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日本共産党

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赤旗

不破委員長の代表質問

衆院本会議

2000年7月31日


日本共産党の不破哲三委員長が、七月三十一日の衆院本会議でおこなった代表質問は、次のとおりです。

私は、日本共産党を代表し、最近のいくつかの問題にしぼって、森首相に質問いたします。

久世金融再生委員長辞任──長年の疑惑を事前に知りながら任命した首相の責任は特別に重大

 まず久世金融再生委員長の辞任の問題です。これは、辞任を承認しただけですむことではありません。今回疑惑として問題になった諸点は、首相が事前に知っていたと聞きます。それなら、三菱信託銀行の利益供与の問題ひとつをとっても、特定の銀行と多年にわたって疑惑ある関係をもっていた人物を、あえて金融問題の責任者の地位にすえた首相の任命責任は、特別に重大であります。いままで、いろいろ弁明がありましたが、他の人がどう説明したかではなく、首相自身がどう考えて行動したかを、経過的に説明願いたいと思います。

 第一に、首相は、任命の時点で疑惑にかかわる事実を具体的にどこまで知っていたのかという点であります。第二に、その事実を知りながら、この人物がこの地位に適切だとなぜ判断したのかという問題であります。第三に、昨日は一転して久世氏の辞任を承認したわけですが、任命権者として、久世氏を任命したことの誤りを認めるのかという点であります。最後に、こういう人物をこの地位にすえたことについて、首相自身の任命責任をいまどう考えているか、またその責任をどうはたすつもりなのか、うかがいたいと思います。

そごう問題──一百貨店の経営破たんの穴埋めに国民の税金をつぎこむ大義名分はどこにあるか

 次に、そごうの問題であります。

 そごうの債権の買い取りを金融再生委員会が決定したとき、国民のあいだには怒りの声が沸き起こりました。その声の本質は、民間の一百貨店の経営の不始末にたいし、国民の税金を九百七十億円もつぎこむことへの疑問であり、怒りでありました。

「正直者がばかを見る世の中になった」――国民の怒りと疑問を代弁したある学者の論説

 当時、ある大学教授が新聞に「異議あり! このままでは資本主義がおかしくなる」という論説を書き、「資本主義社会では絶対許されない」ことだとして、次のように述べていました。

 「阪神大震災の時に、多くのマンションが崩壊したが、住宅ローンを組んでようやくマイホームを持った人に対しても、借金の棒引きはなされなかった。天災で住む場所を失った人たちのローンですら免除されなかったのに、でたらめな経営で悪化した会社に対する債権が棒引きされるというのは、どうみてもおかしい。正直者がばかを見る世の中になってしまったという印象です」(「毎日」七月六日付夕刊)。

 私は、この文章は国民の怒りと疑問をそのまま代弁した批判だったと思います。

 政府は、国民の怒りの声をおそれて、その後にわかに方針を変更し、そごうの経営者をくどいて、「民事再生法」による処理に方式をきりかえましたが、一企業の失敗に国民の税金をつぎこむということには、何の変わりもありません。しかもつぎこまれる税金の額は、今度の方式だともっと増えて、千二百億円をこえることは確実だとみられています。

 私がまず首相に聞きたいのは、この事態にたいする根本的な考え方であります。民間企業である一百貨店が、自分自身の放漫な経営によって失敗し、破綻(はたん)したというのに、その穴埋めに国民の税金をつぎこむという大義名分はいったいどこにあるのかという問題であります。

 そごうが融資をうけた銀行の一つに長期信用銀行があり、その銀行が「一時国有化」されたからだといっても、それは、国民を納得させうる理由にはなりえません。この間に、中小企業の倒産は、昨年を例にとると、一年間で一万五千百三十五件、負債の総額は八兆六百四十億円にものぼっています。そのなかで、そごうの破綻だけを特別扱いして、ここに国民の税金をつぎこむなど、許されるはずがないではありませんか。

不良債権を国民の税金で買い戻す――こんな「特約」を結ぶ権限が政府にはあるのか

 次に、今回の直接の税金投入への引き金となった「瑕疵(かし)担保特約」について聞きたいと思います。

 金融再生委員会は、アメリカの投資グループに旧長銀を売り渡すさい、相手側に都合のよい条件をいろいろとつけたうえ、新生銀行がひきついだ債権のなかに不良債権化する部分が出てきたら、預金保険機構が買い戻す、つまり国民の税金で買い戻すという「特約」を結びました。これが「瑕疵担保特約」であります。この「特約」があるから、新生銀行が融資関係をひきついだ企業の経営が悪化すれば、それが百貨店であろうが、他の分野の企業であろうが、国民の税金のつぎこみに道が開かれることになります。

 この「瑕疵担保特約」は、私は言語道断の契約だと思います。国民の税金をこんな横暴勝手なやり方で使うことは、政府にゆだねられた権限を踏み越えたものであります。

 そこで聞きたい。あなたがたは、いったいどういう根拠、どういう権限にもとづいて、このような「特約」を結んだのですか。そして、この「特約」を結んだことについて、政府としての正当な行為だったと、いまでも考えているのですか。

 「瑕疵担保特約」が適用されるのは、そごうだけではありません。旧長銀から融資関係をひきついだ企業が経営悪化という事態を迎えるならば、国民の税金で債権を買い戻すことが再び問題になります。「瑕疵担保特約」の対象になる企業、つまり、新生銀行が旧長銀から融資関係をひきついだ企業がどの範囲にのぼるのか、企業数や債権の総額などその全ぼうを国会と国民に公表することを、政府に求めたいのであります。

 さらに、日本債券信用銀行の売り渡しについても、同じ内容の「瑕疵担保特約」が問題になっています。その話はどこまで進んでいるのか。いまでも、この「特約」を結んだまま譲渡するつもりなのか。政府の見解をうかがいたい。

銀行の不始末は銀行業界の負担で解決するというルールに立ち戻り、金融秩序のたてなおしを

 さらに、いま起こっているのは、いわゆる「モラルハザード」、経済秩序の文字通りの道義的崩壊の問題であります。どんな経済的失敗をしても、最後には国民の税金で穴埋めがされる、こんなことの横行を許したら、信頼ある経済社会など成りたちませんが、そごう問題はこの風潮の危険な広がりを示しています。「瑕疵担保特約」をきわめて安易に結んだというのも、「どうせ最後は税金で」という許しがたい前提があったからではありませんか。

 このような風潮が横行しはじめた根本が、一昨年からの銀行支援策にあることを、いま正面から見る必要があります。

 当時、焦点になったのは、金融業界の危機をだれの負担で解決するか、という問題でした。私たち日本共産党は、諸外国の事例や、戦前の日本の金融恐慌の事例も示しながら、銀行の不始末は銀行業界全体の負担で解決するというルールを守るべきことを最後まで主張しました。しかし、自民党も他の野党も、国民の税金を投入するしくみをつくることを主張し、結局その線で、金融再生法その他の立法がおこなわれ、破綻銀行を「一時国有化」して国が丸抱えにする仕掛けや、銀行支援のための六十兆円――これはのちに七十兆円に拡大しましたが、こういう枠組みがつくられました。

 このとき、大義名分とされたのは「預金者保護」であり「金融システムの安定」でした。しかし、銀行の不始末の穴埋めに国民の税金を使うというしくみがいったんつくられたら、それは「預金者保護」などの言い分をこえてどこまでも広がり、ついにはそごうのような破綻した銀行から金を借りている民間企業の不始末にも、税金を平気でつぎこむようになってきたのであります。いま、そこに歯止めをかけることを真剣に考えるべきではありませんか。

 「最後は国民の税金で」という危険な風潮の根をたつためには、いまこそ問題の原点に立ち返り、公的資金の投入のしかけを凍結し、結果として新たな税金の投入となるようなことはいっさいおこなわないこと、すでに投入した公的資金についても、最終的には銀行業界全体が負担すること、すなわち、銀行の不始末は銀行業界の負担で解決するという本来のルールに立ちもどる方向で、金融秩序のたてなおしをはかるべき時だと考えます。

 政府にこのことの検討を求めるとともに、この機会に、銀行業界にたいしても、経済社会の道義的な崩壊をくいとめるための真剣な検討を求めたいのであります。

中尾元建設相の収賄──検察まかせにせず、事件の全容と政治的道義的責任を明確にする立場で

 次は、中尾元建設大臣の収賄・汚職事件の問題です。

 この事件は一九九六年に起きました。金丸元副首相のゼネコン収賄疑惑が発覚したのが一九九三年でした。政府・自民党がその反省をしきりに強調している最中に、問題の建設業界との関係でこの収賄事件が起きたこと、しかもわいろの受け渡しに建設省の大臣室まで使われていること、若築建設との宴席には建設省の高級官僚や自民党のいわゆる大物政治家たちがしばしば同席していることなど、これまでに報じられてきただけでも、この汚職疑惑はきわめて深刻で重大な内容を持っています。現在政府の責任者であると同時に、自民党の総裁の任にある者として、どういう考えでこの事件にのぞんでいるかを森首相にうかがいたいのであります。

 そのうえで、今後の対応の問題にすすみます。

 まず、事件は検察の究明の対象にいまなっていますが、検察が追及する刑事的犯罪の問題と、政治的道義的責任の問題とは別個の問題であります。検察が入っているからということで、政治的な全容の解明をなおざりにしがちな空気が一部にありますが、これでは政治の責任ははたせません。いったいここで何が起こったのか、建設省および自民党の他の政治家のかかわりあいを含め、事件の全容を明らかにし、政治的道義的な責任を明確にする政府および自民党の責任は大きいといわなければなりません。決意をもってまず真相の解明にあたることを首相に求めるものであります。

あっせん利得罪の成立は急務、同時に企業・団体献金の禁止に足を踏み出せ

 次に、こういう収賄・汚職事件を防止するためにも、野党が一致して提案しているあっせん利得処罰法案の成立が急務であります。これは複雑な法律ではありません。政府・与党に収賄行為を根絶する意思があるならば、すぐにもこの国会で成立させることのできる法律であります。政府・与党がいま問題先送りの態度をとっているのは、残念のきわみであります。首相としての見解をうかがいたいのであります。

 また、あっせん利得罪の制定は緊急の問題でありますが、これは汚職・腐敗の全体からいえば、部分的な対応策です。汚職事件が起きるたびに、政府は反省の弁をのべるが、汚職・腐敗は一掃されない、こういう状態が、何十年もくりかえされてきました。汚職・腐敗の根絶のためには、やはり、そのおおもととなっている企業・団体の政治献金そのものの禁止が必要であり、そこにいまこそ足をふみだすべきではありませんか。わが党は、この国会にひきつづき企業・団体献金禁止法案を提出しましたが、この問題についての首相の見解を求めるものであります。

公共事業そのものの改革――「事業評価制度」を確立して大型事業の総点検を

 さらに、公共事業をめぐる汚い裏取引などをなくすためには、汚職防止の立法と同時に、公共事業の制度そのものの改革がなによりも重要であります。

 まず、どこの事業に予算をつけるかのいわゆる「個所づけ」や建設業者の選定をはじめ、公共事業予算の執行過程をガラス張りの公開されたものにし、政治家の不当な介入の余地のないしくみを確立することであります。

 より根本的な問題は、事業の内容の問題です。日本の大型公共事業には、第一、事業の目的が定かでない、第二、初めから採算が度外視されている、第三、環境破壊の危険があるなど、最初から重大な欠陥が指摘されながら、毎年予算をつぎこみ続けているという欠陥事業が少なくありません。この点で、ヨーロッパやアメリカではすでに当たり前になっている、住民・市民も参加する「事業評価制度」、これが日本にないということは、重大な欠陥であります。早急に、ヨーロッパ・アメリカなみの「事業評価制度」を確立し、今後着手する公共事業はもちろん、現在進行中の事業についても、一定規模以上、たとえば規模十億円以上の大型事業については必ずこの制度にもとづく総点検を早急におこなうことを提案したいのであります。

 この「事業評価制度」では、第一に、事業の必要性、採算性がどうか、環境への影響がどうか、この三つの角度から、十分な吟味をおこなうこと、第二に、事業が始まってからではなく、計画、事前、事後の諸段階にわたる評価、とくに計画段階での評価・点検を重視すること、第三に、住民市民の参加を制度的に保障すること、この三点がとくに重要であります。
 この改革は、公共事業の重点を国民生活優先の生活型の事業に大きく移してゆくうえでも、むだな大型開発をなくして、財政再建に道をひらいてゆくうえでも、建設的な役割をはたすはずであります。首相の見解をうかがいたいと思います。

消費税を税制の最大の柱にすることを庶民はがまんできない

 次に、消費税の問題です。私は、四月十一日、あなたが首相に就任して直後の代表質問で、財政再建の問題に関連して、「国民全体、とくに低所得者に大きな被害をあたえる消費税増税を視野にいれているのかどうか」について、首相の考えをただしました。そのときのあなたの答弁は、財政再建の中身は「現時点で具体的に申し上げる状況にない」、消費税のことは、今後「国民的な議論によって検討されるべき課題と考える」というにとどまりました。

 それからすでに三カ月であります。財政再建の問題は、これ以上のさきのばしを許さないところにまできています。税制の見直しについては、政府税調が先日、「中期答申」を発表しました。そこには、時期を決めてはいないものの、消費税増税が今後具体化すべき大きな方向として打ち出されており、国民のあいだに大きな不安をひきおこしています。

消費税は原則をふみはずした「弱い者いじめ」の税制

 それは、消費税が、国民の消費を直撃する生活課税であると同時に、生計費非課税の原則も無視して、低所得者からも高額所得者からも同じ税率で税をとりたてる、いわば「弱い者いじめ」の税制だからであります。しかも、「中期答申」もある程度認めざるをえなくなったように、いま日本の社会では、所得の低いものと高いものとのあいだの格差のひろがりが大きな問題になりつつあります。こういうときに、消費税の増額がくわだてられたら、それが国民生活に深刻な被害をあたえることは明りょうであります。

 今回の「中期答申」には税率引き上げの目標は明記していませんが、加藤会長は、まず一〇%への引き上げを目標とする旨、これまでに何度となく発言してきました。これを、今年度の数字にあてはめてみると、消費税の総額は地方税分をあわせて二十五兆円となり、所得税の十八兆七千億円、法人税の九兆九千億円を大きく上回ることになります。これは、「弱い者いじめ」の税金がわが国の税制の最大の柱になることであって、一般庶民、とくに弱い立場の低所得者にとってはがまんのできない事態になることは明りょうであります。

 首相は、所信表明でも、税制を含む「財政構造改革」に触れました。消費税増税をその「構造改革」の視野にいれているのかどうか、あらためてうかがいたいのであります。

緊急に食料品非課税実施を――個人消費のテコ入れになる

 また、わが党は、国民生活をまもる見地から、消費税という税制には反対の立場をとっており、今後、財政再建の進行のなかで、その税率を引き下げ、さらには廃止に向かっていくことを段階的にすすむよう提案してきました。

 いま、消費税の問題で、緊急に必要なことは、多くの国民の切実な要求となっている食料品非課税の実施を決断することであります。これは、個人消費へのテコ入れという景気対策上の要望とも合致するものであります。

 首相に、当面の緊急策として、消費税の食料品非課税の実施への決断を求めたいのであります。

沖縄サミット──米軍基地の重圧に苦しむ県民にどんなメッセージを発信したのか

 次に、沖縄サミットの問題であります。

 私は、七月十八日の党首会談で、沖縄サミットについて、米軍基地の縮小・返還への転機となるような取り組みを首相に求めました。米軍基地が世界でも例がない形で集中し、県民が日々にその被害にさらされている沖縄をわざわざサミットの会場にえらんだ以上、沖縄県民も、そこで基地問題がどう扱われるかを、固唾(かたず)をのんで見守ったことだと思います。サミットの前の日、二万七千人の“人間の鎖”が広大な嘉手納基地を包囲した情景は、沖縄県民の心を表したものとして、世界のマスコミが大きく注目しました。

 しかし、報道されるかぎり、また国会でのあなたの報告を聞くかぎり、沖縄の基地問題への本気の取り組みはまったく欠けていたと言わざるをえません。聞こえてきたのは、沖縄県民にむかって米軍基地の重要性を強調するクリントン大統領の言葉だけでした。

 あなたは、サミットが「平和のメッセージ」の発信の場になったと報告しました。それならうかがいたい。サミットは、基地の重圧になやむ沖縄県民に、どのようなメッセージを発信したのか。二十世紀の最後の年に沖縄でサミットを開き、沖縄に基地をおいている国の大統領を迎える以上、二十一世紀には基地問題を解決するこういう道筋が開かれる、その第一歩として政府はこれこれの問題に取り組むなど、沖縄の悲願にこたえるメッセージの発信の場となるよう努力をつくすのが、日本政府のなによりの責務だったのではありませんか。

新名護基地――アメリカが「15年期限」を拒否する以上、基地建設を放棄するのが当然

 さらに、沖縄でいま論議の熱い焦点となっているのは、名護市での新たな基地建設の問題であります。私たちは、「移転」という名目であろうと、沖縄に新たな米軍基地を建設すること、とくに最新鋭の前線基地を建設することには、一貫して反対してきました。あなたがたは基地建設を推進する態度をとってきましたが、自民党が推薦した県知事が、一昨年の選挙で県民に公約したのは、十五年たったら返還するという条件で基地を受け入れる、こういうことでした。この公約は当然、知事をその条件で推薦したあなたがた自身の公約であります。

 政府には、この公約を実現するために、アメリカ政府と正面から交渉する義務があります。残念ながら、これまで日米間では交渉らしい交渉がおこなわれず、そのことに沖縄現地からは大きな批判があがってきました。その最中でのサミットであります。首相はクリントン大統領とのあいだで、この問題でどういう交渉をしたのか、はっきりうかがいたい。

 大事なことは、使用期限十五年ということは、基地建設を受け入れるかどうかの前提にかかわる問題であって、建設したあとで交渉すればよいという問題ではない、ということです。党首会談でも述べましたが、この条件が成立しないまま基地建設に着手することがあってはなりません。十五年期限を受け入れないというアメリカ側の態度がすでに明らかになっている以上、基地建設そのものをただちに放棄するのが当然ではありませんか。見解をうかがいます。

今回のサミットの費用八百十四億円に強烈な国際的批判があがっている

 なお、サミットについては、そこでのお金の使い方について、国際的に大きな批判があがっていることに、政府は耳を傾けるべきであります。沖縄サミットにかかった総費用は、総理府の集計によると、八百十四億円にのぼるといいます。イギリスのマスコミでは、ドイツやイギリスで開かれた最近のサミット、例えば昨年のケルン・サミットでは費用が約七億円、一昨年のバーミンガム・サミットでは費用約十一億円、これらと比較しながら、その八十倍から百倍にもあたる「ぜいたくで無神経な運営」だったといっせいに批判の声をあげています。なかには、この八百億円があれば、「貧困国の千二百万人の子どもを学校に入れることができた」、こういう指摘もあります。実際、サミットで議題となった世界の貧困国の問題だけでなく、わが日本の不況に苦しむ国民の生活の実態からしても、いささかの浪費も許されないはずの国の財政の実態にてらしても、今回のサミットの開き方は、日本の政府の見識を問われるものになった、と言わなければなりません。サミットの主催者である森首相の見解をうかがいたいのであります。

 いよいよ二十一世紀は、目前にせまりました。世紀が転換する節目とは、過去の慣行に惰性的にとらわれることなく、政治が本来あるべき姿をめざして、大胆な改革に挑戦するところにあります。私はいま、いくつかの問題をとりあげましたが、「国民が主人公」という結党以来の立場をふまえて、日本の政治と経済改革のためにひきつづき努力する日本共産党の決意をのべて、質問を終わるものであります。


不破委員長の代表質問への森首相の答弁(要旨)

 不破哲三委員長の代表質問にたいする森首相の答弁(要旨)は次の通りです。

 (久世金融再生委員長任命にかかわる事実認識)三菱信託銀行関連、霊友会関連の問題については、任命するにあたって過去の報道で指摘された点につき調査をおこなったが、過去の問題であり、現在は問題がないとの説明であり、そのように承知した。大京関連の問題については、任命時はかならずしも十分承知していたわけではないが、その後、久世氏は、本人に支払われたものではなく、政治資金規正法上の問題ではないと説明していると承知している。

 (久世氏任命の理由と任命責任)新内閣の発足にあたっては「日本新生プラン」実現のために適材適所の観点から任命した。結果として辞任をせざるを得ない大臣を任命したということは、まことに残念であり、遺憾であると考えており、深く反省するとともに、国民におわびを申し上げたい。任命権者としての責任については、今後、現在取り組んでいる諸課題にたいし全力を挙げることによりその責任を果たしていきたい。

 (そごう問題についての考え方)いわゆるそごう問題は、経営責任の明確化や、意思決定過程の透明性に十分配慮し、国民の理解を求めることの重要性を示したものとして、重く受け止めている。今回の問題を教訓に、企業の再建はあくまでも自己責任が原則であり、公的資金を用いた破たん処理の過程で債権放棄は安易に認められるべきではないとの認識のもと、関係各方面や国民に十分な説明をしつつ、適切な対応をはかっていかなければならない。

 (瑕疵担保特約について)現行金融再生法の枠のなかで、長銀のすみやかな譲渡や国民的負担抑制の観点から、民法、商法の法理を用い、交渉の過程で盛り込まれたものである。仮に瑕疵担保条項がなければ、譲渡候補先が見出せず、国民負担が相当程度増加することが見込まれたことから、やむをえないものであるというのが金融再生委員会の判断であると考えている。

 (瑕疵担保特約の対象となる企業について)本年二月末を基準日とする予備的な貸借対照表においては、瑕疵担保特約の対象となりうる貸出金の総額は、約七兆九千億円、当該事業先は、約四千四百と承知している。

 (日債銀の譲渡問題について)六月三十日に最終譲渡契約書が締結され、そのなかには、瑕疵担保条項が含まれている。瑕疵担保特約については、これをめぐる現下の各方面からの意見、譲渡予定先のソフトバンクグループの意向をふまえ、今国会における議論や国民の意見に十分耳を傾けるとともに、その理解を深めていただくために、一カ月譲渡予定日を延長する決定がされたところであり、十分な説明がおこなわれ、議論がつくされることを期待している。

 (破たん金融機関の処理について)金融システムは、しばしば経済の動脈に例えられるとおり、経済の基盤をなすものであり、その安定は、わが国経済が景気回復軌道に復帰するためには、必要不可欠なものである。また、預金者等を全額保護するとの観点から、金融機関の破たん処理について、公的資金での対応をお願いしているところである。

 (中尾元建設相の汚職事件)本件は司直の手にゆだねられているが、徹底的な捜査により真相究明がおこなわれるべきと考えており、重大な関心を持って見守りたい。

 (あっせん利得罪について)法制については目的を吟味し、解釈次第で適用範囲が変わることのないよう犯罪の構成要件を明確にする必要があり、十分な論議が必要。この問題については、まずは、各党各会派の議論が基本であり、政府としてはその結果を踏まえ適切に対処したい。

 (企業・団体献金の禁止について)政党への企業・団体の献金については最高裁の判例でも、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄付の自由を持つことは認められており、これを悪と決め付ける論拠は乏しい。

 (公共事業改革について)これまでも透明性の向上に努めてきた。今後も、予算執行過程のいっそうの透明性に努める。公共事業の「事業評価制度」については、ひきつづき制度の確立に努める。

 (消費税増税について)消費税を含む今後の税制のあり方については、公平、中立、簡素といった租税の基本原則等にもとづきながら、今後の少子高齢化の進展など、経済社会の構造変化や財政状況等を踏まえ、国民的な議論によって検討されるべき課題である。いずれにしても歳出面の無駄はないか等について十分、見直しをおこなうなど、国民の理解を得ることなしに増税をおこなうことは、適切でないと考えている。

 (サミットと沖縄基地問題について)沖縄の米軍施設・区域にかんする問題については、サミットという多数国間の場では議論されなかったが、日米首脳会談においてSACO最終報告の着実な実施に取り組むことで一致した。今後とも沖縄県民の負担の軽減に努める考えである。

 (新基地建設問題について)先般の日米首脳会談の際、普天間飛行場の代替施設にかんする使用期限の問題については、「今後、国際情勢の変化に対応して協議していくこととしたい」とのべた。クリントン大統領からは、「在沖縄米軍を含む在日米軍の兵力構成等の軍事態勢については、SACOの最終報告および一九九六年の日米安保共同宣言を踏まえ、日本側と緊密に協議をしていきたい」という旨の言及があった。政府としては昨年の閣議決定に従い、適切に対処していく。

 (サミット経費について)それぞれの開催地によって既存のインフラの整備状況も異なるので、単純に比較するのは適当でない。

 〔補充答弁〕
 不破議員のご質問の中で答弁がもれておりましたので、お答えいたします。
 当面の緊急策としての消費税の食料品非課税の実施は、考えておりません。

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