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日本共産党

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赤旗

11 障害者・障害児

障害者・障害児の全面参加と平等を実現します

1、障害者自立支援法は廃止し、総合的な「障害者福祉法」を制定します

 自公政権が強行した障害者自立支援法の施行(06年4月)から3年が経過しました。09年は附則に書かれた見直しの年にあたります。福祉サービスや自立支援医療(更生、育成、精神通院医療)に導入された原則1割の「応益負担」が、この制度の根本的な矛盾・欠陥であることが、ますます明らかになっています。障害者が人間としてあたりまえの生活をするために必要な支援を「益」などとして負担を課すという「応益負担」は、憲法や福祉の理念に反します。重い負担のために、サービスの利用を抑制せざるをえなくなった障害者も出ています。

事業所に対する報酬単価の引き下げや日払い化で施設・事業所の経営は苦しくなり、廃園に追い込まれた施設もあります。「福祉は人」なのに、福祉労働者の離職や労働条件の悪化が深刻になっています。このままでは、障害者福祉の基盤が崩壊しかねない深刻な事態です。

 こうした現状にたいして、史上空前の運動で"障害者自立支援法を見直せ"と立ち上がった障害者団体の努力などにより、政府も利用料軽減等を含む「特別対策」や「緊急措置」を実施せざるをえなくなりました。政府・与党は3月に「改正」障害者自立支援法案を提出しましたが、本格的な審議のないまま、廃案になりました。「改正」法案では、「応益負担」の強い批判を受け、実態は現状のしくみを踏襲するものの、法律の条文を「応能負担」に変えざるをえませんでした。

いま、全国で障害者やその家族62人(09年6月現在)が、自立支援法の「応益負担」は憲法に反するなどと12地裁で訴訟を起こしています。そもそも障害者福祉や医療に負担を課すことは、障害を自己責任にしてしまうことです。いくら負担軽減をおこなっても、障害者やその家族の不安をとりのぞくことはできません。

日本共産党国会議員団は06年から毎年、全国障害児者施設・事業所の協力でアンケート調査を実施し、3回にわたる「緊急要求」を発表しました。国会議員団の調査(08年)でも、利用料や給食代を滞納する障害者のいる事業所は45%にのぼります。さらに、日本共産党は、昨年12月に自立支援法の3年後の見直しにあたっての抜本的な提言をおこないました。

障害者自立支援法は、「構造改革」路線にもとづき、財政抑制を最大のねらいとしてつくられたものであることが、自民党の障害者問題の責任者の最近の発言からも、あらためて裏づけられています。日本共産党は、障害者の"自立支援"どころか"自立破壊"である自立支援法を廃止し、憲法と国連「障害者権利条約」の趣旨にそった、すべての障害者が人間らしく生活できる権利を保障する、総合的な「障害者福祉法」の確立をめざします。

すべての障害者を対象に――「福祉法」のもとで重大問題の解決を

「福祉法」では、すべての障害者を対象とし、現行の縦割り制度の矛盾である「制度の谷間」におかれている難病・発達障害・高次脳機能障害をはじめとするあらゆる障害者を対象とします。「障害者」の範囲を、ICF(国際生活機能分類)の障害概念にもとづいて、あらためることも必要です。当事者や現場の声にもとづいて「福祉法」の検討をすすめることを強く求めつつ、以下の重大問題の解決をはかります。

利用料は無料に、「応益負担」の廃止

憲法25条の生存権理念に照らせば、本来、障害者福祉や医療に対して負担を求めるべきではありません。世界の障害者福祉にも例のない「応益負担」制度は廃止します。障害者福祉の利用料の無料化をめざし、当面、「応能負担」制度に戻し、住民税非課税世帯等の低所得者は無料にします。給食費やホテルコストの実費負担はなくします。親兄弟・夫婦の扶養義務をはずします。

事業所の報酬の引き上げ

今年の4月から施設・事業所に対する報酬単価が平均5・1%引き上げられましたが、基準より職員を多く配置すれば加算されるなど、いっそう成果主義が濃厚になっており、困難な経営を改善するものになっていません。根本的な解決のためには日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心とした雇用形態ができるよう、報酬を適切に引き上げます。福祉労働者の賃金を、全額公費措置により、月3万円の引き上げをはかります。給食・事務・施設長など削減された職員配置基準を復活させるとともに、グループホームやケアホームの夜勤体制の改善をすすめます。

就労支援、「くらしの場」の保障

 すべての施設・事業所が2012年3月末までに新事業体系への移行をせまられていますが、厚生労働省の調査でも全体で42%しか移行していないなど(09年4月)、「就労第一主義」や報酬の減額などによって、移行をためらう施設が少なくありません。就労が強調されても、障害者の就職を受け入れる企業は依然として乏しく、不況下では真っ先に障害者が解雇されているのが現実です。障害者が働く意義は多様で豊かであり、就労保障とともに日常生活の支援も拡充する事業体系の再検討を強く求めます。入所型の施設や「医療的ケア」を必要とする人たちへの支援策を含め、グループホームなど暮らしを支える多様な選択肢を整えます。小規模作業所を義務的経費の事業とし、十分な財政保障をおこないます。

障害のある子どもの発達を保障する

障害のある子どもの福祉を、児童福祉法にもとづく施設やサービスとして、だれもが気軽に療育を受けられる環境のもと、障害が確定していないグレーゾーンの子どもたちも含めて、発達を保障するよう改めます。給食も療育の一環であり、給食費の実費負担をなくします。障害のある子どもに障害程度区分の導入はやめるべきです。

福祉サービスを利用するにあたっての契約制度は、子どもの成長や発達にたいする責任を保護者にすべて負わせるしくみです。契約制度をやめ、公的責任で適切な福祉サービスが利用できるように改めます。入所施設では、措置と契約制度の世帯の子どもが混在し、措置率の地域間格差も生じており、契約制度の矛盾が顕著になっています。障害による行動の問題、保護者の経済的・精神的な負担、虐待など緊急に対応すべき課題を抱えています。30年間変わらない入所施設の職員配置基準を早急に改め、行政の責任で手厚い生活の場がすみやかに保障されることを求めます。

 学齢期の障害のある子どもたちの放課後生活を保障するよう法制化します。長期休業中の生活を豊かに保障する制度を早急に確立します。

自立支援医療は元に戻し拡充する

自立支援医療の「応益負担」制度を廃止し、原則無料の公費負担医療制度とします。育成医療、更生医療は受けられる治療範囲を拡大するなど、制度の改善をはかります。更生医療制度はリハビリテーション医療の観点から身体障害者手帳所持を条件からはずし、障害の除去・軽減のみでなく悪化を防ぐための治療や予防も含めた医療も受けられるよう対象を拡大します。育成医療は児童福祉法に戻し、障害のある子どもとともに、「放置すれば将来障害が残ると予想される子ども」を今後とも対象に含むようにします。自治体で実施している重度心身障害者(児)医療費助成制度を国の制度として確立します。

障害程度区分認定を見直す

障害程度区分認定は、生活実態や支援ニーズに見合ったものに改善し、真に必要な支援を保障するものとして再構築を求めます。

地域生活支援事業へ国の財政保障を十分に

 日本共産党国会議員団の調査では、障害者の外出などに必要な移動支援事業に対し、利用制限をおこなっている自治体が6割を超えていることが明らかになりました。自治体の姿勢も問われますが、もともと国が補助金を抑制していることが原因です。国は補助金を大幅に増やすとともに、移動支援事業、コミュニケーション事業などの地域生活支援事業の必須5事業は、義務的経費である個別給付事業へ移行させるべきです。

障害者予算を抜本的に拡充する

障害者施策のために、消費税増税はまったく必要ありません。予算のムダを見直し、軍事費にメスを入れることや、大企業・大資産家に対するゆきすぎた減税をただすなどで、諸外国に比べてGDP比できわめて低い(ドイツの3分の1、スウェーデンの7分の1)障害者予算を抜本的に増額します。

在宅や施設サービスを大幅にふやすなど、地域生活の基盤整備を集中的にすすめるため、「障害福祉基盤の緊急整備5カ年計画」を策定し、特別立法を制定します。

介護保険と障害者福祉の「統合」は障害者の実態を無視したもので、また、介護保険料の徴収年齢を引き下げて、国民に負担増を求めることにねらいがあり、反対です。

 真に施設・病院からの地域への移行がすすむように、「精神障害者退院支援施設」の撤回を求めます。精神障害者の相談支援活動や住まいの確保をすすめます。

2、「障害者権利条約」を一刻も早く批准し、国内関連法の見直しを

国連の「障害者権利条約」は、08年5月に正式に発効しました。日本でも、早急の批准が求められています。同時に、条約を批准するためにも、障害者の平等と完全参加の保障をうたった「障害者権利条約」の趣旨にてらして、国内関連法を抜本的に見直すことが不可欠です。日本共産党は、自立支援法をはじめ、以下のような関連法を見直しながら、障害者の声を十分に反映させて、条約を早期に批准するよう求めます。

障害者差別禁止法・障害者虐待防止法の制定をすすめる

 「障害者差別禁止法」(仮称)を制定し、雇用・労働・交通・教育などあらゆる分野で障害を理由とした不当な差別をなくします。裁判規範性をもち、権利侵害などへの具体的な救済策をもりこんだ、実効性のある差別禁止法の制定をめざします。障害者に対する差別をなくし、実質的な平等を保障するためにも、「障害者福祉法」の制定があわせて重要な課題です。

 すべての障害者を対象にした「障害者虐待防止法」(仮称)を制定します。権限ある虐待防止機関を自治体に設置することや、虐待被害回復のしくみの構築など、虐待を許さない実効性あるしくみをつくります。障害者団体などと協力し、実際の虐待事例をふまえて、法律を具体化します。

障害基礎年金の引き上げを

障害基礎年金の支給額を1級・2級ともに大幅に引き上げ、加算対象の子・配偶者の範囲を拡大し、所得保障を抜本的に拡充します。地域で自立した生活ができるよう、「住宅手当」を創設します。無年金障害者への特別給付制度が05年4月から開始されていますが、障害基礎年金と同額に引き上げるとともに、国籍要件のために加入できなかった在日外国人など、支給対象をさらに広げるよう改善をすすめます。特別給付金制度はあくまでも福祉的措置であり、年金制度の枠内での根本的な解決が必要です。国の不作為や年金制度の不備を認めて、障害基礎年金の支給を行うべきです。初診日認定についても、実態に即した運用をすべきです。

雇用、教育、バリアフリー、参政権の保障を

 「障害者雇用促進法」の法定雇用率の厳守を徹底し、一般就労が困難な人のためにヨーロッパ諸国で実施されているような保護雇用制度を創設します。

 「インクルーシブ(包括的:障害のある人もない人もともに)教育」を真に実現するために、教職員の配置の充実など十分な教育予算をとり、環境をととのえます。あらゆる段階で、障害のある子どもの教育の権利を保障し、必要に応じたサポートをおこないます。

 鉄道駅の安全確保のためのホームドア、可動式ホーム柵の普及などをはじめ、交通や建物などのいっそうのバリアフリー化をすすめます。精神障害者に鉄道運賃割引制度を適用拡大します。障害者や高齢者にも使いやすい金融機関にするために、障害者対応のATMの拡充や、窓口対応の改善をすすめます。

 障害者にも選挙情報が確実に届くようにし、障害者の参政権を保障します。手話や字幕をすべての政見放送に義務づけるとともに、広報などの改善、在宅投票制度の拡充、投票所の整備などをすすめます。

 障害があることによる情報格差の解消をすすめます。

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