日本共産党

日本共産党と中国共産党の首脳会談での不破議長の発言(大要)


 日本共産党の不破哲三議長は、江沢民中国共産党総書記・国家主席と、八月二十八日、北京市・中南海で首脳会談をおこないました。この首脳会談での不破議長の発言(大要)は、以下のとおりです。


 あいさつを交わしたあと、「不破議長の訪中を歓迎します。お会いするのはこれで三度目になりますが、この間、国際情勢は大きく変わっています。そこで、不破議長のご意見をまずうかがいたい」という江沢民総書記の言葉をうけて、不破議長は、要旨、次のようにのべました。

北東アジア――日本、中国、朝鮮半島の三者のあいだの平和的関係の構築を

 不破 では、提案にしたがって、私の方から話をさせていただきましょう。

 前回、両党関係が正常化した直後の一九九八年の会談では、日中関係の五原則を提案しました。私たちは、今後とも、この五原則の立場で、日本と中国の平和的な関係、アジアの安定した平和関係をきずくために、力をつくすつもりです。きょうは、それにくわえて、北東アジアの安定と平和の問題について考えたい、と思います。

 北東アジアといえば、日本と中国、そして朝鮮半島です。二十世紀を通じては、この三つの地域のあいだに、安定した関係がきずかれたとはいえない状況がありました。それだけに、二十一世紀を迎えて、日本と中国、朝鮮半島のあいだに平和の関係がきずかれるなら、それはアジアの平和のみならず、世界の平和にも大きく貢献することになります。

 この問題では、一昨日(八月二十六日)、戴秉国中連部(中央対外連絡部)部長とかなり詳しく話し合い、私は、日本がかかえている問題点、朝鮮半島をめぐる懸念、二十一世紀に中国が果たしてもらいたい役割についての希望をのべました。ここで、それを繰り返すことはしませんが、この三者の関係をより平和的なものにしてゆくために、たがいに協力してゆきたいということは、かさねて強調したいと思います。

国連憲章の平和のルールが破られたら、世界の平和はよるべき基盤を失う

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首脳会談にあたり、江沢民中国共産党総書記・国家主席(右)と握手する不破哲三議長(左)=8月28日、北京市・中南海

 不破 世界情勢の問題では、この数年間に大きな変化があったといわれたが、私もその通りだと思います。世界の平和と安全を求める声が大きくなる一方で、平和に逆行する危険も大きくなっています。この問題でも、戴秉国部長とかなり話をしましたから、そのうえにたって、当面する中心問題にしぼって簡潔に話します。

 私は、あなた方が、米ソ対決が終わって以後の世界について、「新安全観」という提唱をおこなってきていることに注目しています。軍事同盟によらない平和の枠組みをつくること、国際的なルールをまもることが、「新安全観」の考え方の要にすえられており、国際ルールのなかでは、国連憲章が最も重要なものとされ、その順守が主張されています。実際、今日の世界で、国連憲章のルールを破ることが平気でおこなわれ、それが国際社会で黙認されるようなことになれば、世界の平和がよるべき基盤がなくなってしまいます。

 私たちは、昨年九月のニューヨークでのテロ事件以後の国際情勢のなかに、国際ルールの根本を脅かす危険が生まれていることを、重視しないわけにはゆきません。

 アメリカは、このテロにたいする対抗策として、アフガニスタンにたいする報復戦争という道に進みました。私たちは、テロとたたかい、これを根絶するということには賛成しましたが、そのために報復戦争という手段をとることには賛成しませんでした。それでも、米国の報復戦争には、ニューヨークへのテロ事件を「武力攻撃」とみなし、この攻撃に関与した勢力がアフガニスタンにいることがほぼ証明されたという点で、「自衛」という大義名分が成り立つ、という議論もありました。

ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言以後事態の性質は変わってきた

 不破 しかし、この戦争の展開のなかで、アメリカ政府が「悪の枢軸」諸国(イラク、イラン、北朝鮮)への攻撃を問題にしはじめたときから、事態の性質が変わってきました。ブッシュ大統領は「悪の枢軸」諸国を公然と非難しましたが(二〇〇二年一月、一般教書演説)、それらの国が、テロ勢力を支援したという明確な証拠も、大量破壊兵器を開発しているという証拠も、あげることはできませんでした。テロ勢力を支援したという証拠もないし、テロを行使したという事実もないのです。あるのは、アメリカ政府が、これらの国ぐにを憎んでおり、疑っている、という事実だけです。疑っているという理由だけで、他国にたいして武力攻撃をくわえるというのは、国連憲章が明確に禁止している先制攻撃にほかなりません。実際、ブッシュ大統領は、今年に入って、このためには先制攻撃が必要だと公式に言明しました(二〇〇二年六月一日、米陸軍士官学校卒業式での演説)。

中国も核先制攻撃の対象国に――国防総省の二つの報告

 不破 この問題で重要なのは、今年の一月のアメリカ国防総省の「核態勢見直し報告」と八月に発表された「国防報告」(ブッシュ政権として最初のもの)です。

 「核態勢見直し報告」は、核による先制攻撃の対象とされる国として、七つの国があげられました。私は、この報告を、アメリカが、一九八〇年代の末から、ソ連解体後の軍事戦略として検討し、つくりあげてきたものの最新の到達点だと思って読みました。そこでは、いざというときに、核兵器を使っての攻撃を考えるべき国として、「悪の枢軸」の三国にくわえ、四つの国があげられていました。それは、リビア、シリア、中国、そしてロシアです。

 「核態勢見直し報告」は、核兵器をもって対応することが必要になる「非常事態」を、(1)「さしせまった非常事態」、(2)「潜在的な非常事態」、(3)「不意打ちの非常事態」の三つに分類しています。そして、中国は、「さしせまった非常事態」であると同時に「潜在的な非常事態」に関連する国家として、位置づけられていました。ロシアは、一段さがって、いま「予期」されはしないが「可能性はある」程度のものとされています。

 なぜ、中国が、「さしせまった」また「潜在的な」危険な相手とみなされているのか、「核態勢見直し報告」には十分な説明がありませんでしたが、八月の「国防報告」のなかにその答えがありました。

 「国防報告」によると、「中東から北東アジアに円弧型にのびる広範な不安定な地域」が、とくに問題とされています。その地域に、「相当な資源基盤を有する軍事的な競争者が、台頭する可能性がある」、これが重大問題だとしています。つまり、アメリカと対等な地位をもつかもしれない国が現れる可能性がある、それはアメリカにとっての重大な脅威という警告を与えているのです。そのような国は、この地域には、中国以外に存在しません。

 私は、アメリカが、イラク攻撃がさしせまっているとされる情勢のなかで、この「国防報告」を出してきたことには、大きな意味がある、と思います。これは、イラクにたいする先制攻撃の権利を説明するのに使う同じ論理が、将来、中国に向けられ、中国がアメリカの「軍事的な競争者」になる危険が見えてきた時には、中国への先制攻撃をおこなうことは、アメリカの当然の権利だということになるのです。

この無法を許したら、21世紀の世界は暗澹たるものになる

 不破 私たちは、ともに、二十一世紀に安定した平和の国際ルールがきずかれることを願っています。そのルールの中心は国連憲章であって、国連憲章は、自衛のためでしか、武力攻撃を認めていません。ある国が、そのルールを破って、他国を先制攻撃する、そういうルール破りを国際社会が黙認するならば、二十一世紀の世界は暗澹(あんたん)たるものになります。すべての国が、世界はそういうものだということを前提にして、それぞれの行動、それぞれの戦略を決めなければならない、ということになってしまいます。

 私は、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」発言をしたときの、新華社の論評(二〇〇二年二月三日付「米国のいわゆる『悪の枢軸』はつくり話」)を読んで、この問題の危険性をよく見ているという点で、共感をおぼえました。情勢はその時からさらに進んできており、平和の国際ルールをまもれるかどうかの瀬戸際にあるという認識をもっています。そのことを、率直にのべたいのです。

核兵器の使用の計画をブッシュ政権ほど、気軽に公言した政府はない

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不破哲三議長(左から3人目)と江沢民総書記・国家主席(右から2人目)との首脳会談。同席する筆坂秀世書記局長代行(左から2人目)、緒方靖夫国際局長(左端)と戴秉国中国共産党中央対外連絡部長(右端)=8月28日、北京市・中南海

 不破 この問題で、同時に見る必要があるのは、「悪の枢軸」論による先制攻撃が、核兵器の使用の危険と結びついている、ということです。「核態勢見直し報告」とは、もともと先制攻撃に核兵器を使用する用意があるという方針を、表明したものでした。第二次世界大戦後、核兵器をもった国が、核兵器の使用の計画を、こんなにも軽くとりあげたことはありません。アメリカは、かつて、朝鮮戦争のさいに、核兵器の使用を計画しました。また金門・馬祖問題(一九五八年)でも、核兵器の使用作戦をひそかに検討しました。そのことは、アメリカが公表した外交・軍事文書に記録されていることです。しかし、現在の米政権ほど、核兵器の使用の意図をあからさまに公言した政権を、私は知りません。

 しかし、これにたいするもう一つの流れとして、核兵器廃絶を求める国際世論の高まりがあります。一昨年のNPT(核兵器拡散防止条約)再検討会議では、世論の高まりのなかで、核兵器の完全廃絶を約束する決議に、核兵器保有国もふくめ、すべての国が賛成し、それが採択されました。私が四年前の首脳会談で、核兵器廃絶へのとりくみの緊急性を提起したとき、江沢民総書記は、中国が一貫して核兵器廃絶を主張してきた国だと言明されました。

 このように、核兵器をめぐる二つの流れ、情勢の二つの側面があります。ブッシュ政権のように、核兵器を使うことを気軽に考える流れもあれば、核兵器廃絶を求める流れの広がりもあります。この廃絶の流れが非常に重要です。

 日本でおこなわれる八月の原水爆禁止世界大会に、中国は毎年代表を送り、核兵器廃絶の国際的な運動の一翼を担っていることに、この機会にお礼をのべたいと思います。ここにも、国際面で新しい変化が起きています。この大会は、もともとは、各国の平和団体の参加が主力でしたが、ここ数年は、各国の政府代表の参加が目立っています。今年の大会には、エジプトの外務次官、マレーシアの軍縮大使、バングラデシュ、南アフリカの四カ国の政府代表が参加し、さらにマレーシア、ベトナム、ラオス、バングラデシュ、南アフリカ、ニュージーランド、スウェーデン、タイなどの元首(首相)からメッセージが寄せられました。

この共同行動には「アメリカ帝国主義反対」の旗はいらない 必要なのは、世界の平和のルールをまもる旗です

 不破 私は、国連憲章のルールをまもる、核兵器の使用を許さない、という広範な共同の動きが広がって、これが二十一世紀の重大な国際的な課題となっていることに、注目するものです。

 この共同は、もちろん、アメリカのいまの企てと対立する性格をもっています。しかし、この行動を起こし、運動を広げるにあたって、以前の時期のように、「アメリカ帝国主義反対」といった旗を高くかかげる必要はありません。問題は、国際的なルールをまもることであり、そういう世界秩序をきずくことにあります。ルールを破る企てをするものがあれば、誰であってもそれを許さないというとりくみが必要です。核兵器の問題でも、平和に逆らって核兵器にしがみついたりその使用を企てたりするものがあれば、誰であってもこれを許さないという運動です。

 私は、核兵器禁止の問題では、世界はいま、核保有国のなかから、核兵器廃絶へのイニシアチブをとる国が現れることを痛切に望んでいるし、そのことがいまこそ必要になっているということを、指摘したいと思います。

 私たちは、四年前の首脳会談以後、アジア諸国、イスラム諸国との関係を発展させる外交活動に力をつくしてきました。その成果は、さきほど紹介した、原水爆禁止世界大会への各国政府代表の参加にもあらわれています。わが党の活動のこの分野についても、お話ししたいことは多いのですが、限られた時間を、私が独占してはいけないので、ここまでで第一回の発言を終わります。

 江沢民総書記の発言をお聞きしたい、と思います。

イラクへの軍事攻撃反対、国連憲章の厳守、核兵器全面禁止――これが、中国の明確な立場です(江沢民)

 このあと、江沢民総書記は、「私は真剣に不破議長の話をお聞きしました」とのべ、不破議長が提起した問題について、中国側の見解をのべました。

 江沢民総書記は、まず、北東アジアの平和に関連して、朝鮮半島の情勢をとりあげ、「中国の南北朝鮮関係にたいする態度は明確です。南北関係の平和的解決を促進することに有利なものにはすべて賛成する。マイナスになるものには反対する」と語りました。

 つづいて、国際情勢については、「不破議長は、国連の尊重と核兵器禁止について提起されました」として、まず国連憲章とそれを破るイラク攻撃の企てについて、次のようにのべました。

 「中国は、国連安保理事会の常任理事国として、すべての活動で国連の決定を尊重しており、湾岸でも、コソボでも、国連で解決することを主張してきました。しかし、いくつかの国は、国連の役割を尊重せずに、国連の頭越しでやっています。決定的なこととして、きびしい問題が出されています。それは、イラクにたいする軍事攻撃の問題です。中国の態度は明確です。イラクにたいする軍事攻撃には反対です。平和的な話し合いを通じて解決することに、努力しています。目下、世界の大多数の国は軍事攻撃に反対しています」

 そして、アメリカの政府筋から、「国連はもはや必要ではない」という声が聞こえてきていることについても、強い懸念を表明しました。

 核兵器の問題については、「核兵器の先制不使用と核兵器の全面的な廃止」が、中国の一貫した主張であることが、かさねて強調されました。

不破「運動の前途には、世界的にも光がある」
江沢民「世界での社会主義の前進を確信している」

 江沢民総書記は、そのあと、中米関係や中日関係、世界の共産主義運動の問題などについて見解をのべ、また十一月に開かれる中国共産党第十六回大会について、次のようにのべました。

 「われわれの党は世界に向かって大会の開催日を明らかにしたが、新しい世紀の最初の大会で、きわめて大きな意義をもつものです」

 不破議長は、つづく発言で、四年前の首脳会談のさいに、江沢民総書記の側から問題提起があって、世界と社会主義の問題について話し合ったことをふりかえり、その時の意見交換とも重ねあわせながら、ソ連問題にたいする態度の違いが、各国の運動状況の明暗の違いとなって現れていることを分析的に紹介し、「運動の前途には、世界的にもやはり光はあります」とのべました。

 最後に、二人は次のような言葉で、一時間二十分にわたる首脳会談を結びました。

 不破 二十一世紀の新しい情勢のもと、たがいにそれぞれの課題にとりくみながら、努力してゆきたい。二十一世紀はまだ先は長いから、これからもお話できる機会はあるでしょう。

 江沢民 見通しは全体として明るい未来を持っていると思います。現在の世界のなかで、社会主義がさらに前進してゆくことを、私は確信しています。日本共産党におかれても、前進のプロセスのなかで、多くの成果をえることを願っています。

日本と中国との関係の5原則

 一、日本は、過去の侵略戦争についてきびしく反省する。

 二、日本は、国際関係のなかで「一つの中国」の立場を堅持する。

 三、日本と中国は、互いに侵さず、平和共存の関係を守りぬく。

 四、日本と中国は、どんな問題も、平和的な話し合いによって解決する。

 五、日本と中国は、アジアと世界の平和のために協力し合う。

 

2002年9月5日(木)「しんぶん赤旗」


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