◇「綱領改定案」から1 「ルールなき資本主義」の現状を打破し、労働者の長時間労働や一方的解雇の規制を含め、ヨーロッパの主要資本主義諸国などの到達点も踏まえつつ、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくる。 2 大企業にたいする民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配をおさえる。民主的規制を通じて、労働者や消費者、中小企業と地域経済、環境にたいする社会的責任を大企業に果たさせ、国民の生活と権利を守るルールづくりを促進するとともに、つりあいのとれた経済の発展をはかる。経済活動や軍事基地などによる環境破壊と公害に反対し、自然と環境を保護する規制措置を強化する。 3 国民生活の安全の確保および国内資源の有効な活用の見地から、食糧自給率の向上、安全優先のエネルギー体制と自給率の引き上げを重視し、農林水産政策、エネルギー政策の根本的な転換をはかる。国の産業政策のなかで、農業を基幹的な生産部門として位置づける。 4 国民各層の生活を支える基本的制度として、社会保障制度の総合的な充実と確立をはかる。少子化傾向を克服する立場から、子どもの健康と福祉、子育ての援助のための社会施設と措置の確立を重視する。 5 国の予算で、むだな大型公共事業をはじめ、大企業・大銀行本位の支出や軍事費を優先させている現状をあらため、国民のくらしと社会保障に重点をおいた財政・経済の運営をめざす。大企業・大資産家優遇の税制をあらため、負担能力に応じた負担という原則にたった税制と社会保障制度の確立をめざす。 6 すべての国ぐにとの平等・互恵の経済関係を促進し、南北問題や地球環境問題など、世界的規模の経済問題の解決への積極的な貢献をはかる。 →関連部分 |
では、日本経済、日本資本主義の弱点はどこにあるのか。日本の現状を同じ資本主義国でもヨーロッパの国ぐにと比べてみると、問題がはっきり浮き出てきます。大企業の横暴勝手が野放しにされて、国民の暮らしや権利を支える手だて、仕組みが貧弱だということ、ここに私は、日本経済の最大の弱点・欠陥があると思います。
いくつかの実例を挙げてみましょう。
日本で働いている方の大部分は、企業で働いている労働者の方々です。その労働者の方々が、同じ資本主義の国でも、ヨーロッパの労働者とどれだけ違った状況におかれているか、という問題です。
職場に行きます。日本では法律や協約で七時間とか八時間とか一日の労働時間が決まっていても、それに残業がついてくるのが当たり前になっています。しかしヨーロッパでは、七時間と決まったら一日の労働時間は七時間なんです。よほどのことがない限り追加の残業はありません。
だから、労働者もその家庭も、七時間の仕事がすんだらきちんと帰ってくるということを基準にして、生活を組み立てています。ましてや、ただ働きのサービス残業なんてことは、考えられもしません。私たちがヨーロッパの方々に日本の実情を説明しても、理解してもらうのにたいへん苦労するのです。
労働時間の関係では、くわえて有給休暇の問題があります。日本では、法律では最高二十日と決まっています。しかし、二十日の休暇をまとまって取る人はあまりいないで、病気欠勤の穴埋めに使う、それも使い残して、政府の統計だと半分も使われていないのが実情です。ところが、ヨーロッパでは、たとえばドイツでは二十四日、フランスでは三十日と決まっていますが、これをばらばらで使う人はいないんです。みんな、夏休みなどにまとめて使う。ドイツでは法律の想定をこえて、労使の協定で夏四週間、冬二週間、休暇をまとめてきちんと取ることがだいたい、世間の標準になっています。
さらに労働強化による「過労死」が日本では大問題ですが、これはほかの国では例のないことで、それにあたる言葉はどこにもなく、「カローシ」という日本語で、世界に通用しています。それぐらい、労働強化の面でも、日本は異常なのです。
解雇されるときはどうか。日本には、労働者を解雇するときに、資本が守るべきルールを決めた法律はありません。しかし、ドイツでもフランスでも解雇制限法、解雇規制法というのがあって、道理のない解雇は厳しく禁じられています。
しかも、解雇されたあとはどうなるかというと、失業保険の長さがまるで違います。日本では相次ぐ改悪で、いま定年退職だと失業保険は約五カ月、リストラでも、最高十一カ月でしょう。ところがドイツは、失業保険は最高三十二カ月ですから、二年以上職を探しながら生活ができます。フランスではいま、最高六十カ月です。
ヨーロッパと日本では、同じ資本主義国といっても、働くものの立場を守る仕組みがこれだけ違うのです。
政府の側の問題はどうでしょう。これは選挙のときにくりかえし訴えてきたことです。世界中で、国民の暮らしを支える社会保障のために、国や地方が出す支出よりも、大型プロジェクト中心の公共事業に出す支出の方が多いなんていう国は、日本以外どこにもありません。つまり、企業と労働者のあいだの関係で、働くものの暮らしや権利を支える仕組みが弱いのに、それに加えて、政府の税金の使い方も逆立ちになっています。
ここに、実は、日本経済の最大の弱点があるのです。だから、不況に見舞われると、日本は不況が特別に深刻になります。いま、株価が少し上がったといって政府は喜んでいますが、もっとつっこんだ経済評論を見ると、株価は上がっても雇用が伸びない、消費も伸びない、まだたいへんだということが指摘されています。専門家は、国民の消費という一番の経済の土台を見るのです。それが日本ではたいへん弱くて、もっとも不安定だということ、この根本の弱点が日本経済をとりわけ基盤の弱いものにしているのです。
私たちは、こういう点をしっかり見て、この弱点を大もとから正そうじゃないか、このことを、経済改革の方針として、今度の綱領改定案で明確にうちだしました。
ヨーロッパにはあるが、日本にはルールがないか弱い、そこを改革して、国民の生活と暮らし、権利を守る“ルールのある経済社会”をつくろうじゃないか。国民に薄く、大企業に手厚い税金の「逆立ち」した使い方を変えようじゃないか。大企業にもそれなりの社会的責任をきちんと果たしてもらおうじゃないか。そういうことをはっきりと示したのが、私どもの経済の民主的改革の方針であります。
(「党綱領の改定について」不破議長の党創立81周年記念講演から)
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私たちは、当面的な基準ではなく、やはり改革の基本方向をしめすもの――十年、二十年という物差しでその有効性を保ちうるもの、そういう気構えでつくりました。
一例をあげます。原発の問題でもっと具体的な提起を、という発言は、多くの方からありました。すでに吉井さん(国会)からかなり詳しい解明がされましたが、私からも若干の点をのべておきます。現在、私たちは、原発の段階的撤退などの政策を提起していますが、それは、核エネルギーの平和利用の技術が、現在たいへん不完全な段階にあることを前提としての、問題点の指摘であり、政策提起であります。
しかし、綱領で、エネルギー問題をとりあげる場合には、将来、核エネルギーの平和利用の問題で、いろいろな新しい可能性や発展がありうることも考えに入れて、問題を見る必要があります。ですから、私たちは、党として、現在の原発の危険性については、もっともきびしく追及し、必要な告発をおこなってきましたが、将来展望にかんしては、核エネルギーの平和利用をいっさい拒否するという立場をとったことは、一度もないのです。現在の原子力開発は、軍事利用優先で、その副産物を平和的に利用するというやり方ですすんできた、きわめて狭い枠組みのもので、現在までに踏み出されたのは、きわめて不完全な第一歩にすぎません。人類が平和利用に徹し、その立場から英知を結集すれば、どんなに新しい展開が起こりうるか、これは、いまから予想するわけにはゆかないことです。
ですから、私たちは、エネルギー政策の記述では、現在の技術の水準を前提にして、あれこれの具体策をここに書き込むのではなく、原案の、安全優先の体制の確立を強調した表現が適切だと考えています。
(「党綱領改定案についての質問・意見に答える」から)
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