討する」と明記し、「就労指導」の名で保護の門前払いや打ち切りを強化する方向を打ち出しました。さらに、厚生労働省が策定した「生活支援戦略」は、徹底した「就労指導」、行政による受給者の生活態度や家計支出の管理、調査・指導・罰則の強化などを提唱しています。受給者の人権・プライバシーを無視し、権利としての生活保護制度を、戦前の“お恵み”の制度に後退させていくものです。
こうしたなか、安倍内閣は、「水際作戦」を“合法化”する生活保護法改悪案と一体に、生活困窮者自立支援法案を提出し、可決を強行しました。自立支援法の中核は、ただちに就労が困難な生活困窮者に「中間的就労」を促す、「就労訓練事業」の導入ですが、その内容は、保護の受給者・申請者を、最低賃金も適用されない事業に「とりあえず就労」させるというものです。低賃金労働を助長し、保護の打ち切りや「水際作戦」のツールとなり、貧困ビジネスにも悪用されかねないなど、危険な問題が含まれています。新設される「相談支援活動」も、その具体化は自治体に丸投げで、必要な相談・支援がされる保証はありません。
生活保護を攻撃する勢力は、受給者のなかに「働ける層」が増えていると言いますが、保護受給世帯のうち、高齢者や障害者をのぞく「その他」世帯は2割未満です。しかも、その55%は50歳代で、20歳代は5%です。若年の受給者には、うつ病など精神疾患のある人もおり、一律に「働ける」とするのは、実態を偽った宣伝に過ぎません。
2007年、北九州市で、生活保護を打ち切られた男性が、「オニギリ食べたい」というメモを残して孤独死する事件が発生しましたが、これも、“保護よりも就労指導”という行政の方針によって引き起こされたものです。
生活困窮者自立支援法案は、生活保護法改悪案とともに廃案となりましたが、政府は、参院選後の国会での再提出をねらっています。日本共産党は、「就労支援」の名で要保護者に圧力をかけ、「水際作戦」や強権的な保護の打ち切りを推進する制度改悪に反対します。
生活困窮者のサポート体制の抜本的強化を……不正受給は当然、なくさなければなりません。不正受給を防止・根絶するとともに、はるかに深刻な「漏給」問題を解決するには、生活困窮者の相談や申請に迅速に対応し、実情を踏まえてきめ細かく対応する体制を整えることが不可欠です。貧困が広がる一方で福祉分野の予算・人員削減が続くなか、福祉事務所のケースワーカーの担当件数は、1人当たり平均96世帯になっています(09年度)。マスコミも、「貧困層が増えるなか、ケースワーカーが置かれている状況を改善しない限り、適切な保護行政など望むべくもない」と指摘する状況です。
日本共産党は、生活保護費にたいする国・地方の負担割合の改善などを進め、福祉行政にかかわる国の財政支出を増やします。国の責任でケースワーカーを大幅に増員し、過重な担当件数を減らすなど待遇改善をはかります。保護の申請者・受給者のなかには、生活困難や社会的孤立、さまざまな悲惨な体験から、精神的に追い込まるなど、緊急の対応が必要な人もいます。ケースワーカーの専門性を高め、生活困窮者にきめ細かな支援ができる体制を構築します。
この間、「暴力団対策」「不正受給対策」などと称して、警察官OBを福祉事務所の窓口に配置する動きが、国も予算をつけて推進され、大問題になっています。保護の申請者・受給者を“犯罪者予備軍”扱いし、窓口に相談に行くことまでも委縮させようとするものです。申請者・受給者を威圧して、申請の断念や保護の打ち切りに追い込んでいく、福祉行政にあるまじきやり方は、ただちにやめるべきです。
また、兵庫県小野市では、生活保護受給者の“パチンコ屋通い”“過度の飲酒”などを、住民に通報させる条例が可決されました。他の自治体でも、自治体当局が同様の通報システムを導入する動きが起こっています。住民同士に互いの生活を監視させ、プライバシーの暴きあいを奨励するなど、政治の退廃の極みです。こんな暴挙は断じて許せません。
生活保護受給者を食い物にした「貧困ビジネス」が全国で横行しています。住居や食事を実態とはかけはなれた高額料金で提供し、さまざまな名目をつけて、保護費のほとんどを“ピンハネ”していく悪質業者・団体にたいする、実効性ある規制づくりに取り組みます。「貧困ビジネス」が横行する背景には、行政が住居を失った人や窮迫した人たちに「住む場所」を提供しなかったり、保護を受給しても保証人がいないためにアパートが見つからないなどの現実があります。行政として責任をもって住む場所を保障するようにします。
国をあげて貧困打開をすすめます……生活保護受給が216万人(2012年11月時点)を超えて、過去最高を更新し続けているのは、不正受給が増えているからではなく、年収200万円以下の給与所得者が1000万人を超え、貯金ゼロ世帯が全世帯の3割にのぼり、国民年金の平均受給額が4万円台にとどまるなど、日本社会を未曽有の貧困がおおっているからです。
貧困拡大に手を打たないまま、保護申請の門前払いや保護の打ち切りを強化しても、餓死・孤立死が増え、国民の命が脅かされるだけです。
日本共産党は、日本社会のゆがみをただし、貧困を打開する改革をすすめます。
正規雇用への転換、最低賃金の引き上げ、解雇規制の強化など、人間らしく働けるルールを確立し、雇用と賃金を立て直して、「働く貧困層」をなくしていきます。
中小企業と大企業の公正な取引ルールの確立、中小企業の本格的振興、農林漁業の再生など、中小企業や農林漁業者の経営をまもり、所得増をはかる改革を推進します。
年金削減の中止、低年金の底上げ、最低保障年金の導入で、無年金・低年金問題の根本的解決をはかります。医療や介護の保険料・自己負担の軽減、公的保育の充実など、社会保障の拡充をすすめます。
雇用保険の拡充、失業者に対する生活扶助制度の確立、職業訓練と再就職支援の強化など、“生活保護以外の公的扶助が弱すぎる”という現行制度の弱点をただし、失業者を支援する制度の総合的な充実を推進します。
原爆被爆者施策の抜本的な改善をすすめます
被爆者は核兵器廃絶とともに、原爆被害への国家補償をもとめ、長年たたかいつづけています。政府はこの願いにこたえて、被爆者施策の抜本的改善、原爆被害への国家補償に踏み切るべきです。
政府はこれまで被爆の実相を直視せず、原爆被害を矮小化してきました。原爆症認定集団訴訟のとりくみは、その誤りを司法の場で明らかにし、認定基準を改善させてきました。しかし、それによって認定者数は拡大されたとはいえ、いまだに被爆者手帳保持者の2%にも及ばない状況です。しかも、これまでの裁判の結果や新しい基準に照らしても問題のある認定却下が少なからずあり、新たな訴訟も起こされています。被爆者への援護・救済を抜本的に拡大していくことが急務です。
原爆症認定制度のあり方を議論している厚生労働省の「検討会」で、被爆者代表からは、これまでのような「認定基準」による「足きり」をやめ、被爆の実態にふさわしく制度を抜本的に改定する提言が出されています。原爆症認定制度を、法改正を含め、被爆者の実情・要求にそったものとするために尽力します。被爆二世対策、また海外に住む被爆者が日本に住む被爆者と同等の援護措置を受けられること、被爆実態に見合った被爆者手帳交付条件の見直し(被爆地域の拡大)を進めます。
広島と長崎の被爆に目をむけて、非人道的な核兵器をなくそうという声が世界に大きく広がりつつあります。「核抑止力」「核の傘」から脱却し、被爆国としての国際的な責任をはたすとともに、原爆被害に正面から向き合い、政策の根本転換をはかるべきです。国民に原爆被害・戦争被害の「受忍」を強いる政策をとり続けることは許されません。
ハンセン病元患者にたいする保障を充実させます
全国には13カ所の国立ハンセン病療養所があります。入所者は約2000人であり、平均年齢は82歳をこえて、高齢化と身体の不自由が年々、進んでいます。2001年の「隔離は違憲」とした熊本地裁判決、ハンセン病問題対策協議会での「基本合意」「確認事項」にもとづいた運動がおこなわれ、2008年6月には、療養所の具体的な維持対策を求めた「ハンセン病問題基本法」が成立しています。法の趣旨が一日も早く実現されなければなりません。日本共産党は、「基本法」にふさわしい入所者の処遇改善や職員体制の充実を一刻も早く実施し、生活環境が地域から孤立することなく、安心して豊かな生活を営むことができるよう必要な措置を講じることを、国会質問でもとりあげ、国に申し入れてきました。
緊急に入所者の医療・生活保障を拡充し、不足している医師、看護師、介護職員の確保・増員をはかることが必要です。そのために、国家公務員の定員削減計画からハンセン病療養所を除外するべきです。重症化している入所者の夜間の看護・介護体制の充実をすすめます。退所者給与金の停止をおこなうことなく、退所者が安心してかかることのできる医療制度を確立します。賃金職員の差別的処遇の抜本的な改善をはかります。
療養所ごとに「将来構想」づくりがすすめられています。入所者が最後の一人になるまで国は面倒を見ると言っていますが、そのためには療養所の医療を地域に開放し、ニーズを高めて機能を維持、あるいは充実させていくことが大切です。
東京・多磨全生園では、敷地内に昨年7月、保育所が開設しました。また、広大な敷地に障害者施設や高齢者福祉施設などを誘致することも望まれています。他施設の誘致、併設にあたっては、法外に高い借地代の改善が不可欠です。
国は、自治体とともに入所者の願いを反映する療養所を実現するため、着工の予算を確保し、積極的で万全な支援と保障につとめるべきです。
ハンセン病に対する偏見、差別はいまだに克服されてはおらず、隔離政策から106年の今、政府がなぜ隔離政策をとったのか、その隔離政策とは何であったのか、検証結果を広く国民に知らせ、二度と同じ過ちを繰り返さないための啓発活動を積極的に講ずることを求めます。
中国からの帰国者に社会的支援を確実におこないます
さきの戦争で犠牲になった中国「残留孤児」「残留婦人」たちが、国の謝罪と生活支援を求め、全国で訴訟に立ち上がった結果、改正「中国残留邦人支援法」による支援給付金などの制度ができました。しかし、国は、終戦間際に多くの国民を中国東北部に置き去りにし、その後も長期にわたって支援を怠ってきたことへの真摯な反省と謝罪をしていません。そのために、支援金の給付水準は、「安心した老後を送りたい」という願いにこたえるものとはなっていません。そのうえ、支援金は生活扶助基準引き下げが連動するしくみであり、生活保護制度の改悪の影響を受けます。この8月からの支援金の引き下げは中止するべきです。
「残留孤児」本人が死亡した場合、配偶者に年金が継承されるよう求めます。2世と同居しやすくするため、同居2世の収入を理由に支援金をカットしないことや、中国渡航期限(2カ月以内)の緩和などを求めます。
配偶者や2・3世も含め、国が「孤児」たちに約束した「日本に帰ってきてよかったといえる支援策づくり」を、人間としての尊厳にふさわしく、確実におこなうことを強く求めます。
(※)これまで、「社会保障」に入っていた「シベリア・モンゴル抑留問題」にかかわる政策は、「41、いのち・人権の保障」に移りました。