日本共産党

学校教育の民主的改革について

第22回党大会での志位報告より/2000.11.20


二十一世紀の諸問題――学校教育の民主的改革について

 決議案の第8項では、「日本の二十一世紀を展望したとき、国民の生存と生活の基盤にかかわって、解決がせまられている問題」について、わが党の立場をのべています。これは、たいへん大きな反響があった項目でした。二十一世紀が提起する新しい問題に、大胆に答えを出し、行動する党の積極的立場が、歓迎されています。

 全党討論のなかで、つっこんだ解明の要望がとくに強かったのは、学校教育の改革の問題でした。「子どもと教育」について、決議案では、学校教育の改革、おとな社会の道義の確立、子どもを有害な情報から守る――という三つの角度から国民的とりくみをよびかけています。

 このなかの学校教育の改革では、決議案は、「受験中心のつめこみ教育、競争教育、ふるいわけ教育から子どもたちを解放し、一人ひとりの子どもの成長と発達を中心においた教育への改革をはかる」とのべています。それは、具体的にいうならば、すべての子どもに、主権者として必要な基礎学力、体力、情操、市民道徳を身につけさせる教育への改革をはかるということであります。この点で、決議案でものべている市民道徳の教育の重要性とともに、いま強調する必要があるのは、すべての子どもに基礎・基本の学力を保障する教育改革が、きわめて切実な課題となっているということであります。

 いま子どもたちのなかに「学力の危機」というべき深刻な実態が広がっています。文部省の「学校教育に関する意識調査」でも、授業が「よくわかっている」と答えた子どもは、小学校で四人に一人、中学校で二十一人に一人、高校で三十人に一人となっています。また各種の調査で、学校で嫌いなもののトップに「勉強」があげられ、なかでも嫌いな教科のトップが数学、理科となっていることも重大であります。国立教育研究所の報告によりますと、中学校二年生の国際比較では、数学を「嫌い」と答えた子どもが三十九カ国中日本は二位、理科を「嫌い」という子どもが二十一カ国中日本は一位となっています。

 ほんらい子どもたちにとって、学習によって新しい事柄がわかるというのは、大きな喜びのはずであります。ところが、学校教育が、多くの子どもたちにとって、「わからない」「面白くない」という場になっていることは、深刻であります。この「学力の危機」というべき実態が、子どもに苦しみをおしつけ、さまざまな発達のゆがみや社会的な逸脱をもたらす一つの根源になっているのではないでしょうか。

 これは、自民党政府・文部省が長年つづけてきた、競争主義、管理主義の強化という教育政策がつくりだした危機であります。この間、文部省が、学習指導要領などによって教育現場におしつけてきたことは、基礎学力のために必要な授業時間を削減しながら、「つめこみ」をつづけ、競争によって子どもをふるいわけするということでした。「新しい学力観」と称して、学習への「意欲・関心・態度」などを一面的に強調し、すべての子どもに基礎的な知識・認識を身につけさせるという学校教育の基本をないがしろにすることでした。その結果、子どもたちのなかに深刻な「学力の危機」がすすんでも、“わからないのも個性”だなどといっていなおるのが文部省の態度でした。

 三十年前の一九六八年に改定された学習指導要領(一九七二年実施)と、九八年に改定された学習指導要領(二〇〇二年実施)を比較しますと、小学校の六年間での四教科――国語、社会、算数、理科の授業時間数は、三千九百四十一時間から二千九百四十一時間に、ちょうど一千時間減っています。「学校の勉強だけではわからない、塾通いをしないとわからないのが当たり前」という異常な事態は、学習内容が系統性を欠いた断片的知識を棒暗記させるというゆがみをもっていることとともに、基礎的な科目に必要な授業時間を保障していないことも、大きな原因の一つとなっています。

 すべての子どもたちに基礎的な学力を保障することは、国民の根本的な教育要求であり、憲法と教育基本法が要請している学校教育の基本任務です。なにをもって基礎・基本の学力の内容とするかは、学習指導要領のおしつけではなく、国民的討論と合意によってきめられるべきです。学習内容を子どもの発達段階にそくした系統的なものにするとともに、真に基礎・基本的な事項については、十分な授業時間をとって、すべての子どもがわかるまで教える教育への改革が必要です。

 そういう原点にたった学校改革のなかで、すべての子どもが人間として自分が大切にされていると実感できる学校をつくってこそ、子どものなかに互いの人格を尊重する態度が生まれ、本当の道徳性も生まれるのではないでしょうか。

 そしてそれを保障するためにも、三十人学級への前進をかちとり、さらに少人数学級にすすむことは不可欠です。また、教員の増員と教育予算の増額、学校の民主的運営が必要です。入試の改善など受験中心の教育の改革も重要です。

 基礎学力の充実とそのための条件整備などは、わが党が以前からいっかんして主張してきたことでありますが、あらためてこの問題を重視し、子どもと教育をめぐる危機を打開し、学校教育をたてなおすための広い国民的討論と運動を心からよびかけるものであります。


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