2001年3月2日〜4月27日まで「しんぶん赤旗」に連載

どうなる!どうする?
1100万人のマンションライフ

(7)長持ちさせるには=下=

日常の維持管理、補修が大切

ハウジングケースワーカー/千代崎和夫さんにきく

 長持ちマンションは長く住もうという意識から生まれます。今回は長生きマンションへの、建物を長持ちさせる工夫について千代崎一夫さんに聞きました。

 マンションの管理は、維持・補修・改修の三つに分けた考え方をします。維持は性能が落ちる速度を遅くする行為、補修は新築時の性能に戻すこと、改修は性能の向上を図る行為です。マンションの維持管理はこれを組み合わせます。

■日常の維持管理

 その一番目は、日常のメンテナンス(維持)です。マンションの維持管理は、日常、毎年、数年、十年という異なった時間の単位の組み合わせで計画します。年度ごとにあるものは管理費で、ほかは修繕費という分け方も一つの考え方です。

 日常のメンテナンスをきちんと行うことは、中期、長期の維持管理のチェックを日常的に行うことにもつながります。

■建物診断

 建物の部位の経年変化の状態を正確にとらえてこそ、どの部分をどのレベルで修繕するのかが決められます。

 コンクリートの強度、アルカリ性であるコンクリートの中性化度、コンクリート壁の塗膜の付着強度などは、数値で確かめられることと目視調査を組み合わせて、診断のためのデータにします。アルカリ性であるべきコンクリートが、ひびを伝わって浸入する水により、早い速度で中性化します。また、中性化度を調査することによって表面を覆っているタイルや塗膜が役割を果たしているかどうかが分かります。水を建物に入れないのが基本です。

 調査にしても診断にしても、その内容は建築物と電気設備と給排水管設備になります。それぞれの専門家は設計者、施工者を問わず自分の分野だけに関心がゆきがちです。住民側が、それぞれの調査、診断を総合的にとらえることを忘れないようにしましょう。

 阪神淡路大震災で亡くなられた方の九割は、住宅がつぶれたことが原因です。マンションも被害を小さくするためには、耐震診断と必要な補強が大切です。まずは診断ですが、自治体によっては助成をしている場合もありますので、大いに活用しましょう。

長期計画

 長期の営繕計画は、部位別の維持管理の個所と時間軸とかけ合わせた表でつくります。計画的な修繕と費用確保を容易にできるようにしたものです。

 短くても三十年程度の営繕計画を立てますが、一定規模以上の工事をしたときのほか数年を経過したときには修正します。

 長期営繕計画は大まかな予定です。自動的に時期がきたら工事を行うのではありません。大規模な工事の前にはその都度、工事の必要度や方法について設計をします。

 大規模な工事は住民の要望を十分に加味しながら内容を決めることが必要です。施工会社を公平に選ぶことも大切なことです。住民の多数が合意をしながら進めるには、建築コンサルタントなどに依頼したほうがよいと思います。

■建て替え

 建て替えを考える前に、どうしたら長く使えるかを十分に考えましょう。住民同士で考えるほか、判断を含めて専門家を頼むときには、長く使おうと思っている専門家に頼みましょう。これが大切なことです。その上で、どうしても使えないと判断したときのみ建て替えということを本気で考えることになります。

 建て替えまでを考えることは、慎重の上にも慎重にと思っています。もし検討のための組織をつくるにしても「建て替え委員会」ではなくて「長生き委員会」、「長寿委員会」といった名前にするくらい慎重にしましょう。

 建て替えを考えたときに問題になるのは費用です。マンションの今までの建て替えは、ほとんどが法的には敷地にもっと建物を詰め込んで建てられるのを利用して建て替えをし、専有面積が広くなり、詰めこんだ部分を売ることで建て直す費用もつくる、いわば残っている環境を切り売りして建て替えるやり方です。これですと、次はどうするのかということになり、どこでも使える解決方法にはなりません。

 購入時と比べれば土地代はかからないのですから、安くできるはずです。私は、持ち家という制度を考えた場合、一戸建て同様に、建て替え費用は、ためるか、ローンを組むなど自分のお金で考えるべきではないかと思っています。


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権:日本共産党中央委員会 
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp