日本共産党

2001年12月7日(金)「しんぶん赤旗」

「文化芸術振興基本法」が成立

公的支援の今後は

石井郁子衆院議員(党国会議員団文部科学部会長)に聞く

介入と差別生まないことが大事 要求にもとづいて具体化を迫る


 国・地方自治体が芸術・文化を振興するよう定めた「文化芸術振興基本法」が成立しました。法律のもつ意味や今後のとりくみについて、石井郁子衆議院議員(党国会議員団文部科学部会長)に聞きました。

行政は条件を整える責任が

 ――この法律はどういう法律ですか。

 石井 戦後、文化財や著作権など個々の法律はありましたが、芸術・文化全般にかかわる基本的な法律がありませんでした。芸術・文化のもつ公共性を大事にし、国民だれもが自由に文化を創造し享受できるよう、行政はその条件を整える責任があります。欧米諸国では当たり前の考えですが、日本の文化行政は、そうした理念をもたずたいへん遅れていました。文化関係者の運動もあり、日本共産党も文化の基本法の検討を掲げてきました。

 今回の振興基本法は、国や地方自治体がどういう考えで振興するのかという基本理念と、振興のための基本施策の柱で成り立っています。基本理念には、国民の文化的権利にかかわる文言がもりこまれ、専門家の地位の向上が記されました。しかし、表現の自由の保障が明記されていないことや、こと細かな施策まで立ち入り、活動の自由を縛りかねない問題も持っていました。

問題点を率直に指摘して賛成

 ――議員立法での提案でしたが。

 石井 法案が衆院に提出されたのが十一月十六日で、私たちは慎重審議を求めましたが、衆参それぞれ半日の審議で三十日には成立というスピードでした。超党派の音楽議員連盟の会合で数回の議論を経たとはいえ、成立するまで中身を知らない文化関係者も多く、「拙速」という声や、法制定を危ぐする声もありました。いちばん大きな問題は、芸術・文化活動に行政が支援するとなると、芸術・文化活動の内容評価に関与する部分が生まれ、行政の介入を生み出しかねないことです。欧米諸国はこの面でもすすんでおり、行政は芸術・文化活動に、お金は出しても口は出さないという原則を確認し、政府とは距離をおいた第三者機関を設けるなどの探究がなされています。

 日本共産党は、国民の文化的権利を保障するために、行政がその条件を整える責務があると考えていますが、芸術・文化活動は自由に営まれるべきものであり、行政が支援をおこなうさいには、芸術・文化活動の内容に介入しないことと、芸術家・団体を差別しないことを原則とすることが大事だと考えています。

 ――国会の審議で明らかになった点は。

 石井 衆議院では私が、参議院では畑野君枝議員が質問しました。

 とくに、表現の自由や行政の不介入が明記されていない問題について、憲法やユネスコの勧告などをふまえ明記することは当然だと迫りました。同時に、文化庁予算において、近年、国が直接重点的に助成する配分が増え、内容評価がすすんでいるという現実から、この明記を迫ったのです。答弁では、法の趣旨として、憲法の表現の自由を前提としているとされ、衆参それぞれの付帯決議で活動内容に不当に干渉しないことが記されました。

 もう一つ、基本理念で専門家の地位向上が記されたのですが、それを実現するためには、社会保障の施策を独自にすすめることが必要です。関係者の実情もふまえて迫りましたが、文化庁は、あらためて関係者の意見を聞き、関係省庁と相談すると答弁しました。

 日本共産党は、このように、法案のもつ問題を率直に指摘したうえで賛成しました。

「効率化」の名の切り捨て許さず

 ――法律ができて今後、行政支援が充実していくのでしょうか。

 石井 振興基本法が成立したことをふまえ、文化関係者の要求にもとづいて、その活用と具体化を迫ることと、行政の不当な介入をもたらさないようにすることが大事だと思います。振興基本法は、国・地方自治体の振興への責務を求めており、施策の柱も決めていますが、各分野で「必要な施策を講じる」とするだけです。先ほどの社会保障についても、具体化はこれからの課題です。税制措置をとることも記されていますが、税制改正をどうはかるかは決まっていません。自由な活動を大いに尊重しながら、関係者の意見もよく聞き、解決の方向をともに考えていきたいと思います。また、行政の不当な介入や差別をうまない具体的な仕組みについて、検討していく必要があると思います。

 もう一つ公的支援をめぐって大事なことは、小泉「改革」によって、文化の切り捨てが大々的に進行しようとしていることです。特殊法人改革の名で、国立・新国立劇場などの事業の民営化・廃止がねらわれ、東京都や大阪府では文化事業を、「効率性」で「評価」、「抜本見直し」がねらわれています。

 「効率化」の名によって文化の切り捨ては許せません。また、「助成」を名目にした芸術・文化活動への介入を許さない、本当に芸術・文化活動の発展に役立つ公的支援を具体化するとりくみが求められてくると思います。

 


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