◆(7)資本主義をのりこえる新しい社会への展望

 (1) 新しい綱領は、「二一世紀を、搾取も抑圧もない共同社会の建設に向かう人類史的な前進の世紀とすることをめざして、力をつくす」という壮大な展望をのべている。

 その根拠は、何よりも、「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾」のなかにある。

 貧富の格差の拡大と、南北問題の解決は、現在の体制のもとでは不可能だという警告が、国連機関の報告書でものべられている。国連開発計画(UNDP)は、毎年、『人間開発報告書』を出しており、「人間開発」とは貧困や格差の解消をさす言葉として使われているが、その最新版では、「合計で四億六千万人となる十八カ国の二〇〇三年の人間開発指数は、一九九〇年よりも低下した。これはかつてない後退である」とのべ、「直截(ちょくせつ)にいえば、世界は明らかに人間開発の失敗へと向かっている」と結論づけている。これは、極端な貧困、格差の拡大は、いまの世界の体制のもとでは解決しえないという深刻な危機感の表明にほかならない。

 資本主義の利潤第一主義は、人類の生存条件そのものを脅かす新しい矛盾を引きおこしている。地球温暖化、石油など化石燃料の枯渇、大量の廃棄物の発生などの地球環境問題がそれである。環境やエネルギーのように、長期的経過をたどって壊されていく人類の生存基盤をまもるために、人類が長期的な対応をしなければならない場合に、はたして資本主義という利潤第一主義のシステムでやっていけるのか。それは不可能ではないかという問題提起が、地球環境の専門家のなかからも広くあがっている。

 世界の資本主義の現実と矛盾そのもののなかに、わが党がめざす未来社会――社会主義・共産主義への発展の条件が存在しているのである。

 (2) 新しい綱領は、二一世紀の世界は、「発達した資本主義諸国での経済的・政治的矛盾と人民の運動」、「資本主義から離脱した国ぐにでの社会主義への独自の道を探究する努力」、「政治的独立をかちとりながら資本主義の枠内では経済的前途を開きえないでいるアジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの広範な国ぐにの人民の運動」のなかから、「資本主義を乗り越えて新しい社会をめざす流れが成長し発展することを、大きな時代的特徴としている」と、未来社会への発展の国際的条件についてのべている。

 資本主義の危機的な状況をみて、アメリカ、フランス、ドイツの有力なメディアがマルクスを特集するなど、発達した資本主義諸国のなかで、「マルクスを見直そう」という機運が広がっているのは、一つの世界的な傾向となっている。

 社会主義への独自の道を探求している国ぐには、すでに世界政治、世界経済のなかで大きな位置をしめている。多くの主要国の政府が、中国とどのような政治的・経済的関係を築くのかを、外交戦略の大きな課題として位置づけている。

 ラテンアメリカで、民主的な変革にとりくんでいる国のなかから、この改革の前途は何かという問題が提起され、資本主義の道には前途はない、崩壊したソ連は社会主義とはいえないと、独自の社会主義の確立をめざす真剣な議論がはじまっている。

 この激動の時代に、日本共産党が、未来社会論の中心を「生産手段の社会化」におき、「人間の全面的発達」を目標とする社会をめざすことを明らかにした、新しい綱領を確立したことは、大きな意義をもつ。日本共産党という未来社会の展望とかたく結びついた党名を高くかかげ、壮大な展望と大きな志をもって、未来にのぞもうではないか。

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