国民に開かれた行政にするための情報公開法案大綱

1996年11月11日  日本共産党


第一 法制定の目的

 この法律は、日本国憲法に由来する国民の知る権利を保障し、かつ、行政の公正で民主的、透明な運営を確保するうえで、行政情報を国民に対して広く公開することが不可欠であることにかんがみ、行政情報の公開の総合的な推進に関する行政機関の責務及び行政情報の開示を請求する権利を明らかにするとともに、行政情報の公開に関して必要な事項を定め、もって国の行政の民主化に寄与することを目的とする。

第二 定義及びこの法律の適用対象

(1) この法律において「行政情報」とは、行政機関の職員が職務上または職務に関連して作成または取得した文書・図画・写真・マイクロフィルム・録音テープ・録画テープ・コンピュータによる自動データ処理のための採録物であって、当該行政機関が所持または保管しているものをいう。

(2) この法律において「国の行政機関」とは、次のものをいう。

 イ.法律の規定にもとづいて内閣に置かれる機関、国家行政組織法第三条第二項

  にもとづいて置かれる府・省・委員会・庁、法律の規定にもとづいて内閣の

  所轄の下に置かれる機関

 ロ.国家行政組織法第八条及びその他の法律の規定によって設置される審議会・

  調査会・審査会・委員会その他名称・所掌事務等の如何にかかわらず行政各部

  に設置される諮問・決定機関

 ハ.イに規定する行政機関が、国家行政組織法第八条の三にもとづいて設置する機関

 ニ.会計検査院

(3) 国会、裁判所及び地方公共団体が所持または保管する情報の公開について、この法律に準じてそれぞれ所要の措置を講ずるものとする。

第三 情報公開をもとめる権利及び国の行政機関の責務

(1) なにびとも、国の行政機関の長に対し、行政情報の開示を請求することができる。

(2) なにびとも、この法律の規定により開示を受けた行政情報について、自由に出版・放送その他の方法によりこれを一般に公表することができる。

(3) 国の行政機関の長は、(1)の開示の請求があったときは、すみやかにこれを開示しなければならない。ただし、第四に定める「開示しないことができる行政情報」を除く。

(4) 国の行政機関の長は、行政情報の目録簿を常備するとともに、情報の開示に関する事務を迅速かつ円滑に処理するための機構・設備の整備につとめなければならない。

第四 開示しないことができる行政情報

(1) 国の行政機関の長は、開示請求のあった行政情報が次のいずれかに該当する場合、これを開示しないことができる。この場合、行政機関の長は請求者に対し、開示しないことのできる根拠となる条項を明示しなければならない。

 1.個人に関する情報であって、当該個人を識別できるもの。ただし、次のもの

  は開示する。

  イ.内閣総理大臣・国務大臣・国会議員及びこれらの職にあった者に関する

   情報であって、開示することが公益上必要であると認められるもの

  ロ.法令の規定により、なにびとでもその内容を知ることができるもの

  ハ.公表することを目的として行政機関の職員が作成・取得したもの

  ニ.法令の規定にもとづく許認可・免許・届出その他これに相当する行為に際

   して行政機関の職員が作成・取得した情報であって、開示することが公益上

   必要であると認められるもの

 2.法人その他の団体に関する情報または事業を営む個人の当該事業に関する情報

  であって、開示することにより当該団体または当該個人の利益を著しく害する

  ことが明らかなもの。ただし、次のものは開示する。

  イ.事業活動によって人の生命・身体または健康に危害を生じ、または生ずる

   おそれがあるため、開示することが必要であると認められるもの

  ロ.違法・不当な事業活動によって人の財産または生活に侵害を生じ、または

   生ずるおそれがあるため、開示することが必要であると認められるもの

  ハ.その他、開示することが公益上とくに必要であると認められるもの

 3.開示することにより、次に掲げる国の行政事務の適正な遂行を著しく阻害

  することがあきらかなもの。

  イ.犯罪の予防・捜査、訴追、刑の執行、更生に関する事務(被告人の公正な

   裁判を受ける権利を保障する事務をふくむ)

  ロ.立ち入り検査その他の法律にもとづく調査権の行使に関する事務

  ハ.契約に係る予定価格、学識技能に関する試験、資格審査等に関する事務

 4.わが国と他国との外交交渉の過程における情報であって、これを事前に開示

  することによって当該交渉に支障をきたすおそれがあると認められるもの。

(2) この法律の施行後に定める他の法律において行政情報の非開示を規定する場合には、この法律で定める非開示の範囲を超えてはならない。この法律の施行時に現に施行されている法律において、この法律の定める非開示の範囲を超える規定がある場合には、当該法律の当該規定はこの法律の規定に則して読み替えるものとする。

(3) 行政機関の職員は、その職務に関連して作成または取得した文書・図画・写真・マイクロフィルム・録音テープ・録画テープ・コンピュータによる自動データ処理のための採録物で、かつ、この法律で定める行政情報以外のもの(「行政情報関連文書等」という)であって、当該職員の属する行政機関の長を通じてその開示をもとめられたときは、求めに応ずるようつとめるものとする。

第五 情報開示の手続及び不服申立

(1) 行政情報の開示の請求は、現に当該行政情報を所持または保管している国の行政機関の長に対してするものとする。

(2) 国の行政機関の長は、前項の請求があった日から二週間以内に当該請求についての決定をしなければならない。

(3) 国の行政機関の長は、前項の決定をしたときは、請求人にその旨(開示しない旨の決定であるときは、その理由及びその根拠となる条項)を通知しなければならない。

(4) 行政情報の開示に要する費用は、請求人の負担とする。

(5) 行政情報の開示に関する不服申立に対する裁決は、申立を受理した日から六十日以内にするようつとめなければならない。

(6) 行政情報の開示に関する処分の取消・変更をもとめる訴訟は、不服申立に対する裁決があった後、もしくは不服申立をおこなってから三ヵ月以内に裁決をおこなわない場合でなければ提起できない。 (7) 前項の訴訟に対する判決は、訴訟の提起があった日から百日以内にするようつとめなければならない。

第六 国会への報告

政府は、毎年、開示した行政情報の件数、開示しない旨を決定した行政情報件名及びその理由、その他行政情報の開示の状況について国会に報告しなければならない。


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