「特定非営利活動法人に対する優遇税制に関する法律案大綱」(NPO優遇税制法案大綱)、及び「特定非営利活動促進法改正案大綱」の発表にあたって

2000年12月26日 日本共産党国会議員団・NPO対策委員会


 保健・医療、社会教育、文化・芸術、環境保全などNPO(民間非営利組織)の活動がいま注目されています。これらの運動に自発的に参加して、社会のことを考え、貢献したいという市民運動の潮流が各地で発展していくことは、日本社会の進歩にとって、健全で積極的な意味をもつものです。

 特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され二年が経過し、すでに申請数は三千五百を超え、三千以上の団体が法人格を取得しています。ところがNPO法は肝心のNPO団体にとって、使いかってが悪く、実態に即した法改正が必要になっています。

 さらに、NPO法人が社会性・公共性の高い活動を行っているにもかかわらず、公益法人などに適用されている税の優遇措置がなく、NPO活動を発展させるうえで大きな障害になっています。いま、NPOの活動基盤を強化するために、収益事業への課税の軽減、個人や法人からの寄付の促進など、財政面からの支援措置が強く求められています。

 日本共産党は、一九九六年六月に発表した「非営利法人法案要綱」のなかで、NPOに対する優遇税制の提案をおこなってきましたが、NPO法施行後二年の税制等の制度見直し時期に当たり、「特定非営利法人に対する優遇税制に関する法律案大綱」、及び「特定非営利活動促進法改正案大綱」を以下の通り提案し、市民団体のみなさんとの連帯、各党との共同に努力しその実現をめざします。


特定非営利法人に対する優遇税制に関する法律案大綱

一、優遇税制の内容

1 「収益事業」への課税の軽減措置

 認定NPO法人の収益事業から得た年間所得のうち八百万円を超える部分の税率を、公益法人等と同様に二二%(現行三〇%)とする。

2 収益事業の所得に「みなし寄付」制度を導入

 認定NPO法人が収益事業から生じた所得(法人税法上の三十三業種事業からの「利益」)を法人税法上の非収益事業で法人の本来事業に支出した場合は、その五〇%相当額までは非収益事業へ寄付したものとみなす。(みなし寄付金として損金算入)

3 利子等の所得の非課税措置

 認定NPO法人が本来事業で得た利子・配当の所得は、非課税扱いとする。

4 個人の寄付金への優遇税制

 市民活動への参加を促進するために、個人からの認定NPO法人への寄付については、所得の二五%を限度に所得控除、または寄付金額の二五%を税額から控除(税額控除の上限は所得税額の二五%)できることとする。一万円以下の寄付も控除対象にする。

 できるだけ多数の人々が寄付を通じた市民活動に参加できるように、十万円以下の個人寄付金は年末調整で控除できるようにする。

5 法人の寄付について損金算入の別枠を設ける

 認定NPO法人への寄付は、一般寄付金枠及び特定公益増進法人への寄付金枠とは別枠で、所得金額の二・五%相当額を限度に損金算入できるようにする。

6 不動産の「寄付」には譲渡課税を適用しない

 現に認定NPO法人が使用している個人名義の不動産を認定NPO法人に寄付した場合は、譲渡課税を適用しないことにする。

7 地方税の減免措置について

 地方税については、地方の自治権を尊重して自治体に委ねることにする。

8 個人の相続・遺贈財産を寄付した場合の相続税非課税措置

 相続または遺贈により財産を取得した個人が、認定NPO法人に当該取得した財産を贈与した場合、相続税は非課税とする。

9 その他

 認定NPO法人が本来事業として行う福祉事業に対する課税は、社会福祉法人に準じ非課税とする。

二、優遇税制を受ける「認定NPO法人」の認定基準・要件

1 一年以上の活動実績の判定

 法人の目的や特定非営利活動の種類などを定めた定款にしたがって運営されているかどうかを事業報告書、財産目録、収支計算書等によって確認する。

2 税制優遇措置を得るための団体の活動要件と組織・収入要件

 (1)特定非営利活動の支出が全体の七五%以上であること。

 (2)法人と役員との間で私的取引をしていないこと。

 (3)不当に高い給与を支払っていないこと。

 (4)広い市民からの会費や寄付金、財団や基金からの助成金、政府や自治体からの補助金、不特定多数を対象とした特定非営利活動による事業収入の合計が、全体収入の七五%以上の金額を占めていること(当分の間は五〇%以上とする)。

三、認定機関

 「認定NPO法人」の認定は、国家行政組織法第三条にもとづき新たに設置する行政委員会が行う。

四、不正の防止等

 必要で十分な情報公開によって、つまり国民多数の監視によって不正が行われないようにする。現行「特定非営利活動促進法」で求められている情報公開基準に加え「認定NPO法人」に対する認定要件を新たに情報公開の対象とする。


特定非営利活動促進法改正案大綱

一、十二分野に新たに四分野を追加して活動分野を広げる

 法第二条に次の四分野を追加する。

 (1)情報の伝達・普及を図る活動

 (2)科学技術および学術の推進を図る活動

 (3)産業・流通の振興を図る活動

 (4)消費者の保護を図る活動

二、申請書類を簡素化し、負担を軽減する

 法第十条の認証申請書類を次の通り簡素化する。

 (1)設立当初の事業年度を記載した書面は省略する。

 (2)「役員名簿」と「報酬を得る役員名簿」、「就任承認書」と「宣誓書」は統合する。

三、審査期間を短縮して法人の設立を迅速にする

 法第十二条第2項の認証までの審査期間を一カ月に短縮する。(現行二カ月)


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