内閣官房長官 福田康夫 殿 

 女性パート労働者の雇用と賃金に関する緊急申し入れ

2001年5月25日 日本共産党

 大企業のリストラが横行するもとで、常用正規労働者の人べらしがすすめられる一方、パート労働者がふえ、その人数は1000万人をこえています。店長や専門職のパート労働者も少なくありません。

 しかし、パート労働者の多くは賃金は低く、一時金や退職金、社会保険などの面で不当に差別されているうえに、3ヵ月、6ヵ月という短い雇用契約の更新のパート労働者も多く、「いつ解雇されるか」の不安が、いつもつきまとっています。最近では、年休を与えなくてもすむ「5ヵ月」ごとの契約更新を繰り返すという事態までうまれています。

 パート労働者の7割は女性です。女性パート労働者は、女性であるための差別のうえに、パート労働者として賃金や諸権利での差別という二重の差別をうけています。時給は、全国平均で887円(99年。賃金構造基本統計調査)であり、1000円にもなりません。一般女性労働者との賃金格差は、ここ10年間でむしろ拡大しています。真っ先に解雇、雇止めされるのも、女性パート労働者です。

 女性パート労働者の雇用を安定させ、独立した人格をもつ労働者にふさわしい賃金、待遇を保障することは、パート労働者全体、正規をふくむ労働者全体の賃金と労働条件の水準の引き上げにもなる問題です。それは日本の社会全体にとっても大事な問題です。

 日本共産党は雇用不安におびえ、不当な差別を受けている女性パート労働者の現状の抜本的改善のためには、賃金の時間比例原則の明記など短時間労働者雇用管理法(いわゆるパート労働法)の抜本的改正、解雇規制法の制定をつよく要求するものです。

 同時にそれ以前にも、労働基準法等労働者保護法規の厳格な適用など、現行法規の下でも、女性パート労働者の現状を改善するために、政府が少なくとも次の対策をとることを要望するものです。

1) 一方的な解雇・雇止めを規制すること

 パート労働者に対しても30日以上前の解雇予告または解雇予告手当の支払い義務があることなどは、労働基準法にも明記されている。また、期間の定めのある有期労働契約の場合、すでに最高裁判決でも確立されている判例法−−−反復更新してきた「臨時工」に対する会社の更新拒否(雇止め)は、実質的な「解雇」であり、期間満了を理由として雇止めをすることは、信義則上からも許されない、とする東芝柳町工場事件判決など−−−を政府の責任で、使用者に守らせる措置をとること。

 雇い入れの際、労働条件を明示した労働条件通知書の交付、就業規則の作成・変更時はパート労働者の意見をきくなど使用者の義務を徹底させること。

2) 有給休暇、女性休養室・休憩室、休憩時間の確保など労働者保護法令を厳正に適用すること 

 介護や子育てをになっている女性パート労働者の有給休暇の保障、女性休養室・休憩室、休憩時間の確保など、労働基準法等で保障されている権利を女性パート労働者が取得できるよう、監督指導を強めること。

3) パート労働者の時給の引き上げのためにも、地域最低賃金の引き上げをおこなうこと 

 いまなお、多くの地域で、地域最低賃金以下のパート労働者の時給がまかりとおっている。1時間当たりの賃金が400 円(那覇・沖縄・浦添の3商工会議所による「平成12年度賃金実態調査報告書」)という実態もある。全国的一斉調査をおこない、法違反に対して是正措置をとること。

 パート労働者の時給が低く抑えられている要因の一つには、事実上、パート労働者の最低賃金の基準となっている地域最低賃金が低く、生活実態にみあったものになっていないことがある。最低賃金法どおり、最低賃金が「労働者の生計費」を考慮して定められるよう、必要な措置をとること。

 地方最低賃金審議会の労働者委員の中の女性の割合は2・93%。女性の委員がいない県は40道府県にものぼる。地方最低賃金審議会、および地域最低賃金の審議・決定に大きな影響をあたえる中央最低賃金審議会に女性パート労働者の代表を増やし、審議会の公開、全議事録の公開など運営の民主化をすすめること。

4) 労働基準法、最低賃金法などの周知徹底と相談・苦情窓口の充実を

 雇用契約の内容、雇用期間、就労日数、賃金など就労の実態が記入でき、労働基準法など労働者保護法令上の権利と使用者の義務を記入した、仮称「パート労働ノート」(例・東京都の「パートキャリアノート」)を作成、交付し、パート労働者へ徹底する措置をとること。

 全国で、1,000 ヵ所を超える労働基準監督署、公共職業安定所、雇用均等室に、フリーダイヤルで「パート110 番」を設け、パート労働者が気軽に苦情・相談をもちこめる体制をつくること。

 全国の雇用均等室でパート労働の専門官はわずか1人(東京)にすぎない。労働基準監督署、公共職業安定所、雇用均等室にパート労働専門官を配置し、指導・監督体制の充実をはかること。

以上


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