日本共産党

2007年参院選 個別・分野別政策/社会・教育・人権

【15】科学・技術

科学、技術の調和のとれた振興と、大学・研究機関の充実・発展をはかります

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 科学、技術は、その多面的な発展をうながす見地から、研究の自由を保障し、長期的視野からのつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩に貢献できます。とりわけ、基礎研究は、ただちに経済的価値を生まなくとも、科学、技術の全体が発展する土台であり、国の十分な支援が必要です。

 ところが、自民・公明政権による科学技術政策は、大企業が求める技術開発につながる分野に重点投資し、それ以外の分野、とりわけ基礎科学への支援を弱めてきました。そのため、少なくない分野で学問の継承さえ危ぶまれる事態がうまれています。大学や公的研究機関では、独立行政法人化によって、財政ひっ迫から基盤的な研究費が底をつき、大学間格差もいっそう拡大しています。多くの研究者が、研究費獲得のための業績競争にかりたてられ、自由な、腰をすえた研究にとりくむことが困難になっています。

 安倍内閣の「イノベーション戦略」は、研究現場の深刻な現状を打開するどころか、こうした方向をいっそう強めるものです。大企業の競争力を強めるための新技術にむすびつく研究に競争的資金(評価によって配分する研究費)を倍増するなど、経済効率一辺倒の「大学改革」をはかろうとしています。とりわけ、国立大学の教職員数に応じて配分されている運営費交付金を、競争的資金に変える検討がされていることは重大です。これが具体化されれば、文科省や財務省の試算でも6割近い国立大学で運営費交付金が半分以下に減額されるなど、多くの大学で教育研究の基盤が崩れてしまい、財政力の弱い中小の国立大学は消滅しかねません。新しい産業拠点をつくるために大学の大規模な再編統合がくわだてられていることとあわせ、国民にとって重大な問題です。

 日本共産党は、安倍内閣の経済効率優先の科学技術政策を転換し、科学、技術の多面的な発展をうながすための振興と、大学・研究機関の充実・発展のために力をつくします。

1、基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立します

 人文・社会科学の役割を重視するとともに、欧米に比べても弱い国の基礎研究支援を抜本的に強めます。研究の自由と、安定した雇用を保障する制度を確立するなど、研究者の地位を向上させ、権利を保障します。

 技術開発への国の支援は、「公開、自主、民主」の原則にたっておこなうとともに、大企業優遇ではなく、平和と福祉、安全、環境保全、地域振興など、ひろく国民の利益のためになされるべきです。憲法の平和原則に反する科学、技術の軍事利用に反対します。

 科学技術基本計画を政府がトップダウンで策定するやり方をあらため、日本学術会議をはじめひろく学術団体の意見を尊重して、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立します。

2、大学の基盤的経費を充実し、大学間格差をただします

 わが国の大学・大学院は、学術の中心を担い、地域の教育、文化、産業の基盤をささえる役割をはたしています。大学改革への国の支援は、こうした大学の役割にふさわしいものであるべきです。

 国立大学法人・独立行政法人研究機関への運営費交付金は、毎年1%削減する方式を廃止し、基盤的経費を十分に保障するように充実します。政府が検討している競争的資金化を中止し、財政力の弱い中小の大学に厚く配分するなど、大学間格差を是正する調整機能をもった算定ルールに改めます。また、大学の地域貢献をきめ細かく支援するとともに、国による一方的な再編・統合に反対します。

 高等教育における私立大学の役割を重視し、経常費の2分の1助成を実現するための年次計画を確立します。定員割れした大学への助成金を削減するペナルティをやめ、定員確保の努力を支援する緊急助成をおこなうなど、私立大学の二極化の是正をめざします。大学の設置審査を厳格な基準でおこなうとともに、まともな教育条件を保障できない株式会社立大学の制度は廃止を検討します。

 学費の漸進的無償化を求めた国際人権A規約13条2項B、Cの留保を撤回し、学費の引き下げと、私立大学生への学費助成や私立大学の学費減免への特別助成をはかります。欧米諸国の半分にすぎない高等教育への公費負担(GDP比0・5%)を大幅に引き上げます。

3、大学・研究機関の国家統制を強める独立行政法人制度と大学間競争を見直します

 独立行政法人制度を根本的に見直し、国が各大学・研究機関の目標を定め、その達成度を評価し、組織を再編するなど、大学・研究機関の国家統制を強めるしくみを廃止して、大学・研究機関の自主性を尊重した制度に改めます。

 トップ30の大学院に数億円の資金を投入する「21世紀COE」など、大学・大学院を単位に国が交付する競争的資金は、国の財政誘導による大学間競争を強めるものであり、大学の自主性を尊重するものへ切り替えます。大学、学術関係者などからなる独立した機関を確立し、配分計画を決めるようにします。

4、業績至上主義をやめ、競争的研究費の民主的改革と研究不正の根絶をはかります

 個々の研究者に対して交付される各種の競争的研究費については、科学研究費補助金の採択率を高めるとともに、次の方向で改革します。(1)特定分野や旧帝大系大学に集中するのでなく幅広く大学・研究機関の研究者に配分する。(2)業績至上主義の審査ではなく、研究計画も十分考慮した審査に改める。(3)そのためにも日本学術会議と連携した専門家による十分な審査体制を確立し、審査内容を公開する。

 研究における不正行為は、科学への社会の信頼を裏切る行為であり、根絶しなければなりません。不正の温床となっている業績至上主義の競争を是正するとともに、大学における外部資金の管理を厳格におこない、科学者としての倫理規範を確立し、研究機関や学術団体が不正防止への自律的機能を強めるよう支援します。

5、産学連携の健全な発展をうながします

 産業と学術が連携し、協力しあうことは、互いの発展にとって有益なことです。同時に、大企業の利潤追求に大学が追随するような連携では、大学本来の役割が弱められ、研究成果の秘匿や企業との癒着がうまれるなど、学術の発展にふさわしくない弊害を招きます。

 産学連携の健全な発展を、以下の方向でうながします。

 (1)国からの一方的な産学連携のおしつけでなく、大学の自主性を尊重し、基礎研究や教育など大学の本来の役割が犠牲にされないようにする。(2)企業との共同研究の際、学会などでの研究成果の公開が保障され、だれでもひろく使えるようにする。(3)企業から受け入れた資金は、大学の責任で管理、配分することを原則とし、研究者と企業との金銭上の癒着をつくらない。(4)産学連携を推進する国の事業(共同研究への補助など)は、地域や地場産業の振興にも力を入れ、中小企業の技術力向上への支援を拡充する。

6、大学院生、ポストドクターなど若手研究者への支援を抜本的に強めます

 自民・公明政権が、大学院生を急増させる一方で、大学や研究機関の増員を抑制・削減したために、大学院生やオーバードクター(大学院博士課程を修了しても定職につけない研究者)、ポストドクター(博士号取得後の任期付研究奨励制度をうけている人、略してポスドク)の就職難が深刻化し、「高学歴難民」といわれる人々が急増しています。

 この解決のためにも、大学や研究機関での教員・研究員の増員をはかり、研究者の非正規雇用の拡大を抑えます。オーバードクターへの研究奨励制度の拡充、ポスドクの社会的地位向上、テニュア・トラック制(ポスドク終了後に研究職が保障される制度)の導入を促進します。

 日本共産党は政府に働きかけて、独立行政法人研究所のポスドクの公務員宿舎への入居に道を開きました。非常勤講師の処遇を改善するため、「同一労働同一賃金」の原則の順守や均等待遇にもとづく賃金の引き上げ、社会保険加入の拡大、不当な解雇を許さず安定した雇用を保障することなどをすすめます。

 大学院修了者が産業界も含め広い分野で活躍できるよう大学院教育を充実させるとともに、民間企業が博士号取得者を積極的に採用するような支援策をすすめます。大学院生が経済的理由で研究を断念しなくてすむよう、無利子奨学金の拡充と返還免除枠の拡大、給費制奨学金の導入を実現します。

 女性研究者への昇進差別やセクハラをなくし、出産・育児における休職・復帰支援策の拡充、大学内保育施設の充実など研究者としての能力を十分に発揮できる環境をつくります。大学院生の出産・育児のための休学保障と奨学金制度をつくります。

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