2012年総選挙各分野政策
2、社会保障
社会保障切り捨てに反対し、再生・充実への根本的転換をはかります
2012年11月
社会保障解体の暴走と対決し、国民の生活と権利をまもります
民主・自民・公明の“3党談合”で進められようとしている「社会保障と税の一体改革」は、消費税率を2倍に引き上げる一方、「社会保障改革」と称して、年金・医療・介護などあらゆる分野で国民に負担増・給付削減を押しつける“一体改悪”の計画です。
民自公が密室協議で案文をつくり、8月、消費税増税法と一体に可決した「社会保障制度改革推進法」は、国・地方の社会保障費を恒久的に削減するための「改革」を政府に義務づけた法律です。同法は、「改革」の基本理念で“自己責任”と“家族の支えあい”を強調。社会保障は国民同士の“助け合い”の仕組みであると規定し、国の責任を放棄しています。そこには、国保料(税)の大幅な引き上げ、公的保険の使えない「混合診療」の全面解禁、介護サービスの取り上げや利用料値上げなどにつながる条項も列記されています。まさに、憲法25条の生存権保障の立場を否定し、各制度の改悪を推進する“社会保障解体宣言”ともいうべき悪法です。民自公は同法に基づいて「社会保障制度改革国民会議」を設置し、各制度の改悪を推進していくことに“合意”しています。
この間、民自公が標的にしているのが、生活保護制度です。人気芸能人の親の生活保護受給を自民党議員が問題視したことを契機に、生活保護を“不正受給だらけ”のように描くバッシングが繰り返され、民自公や「維新の会」が競いあって、保護費の削減、保護の有期化、親族への「扶養」押しつけなどを大合唱する状況となっています。これらの攻撃の特徴は、雇用破壊や社会保障改悪で貧困を拡大した政治の責任には口をつぐみながら、生活保護の受給者を“税金に寄生する不届き者”のように扱い、現行制度では「日本人の心が腐っていく」などといって排除と切り捨てを要求することです。予算削減をねらった制度改悪から、「国民の権利としての社会保障」を全面否定する攻撃へと、改悪の質が加速されてきたことは重大です。
日本共産党は、社会保障に対する国の責任を放棄し、年金・医療・介護など公的制度の解体をもくろむ民自公の暴走とたたかいます。民自公や、「第三極」を自称する勢力がたれ流す、社会保障否定の暴論をはね返し、国民のいのちと健康、人権をまもるための広範な共同を広げ、社会保障を削減から充実へ転換するために全力をあげます。
社会保障の再生・拡充を2段階ですすめ、国民のくらし・いのち・健康がまもられる経済・社会を構築します
もともと、日本の社会保障は、ヨーロッパ諸国など他の先進国に比べて低水準でしたが、そこに、小泉内閣以来の「構造改革」路線が襲いかかったために、医療崩壊、介護難民、年金空洞化、保育所待機児童の急増など、社会保障の基盤そのものが大きく崩され、国民の暮らしや命が脅かされています。これを打開し、社会保障を削減から拡充へ転換することはまさに急務です。
日本共産党は、今年2月に発表した「社会保障充実と財政危機打開の提言」で、社会保障の再生と拡充を段階的にすすめ、消費税増税とは「別の道」をつうじて、それぞれの段階に応じた財源を確保するプランを打ち出しました。
「第一段階」では、「社会保障再生計画」をつくり、「構造改革」によって大きく崩された社会保障制度を、2010年代末を目標に再生させます。
――年金の自動削減の仕組みを廃止し、低年金の底上げを緊急に行って、“減らない年金・信頼できる年金”への第一歩を踏みだす
――医療費の窓口負担の引き下げ(子どもは無料、現役世代は2割、高齢者は1割)、国保料(税)の軽減、診療報酬の増額と医師・看護師の増員などで、「医療崩壊」を打開する
――特養ホームの待機者をなくし、サービスとりあげの中止や保険料・利用料の負担軽減で、安心して利用できる介護制度に転換する
――保育所の待機児をゼロにする。障害者のくらしと権利をまもる新法の制定。雇用保険の拡充。生活保護の排除と切り捨てをやめさせ、貧困の打開をすすめる
これら「社会保障再生」の財源は、不要不急の大型公共事業、原発予算、軍事費などのムダづかいの一掃とともに、富裕層・大企業優遇の不公平税制をただすことで確保します。新たに「富裕税」「為替投機課税」なども導入します。
「第2段階」として、最低保障年金の創設、医療費の窓口負担の無料化、介護の利用料の無料化など、ヨーロッパの多くの諸国で当たり前となっている、先進水準の社会保障へ抜本的拡充を進めます。
財源は、国民全体で、その力に応じて支えていくというのが、日本共産党の提案です。所得税の累進課税の強化など、“能力に応じた負担(応能負担)”の原則にたった税制改革を進めます。
経済の低迷、税収の減少をそのままにして、歳出・歳入の改革を進めても展望は開けません。社会保障の充実・拡充と同時並行で、国民の所得を増やし、経済を内需主導の安定した成長軌道にのせる民主的経済改革を行います。
正社員が当たり前の社会への転換、最低賃金の引き上げによる「働く貧困層」の解消、中小企業と大企業の公正な取引ルールの確立、農林漁業の再生、原発撤退と自然エネルギーの普及など、国民のくらしと権利を守る「ルールある経済社会」への改革を進め、大企業の内部に滞留している260兆円の内部留保を日本経済に還流させて、日本経済を健全な発展を軌道に乗せていきます。社会保障の充実自体も、国民のふところをあたため、家計を応援し、将来不安を解消するなど、内需主導の経済再建の大きな力ともなります。このように、応能負担の原則に立った税・財政の改革と、国民の所得を増やす経済の民主的改革を同時並行で行えば、新たに40兆円の財源を増やすことができます。
日本共産党は、くらしも経済も財政も壊す、民自公の「一体改革」に反対し、社会保障充実、税・財政・経済の民主的改革の旗を高くかかげ、日本の社会・経済の希望ある前途を開くために奮闘します。
1、年金削減政策を中止し、無年金・低年金の解決に足を踏みだして、今も将来も信頼できる年金制度を確立します
●年金制度の2段階の改革で、今も将来も安心できる制度を実現します
年金保険料の際限ない値上げ、繰り返される給付削減、支給開始年齢の先送りなど、年金制度の連続改悪が強行されるなか、国民の年金不信が広がっています。
現役世代では、国民年金保険料の未納率が4割に達し、免除者や未加入者も含め、保険料を払っていない人が1000万人を超えるなど、制度の「空洞化」が進行しています。高齢者でも、年金を1円も受給していない人が100万人にのぼり、国民年金の平均受給額が月5万円に満たないなど、無年金・低年金問題は深刻です。
ところが、民自公3党は、国会解散前のどさくさに年金支給額の2・5%削減法案を強行しました。物価が上がった年に年金額を自動的に抑える「マクロ経済スライド」の制度を、物価が下がった年にも発動するように改変し、毎年の年金支給を恒久的に削減する改悪も計画されています。年金の支給開始年齢を68~70歳に先送りするなど、現役世代が将来受けとる年金を切り捨てる改悪も議論の俎上にのぼっています。これでは、年金不信はいっそう拡大し、生活苦と将来不安はますばかりです。
日本共産党は、「社会保障充実、財政危機打開の提言」で打ち出した2段階の改革により、年金への信頼を取り戻し、真の持続可能な年金制度を確立します。
改革の第1段階として、“減らない年金”を実現し、無年金・低年金の解決に足を踏みだして、“たよれる年金”の第一歩を築きます。
物価スライドを名目にした年金削減、民自公3党が法案を強行した2・5%の年金削減を中止します。「マクロ経済スライド」の拡大を許さず、この制度自体を撤廃します。物価上昇率が名目賃金上昇率を上まわった場合に、物価スライドを名目賃金上昇率の範囲に抑える仕組みなど、あらゆる年金削減の仕組みをなくし、減らない年金制度へ転換します。
「保険料を25年、払わないと年金を受け取れない」という現行制度をすみやかに改めます。民自公3党は、受給資格を得られる期間を、「25年」から「10年」に短縮する法案を可決しましたが、その施行日は、“消費税率が10%に上がったとき”と規定されています。年金制度の改善は国民の生活と権利をまもるため無条件に行うべきものであり、それを、消費税増税を飲ませるための“人質”に使うなど言語道断です。日本共産党は新しい国会で消費税増税の中止法案を提出するとともに、受給資格期間の短縮を消費税増税と切り離し、すみやかに実現するために全力をあげます。
あわせて、低年金の重点的な底上げを行います。現行の基礎年金は、受給額の2分の1を国が税財源で負担する仕組みとなっています。この仕組みをあらため、受給者全員に定額(現行の基礎年金満額の2分の1にあたる月3万3000円)の税財源を投入します。これが実現すれば、現在、月4万円の年金を受給している人は、受給額が月5万3000円に増額されます。
改革の第2段階で、全額国庫負担による最低保障年金制度の確立に進みます。第1段階の低年金の底上げを発展させ、保険料納付にかかわらず月5万円の最低保障額を設定し、その上に、支払った保険料に応じた給付を上乗せする制度をスタートさせます。これにより、国民年金で40年間、保険料を納めた人は、月8万3000円の年金を受給できるようになり、厚生年金も、給付水準の低い人から底上げがされていきます。
公的年金制度のなかに、最低保障の仕組みがないのは、先進国では日本だけです。国連の社会権規約委員会から「最低年金を公的年金制度に導入すること」が勧告されています。最低保障年金の導入に足を踏みだせば、低年金・無年金の増大、年金制度の「空洞化」、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度が抱えるさまざまな矛盾を抜本的に解決する道が開けます。
これらの改革に必要な財源は、消費税増税にたよらず、①ムダづかいの一掃、富裕層・大企業に対する優遇税制の是正、②応能負担の原則に立った税制改革――という、2段階の税・財政改革によって確保します。あわせて、雇用のルールの確立、中小企業の振興、農林水産業の再生など、国民の所得を増やし、日本経済を健全な成長軌道に乗せる民主的経済改革を行います。また、仕事と子育ての両立支援、子育ての経済的負担の軽減、日本社会のゆがみをただす改革を行い、「少子化」問題の克服に取り組みます。
正社員が当たり前の社会をつくり、「働く貧困層」をなくして中小企業の経営を守る改革は、年金保険料の未納者や滞納事業所を減らし、年金財政の支え手を増やす決め手ともなるものです。「少子化」問題の克服は、安定した年金制度を確立するうえでも重要です。
年金制度を2段階で充実させる改革、その財源を消費税にたよらず確保する税・財政の改革、「ルールある経済社会」に転換する経済の民主的改革により、今も将来も安心・信頼できる年金を実現していきます。
●「消えた年金」「消された年金」問題を、一人たりとも被害者を残さないよう、一日も早く、国の責任で解決します
民主党政権は、「消えた年金」「消された年金」問題を「2年以内」に解決するという公約を裏切り、社会保険庁の解体による人員削減・体制縮小など、逆に、問題解決を遅らせる改悪を強行しました。「消えた年金」「消された年金」問題は、国が引き起こした問題であり、被害者には何の責任もありません。“被害者を一人も残さない”“一日も早く”という立場で、日本共産党は、国が解決に責任を果たすことを求めます。
年金記録が消えたり、消されたりしていないかどうか、一人ひとりの受給者・加入者にわかるよう、国が管理・保有している情報をきちんと提供するとともに、相談・問い合わせ、記録の照会や訂正、未払い金の支払いのスピードアップなどに対応できる体制の抜本的強化をはかります。第三者委員会などでは、物証がなくても、申立てや証言などを尊重して支給することなどを進めます。コンピューターの誤った記録は、すべて手書き台帳とつきあわせて、修正するべきです。
「消えた年金」「消された年金」問題の根本には、国民の年金受給権をまもることには無関心で、保険料徴収と納入率アップを至上命令にするという、年金行政の大きなゆがみがあります。年金をはじめ、社会保障は国民の権利であり、行政の国民の権利をまもるために仕事をするという基本原則を、行政の上から下まで徹底することこそ、求められている改革です。この立場で、年金保険料の流用の中止、世界に例のない巨額の積立金の計画的な取り崩しと給付への充当など、年金行政の抜本的改革を進めます。
社会保険庁解体・年金機構発足を口実に、「消えた年金」「消された年金」問題に対する国の責任を放棄することを許さず、「分限免職」した職員の再雇用をはじめ、問題解決の体制をとり、解決に責任を持つことを求めます。
●パート、派遣、契約社員など非正規雇用で働く人たちの厚生年金加入の権利を保障します
厚生年金など社会保険に加入することは、本来、非正規雇用も含めた労働者の権利です。現在の法律でも、法人又は従業員数が常時5人以上の事業所は、正社員の4分の3以上の時間を働く労働者をすべて厚生年金に加入させる義務を負っています。ところが、この義務を果たしていない事業所が少なくありません。派遣社員も、派遣元企業に社会保険加入の義務が課されていますが、責任逃れや違法行為が蔓延しています。
今年の通常国会で、①従業員数501人以上の企業、②週の所定労働時間20時間以上、③月額賃金8・8万円以上、④雇用期間1年以上を満たす人を厚生年金の対象者とする法改定を行いました。これにより、新たに25万人が厚生年金加入となる見通しですが、そうした改善措置を実効あるものとするためにも、低賃金や重い保険料負担の解決、雇主の違法・脱法行為の是正、低すぎる給付の引き上げなどが必要です。
日本共産党は、経営が苦しい零細企業などについては社会保険料の軽減制度などをもうけて支援を行うと同時に、違法・脱法行為をなくし、非正規雇用で働く人たちの社会保険加入・厚生年金加入の権利をまもります。この問題を解決するためにも、年金制度充実の2段階の改革と、人間らしい雇用と賃金を確立する民主的経済改革に取り組みます。
●公的年金等控除改悪など“高齢者増税”を見直し、「天引き」をやめさせます
小泉・自公政権が強行した“高齢者増税”を見直します。公的年金等控除を140万円に戻すとともに、所得500万円以下の高齢者には、老年者控除を復活します。
介護保険料や住民税の年金「天引き」の強制をやめさせ、各人の希望で、普通徴収などに変更できるようにします。
●「一元化」の名による負担増・給付減に反対し、制度間の格差をなくして、公平な年金制度へ前進させます
現在の国民年金と被用者年金(厚生年金・共済年金)には給付水準に大きな格差があり、また、被用者年金の保険料には事業主負担がありますが、国民年金にはありません。民主党などはこの間、こうした「制度間格差」を解消するためとして、年金制度の「一元化」をさかんに言いたててきました。
民主党政権は今年、国民年金と被用者年金を統合し、「最低保障年金+所得比例年金」の“2階建て”に再編する「年金一元化」案を打ち出しました。しかし、その内容は、“年金財源”を名目に国民に消費税増税を押しつける一方、自営業者には大幅な保険料値上げを押しつけ、被用者の多数が受けとる年金額は現行制度より引き下げるなど、“負担は重いほうに、給付は低いほうにあわせる”大改悪案でした。そこで提案されている「最低保障年金」は、満額になるのは40~60年後で、「所得比例年金」の保険料が未納だと受け取れずに無年金となるなど、「最低保障」の名に値しない、看板倒れの案に過ぎません。この「一元化」案には、国民から批判が噴出し、結局、国会に法案提出されることなく頓挫しました。
また、民主・自民・公明は、先の通常国会で、厚生年金と共済年金を統合する「被用者年金一元化法案」を可決しましたが、その中身も、厚生年金はなんら改善せず、ただ、“保険料を高いほうに、給付は低いほうに揃える”というだけの改変です。
これらの事態は、社会保障削減路線の枠内で、保険者組織を統廃合する「改革」案では、国民が願っている“公平な年金制度”はつくれないことをしめしています。
日本共産党は、「一元化」の名による負担増・給付削減に反対し、年金制度間の格差をなくして、公平な年金制度をめざす改革を進めます。そのために、一番、現実的な方法は、国民年金や厚生年金の低い部分の底上げをはかり、全体として格差を縮小していくことです。「第1段階」で低年金の重点的な底上げを行い、「第2段階」で最低保障年金を導入するという2段階の改革は、この点でも有効な打開策となるものです。
2、「医療崩壊」を打開し、だれもが安全・安心の治療を受けられる医療制度を確立します
●2段階の改革で窓口負担を軽減し、医療崩壊を立て直します
窓口負担が「現役世代=3割、高齢者=1~3割」となり、全国の多くの自治体の国保料(税)が所得200万円(給与年収換算311万円)で年間30万円を超えるなど(4人家族)、医療への重すぎる負担に国民が悲鳴を上げています。国民負担が大幅に増えたにもかかわらず、地域の医療体制は後退・弱体化し、深刻な医師・看護師不足や地域の拠点病院の消失など、「医療崩壊」が重大な社会問題となっています。これらは、「医療費削減」の名で、国民の命と健康を切り捨てる政治が続いてきた結果にほかなりません。減らされ続けてきた国の医療関連予算を増やし、公的医療保険・公的医療体制を建て直すことは待ったなしの急務です。
ところが、民主・自民・公明は、70~74歳の窓口負担を1割から2割に引き上げ、国保の「広域化・都道府県単位化」の名による国保料(税)値上げを全国の自治体に押しつけようとするなど、さらなる負担増・給付減をねらっています。「社会保障制度改革推進法」で“保険医療の範囲の縮小”が「改革」の重要課題とされ、TPP(環太平洋連携協定)参加をにらんで混合診療の全面解禁や医療への営利法人参入が議論されるなど、「国民皆保険」の変質・解体をねらう動きも急速に進行しています。
日本共産党は、こうした社会保障解体の策動とたたかい、すべての国民が公的医療保険に加入し、必要な医療はすべて公的に保障するという「国民皆保険」をまもります。「社会保障充実、財政危機打開の提言」で打ち出した2段階の改革によって「医療崩壊」を打開し、だれもが安全・安心の医療を受けられる医療制度に改革します。
改革の「第1段階」では、「社会保障再生計画」にもとづき、以下のような施策を実行します。
――医療費の窓口負担を引き下げる。子ども(就学前)は国の制度として無料に、現役世代は国保も健保も2割に、高齢者はすべて1割にする。
――国民健康保険料(税)を軽減する。当面、国の責任で年間1人1万円引き下げる。国民健康保険証の取り上げをやめる。
――後期高齢者医療制度を廃止し、老人保健制度に戻して高齢者の医療差別をなくす。
――診療報酬を引き上げる。高すぎる薬価や医療機器にメスを入れ、医療充実にまわす。
――公的病院の統廃合を中止し、計画的に医師・看護師などの養成数を増やす。
改革の「第2段階」では、ヨーロッパ諸国など多くの諸国で当たり前となっている窓口負担ゼロの医療制度へ、抜本的拡充をはかります。
これらの財源は、応能負担の原則に立った税制・財政の改革、国民の所得を増やす経済の民主的改革によって確保します。
●窓口負担の軽減をすすめ、先進国では当たり前の“窓口無料”をめざします
「現役世代=3割、高齢者=1~3割」という窓口負担に国民が悲鳴をあげ、深刻な受診抑制が起こっています。東京大学医科学研究所の調査によると、糖尿病など慢性疾患の患者のうち、「医療費の支払いに負担を感じる」という人は7割、「治療の中止を考えた」という人は4割にのぼります。東北大学の研究者の推計でも、がん患者のうち、経済的理由で治療中断や治療内容の変更をしている人は、少なくとも数万人にのぼります。
ヨーロッパ諸国やカナダでは、公的医療制度の窓口負担はゼロか、あっても少額の定額制です。日本も、1980年代までは、「健保本人は無料」、「老人医療費無料制度」でした。高すぎる窓口負担の軽減は今、日本医師会をはじめ医療界の一致した要求となっています。
日本共産党は、「構造改革」路線で壊された社会保障を立て直す「社会保障再生計画」にもとづき、窓口負担の引き下げを図ります。子ども(就学前)は国の制度として無料とし、現役世代は国保も健保も2割に引き下げます。高齢者は、今の制度で「現役並み所得者」とされている人も含め、すべて1割とします。政府や民自公が計画する70~74歳の窓口負担の2割への引き上げに反対します。
次の段階では、安定した財源を確保し、“窓口負担ゼロ”の医療制度に前進していきます。
●後期高齢者医療制度をすみやかに廃止し、差別の仕組みを撤廃します
後期高齢者医療制度は、国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込んで負担増と差別医療を押しつける悪法です。2008年の制度導入後、すでに2回にわたる保険料値上げが強行され、多くの高齢者が怒りと不安の声をあげています。
民主党は野党時代、この制度のすみやかな廃止を公約していましたが、政権獲得早々、それを反故にしました。民主党政権は、「高齢者医療制度の見直し」案として、高齢者を形式上は国保加入としつつ、“高齢者国保”と“現役世代の国保”を「別勘定」にし、差別や負担増を押しつけつづける案を打ち出しました。しかし、自民・公明との協議のなかでこの“看板の架け替え”案も棚上げとなり、差別制度は温存・継続されています。
日本共産党は、後期高齢者医療制度の“温存”も“看板の架け替え”を許さず、すみやかに悪法を撤廃し、元の老人保健制度に戻します。老人保健制度は、高齢者が国保や健保に加入したまま、現役世代より低い窓口負担で医療を受けられるようにする、財政調整の仕組みです。後期高齢者医療制度を廃止して老人保健制度に戻せば、保険料の際限ない値上げや別枠の診療報酬による差別医療はなくなります。高齢者が75歳になった途端に家族の医療保険から切り離されることもなくなり、65~74歳の障害者も、国保や健保に入ったまま低負担で医療が受けられます。そのうえで、減らされ続けた高齢者医療への国庫負担を抜本的に増額し、保険料・窓口負担の軽減を推進します。
●国民健康保険の再建・改革をすすめます
〔高すぎる国保料(税)を緊急に引き下げる〕
市町村が運営する国民健康保険では、所得200万円で30万円を超える負担をしいられるなど、各地の国保料(税)が住民の支払い能力をはるかに超え、住民生活を脅かす重大要因となっています。高すぎる国保料(税)を完納できない滞納は加入世帯の2割を超え、ペナルティとして正規の保険証を取り上げられ、医療費の全額を負担する「資格証明書」や、期限を区切った「短期保険証」に置きかえられた世帯は150万世帯を超えています。
ところが、民主党政権は、国保「広域化」の名で、市町村の一般会計繰入による国保料(税)の軽減をやめさせ、さらなる「保険料の引上げ」を行うよう自治体に指示しています。民主・自民・公明3党が強行した「社会保障制度改革推進法」でも、医療保険制度への公費繰入を制限する条項が盛り込まれるなど、住民負担増が志向されています。政府や民自公は、市町村が住民負担を軽減すると「格差」が生まれ、「広域化」の妨げになるといいますが、“悪い方”にあわせるのが「格差是正」という、とんでもない言い分で、値上げを押しつけるなど許されません。
日本共産党は、国の責任による国保料(税)値下げを提言します。「社会保障再生計画」にもとづく「第1段階」の改革で、国保料(税)の「応益割」部分を、1人1万円(4人家族なら4万円)、国の支出で引き下げます。所得にかかわらず“頭割り”で課される「応益割」の引き下げは、国保料(税)の逆進性を緩和し、中・低所得者の負担を軽くするものです。そのうえで、減らされつづけた国保の国庫負担を増額して国保料(税)の高騰を抑え、“だれもが払える国保料”に改革していきます。
〔生活困窮者からの国保証取り上げをやめる〕
国保料(税)滞納を理由に、保険証を取り上げられて「資格証明書」に置きかえられた世帯は30万世帯を超えています。自治体当局に「短期保険証」を「留め置き」にされて、事実上の無保険状態とされている人、「派遣切り」などで健保を追い出され、国保にも「未加入」で無保険になっている人も多数にのぼります。こうした「資格証・無保険」の人が医者にかかれず、重症化・死亡する事例が全国で多発しています。
国民の命と健康をまもる公的医療保険が生活に苦しむ人に追い打ちをかけ、医療を奪うことなどあってはなりません。保険証取り上げの制裁措置を規定した国保法第9条を改正し、保険証取り上げをきっぱりとやめさせます。
〔強権的な取り立てをやめ、住民の生活と権利まもる行政に〕
「収納率向上」のかけ声のもと、生活苦や経営難で国保料(税)を滞納せざるを得なくなった人に対する無慈悲で強権的な差し押さえが全国で大問題となっています。
大阪市では、苦しい生活と経営のなかでも、役所と相談して分割納付をしている人に、突然、“滞納分を全額払わないと財産を差し押さえる”という督促状が送られ、受験生の子どもを持つ自営業者に“学資保険の差し押さえ”が通告される事例が起きました。給与・年金などの生計費相当額は法律で差し押さえが禁止されていますが、銀行に振り込まれた瞬間からそれを「金融資産」と扱って差し押さえる、行政側の脱法行為も各地で横行しています。“年金を差し押さえられた高齢者が自殺”“銀行口座を凍結されて、年金を引き出せなくなった高齢者が餓死”“営業用の車を差し押さえられ、商売ができなくなった業者が一家心中”など、痛ましい事件も続発しています。
こうした無慈悲な保険証の取り上げや強権的な取り立ても、国の指導によるものです。厚生労働省は、自治体の担当者を集めた「研修会」で、預金・給与の口座凍結や家宅捜索による物品の押収、介護サービスの停止や自動車のタイヤロックなど、強権的取り立ての“模範例”をしめしています。
総務省が出した税徴収の委託推進方針を受け、国保税・住民税などの徴収業務の民間委託が広がり、「地方税回収機構」などの広域機関が徴収を担うようになったことも、住民の実情から離れた、無慈悲で機械的な取り立てを横行させている一因です。
過酷な取り立てにもかかわらず、国保料(税)の収納率は80%台に落ち込み、史上最低の状況が続いています。負担が重すぎて払えないという根本問題を改善しないまま、脅迫まがいの督促や差し押さえを強化しても、住民を追い込み、苦しめるだけです。
人権を無視した強権的な取り立てを自治体に奨励する行政指導をやめさせます。住民の生活実態をよく聞き、親身に対応する相談・収納業務に転換するべきです。14・6%というサラ金なみの延滞金に減免制度を適用し、改善をすすめます。自治体が一人ひとりの住民の実態に即した相談・収納活動ができるよう、国として支援を強めることも必要です。
〔低所得者の負担減免を推進する〕
低所得者にたいする国保料(税)の減額・免除制度を拡充します。現行制度にも、失業者で収入が激減した人への「所得割」の減額措置や、災害・盗難・事業不振など「特別な事情」で所得が減った人に自治体の判断で国保料(税)を減免する仕組みなどが法定されていますが、適用を受けられる人は限定されています。急激な収入減におちいった人はもちろん、広範な低所得者を対象とした減免制度を国の責任で整備します。
国庫負担の増額で国保料(税)全体を引き下げつつ、“低所得者に重い”国保料(税)の算定方式を見直し、“所得に応じた”国保料(税)に改革します。
この間、各地で、住民運動と日本共産党の論戦を力に、国保料(税)の値下げや低所得者への独自減免が実現しています。住民の生活破壊をくいとめ、滞納の増加を防ぐため、一般会計の繰入や基金の取り崩しなど独自の努力を行うことが求められます。
政府・厚生労働省は、2012年の通常国会で、市町村国保の給付を事実上、都道府県単位に統合していく法律をとおしました(実施は2015年度)。しかし、たとえ法律が施行されても、国保の保険者は引き続き市町村であり、住民の負担軽減のために、一般会計から繰り入れることは禁止・制限されていません。日本共産党は、一般会計繰入の解消と住民負担増をせまる国の圧力をはねのけ、幅広い住民と共同し、自治体における国保料(税)引き下げ・低所得者減免を推進します。
国保法第44条にもとづく窓口負担の減免措置を推進します。生活悪化で窓口負担を払えない人が急増し、医療機関の未収金も増大するもと、政府もこの間、国保法第44条の活用をいわざるを得なくなり、2010年9月、自治体が減免を行った場合に半額を国が負担する措置を打ち出しました。しかし、そこで厚労省がしめした減免制度の基準は、対象者を、▽災害・廃業・失業等による収入激減、▽現在の収入が生活保護基準以下、▽預貯金が生活保護基準の3カ月分以下、▽入院治療を受けている人――などに限定し、減免期間も1カ月ごとの更新制で標準期間を3カ月に設定するなど、きわめて不十分なものでした。
国が、全国の約半数の自治体で未活用だった減免制度の積極推進を言いだし、費用の半額負担を行うようになったことは前進ですが、すでに減免制度を実施している自治体の住民からは、「国が基準を出したことで、かえって制度が縮小しかねない」という危惧の声もあがっています。国は基準を見直し、幅広い生活に困窮者に対応できる制度に改善・充実をはかっていくべきです。
〔国庫負担の増額で国保制度を再建する〕
国民健康保険を安心できる医療制度とするには、根本的な制度改革が必要です。低所得者が多く加入する国保は、もともと適切な国庫負担なしには制度が成り立ちません。しかも、この間、大企業の雇用破壊で失業者や非正規労働者が国保に流入し、「構造改革」によって自営業者や農林漁業者の経営難・廃業が加速するなど、“国保加入者の貧困化”が急速に進行しています。いま、国保加入者の7割以上は、非正規労働者などの「被用者」と、年金生活者・失業者などの「無職者」です。
ところが、歴代政権は1984年の国保法改悪を皮切りに、国保に対する国の責任を次つぎと後退させてきました。1984年から2007年の間に、市町村国保の総収入に占める国庫支出金の割合は約50%から25%へ半減し、それと表裏一体に、一人当たりの国保料(税)は3・9万円から8・4万円へと2倍以上に引きあがりました。
日本共産党は、国保への国庫負担を計画的に増額し、国保料(税)の値下げ、“だれもが払える国保料(税)”への改革、窓口負担の引き下げをすすめます。
〔国保の「広域化・都道府県単位化」の名による制度改悪に反対する〕
民主党政権は国保「広域化」を叫び、2010年に国保法を改定して、都道府県に市町村国保の「広域化等支援方針」を策定させ、市町村国保の「財政改善」「収納率向上」などを指導する仕組みが導入されました。2011年には、それまで自治体によって異なっていた国保料(税)の「所得割」の算定式を、「旧ただし書き方式」に統一するため、地方税法と国保法施行令が改定されました。そして、2012年には、「保険財政共同安定化事業」の対象医療費を“すべての医療費”に拡大する国保法改定が行われました。「保険財政共同安定化事業」は、都道府県の国保連合会のもとに基金をつくり、市町村国保が保険財政から拠出金を出しあって、高額医療費(レセプト30万円以上)の給付費を交付していく制度です。この制度の対象が「レセプト1円以上」になれば、国保財政の給付部分は実態として“都道府県単位”となります(制度以降は2015年度から)。
厚生労働省は、国保「広域化」を推進する「通達」のなかで、都道府県下の国保料(税)を「均一」にするため、市町村の一般財源の繰り入れは解消し、保険料値上げに転嫁せよと号令をかけています。これでは、国保料(税)は高騰するばかりです。保険者の「広域化」が、問答無用の税・保険料徴収、機械的な給付抑制、住民無視の組織運営につながることも、後期高齢者医療制度や介護保険の広域連合によって、すでに実証されています。政府のねらいは、国保を都道府県単位に寄せ集め、“医療を受ければ保険料に跳ね返り、負担増に耐えられなければ給付を制限する”という、むき出しの保険原理で運営される組織に改編することにあります。そうすれば、国保への国庫負担を抑えたまま、公的医療費の抜本的抑制や自治体行政の効率化・合理化を図れるというのが政府の見通しです。こんな「広域化」は住民にとって何も良いことはなく、国保の危機を深刻化させるだけです。
日本共産党は、市町村国保を解体して住民不在の機構に改編する改悪に反対し、住民の命と健康をまもる社会保障の制度として、国保の再建をはかります。
〔「医療保険の一元化」をどう考える?〕
民主党政権は「医療保険の一元化」を唱えていますが、国庫負担を削減したまま「一元化」をしても、国保の財政赤字が健保に転嫁され、現役労働者の保険料が値上げされるだけで、なんら制度の改善にはなりません。「一元化」を理由に、事業主負担が削減・廃止されれば、国民の負担はさらに増大します。
もともと、医療制度の「抜本改革」として、「医療保険の一元化」めざす方針を打ち出したのは自公政権の小泉政権でした。ねらいは、保険者ごとの全国民を加入させて、さらなる「医療費削減」をはかることでした。こうした旧政権以来の流れを引き継ぎ、「医療保険の一元化」を前提に「制度改革」の論議を重ねても、国民に願いに応える改革案は出てきません。「医療費削減」路線の枠内での保険者組織の改編ではなく、削減された国庫負担の復元で、公的医療保障を立て直すことこそ、求められます。
〔国保組合の独自給付と国庫補助をまもる〕
民主党政権の発足後、建設国保などの国保組合が取り組む、入院費無料化などの“独自給付”を非難・攻撃する、異常なキャンペーンが繰り返され、特別調整補助金の縮小など国庫補助削減の改悪が続いています。国保組合に対する国庫補助率は、市町村国保より低く、建設国保などに「手厚い国庫補助」が出ているという攻撃は事実を偽るものです。建設国保の“独自給付”は加入者が割高の保険料を負担しながら実施している事業であり、そこに国庫補助は入っていません。
公的医療保険は加入者の命と健康をまもる制度であり、窓口負担の軽減は、病気の早期発見・早期治療を促進し、医療費の不必要な膨張を抑えることにもつながります。建設業者・家族が、お金の心配なく医療にかかれるようにする建設国保の取り組みは、制度本来の主旨にかなったものです。
日本共産党は、国の医療予算の削減をねらった卑劣なキャンペーンに反対し、国保組合への国庫補助をまもり、拡充します。
診療報酬の大幅増額で地域医療全体を底上げします
2002〜08年の診療報酬改定で、自公政権が削減した診療報酬は7・68%――年間2・6兆円にのぼります。これが、保険医療に従事するすべての医療機関を経営危機におとしいれ、「医療崩壊」を引き起こす大きな要因となりました。診療報酬の大幅増額による地域医療の立て直しは、医療従事者はもちろん、いまや国民的な要求です。
民主党は09年総選挙で、「累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけた」(「医療政策<詳細版>」)と自公政権を批判し、大幅引き上げを公約しましたが、2010年度の診療報酬は実質、ゼロ改定に終わりました。診療報酬の大幅引き上げが期待された2012年度の改定も、診療報酬の増額はわずか0・004%(16億円増)にとどまり、しかも、2010年度と同様、“表に出ていない薬価削減”と、ビタミン剤投与の一部規制による薬価削減が行われ、実質マイナス改定だったことが明らかになっています。
しかも、2012年度の診療報酬改定では「社会保障と税の一体改革」の具体化として、▽長期入院・亜急性期・回復リハ・慢性期病床への報酬削減、▽DPC対象病院の再編と「効率化」の誘導、▽「7:1入院基本料」の対象選別と要件を満たさない病院への報酬削減、▽在宅支援診療所の「機能強化型」と「従来型」への線引き――などの改定が行われました。いずれも、高度医療を担う大規模病院に重点的に財源を投入し、“退院促進”“介護への移行”を誘導する一方、診療所や中小病院にかかわる報酬を低く抑えていく改変です。医療は、大規模病院だけでは成り立ちません。大規模病院と中小病院、病院と診療所、医療機関と介護施設等が連携して、住民の命と健康をまもっています。今回のように、開業医の経営に打撃を与え、中小病院の淘汰や病床削減を誘導する報酬改定では、「医療崩壊」は加速するばかりです。これでは、「在宅医療の充実」や「医療と介護の連携強化」を求める住民・医療関係者の願いも裏切られてしまいます。
日本共産党は、診療報酬を抜本的に増額し、地域医療全体の底上げをはかります。診療報酬の増額を患者負担に直結させないためにも、窓口負担の軽減が求められます。この点で、日本医師会など医療界が一致して、診療報酬増額と窓口負担軽減をセットで要求し、「医療崩壊」を立て直す国民的共同を呼び掛けているのは重要です。
●TPP参加による「国民皆保険」の解体に反対します
保険診療と自費診療の併用を認める「混合診療」の解禁は、「必要な治療はすべて保険でおこなう」という公的医療保険の原則を崩し、患者の支払能力による「治療の格差」を生みだすものです。医療分野への株式会社の参入は、医療の非営利原則に大穴をあけ、“もうけ本位”の医療を横行させることにつながります。
この間、TPP(環太平洋連携協定)参加をにらんだ“日本の医療への市場原理導入”の動きが活発化し、国民・医療従事者の間に懸念が広がっています。TPPは、「非関税障壁の撤廃」という名のもと、あらゆる分野で「規制緩和」と「アメリカ型のルール」を押しつけるものであり、日本が参加すれば、「混合診療の全面解禁」「株式会社の医療参入」によって国民皆保険が実質的に解体されてしまいます。
日本医師会は今年3月、「TPP交渉参加についての日本医師会の見解―最近の情勢を踏まえて―」を発表し、「TPP参加に全面的に反対する」立場を明確にしました。「見解」は、TPP参加交渉で公的医療保険を直接議題とする交渉が行われていなくても、金融・投資・知的財産などの各分野で、民間保険による医療サービスの現物給付、株式会社の医療参入、薬価や医療技術の規制緩和などが水面下で議題となっていることを指摘。米国が、「内政干渉」まがいの手法で日本に医療市場化を求めてきた歴史も「再確認」しながら、TPP全面反対にいたったと説明しています。
民主・自民・公明が8月に可決を強行した「社会保障制度改革推進法」は、小泉「構造改革」時代ですら政府文書に必ず入っていた「国民皆保険の堅持」を明記せず、「医療保険制度に原則として全ての国民が加入する仕組みを維持する」と言い換えています。その一方で、「保険給付の対象となる療養の給付の適正化」と書いています。これは、〝保険証は配布するが、給付の内容は保障せず、現行より給付を縮小する〟ことです。
日本医師会をはじめ多くの医療団体が、この法文とTPP参加の動きを重ね合わせ、混合診療の全面解禁につながるものと懸念・警戒の声を上げています。こうした政府の動きにたいし、日本医師会が、「国民皆保険」とは、単に国民が公的保険に加入していれば良いのではなく、①公的な医療給付の範囲を将来にわたって維持する、②混合診療を全面解禁しない、③営利企業(株式会社)を医療機関経営に参入させないという「三つの重要課題」がまもられる必要があるという原則を打ち出したことは重要です。
いま、全国各地で地方医師会や医療団体が、TPP反対や医療再建を求める運動にくわわり、活発な活動を展開しています。日本共産党はこうした運動と連帯しながら、TPPに断固反対し、国民皆保険をまもるためにたたかいます。
●医療制度の改悪を中止・撤回させ、公的医療保障を拡充します
〔療養病床削減を中止し、必要なベッドをまもる〕
自公政権は2006年の「医療改革法」で、介護型療養病床を全廃し、医療型療養病床を大幅削減することを決めました。さらに、06・08年の診療報酬改定で、療養病床に入院する患者の「医療の必要度」を区分し、「軽度」とされた人の診療報酬を大幅に引き下げるなど、入院患者の"追い出し"を促進する改悪を強行してきました。
民主党政権は、療養病床削減計画の撤回を公約して政権につきましたが、その公約はまもられず、2010年度の診療報酬改定では、療養病床の診療報酬をさらに引き下げる改悪が実行されました。今年の法改定で、介護療養病床の廃止までの期限は“延長”されましたが、廃止方針そのものは撤回されていません。さらに、2012年度報酬改定では、人工透析患者などの入院日数を「平均在院日数」の算定に加えるなど、慢性期患者を抱える病院の報酬を削減し、入院をいっそう困難にする改悪も行われました。
日本共産党は、「医療難民」「介護難民」を大量に発生させ、患者と家族に多大な苦しみを負わせる病床削減・廃止計画を中止・撤回させ、必要なベッドをまもります。診療報酬や負担増による病院追い出しをやめさせ、慢性期患者の医療を保障します。
〔保険外治療の拡大・医療の営利化を許さず、保険医療を充実させる〕
TPPや「社会保障制度改革推進法」など、「混合診療」の拡大・全面解禁にむけた策動を許さず、「保険証一枚」でだれでも平等に必要な医療が受けられる制度をまもります。
「軽い病気」の治療を保険外にする「保険免責制度」、医療機関が処方する風邪薬や胃腸薬の「保険はずし」など、財界が要求する公的医療保険のさらなる縮小に反対します。安全・有効な治療技術はすみやかに保険適用とする仕組みをつくり、差額ベッド料などの自費負担をなくし、安全で質の高い治療が保険で受けられるようにします。
「株式会社による医療経営」の解禁など、日本の医療を日米大企業の新たな儲け口とするために、国民の命と健康を犠牲にする「医療の市場化」に反対しま
〔健診をゆがめる制度改悪に反対し、改善・充実をはかる〕
2006年「医療改革法」にもとづき、40〜74歳の国民に「特定健診・保険指導」を受けさせ、加入者のメタボリックシンドロームの改善をせまる仕組みがスタートしています。加入者の“受診率”や“メタボ改善率”が低いとされた医療保険には、財政支出増のペナルティが課され、加入者の保険料値上げにつながります。政府が国民に“健康づくりを怠った”というレッテルを貼り、懲罰を課すのは本末転倒です。特定健診の検査項目が「メタボ対策」に特化されたため、従来の健診にあった、病気の早期発見に必要な項目が除外されるなどの問題も発生しています。健診が保険者負担になることで、国保や健保のなかには、住民・労働者に費用を転嫁する動きも起こっています。健診の営利化により、医療保険財政が、健康機器業界やフィットネス産業など「メタボビジネス」の食いものになることへの懸念も広がっています。日本共産党は、「自己責任」の名で健診をゆがめ、国民の健康保持に対する国・自治体の責任を後退させる改悪に反対します。病気の予防・早期発見という本来の主旨にたち、健診の改善・充実をはかります。
〔「医療費適正化計画」による都道府県の医療費削減競争をやめさせる〕
2006年の「医療改革法」により、国と都道府県が5年単位の「医療費適正化計画」を策定し、経済指標を参照しながら給付費抑制を推進していく仕組みが導入されました(第1期計画は2008〜2012年度)。“医療給付費の伸び率を経済成長率以下に抑制せよ”という財界の要求にもとづく制度改編です。各都道府県は「適正化計画」に「老人医療費の抑制」「病床数の削減」「メタボ・予備軍の減少」などの数値目標をさだめ、その達成をせまられます。給付費抑制の目標を達成できない都道府県には、その県だけ診療報酬を低く設定し、医療機関に経営難をしいるなどのペナルティが国から課されます。住民の命と福祉をまもるべき地方自治体を、医療切り捨ての先兵に使う改悪など許されません。日本共産党は、「医療費適正化計画」をはじめ、都道府県・市町村を給付費削減競争に動員する仕組みを撤廃します。
〔協会けんぽの改悪に反対し、中小企業の労働者の医療をまもる〕
中小企業の労働者が加入する協会けんぽでは、健保財政の悪化と保険料の引き上げが大問題となっています。
協会けんぽ(旧政管健保)の最大の原因は、長年にわたる国庫補助削減です。自民党政府は、1992年以来、本来は「16・4%~20%」とされている政管健保への国庫補助率を13%に引き下げ、健保財政を赤字におとしいれてきました。こうした恒常的な財政難の上に、不況・賃下げによる加入者の所得減、高齢者医療への過重な支援金負担などの要因が重なり、保険料の値上げが相次ぎました。
政府は2006年の法改定で、それまで全国単一だった政管健保を都道府県単位の協会けんぽに改編しましたが、これは、都道府県単位で医療費削減を競わせあうという「医療構造改革」路線にもとづくもので、協会けんぽの矛盾はいっそう深まりました。
民主党政権は2010年度、協会けんぽ本体への国庫補助を16・4%に戻しましたが、高齢者医療支援金にかかわる国庫補助は削減するなど、中途半端な対応に終始しており、協会けんぽの財政状況はいまだ改善していません。協会けんぽが、2013年度以降、保険料率の大幅な引き上げを検討する状況となっています。
日本共産党は、協会けんぽへの国庫補助を緊急に20%まで引き上げ、協会けんぽの財政再建、労働者・中小企業の負担軽減にむけた国の支援を強化します。06年「医療改革法」で導入された、保険料引き上げ・給付費抑制の仕組みを撤廃し、中小企業の労働者やその家族に国の責任で医療を給付するという、政管健保の本来の目的・役割をまもる立場から、制度の改革をすすめます。
〔公的医療保障の充実を〕
日本の社会保障給付費の対GDP(国内総生産)比は21・1%で、イギリス(28・2%)、ドイツ(30・1%)、フランス(31・6%)などよりも大きく立ち遅れた水準です。
国民の長寿化や医療技術の進歩によって、医療費が増えることは本来、おそれるべきことではありません。日本共産党は、「医療費削減」の名で患者・国民、医療機関・医療従事者に犠牲を強いる路線を転換し、公的医療保障を拡充します。今年二月の「経済提言」で打ち出した、応能負担の税制・財政の改革、国民の所得を増やす経済の民主的改革によって安定した財源を確保し、減らされ続けた医療への国庫負担を復元・増額させます。
同時に、不必要な医療費の膨張をただすため、高薬価や高額医療機器など医療保険財政の無駄にメスを入れます。予防・公衆衛生や福祉施策の充実に本腰を入れ、国民の健康づくりを推進します。病気の早期発見・治療を進めるためにも、窓口負担軽減が重要です。
●医師不足を解決し、地域医療体制をたてなおします
地方でも都市でも、医師不足が重大な社会問題となっています。根本原因は、「医者が増えると医療費が膨張する」といって医師の養成数を抑制し、日本を世界でも異常な「医師不足の国」にしてきた歴代政権の失政です。そこに、診療報酬削減による病院の経営悪化、国公立病院の統廃合・民営化などの「構造改革」が加わって、地域の拠点病院・診療科の消失が引き起こされています。
民主党は、自公政権の「医療費削減」「医師数抑制」を批判して政権につきましたが、医師増員・確保の抜本策には手をつけず、診療報酬のわずかな「増額」を理由に地域の医師確保の予算を削るなどの対応に終始しています。政府の「事業仕分け」では、国立病院・労災病院に「不採算な病棟の廃止」が要求され、総務省「公立病院改革ガイドライン」による公立病院の統廃合や病床削減も、引きつづき推進されています。
医師数がOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均よりも14万人も少ないという日本の現状からすれば、抜本的な医師増員や医師養成への国の支援が必要です。
また、医学部定員増で医師数が増えてくるのは10年後、20年後であり、現在の医療崩壊を打開するには、削減されつづけてきた診療報酬の抜本的増額、病床削減・病院統廃合の中止、地域医療全体を底上げする医療政策への転換が必要です。これらは医師会など多くの医療団体も一致し、共同が広がっているところです。
日本共産党は、「医師数抑制」「病院淘汰・病床削減」路線を転換し、国の責任で計画的な地域医療の確保と再建をはかります。
――国の予算投入で医師の養成数を抜本的に増やし、OECD加盟国平均並みの医師数にします。そのために、医学部定員をただちに1・5倍化します。医学部の「地域枠」や奨学金の拡充、教育・研修内容の充実をはかります。
――産科・小児科・救急医療などを確保する公的支援を抜本的に強化します。地域の医療体制をまもる自治体・病院・診療所・大学などの連携を国が支援します。
――医療の安全・質の向上、医療従事者の労働条件改善、産科・小児科・救急医療の充実などにかかわる診療報酬を抜本的に増額します。
――医師の公的任用、公募などで医師を確保する「プール制」「ドクターバンク」、代替要員の臨時派遣など、不足地域に医師を派遣・確保する取り組みを、国の責任で推進します。
――勤務医の過重労働を軽減するため、薬剤師、ケースワーカー、助産師、医療事務員、スタッフの増員をはかります。院内保育所や産休・育休保障など家庭生活との両立をめざします。女性医師の働きやすい環境づくり、産休・育休・現場復帰の保障などを国として支援します。
――「公立病院改革ガイドライン」の押しつけをストップします。国公立病院の乱暴な統廃合・民営化、社会保険病院・厚生年金病院・労災病院などの売却をやめ、地域医療の拠点として支援します。
――2004年の新臨床研修制度の導入によって、大学病院の医師派遣機能が低下したことは医師不足が露呈するきっかけとなりましたが、新臨床研修制度自体は、研修医の臨床能力を向上させる改善です。ところが、政府はこれを「医師偏在」の原因だとし、臨床研修期間を実質的に短縮し、これまで医師を育ててきた地域の中核的医療機関が臨床研究を行うことを困難にする制度改変を行いました。日本共産党は、よい良い医師を育てるという臨床研修制度の主旨をまもり、研修内容の充実、受け入れ病院への支援強化、研修医の待遇改善をすすめます。
●看護師不足を解消し、安全でゆきとどいた医療を
看護師の不足、超過密労働、離職者の急増は、医療の安全をおびやかす重大問題です。2006年、国は看護師の配置基準を18年ぶりに改定し、「患者7人に看護師1人」(「7対1」)を配置した医療機関に報酬を加算して、手厚い看護体制を促す仕組みをつくりました。ところが、看護師が絶対的に不足しているうえに、「構造改革」で診療報酬全体が大幅に削減されたため、“看護師争奪戦”が激化し、経営難の中小・地方の病院で看護師不足がいっそう深刻化する事態が起こりました。これに対し、政府は、「7対1」基準の報酬を取得できる要件に「重症度・看護必要度」などを導入しましたが、その要件はきわめてきびしく、現場の負担を増やし、増員の流れに水をさすものとなっています。
本当に手厚い看護体制を実現するには、諸外国に比べて異常に少ない看護師数を抜本的に増やすことが必要です。また、医療機関に「入院日数の短縮」をせまって看護師の過密労働を激化させるなど、給付費抑制のため看護現場に犠牲をしいる医療政策の転換が求められます。看護師の配置基準を満たせない中小・地方病院をさらなる経営悪化に追い込み、選別した病院だけを支援する路線もあらためるべきです。日本共産党は、地域医療をまもり、すべての患者に安全でゆきとどいた治療を保障するため、看護師不足の解決に全力をあげます。諸外国に比べて少なすぎる看護職の抜本的増員、労働条件の改善と地域医療の支援、退職した看護師の再就労支援などで、看護師200万人体制を確立します。
――「7対1」基準の報酬を取得できる病院を限定・選別するのをやめ、施設基準を満たす全病院が継続・取得できるようにします。「7対1」以外の配置基準を満たしているすべての病院にたいしても、診療報酬を緊急に引き上げ、人員体制の確保を応援します。
――看護師の労働条件を改善するための公的支援、診療報酬改革をすすめ、「夜勤は複数、月8日以内」という人事院判定の早期実現、産休・育休の代替要員確保、院内保育所の設置、社会的役割にふさわしい賃金への引き上げなどをはかります。
――政府として「看護師確保緊急計画」を策定し、看護職員の大幅増員へ抜本的対策を講じます。「行革」の名による看護学校の切り捨てをやめ、自治体独自の看護師増員対策をすすめます。看護教育制度の抜本的充実をすすめます。
――退職した看護師の再就労を、国が予算を大幅に増やして支援します。
●医科でも歯科でも、国民に安全・安心の医療を保障するために
〔医療保険財政の立て直し〕
給付費抑制を最優先に、国民に負担増を求め、公的保険を切り縮めて市場原理にゆだねる「医療改革」では、患者の重症化がすすみ、国の医療費は逆に増大するだけです。日本共産党は、減らされ続けた国庫負担を計画的に復元・拡充し、本当に持続可能な医療保険財政の確立をすすめます。
この間、大企業の賃下げやリストラ、非正規雇用への置きかえで健保の収入が減り、不安定雇用の労働者が大量に国保に追いやられたことも、健保・国保財政を悪化させる原因です。1980年度と2008年度を比較すると、国民医療費に占める事業主負担の割合は4%――1兆3000億円分も減りました。医療保険財政を立て直すためにも、大企業に雇用・賃金・保険料負担にたいする社会的責任を果たさせます。
〔高額療養費の改善〕
低所得者や治療が長期間にわたる患者の過重な医療費負担を軽減するため、応能負担の立場にたった、高額療養費制度の改善を緊急にすすめます。
高額療養費制度の所得区分をふやし、負担限度額の上限を、現役世代も高齢者も、通院も入院も大幅に引き下げます。重い病気の患者ほど患者負担が自動的に高くなる、「1%」の定率部分をなくします。70歳未満の通院にも、受領委任払いを導入します。70歳未満の入院費の受領委任払いを徹底し、使いやすい制度に改善します。
限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”にあらため、「治療が月をまたぐと高額療養費が適用されない」という矛盾を解決します。世帯の所得区分ごとに年間をつうじた負担上限額を設け、「同一世帯でも、保険がちがうと医療費を合算できない」問題などについても解決をはかります。
現行では三疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)に限られている「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設します。
対象が限定され、当事者が申請しないと適用されない、高額医療・介護合算制度を抜本に見直します。
〔無料低額診療の拡充をすすめる〕
各地に広がってきている無料低額診療への支援を強めます。現在、無料低額診療では、院外処方の薬剤費が制度の適用とならず、患者が自己負担を強いられる問題が起こっています。薬剤費への制度適用をすすめ、この問題を解決します。
〔感染症対策――インフルエンザ、ヒブワクチン、子宮頸がんなど〕
H1N1型ウィルスによる新型インフルエンザの流行に備え、必要な医療・保健体制を国の責任で拡充・強化します。H5N1型ウィルスによるヒト・ヒト感染の強毒性インフルエンザなど、別種の新型インフルエンザの流行にも備え、抗インフルエンザ薬とプレパンデミック・ワクチンの備蓄量を大幅に増やすなど、医療・保健体制を抜本的に強化します。
はしか対策をすすめます。国の責任でワクチンを備蓄し、追加接種が必要な人には公費助成をおこなうなど、感染・流行を防ぐ、あらゆる手立てをとります。
細菌性髄膜炎の予防のための「ヒブワクチン」「小児用肺炎球菌ワクチン」や、「子宮頸がんワクチン」は、国による公費接種事業が実施されています(事業費の9割を公費負担、国庫負担は2分の1)。国は今年度で事業を終わらせ、来年4月からの無料・定期接種化をめざすとしていますが、現在と同水準の補助が継続される保証がありません。制度の後退を許さず、国の予算による無料・定期接種化をめざします。
厚生労働省の審議会が定期接種化を提言した水痘、おたふくかぜ、成人用肺炎球菌、B型肝炎の4ワクチンについて、国の予算による無料・定期接種化をすすめます。ロタウィルスワクチンの定期接種化の検討をすすめます。
今後も予想される、さまざまな感染症の発生・流行にそなえ、政府が「採算重視」の名で閉鎖・削減してきた100施設・3400床の感染症指定医療機関を復活させ、拠点病院への専門医・看護師の配置、医療機器の整備、保健所の体制強化、ワクチンなどの研究・製造システムの確立をすすめます。
〔子どもの医療費無料化〕
小学校就学前の子どもの医療費を、所得制限なしで無料化する国の制度を確立します。その共通の制度の上に、全国に広がった自治体独自の助成制度をさらに前進させます。子どもの医療費の助成制度(現物給付)をおこなっている自治体の国保に対する、国庫負担の減額調整のペナルティをやめさせます。
〔診療報酬の改革〕
診療報酬は、国民に平等に医療を保障し、“もうけ本位の医療”を許さないための大事な仕組みです。ところが、歴代政権は、医療にかかる国の予算を減らすために診療報酬の仕組みをゆがめ、「医療費削減」の道具にしてきました。現行の診療報酬は、医療従事者の労働を不当に低く評価し、そのことが、中小病院の経営難や医療従事者の労働条件悪化の大きな原因となっています。急性期患者の強引な早期退院を誘導する報酬改定、高齢者・長期入院の"追い出し"を促進する報酬削減、長期リハビリに対する保険給付の制限など、公的医療費の削減をねらったさまざまな報酬操作が、医療現場の矛盾を拡大し、医療従事者と患者の両方を苦しめています。
日本共産党は、医科でも歯科でも診療報酬を抜本的に増額するとともに、「国民皆保険」をまもり、拡充する立場で診療報酬の改革に取り組みます。診療報酬の総額削減、保険外診療の拡大に反対し、安全・有効な治療はすみやかに保険適用とする仕組みをつくります。“安上がり医療”をねらった「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対し、「出来高払い」による給付をまもります。薬・医療機器にかたよった報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革します。
すべての医療機関における基本診療料である初・再診料、入院基本料を適正に評価し、引き上げます。
高齢者や長期入院患者の給付費削減をねらった差別的な診療報酬を廃止します。
地域医療・救急をささえる病院を大幅な減収に追いこみ、病院に「保険外併用療養」の採用をせまる、「総合入院体制加算」を撤回させます。
標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする改悪を許さず、リハビリ日数制限の全面撤回と制度の再構築を求めます。
政府は2008年10月から、脳卒中や認知症の入院患者を多く抱える「特殊疾患病棟」、「障害者施設」に対する診療報酬の減額を強行しました。脳卒中・認知症患者などの“病院追い出し”をねらった改悪を撤回させます。
2006年改定による人工透析の「夜間・休日加算」の引き下げにより、外来の夜間透析を廃止・縮小する医療機関が各地で生まれ、患者が仕事をやめざるをえなくなるなどの事態が続いています。患者負担の軽減をすすめながら、適切な報酬への引き上げをはかります。
2010年4月から、保険請求を電子化している医療機関には、診療明細書の患者への発行が義務化されました。医療の内容を患者自身が知ることは、患者の権利をまもり、医療の安全・安心を高めるために重要です。しかし、現行の診療明細書は、患者がもっとも知りたい医療内容の情報がすべてわかるものとなっておらず、医療機関に煩雑な負担をしいるだけとなっています。情報提供のあり方について、抜本的に見直すことが必要です。
入院中の患者が他の医療機関で受診した場合、▽入院医療機関に支払われる入院料を減額する、▽他医療機関が算定できる報酬の範囲を制限する、▽他医療機関による投薬を当日分に限る――など、2010年度の報酬改定で導入された報酬削減・投薬規制に、医療現場からは「入院患者に必要な医療を提供できない」「医療機関の連携を阻害する」などの批判の声が上がっています。日本共産党の国会論戦などを受け、投薬規制の一部は見直されましたが、入院医療機関への報酬削減、他医療機関の算定範囲の制限、包括払い病床の患者に対する投薬規制は、今も続いています。地域医療の実態とかけ離れ、患者・医療機関の双方に困難をもたらす、不合理な報酬のあり方をあらためます。
〔出産一時金の引き上げと改善〕
出産に要する費用は年々高騰しています。それに見合うように、出産一時金の金額を、大幅に引き上げます。
〔歯科医療の充実〕
政府は、歯科の診療報酬を不当に低く抑え、自費診療・混合診療を拡大してきました。
基礎的な診療行為の保険点数が長年にわたって据え置かれ、新たな歯科技術の保険収載も大幅に遅れるもと、多くの歯科医は経営難にあえぎ、少なくない開業歯科医が「ワーキングプア」となっています。患者は保険だけでは十分な治療が受けられず、高い自費負担に苦しめられています。
歯科医療従事者のねばり強い運動や日本共産党の国会論戦を受け、今次改定では歯科報酬の1・7%引き上げが行われ、基礎的な診療行為や訪問歯科診療にかかわる報酬の是正なども進んでいますが、劣悪な水準の抜本的改善にはいたっていません。歯科診療報酬の抜本的な増額・改革が必要です。
日本共産党は、国民の口腔の健康をまもり、「保険でよい歯科治療」を実現するため、歯科診療報酬の抜本的な増額と改革、歯科医療の充実にむけた支援を進めます。
初診料・再診料の水準を抜本的に引き上げ、医科・歯科間格差を是正します。医科・歯科ともに窓口負担の抜本的軽減を進めます。
歯周病の治療・管理や義歯に関わる包括的・成功報酬型の診療報酬を撤廃し、治療行為を適正に評価する報酬に改定します。画一的な文書提供業務の押しつけをやめさせます。
2010年度の改定では、訪問歯科診療料の算定要件が改悪され、点数が引き下げられました。「同一建物内で複数の患者を診察した場合の減算」「20分未満の診療に対する減算」など、不合理な報酬削減を撤回し、元に戻します。
国民の歯科医療への需要の高まりや、治療技術の進歩に対応し、保険治療の大幅な拡大と保険外治療の解消をはかります。歯科新技術の安全・有効性を確認してすみやかに保険収載とする仕組みを確立し、金属床の部分入れ歯など、実績もあり、広く用いられている治療法は保険給付の対象としていきます。現在、保険で給付されている補綴物の保険給付はずしに反対し、混合診療となっている欠損・補綴の保険移行をすすめます。
歯科技工士や歯科衛生士の役割を、適正に評価する診療報酬にあらためます。入れ歯にかかわる診療報酬の改悪により、歯科技工所の経営難・廃業が加速し、新たに歯科技工士となる若い人を確保できないなどの事態が深刻化しています。一方で、安全や品質に規制のない安価な海外技工物が大量に輸入され、自費診療で使用されています。歯科技工士が安心して仕事を継続でき、歯科医と連携して「よい入れ歯」を保険で給付できるよう、歯科技工物にたいする診療報酬の改善をすすめます。海外技工物の輸入・使用・安全性の実態を調査し、材料・製作者・技工所などの基準を設けて規制をおこないます。
歯科健診の充実など、国民の口腔の健康をまもる取り組みを国の責任で推進します。
〔医療の安全、患者の権利の確立〕
安全な医療は国民の切実な願いです。日本には医療事故を専門に取り扱う公的機関が存在せず、もっぱら警察の捜査に責任追及がゆだねられてきましたが、それでは問題の解決も被害者の救済もはかれません。政府内でも医療事故調査機関の設置が検討されてきましたが、現在、議論は中断され、国会に法案が提出されないままとなっています。日本共産党は、医療事故の検証と再発防止に取り組む第三者機関の設置を早くから提案してきました。国民の願いにこたえ、医療現場の苦難を軽減するためにも、患者・国民、医療従事者の意見を聞きながら、公正中立な調査機関のすみやかな設置を実現します。
分娩時の事故で子どもが脳性まひとなった場合に補償をおこなう「産科医療補償制度」が09年1月から始まりました。補償の対象が限定される一方、見込み違いで巨額の保険料が余っており、その一部が、基金を運営する保険会社に支払われる事態となっています。また、基金の運営は営利企業に丸投げで、透明性・公平性にも疑問がだされるなど、問題の多い制度となっています。現行制度の抜本的見直しをすすめつつ、諸外国のような幅広い医療事故に対応できる無過失補償制度の創設をめざします。
患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「基本法」の制定をすすめます。
医療内容のすべてを反映せず、患者のための情報開示というニーズを満たさない一方、医療現場に負担をしいるだけとなっている、現行の「診療明細書の発行」を見直し、患者に医療の内容をわかりやすく知らせる、情報開示の仕組みを整備します。
〔がん対策〕
日本国民の死因の第1位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、歴代政権は、窓口負担増、保険証とりあげなど、がんの早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。自民党政権が、がん検診にたいする国庫補助を廃止したために、各地で、がん検診の有料化や対象者選別、検診内容の劣悪化などの事態が起こっています。「医療崩壊」が進行するもと、がんの治療・予防の地域格差も深刻な問題となっています。がん対策基本法の主旨にのっとり、どこにいても必要な治療・検査を受けられる医療体制の整備が必要です。国の責任で、専門医の配置や専門医療機関の設置をすすめ、所得や地域にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制を確立します。未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進します。
〔薬害・肝炎対策〕
薬害(肝炎、イレッサ、MMRなど)の解決と被害者救済に全力をあげます。
薬害C型肝炎訴訟の原告・弁護団の運動がみのり、2008年1月、薬害発生と被害拡大に対する国の責任を明記し、血液製剤によってC型肝炎に感染した被害者を救済する法律が成立しました。しかし、救済法では、カルテのない被害者の救済がきわめて困難で、対象となる血液製剤は限定され、先天性疾患の治療や集団予防接種などで感染した被害者は救済対象から外されています。日本共産党は、すべての被害者の救済をはかり、製薬企業にも謝罪・補償・再発防止をおこなわせるなど、全面解決にむけた努力をつづけます。
B型肝炎についても、原告・弁護団の運動がみのり、昨年6月に国の責任を明記した基本合意が成立し、B型肝炎特別措置法が成立しました。しかし、国の体制の不備から個別の患者にたいする和解金の支払いが非常に遅れています。国の体制整備の遅れを解消し、すべての被害者の救済をすすめるとともに、治療費助成の創設や差別・偏見解消の取り組みなど、全面解決にむけた努力を行います。
350万人とも言われるウィルス性肝炎患者の治療推進と生活支援にむけ、肝炎対策基本法のさらなる充実や、「肝炎治療7カ年計画」の拡充を求めます。C型肝炎に対する肝がん予防を目的としたインターフェロン投与や、B型肝炎に対する核酸アナログ製剤の使用などの有効性をすみやかに確認し、必要な検査・治療は迅速に医療費補助の対象としていきます。ウィルス性肝炎を「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」の対象に加え、患者負担を軽減します。「肝炎ウィルス無料検査」の拡充、「肝疾患診療連携拠点病院」の整備、「肝炎情報センター」の機能拡充など、肝炎の早期発見・治療、情報提供、研究体制の充実をはかります。
〔たばこによる健康被害をなくす取り組みを進める〕
世界保健機関(WHO)の総会が「たばこ規制枠組み条約(FCTC)」を加盟国の全会一致で採択し、国会で同条約が衆参両院で承認されるなど、世界でも日本でも、たばこの害についての認識が広がっています。
受動喫煙を防止するため、公共施設・飲食店等における禁煙を推進します。「タバコ規制法」の制定をすすめます。たばこの需要減少や年少者の喫煙防止をはかるため、たばこの価格や課税を引き上げ、税収をたばこの害から健康をまもる施策に充てる取り組みを求めます。
〔医療機関への消費税ゼロ税率適用、事業税非課税・租特法26条の存続〕
保険診療などの医療費は消費税非課税とされていますが、病院や診療所が購入する医薬品・医療機器などには消費税が課税されています。これによって医療費の負担も増え、医療機関の経営も圧迫されています。医療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税が還付されるようにします。
社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置を継続します。租税特別措置法第26条等に規定された、医療機関の概算控除の特例を存続させます。
〔救急医療の拡充〕
救急体制の確保は、人の生死を左右する課題です。この十年間で救急出動件数が65%も増加しているのに、救急隊員数は9%増にとどまるなど、政府の責任放棄が患者の命を脅かし、救急現場の矛盾を拡大しています。さらに、政府は、救急車の有料化、通報段階で患者の「緊急性」を選別して切り捨てる「トリアージ(治療の優先順位の選別)」の導入など、「命の格差」を拡大する改悪を検討しています。日本共産党は20年前から国会でドクターヘリの導入を提案するなど、救急体制の充実をいっかんして要求してきました。救急車の有料化などの改悪に反対し、救急体制の拡充をすすめます。
国の責任で、小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)を現行2765床から、計画的に3000床に増やします。
〔助産師・助産院への公的支援〕
「お産難民」が社会問題となっている今、助産師・助産院の役割はますます重要となっています。ところが、2006年の「医療改革」では、嘱託医・嘱託医療機関を確保できない助産院の開業は認めないとする法改悪が強行され、多くの助産院を廃業に追い込みかねない事態が引き起こされました。その後、政府は対応を一定あらためましたが、事態が完全に解決されたとはいえません。日本共産党は、みんなが安心してお産のできる環境を確立し、助産院ならではの、喜びと満足のある質の高いお産を普及・発展させるため、助産師の養成数を増やし、助産院に対する公的支援をすすめます。助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置づけ、「院内助産所」の設置をすすめるなど、助産師と産科医の連携を国の責任で推進します。
〔在宅医療・介護における駐車問題の解決〕
在宅医療、訪問看護、訪問介護の分野では、一定時間の駐車が避けられませんが、その仕事に従事している人たちは、駐車禁止で取締りを受けることに不安を感じながら仕事をしなければならないのが実態です。 駐車許可を得るには、煩雑な手続きや実態と合わない基準が障害となっている現状を改め、柔軟で実態におうじた道交法上の配慮を求めます。
3.介護を受ける人も、介護をささえる人も、誰もが安心できる公的介護制度をめざして改善をすすめます
介護保険は開始から12年を迎えました。この間社会保障切り捨ての「構造改革」がすすめられた結果、介護保険制度は危機的な状況です。介護保険利用者は増えましたが、家族の負担は重く毎年10万人以上が介護退職をせまられています。老老介護、介護殺人、介護心中など痛ましい事件が絶えません。行き場のない「介護難民」が「寝たきり老人専用住宅」「住み込みデイサービス」を利用せざるを得ません。「介護の社会化(家族が支える介護から社会が支える介護へ)」「利用者本位」という当初のスローガンは、風前の灯となっています。制度の抜本的な見直しが必要です。
2012年法「改正」と介護報酬改定
今年4月施行の介護保険法「改正」や介護報酬改定は、「地域包括ケアの実現」と「持続可能な制度の実現」を掲げ、「給付の重点化・効率化」を本格的に推進しようとしており、「社会保障と税の一体改革」の「第一歩」でもあります。
介護報酬はプラス改定とされているものの、全額国庫負担による1人あたり月1・5万円の介護職員処遇改善交付金が、介護報酬の処遇改善加算に付け替えられた分を差し引くと、実質マイナス改定です。総介護費は抑制され、生活援助の削減や施設給付の縮小、介護職の医療行為の容認などが実行されました。
「地域包括ケア」とは、「身近な地域で、住まいを基本に、医療や介護、生活支援サービス、介護予防がきれめなく提供される体制」です。政府は利用者の、「住み慣れた自宅で医療や介護を受けたい」という願いを逆手にとり、できるだけ病院や施設を使わせず、安上がりな体制を高齢化のピークといわれている2025年までに作り上げることを目標にしています。地域包括ケアの目玉である24時間体制の「定期巡回サービス」の今年度の実施予定自治体は、全国の1割程度にとどまり、3年後も2割しか予定されていません。地域包括ケアの拠点となる地域包括ケアセンターも7割以上は民間委託のままです。地域包括ケア構想の大幅な見直しが必要です。
訪問介護利用者の7割が使う生活援助(掃除、洗濯、調理など)は、単なる「家事代行」でなく、利用者にとって、生きる意欲にもつながる人間らしく安定したくらしを維持する支援です。ところが改定では、基準時間を60分から45分に短縮した上、介護報酬を約2割引き下げました。その結果、「時間が足りず掃除のし残しがある」「調理の時間がなくなり、そう菜やコンビニ弁当になった」「利用者と会話する時間がなく、体調変化に気づきにくい」など、深刻な被害が広がっています。ヘルパーは、細切れ・駆け足介護をせまられ、労働条件の切り下げに直面しています。
この間、共産党議員団の奮闘もあり、川崎市、大阪市などで生活援助の一律の時間短縮を認めない通知を出させるなどの成果も勝ち取られていますが、介護報酬の減額をもたらすという矛盾は解決されていません。日本共産党は、利用者、労働者、事業所と一体となって、生活援助時間短縮の撤回と、大幅な拡充を求めていきます。
デイサービスでは、多数をしめていた「7時間以下」の事業所に平均12%近い報酬引き下げをおこないました。通所や訪問介護では、地域区分の見直しで、何もしなくても数百万円規模の減収になるような事業所も出ています。
施設サービスは、低所得者が多く入所している多床室の報酬が大きく引き下げられ、要介護1、2の基本報酬もより引き下げるなど、低所得や軽度者が施設から締め出されるような改定です。老健施設は、在宅復帰率やベッド回転数が低い施設は報酬が下がる仕組みが初めて導入されました。
報酬引き下げは、介護労働者の離職を促進し、労働者の事業所の存続をおびやかし、利用者の困難をうみだします。加算偏重ではなく、介護報酬本体の適正な引き上げが必要です。
介護職員の医療行為は、たんの吸引、経管栄養が介護職の業務として法律上容認されました。そもそも医療行為は専門的訓練を受けた医療職がおこなうべきですが、不十分な研修体制をしっかり介護職員に保障するように見直すべきです。
日本共産党は、2007年12月に発表した「国民の願う高齢者介護・障害者福祉の実現を−−―深刻な人材不足を打開するための緊急提言」や、2009年2月に発表した「介護保険10年目を迎えるにあたっての提言」、そして2010年には介護保険制度を検証する、見直しにむけた利用者、事業者、自治体アンケートに取り組み、現在の介護保険の枠組みにとらわれず、誰もが安心して利用でき、安心して働ける介護制度への抜本的な見直しのために国民の協力・共同の輪を広げることに力をつくしてきました。そのとりくみは、要介護認定の改悪を一部撤回させたことをはじめ、自治体独自の解釈で利用制限をできる「ローカルルール」をやめさせるなど、大きな役割を担ってきました。
日本共産党は以下のような改革にとりくみます。
国庫負担割合を10%引き上げ、負担軽減とサービス充実などを両立します
保険料値上げか、サービス切り下げかという介護保険の根本的な矛盾を打開するには、国庫負担割合の引き上げで財源を確保することが不可欠です。国庫負担割合を10%増やし(在宅は25%から35%へ、施設は20%から30%へ)、公費負担割合を当面60%にすることで、国として介護保険料・利用料の減免制度をつくることをはじめ、高齢者の負担をおさえながら、介護サービスの充実、家族介護の負担軽減、介護労働者の処遇改善などに取り組みます。
将来的には、国庫負担割合を介護保険がはじまる前の50%にまで引き上げることで(公費負担割合75%へ)、高齢者の経済的負担の軽減と、介護内容の充実、介護労働者の処遇改善などを抜本的にすすめます。介護の財源を口実とした消費税増税には反対します。
所得の少ない高齢者も安心して利用できる制度に改善します
国として、実効性のある保険料の減免制度をつくります。高齢者の保険料のあり方を全国単一の所得に応じた定率制など、支払い能力に応じた負担にあらためていきます。利用料は、将来は無料(10割給付)をめざし、当面は在宅サービスでも施設サービスでも減免制度を抜本的に充実させます。
介護保険料は今期月平均4972円となり、もはや年金生活者には限界です。そもそも約3人に2人が住民税非課税という高齢者に高い保険料を求めることに無理があります。国庫負担を増やすなかで介護保険料を値下げするとともに、すみやかに低所得の高齢者の利用料を無料にし、保険料は国としての減免制度つくります。食費・居住費の全額自己負担をやめさせます。
要介護認定を廃止し、現場の専門家の判断で適正な介護を提供する制度へ
2009年の要介護認定の見直しにあたっては、日本共産党が暴露した内部文書によって、そのねらいが「介護とりあげ」にあったことが明らかになりました。現在も、更新する人が軽度に変更される事態は続いており、改善はまったなしの課題です。
利用者の実態をふまえずに、機械的に必要な介護までとりあげる要介護認定と利用限度額は廃止し、ヘルパーやケアマネジャーをはじめとした現場の専門家の判断で適正な介護を提供する制度に改善させます。
高齢者の身近な相談相手・専門家として、利用者の声を中立・公正な立場から代弁できるようにケアマネジャーを支援・育成します。ふさわしい介護報酬や研修などを保障します。介護予防プランの作成をケアマネジャーの担当にもどし、介護報酬も引き上げ、高齢者が自分の担当のケアマネジャーから一貫した支援が受けられるようにします。
「介護とりあげ」をやめさせ、その人らしい生活を保障する介護制度へ
2005年の大改悪による「軽度」と判定された人に対する訪問介護や福祉用具利用などの「介護とりあげ」を元に戻します。また、「ローカルルール」として、自治体の乱暴な「介護とりあげ」の背景となっている、国の給付適正化事業のあり方を抜本的に改め、ヘルパーやケアマネジャーなどの判断で、利用者の人間らしい、その人らしい在宅での生活を保障するために、介護の現場の実態に応じて、柔軟に適切なサービスが提供されるようにします。
「介護の社会化」に反する、同居家族がいる場合の調理・洗濯・掃除などの生活援助の利用制限は、国の責任で基準を示して、キッパリとやめさせます。
いわゆる「院内介助」の規制が、自費サービスなどを生み、高齢者の医療を受ける機会を奪っていることは重大です。医療機関内では「院内のスタッフにより対応されるべき」という国の通知を撤回することをはじめ、医療機関の内部や、必要ならば利用者が受診しているときに医師の指示などを一緒に聴くこともふくめて、要介護者の通院介助を保障するようにあらためます。
「生活援助」と「身体介護」の区分を廃止、一本化して、利用者に必要な介護を適切に保障するとともに、ヘルパーの待遇改善もはかります。
待機者解消へ5カ年計画で計画的な基盤整備の取り組みを進めます
地域の介護をささえる核となる特養ホームや、生活支援ハウスなどの計画的整備、ショートステイの確保、グループホームや宅老所、小規模多機能施設への支援など、在宅でも施設でも、住み慣れた地域で安心して暮らせる基盤整備をすすめます。国による自治体への低い数値目標のおしつけをやめ、基盤整備への国庫補助を復活・充実する、都市部での介護施設やグループホームなどの用地取得への支援など、特養ホームの待機者を解消するための、緊急の基盤整備5カ年計画をすすめます。
高齢者施設の火災事件の教訓を踏まえ、275平方メートル未満の小規模なグループホームなども含めてスプリンクラーのような初期消火設備や自動火災報知装置などを設置するために国の補助を抜本的に拡充するとともに、なによりも「火事をおこさない」ために、夜間の職員の人員配置をふやし、職員の定着をはかることなど、介護労働者の処遇改善などをすすめます。
「コムスン事件」の反省を生かし、非営利の介護提供者を支援するとともに、民間事業者については適切な介護が提供できるかなどを事前に審査できるようにあらためます。特養ホームへの営利企業の参入拡大には反対します。
医療と介護の連携をすすめます。療養病床の廃止・削減に反対します
医療が必要な高齢者が、介護施設やショートステイなどを利用できないという事態が広がっています。特養ホームやグループホームなどでも、医療行為は医療保険の適用を認めるなど、医療と介護の連携を強め、どこでも必要な医療と介護が受けられるように改善します。介護従事者にたいする医療にかかわる研修なども充実させます。現在は介護保険の利用に結びつかないとまったく報酬の対象にならない、高齢者の退院などの相談にのっているケアマネジャーなどの働きを評価する仕組みをつくります。
自公政権が決定し、民主党政権のもとでも引き継がれてきた療養病床の廃止・削減計画に反対し、その医療施設が地域で果たしてきた役割をまもり、地域における慢性期医療を充実します。介護と医療の連携の土台である地域医療をまもります。
介護職員の処遇改善をすすめ、介護従事者の確保をすすめます
介護職は、人の命や人生をあずかる専門職です。「派遣切り」をはじめ解雇された労働者を"右から左に"介護の現場にもってくればよいというような発想の対策はまちがっています。処遇や研修体制を現場の要望を踏まえて改善し、国の責任で介護職の養成にとりくみます。公費負担で研修や教育が受けられるように、時間や費用を負担する仕組みをつくります。
介護職員が生活設計を描けるような賃金水準を目標として設定し、その計画的な実現をめざすとともに、介護職一人月4万円賃金アップの実現を国庫負担の投入で求めます。そのためにも、介護報酬の引き上げとあわせた国庫負担割合引き上げ、利用料・保険料の値上げにつながらない対策をすすめます。
サービス提供責任者が常勤で配置できるように、介護報酬に位置づけます。施設の人員配置基準を利用者の重度化がすすんでいる実態に合わせて3対1から2対1に改善させ、それにみあった介護報酬にあらためます。24時間・365日の在宅介護体勢を整備するために、夜間の訪問介護は複数のヘルパーの派遣を保障できるように改善します。現在の地域計数と人件費率をかけあわせる介護報酬の算出式は、とりわけ大都市部の物価や賃金水準からかけ離れたものになっており、地域の物価や賃金水準を反映した介護報酬にあらため、中山間地でも大都市部でも安心して介護が提供できるようにします。介護保険の手続き・指導・監査などを改善し、書類作成などの簡素化をはかります。
介護労働者の労働条件を改善し、早急に150万人の介護従事者を養成・確保して人材不足を解消します。
自治体が高齢者福祉にたいする公的責任をはたせるようにします
福祉事務所や保健所の機能強化など、保健・福祉・公衆衛生などの自治体の取り組みを再構築します。地域に暮らす高齢者の生活を行政がつかみ、総合的にその生活をささえていくために、地域包括支援センターを公費で運営し、機能を強化するなど、自治体の取り組みを充実させます。
介護保険だけで高齢者の生活を支えることには限界があり、行政の高齢者福祉を充実させます。介護予防や高齢者の保健事業などは、介護保険から取り出して、再び公費で運営するようにあらためます。介護・医療・福祉などの連携をすすめ、国の財政保障に裏付けられた自治体の取り組みによって、高齢者の健康づくりをすすめます。介護のなかでも、民間での対応が難しい人には自治体が介護を提供するなど、積極的な役割をはたせるようにします。認知症に対する支援を強めます。家族介護者へのサポートを充実します。
介護保険のいっそうの改悪に反対します
民主党政権のもとで、介護制度の充実の国民の願いは裏切られ、大改悪をされました。「社会保障と税の一体改革」では、「給付の重点化・効率化」を本格的に推進し、「施設から在宅へ」「軽度から重度へ」と給付体系を再編しようとしています。
2012年度創設の「介護予防・日常生活支援総合事業」は、自治体の判断で要支援者の予防給付の利用が制限され、訪問介護を保険給付からはずし、ボランティアなどに委ねることができます。軽度者や合計所得200万円以上の「高額所得者」とみなし利用料2割への引き上げや、施設の多床室入所者から室料負担を求めることなどもねらわれています。
日本共産党は2009年の要介護認定の見直しのときにも、ねらいが給付費削減にあることを示した内部文書を暴露しました。今回の生活援助の時間削減の根拠とされたいい加減な調査の暴露も、「しんぶん赤旗」のスクープでした。これからも国民のみなさんとともに、公的介護保障制度の充実をめざします。「介護保険だけがのこって、高齢者の生活が崩壊する」ような、介護保険のいっそうの改悪はキッパリとやめさせるために力をつくします。
4.生活保護、児童扶養手当などのきりさげを中止させ、貧困の解決にとりくみます
必要な人すべてが受けられる生活保護に改善を
生活保護制度は、「最後のセーフティー・ネット」であり、その水準は、国民の生存権=「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を具体化したものでなければなりません。
生活保護受給は約212万人・約155万世帯(2012年7月時点)と過去最高を更新し続けています。年収200万円以下の給与所得者が1000万人にもおよび、3人に1人が非正規労働者です。芸能人の親の生活保護問題を利用した生活保護バッシングが大問題になっています。このことで、生活保護が必要な人が自殺に追い込まれた事件もおきています。受給者の中には、外出を控えたり、精神的に追い込まれている人もいます。政府は、「不正受給」のキャンペーンを最大限に利用して、生活保護制度の改悪・削減をねらっています。しかし、実際の不正受給は金額にしてわずか0・6%(2010年)にすぎません。問題なのは、生活保護が必要な人が受けられていない現実です。不正受給は、現行の法律できっちり対応します。
捕捉率(生活保護基準未満の低所得世帯のうち、実際に保護を受給できる世帯の割合)は、たったの15・3%(2007年度)です。国として捕捉率を向上させる年次目標を設定し、生活保護法にも違反した行為や無法な指導をやめさせ、必要な人がきちんと生活保護を受けられるようにします。生活保護は国民の権利であることを広く知らせる活動を、国と自治体ですすめます。「年越し派遣村」で注目を集めた、「ワンストップサービス」を継続し、どの窓口からでも必要な人には生活保護にアクセスできるようにします。急迫した人々には即時対応できる制度に改善します。安価で入居できる公営住宅の整備や就労支援など、生活支援を強めます。
社会保障制度改革推進法や「生活支援戦略」の中止を
強行された「社会保障制度改革推進法」では、生活保護の生活扶助、医療扶助の給付水準の「適正化(切り下げ)」をすすめ、「正当な理由なく就労しない場合には厳格に処罰する措置を検討する」としています。また、厚生労働省は、「生活支援戦略」を打ち出し、過酷な就労指導、プライバシーを侵害し生活全体を福祉事務所が管理すること、実質的に扶養を保護受給の要件にすること、調査・指導・罰則の強化などを提唱しています。こうした改悪は、現行の権利としての生活保護制度を、戦前の「お恵み」の制度に引き下げていくものであり、具体化を即刻中止すべきです。
生活保護受給者の「働ける層」の増加が問題視されますが、その層にあたる生活保護の「その他」世帯は2割にも満ちません。その中の55%が50歳以上で、20歳代はわずか5%です。うつ病などの精神疾患のある人もおり、年齢だけで「働ける」とすることには無理があります。やるべきは生活保護の切り下げでなく、最低賃金を含めた雇用環境の改善や社会保障の拡充です。
自治体の保護行政の改善を
今年1月、札幌市白石区で、40代の姉妹が「餓死・孤立死」するという痛ましい事件が起こりました。福祉事務所に3回も足を運んだのに、いろいろ口実をつけて、申請もさせず、こうした事故が起こったことに、関係者は衝撃を受けています。自治体によっては、受給希望者に申請書さえ渡さない違法で非情な行為もみられます。違法な「水際作戦」や、「保護辞退届の強要」の実態を国が責任をもって調査し、すぐにやめさせます。「生活保護の実施要領」を生活保護の支援にとりくむNGOやNPO、保護受給者の意見を取り入れて改善し、自治体に徹底します。
保護基準・給付の抜本的改善を
自公政権の社会保障削減路線のもとで、生活保護の給付は、老齢加算の廃止や、持ち家を持つ高齢者に不動産を担保にお金を貸し付けて、それを使い切るまでは保護を受けさせない「要保護世帯向け長期生活支援資金=リバースモーゲージ」導入など、さまざまな改悪にさらされてきました。
老齢加算の廃止は、保護を受ける高齢者の生活に大きな打撃を与え、取り消しを求める「生存権裁判」も起こされています。2010年6月14日の福岡高裁では、老齢加算の廃止を「正当な理由のない保護基準の不利益変更にあたり違法」とする判決が下されました。政府はこの判決にならい、緊急に老齢加算を復活させるべきです。日本共産党は、老齢加算の復活、リバースモーゲージの中止など、改悪された制度を元に戻します。
生活保護基準は、非課税限度額や就学援助、公営住宅の家賃など、各種制度の目安・基準となっており、生活扶助基準の引き下げ、級地再編などの制度改悪は、低所得層全体に大きな打撃となります。生活保護基準の改悪に反対し、水準の引き上げをはかります。
「働く貧困層」をはじめ、必要とするすべての国民が利用できる生活保護制度とするため、保護基準や運用、利用方法など抜本的に改善・拡充します。
国と地方の負担割合を改善することをはじめ、国の財政支出を増やします。国の責任でケースワーカーを大幅に増員し、過重になっている担当件数を減らすなどの待遇改善をはかります。保護受給者の中には、今までの苦しい生活や孤独な暮らしが続いたことから、精神的に追い込まれていたり、緊急の対応が必要な人もいます。ケースワーカーの専門性を高めます。「暴力団対策」と称して、警察官OBを受け付けに配置することが大問題になっています。そのために、国が予算措置さえおこなっています。こんなことをすれば、保護が必要な人が窓口相談に行くことさえ委縮してしまいます。ただちに中止します。
生活保護受給者を食い物にした「貧困ビジネス」が全国で横行しています。住居や食事を実態とかけはなれた高額料金で提供し、さまざまな名目をつけて保護費をほとんど"ピンハネ"する悪質業者や団体の野放しを許さず、実効性ある規制づくりに取り組みます。こうした「貧困ビジネス」の背景には、行政が住居を失った人や窮迫した人たちに「住む場所」を提供していなかったり、生活保護を受給しても、保証人がいないためにアパートが見つからないという現実があります。行政として責任をもって住む場所を保障するようにします。
子どもの貧困問題の解決にとりくむ
政府が2009年に発表した子どもの貧困率は14.2%であり、ひとり親家庭では54・3%にもおよびます。親が貧困であるがゆえに、子どもがまともな教育が受けられず、貧困から脱却できないという「貧困の連鎖」が大問題になっています。国として責任を持って貧困の実態調査をおこない、当事者や支援団体の協力も得ながら、貧困の解決のための体制を整備します。
就学援助の拡充を……義務教育の子どもの給食費・学用品代・修学旅行費などを援助する就学援助利用者は年々増加し、2011年度は全国で約156万人(2011年度)が利用し、史上最高でした。国が2005年に、生活保護に準ずる世帯の国庫補助金を打ち切り、一般財源化してしまったことで、支給額や基準を厳しくしている自治体が広がり、生活保護世帯の利用者は増えているものの、準要保護世帯は減っています。準要保護世帯への国庫補助金を復活・拡充させます。
児童扶養手当の削減を撤回する……児童扶養手当は、2010年から支給されるようになった父子家庭を含めて、約100万人が受給しています。2002年、自民・公明・民主によって、支給開始から5〜7年で手当額を最大2分の1まで自動的に削減するという仕組みは、国民の世論と運動を受けて「凍結」されています。しかし、「就業している」「求職活動など自立を図るための活動中」などの証明書類を提出しなければ、減額されてしまいます。
「自立支援」の名で児童扶養手当を削減し、ひとり親家庭の困窮に追い打ちをかける制度改悪は撤回するべきです。手当削減を決めた法律条項をすみやかに撤廃し、受給条件の緩和、支給額の拡大など、制度の改善・拡充をすすめます。「勤労意欲」を証明させる書類は廃止し、提出書類を簡素化して、受給世帯の不安と負担を解消します
学費の無償化など教育費負担の軽減、子どもの医療費の無料化を推進する……「16、子ども・子育て」をご覧ください。
5.社会保障の給付削減をねらい、国民のプライバシーを危機におとしいれる社会保障共通番号の導入に反対します
民主党政権は、「社会保障と税の一体改革」の一環として、国民一人ひとりに背番号をつけ、社会保障や税の負担・給付の記録を国が一元管理する「社会保障共通番号」の導入をねらい、今年の通常国会に法案を提出しました(衆院解散により廃案)。
「社会保障共通番号」の導入を要求してきたのは財界です。日本経団連は2000年代から、一人ひとりの国民が納めた税・保険料額と受けとった給付額を比較できるようにし、“この人は負担に比べて給付が厚すぎる”などと決めつけて、医療や介護の給付を抑制・削減することを提言してきました。
財界が主張するような「共通番号」が導入されれば、社会保障は自分で納めた税・保険料に相当する“対価”を受けとるだけの仕組みになってしまいます。「共通番号」の導入をテコに社会保障全体を“自己責任”の制度に後退させ、社会保障にたいする国の財政負担、大企業の税・保険料負担を削減するのが政府と財界のねらいです。「共通番号」導入にともなって国の税金・社会保険料の徴収業務が“統合”され、機械的な徴収や無慈悲な滞納制裁がさらに横行することも懸念されます。
日本共産党は、社会保障を民間の保険商品と同様の仕組みに変質させ、国民に負担増・給付削減を押しつけるための「共通番号」導入に反対します。社会保障を“自己責任”にかえる策動を許さず、国民の権利としての社会保障をまもります。
政府が国民一人ひとりに生涯変わらない番号をつけ、多分野の個人情報をコンピューターに入力して行政一般に利用すること自体も、重大な問題を持つものです。
本来、個人に関する情報は、本人以外にむやみに知られることのないようにすべきものであり、プライバシーをまもる権利は憲法によって保障された人権の一つです。
政府が導入をめざす「共通番号」は、既存の「住基ネット」などとは比較にならない大量の個人情報を蓄積し、医療・福祉・介護・労働保険・税などあらゆる分野で活用させ、公務・民間にかかわらず多様な主体にアクセスを可能とするものです。これが導入されれば個人情報が“芋づる式”に引き出され、プライバシーを侵害される危険性が高まることは明らかです。
日本弁護士連合会は、2007年10月に発表した「『社会保障番号』制度に関する提言」で、「米国の社会保障番号(SSN)がプライバシーに重大な脅威を与えていることは広く知られている」「あらゆる個人情報がSSNをマスターキーとして検索・名寄せ・データマッチング(プロファイリング)され、個人のプライバシーが『丸裸』にされる深刻な被害が広範に発生している」「SSNの身分証明性を悪用されて、『なりすまし』をされたりする被害も広がっている」と指摘し、日本への「社会保障番号」導入に反対を表明しています。
実際、アメリカでは、「社会保障番号」の流出・不正使用による被害が全米で年間20万件を超えると報告されています。同様の制度がある韓国でも、06年、700万人の番号が流出して情報が売買され、大問題となりました。
また、今回、導入が推進された「共通番号」が、データ管理を国から委託される企業に、国費をつうじて巨額の利権をもたらすことも問題視されています。
日本共産党は、個人の人権を脅かす策動を許さず、国民のプライバシー権をまもるために全力をつくします。
6.原爆被爆者施策の抜本的な改善をすすめます
核兵器廃絶と原爆被害への国家補償をもとめ、長年、たたかいつづけてきた被爆者は、この間の原爆症認定集団訴訟のとりくみによって、2度にわたり認定基準を改善させ、2009年には政府との間で訴訟全面解決のための確認書が締結されました。新規の認定者数は倍加しましたが、それでも被爆者手帳保持者の2%にも及びません。しかも民主党政権のもとで、確認書の実行がすすまず、これまでの裁判の結果や新基準に照らしても問題のある認定却下が少なくなく、新たな訴訟もおこされています。
現在、厚生労働省の「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」で議論が続いており、被爆者代表からは制度を抜本的に改定する提言が提出されています。矛盾の多い原爆症認定制度を、被爆者の実情・要求を基礎に、法改正を含め早急に改善するため尽力します。
政府がいかに被爆の実相を直視せず、原爆被害を矮小化してきたかは、原爆症認定集団訴訟でも明らかになりました。「ふたたび被爆者をつくるな」という訴えを原点に、核兵器廃絶の声が世界に大きく広がった今、「核抑止力」「核の傘」から脱却し、被爆国としての国際的な責任をはたすとともに、原爆被害に正面から向き合い、政策の根本転換をはかるべきときです。国民に原爆被害・戦争被害の「受忍」を強いる政策をとり続けることは許されません。
いまこそ被爆者施策の抜本的改善、原爆被害への国家補償に踏み切るべきです。被爆二世対策、また海外に住む被爆者が日本に住む被爆者と同等の援護措置を受けられること、被爆地域拡大について被爆実態に見合った被爆者手帳交付条件の見直しを進めます。
7.ハンセン病元患者にたいする保障を充実させます
全国には13カ所の国立ハンセン病療養所があります。入所者は約2000人であり、平均年齢は82歳をこえて、高齢化と身体の不自由が年々すすんでいます。2001年の「隔離は違憲」とした熊本地裁判決、ハンセン病問題対策協議会での「基本合意」「確認事項」にもとづいた運動がおこなわれ、08年6月には、療養所の具体的な維持対策を求めた「ハンセン病問題基本法」が成立しています。法の趣旨が一日も早く実現されなければなりません。日本共産党は、「基本法」にふさわしい入所者の処遇改善や職員体制の充実を一刻も早く実施し、生活環境が地域から孤立することなく、安心して豊かな生活を営むことができるよう必要な措置を講じることを、国会質問でもとりあげ、国に申し入れてきました。
緊急に入所者の医療・生活保障を拡充し、不足している医師、看護師、介護職員の確保・増員をはかることが必要です。そのために、国家公務員の定員削減計画からハンセン病療養所を除外するべきです。重症化している入所者の夜間介護体制の充実をすすめます。退所者給与金の停止をおこなうことなく、退所者が安心してかかることのできる医療制度を確立します。賃金職員の差別的処遇の抜本的な改善をはかります。
療養所ごとに「将来構想」づくりがすすめられています。東京・多磨全生園では、敷地内に今年7月、保育所が開設しました。国は、自治体とともに入所者の願いを反映する療養所を実現するため、着工の予算を確保し、積極的で万全な支援と保障につとめるべきです。
ハンセン病に対する偏見、差別はいまだに克服されてはおらず、隔離政策から105年の今、政府がなぜ隔離政策をとったのか、その隔離政策とは何であったのか、検証結果を広く国民に知らせ、二度と同じ過ちを繰り返さないための啓発活動を積極的に講ずることを求めます。
8.中国からの帰国者に社会的支援を確実におこないます
さきの戦争で犠牲になった中国「残留孤児」「残留婦人」たちが国の謝罪と生活支援を求め、全国で訴訟に立ち上がった結果、改正「中国残留邦人支援法」による支援給付金などの制度ができました。しかし、国は終戦間際に多くの国民を中国東北部に置き去りにし、その後も長期にわたって支援を怠ってきたことへの真摯な反省と謝罪をしていません。そのために、支援金の給付水準は、「安心した老後を送りたい」という願いにこたえるものとはなっていません。残留孤児本人が死亡した場合、配偶者に年金がなく給付費の加算など支援が必要です。2世と同居しやすくするため、同居2世の収入を理由に支援給付をカットしないことや、中国渡航期限(2カ月以内)の緩和などを求めます。配偶者や二・三世も含め、国が「孤児」たちに約束した「日本に帰ってきてよかったといえる支援策づくり」を、人間としての尊厳にふさわしく、確実におこなうことを強く求めます。
9.シベリア・モンゴル抑留者の実態調査、遺骨収集を確実に
シベリア特別措置法にもとづき、終戦直後、旧ソ連、シベリアやモンゴルに抑留され、強制労働に従事させられた元抑留者に、特別給付金が支給されました(期限は今年3月末、支給実績は6万8847件)。
しかし、まだ課題は山積みです。シベリア特別措置法は、政府に対して強制抑留の実態調査等について基本方針をつくることを義務づけました。基本方針は策定されましたが、その内容はこれまでの延長でしかありません。元抑留者の強い願いである真相究明や、実態調査、資料保存、追悼の実施、そして2015年までにおこなうとされている遺骨収集などを抑留関係者や内外の幅広い研究者の力を結集して、確実に実施するよう強く求めます。