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日本共産党

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赤旗

【10】税制

消費税など庶民増税を許さず、大企業・大資産家優遇の「逆立ち税制」をただします

2007年6月22日 日本共産党中央委員会

 小泉内閣、安倍内閣のもとで、庶民への増税が繰り返されてきました。配偶者特別控除の廃止、消費税の免税点の引き下げ、発泡酒などの酒税の増税、高齢者への増税、定率減税の廃止など、この間の庶民への増税は、年間の税額にして5兆円以上になっています。国民1人あたりの負担が、年間4万円も増えた計算です。そのうえ政府は、選挙が終わったら、消費税の大増税をねらっています。

 その一方で、大企業や大資産家には、研究開発減税、IT投資減税、連結納税制度の創設、証券優遇税制など、総額で4兆円以上もの減税がおこなわれています。経団連は、さらに5兆円前後の減税となる「法人実効税率の10%引き下げ」を要求し、その財源を問われた御手洗会長は、消費税の増税でまかなうことを露骨に主張しています。

 税は「応能負担」が原則です。所得の少ない人には少なく、所得の多い人にはより多く負担してもらう、そして、生活に必要な最低限の所得をも得られないような人は非課税にするのが当然です。「貧困と格差」が大きな問題となっている今こそ、この原則がいっそう大事になっています。

 それなのに、政府は、ただでさえ生活が大変な庶民には大増税をかぶせて、史上最高の利益を謳歌している大企業や大資産家に減税をばらまくという、まったく逆立ちした税制をすすめてきたのです。そして、それを今後も続けようとしています。

 昨年7月に発表された経済協力開発機構(OECD)の「対日経済審査報告書」は、日本の生産年齢人口の相対的貧困率が13.5%と、OECD平均の8.4%を大きく上回っており、アメリカに次いで第2位であることを示しました。さらに、この報告書では、他の諸国では税制と社会保障の各種手当などの制度によって貧困率が大きく改善されているのに比べて、日本は税制などによる貧困率の改善度合いが最も少ない国であることが指摘されています。

 これは、日本では貧困層にまで高い税負担が課せられているからです。貧困と格差をいっそう広げるような国際的に見ても異常な税制を、このまま続けていいのか──まさに、このことが問われています。日本共産党は、消費税増税をはじめとした庶民増税に反対し、「逆立ち税制」をあらためるために全力をあげます。

住民税増税を中止し、庶民増税に反対します

 6月からの住民税増税で、市町村の窓口に苦情や問い合わせが殺到しています。政府は「所得税が減ったから増税ではない」といいますが、定率減税の廃止による1.7兆円は、確実に増税です。所得税の減った分を差し引いても、増税となる人がほとんどです。税源移譲の分だけを見ても、06年から07年にかけて所得が減少する数百万人の納税者にとっては、最高で9万7500円もの実質的な増税になります。高齢者の場合は、収入は変わらないのに住民税が4倍近くにもなる場合も出てきます。「増税ではない」などという政府の宣伝は、国民をあざむくものです。

増税の影響で、市町村によっては国保料や保育料、さらに高齢者では介護保険料や公営住宅家賃などの負担増にも連動します。こうした増税と負担増の規模は、10年前の消費税率引上げ以来の大きなものであり、消費の冷え込みによる悪影響を心配する声も上がっています。庶民のくらしを直撃する住民税増税の中止を求めます。

 ──住民税の増税を中止します。すでに徴収した分については、「戻し税」方式で国民に返還します。これによって地方自治体の財政に穴が生じないよう、国が責任を持って予算措置を講じます。

 ──定率減税廃止によって負担増になった分について、来年以降は、基礎控除の大幅引き上げなどの所得税制度の見直し(次項参照)により、その負担の軽減をはかります。

 ──所得税から住民税への税源移譲にあたっては、税源移譲の前後で所得が大幅に減った人が増税にならないようにする経過措置を拡充します。

 ──税制の変更が、国保料や介護保険料、保育料、公営住宅家賃などの負担増に連動しないよう、必要な措置をおこないます。

課税最低限の引き上げなど、所得課税の減税をはかります

 OECDの報告でも指摘されたように、ほんらいなら所得格差是正のために役割を果たすべき税制が、日本ではほとんど役割を果たしていません。それは、税を課税すべきでないような貧困層にまで、所得税や住民税の負担が及んでいるからです。いま、独身サラリーマンの所得税の課税最低限は、わずか114万円です。これは、生活保護基準額にも満たない水準です。国際的に見ても低すぎる日本の最低賃金(時給673円)で年間2000時間働いた程度の年収しかなくても、所得税が課税されてしまうのです。これは、「生活に不可欠な経費には課税しない」という「生計費非課税」の原則を踏みにじるものです。

 日本の課税最低限は、国際的にも異常に低い水準です。四年前に、政府は「日本の課税最低限は高すぎる」と大宣伝して配偶者特別控除を廃止しましたが、この結果、サラリーマン4人世帯の課税最低限は、325万円に低下しました。ところが、今では欧米諸国の課税最低限は、日本よりはるかに高くなっています(アメリカ401万円、イギリス423万円、ドイツ558万円、フランス460万円)。

 課税最低限が低い最大の原因は、基礎控除が年間でわずか38万円に抑えられたままになっていることです。月額3万円で、どうして「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)ができるというのでしょうか。日本の基礎控除に相当する金額は、イギリスでは111万円、ドイツでは114万円、フランスでは83万円です。日本でも大幅な引き上げが必要です。

 ──当面、基礎控除を現行の2倍(所得税76万円、住民税66万円)に引き上げます。これによって、サラリーマンの所得税の課税最低限は、単身者で156.6万円、4人世帯で384万円に上昇します。

 ──政府などがねらっている配偶者控除と扶養控除の縮減・廃止に反対し、現行水準をまもります。子育て世帯には、児童手当の拡充によって、負担軽減をはかるとともに、教育費の控除制度の創設を検討します。

 ──120万円に引下げられた高齢者の公的年金等控除の最低保障額を140万円に戻します。所得500万円以下の高齢者については、所得税50万円、住民税48万円の老年者控除を復活します。高齢者の住民税の非課税限度額を復活します。

 ──介護保険の要介護認定を受けている人などが、障害者控除の認定を受けやすくするように、市町村の制度運用の改善をはかります。

 ──家族の年金などから源泉徴収された介護保険料などについても、それを実質的に負担している納税者の所得から社会保険料控除ができるように、改善をはかります。

 ──寡婦控除について、死別の場合だけでなく、離婚の場合やいわゆる「未婚の母」にも適用されるように、制度の改善をはかります。

 ──「住宅は福祉」の観点に立って、家賃に関する税の控除制度の創設をはかります。

中小企業支援税制を強化します

 この20年間に、中小企業は100万社以上も減少しました。ただでさえ経営が大変なところに、消費税の免税点引き下げなどの増税が加わって、「税金が払えず廃業に追い込まれる」という事態も生まれています。大企業ばかりを優遇する税制をあらため、中小企業や零細な事業者を支援する税制に転換します。

 ──事業主、家族従業者の働き分(自家労賃)を経費に認めます。

 ──同族会社の役員報酬の損金算入の制限は、赤字の中小企業にまで一方的に負担をおしつけるものであり、撤回すべきです。

 ──法人税にも累進制を導入し、中小企業の一定範囲内の所得については、現行より税率を引き下げます。

 ──消費税の延納措置を認めるとともに、免税点を引き上げます。

 ──事業用資産については、事業の承継を条件にした相続税の猶予制度を設けます。

 ──納税者憲章を制定し、消費税納税にあたっての仕入控除否認、機械類への償却資産課税の強化、倒産に追い込む差し押さえの乱発など国と地方の過酷な徴税・税務調査をあらためます。

大企業優遇税制をあらためます

 1986年度には43.3%だった法人税率が、42%(87年度)、40%(89年度)、37.5%(90年度)、34.5%(98年度)と、次々と引き下げられ、99年度以降は30%にまで下げられてしまいました。そのうえ、連結納税制度、研究開発減税、減価償却制度の見直しなどによって、実質的な税率はさらに引き下げられています。地方税を含めた実効税率は、現在約40%ですが、大企業の実際の負担率は30%前後でしかありません。

 こうした大企業への優遇税制は、日本経団連などの財界が強く要求してきたものです。自民党はもちろん、民主党も財界の要求にこたえて、競い合って大企業への減税を要求してきました。いま、大企業はバブル期を大きく上回る、史上最高の利益をあげています。企業の社会的責任からいっても、もうけ相応の税負担を求めるのは当然です。法人税率の引き上げや優遇税制の是正による税収増は5兆円程度になりますが、バブル期にくらべて利益が15兆円も増えている大企業にとって、負担できない額ではありません。

 ──大企業の法人税率を、10年前の水準(37.5%)に戻します。法人事業税についても税率を引き上げます。

 ──連結納税制度や研究開発減税、配当益金不算入制度、外国税額控除など、もっぱら大企業が利用している優遇税制にメスを入れ、縮減・廃止をはかります。

 ──アメリカでも導入されている、法人税の累進制度を導入し、大企業には応分の負担を求めます。

証券税制をはじめ大資産家優遇の税制をあらためます

 2003年度から、上場株式の配当所得や、株式譲渡所得の税率は、わずか10%(所得税7%、住民税3%)に軽減されてしまいました。これは庶民の預貯金の利子への税率の半分です。この優遇税制によって、わずか7人しかいない年間所得100億円超の人たちに、最大200億円もの減税がもたらされるという歪みが生じています。額に汗して働いて得た所得には、最低でも15%、最高で50%の税金が課税されるのに、巨額の資産を右から左に動かしただけで稼いだ所得には、たった10%の課税。こんな不公平がまかり通っていたのでは「働くのが、ばからしい」という風潮を広げてしまいます。「株主資本主義」と批判されるアメリカでさえ、株のもうけの税率は20%以上です。この優遇税制をさらに1年延長した安倍内閣の責任は重大です。

 ──世界に例を見ない大資産家優遇の配当・譲渡所得の税率軽減措置を、ただちに廃止します。

 ──引き下げられた所得税・住民税の最高税率を引き上げ、累進税制を強化します。

税のしくみの改善をすすめます

 ──集合住宅の共用部分の固定資産税を軽減します。

 ──現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入をすすめます。

 ──芸術・文化団体への寄付税制を充実するとともに、民間劇場や映画館の固定資産税の減免などの支援をすすめます。

 ──税源移譲によって所得税の最低税率が引下げられたため、NPOなどへの寄附金控除の効果が低所得者では削減されてしまいました。住民税でも寄附金控除を認めるなど、改善をはかります。

 ──政府は、「プライバシー保護」を口実として、高額納税者や法人企業についての公示制度を廃止してしまいましたが、一定以上の金額については、復活します。とくに大企業については「プライバシー」は理由にならず、公開は当然です。

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