日本共産党

2001年12月21日「しんぶん赤旗」

回顧2001

文化行政 文化に及んだ小泉流「改革」

国の監督も強まる傾向が


 今年の文化行政は、一見すると相反する流れがあるかのようです。文化庁予算が近年になく増額し、国・自治体が文化芸術を振興するよう定めた文化芸術振興基本法が制定される一方で、特殊法人改革の名で日本芸術文化振興会の独立行政法人化と国立劇場などの事業への助成の抑制が打ち出されました。

特殊法人「見直し」

 政府は、特殊法人「見直し」の一環として、芸術文化振興基金や国立劇場などを管理・運営する日本芸術文化振興会の独立行政法人化を打ち出しました。また、振興会の事業への国の助成は、「抑制」「終了」と、削減する方向を鮮明にしました。

  独立行政法人化となると、文部科学大臣が決める「中期目標」にそって、事業を「効率的」にすすめさせられ、文部科学省の評価委員会の「評価」を受け、それが人事や予算に反映されるという、政府の強い「監督と関与」が生じます。それは「効率化」の名のもとに、短期間に経済効率があげられるかどうかを基準に「評価」しようというもので芸術・文化とはなじまないものです。

 こうした攻撃が、地方でもひろがっています。東京や大阪などで、文化事業・施設を「効率性」で評価し、切り捨てようとする計画が相次いで出されました。

国の重点支援が増加

 他方、文化庁予算は前年度比で百億円増の九百九億四千九百万円となりました。このなかには、関係者の要望の反映したものもありますが、「ITの推進」などを柱とした「景気対策」にかかわる新規事業が大半となっています。そして、予算の中で、国による直接の重点支援の比率が増加し、日本芸術文化振興会を通じた間接支援の比率が減少しています。この傾向は、二〇〇二年度概算要求でも続き、芸術創造活動への新しい直接支援枠をつくろうとしています。

 全体として、「民間にまかせられるものは民間で」という小泉「改革」によって、既存の文化行政で、国の公的支援を切り捨てながら、あらたに国の関与・監督が強まる傾向にあるといえます。

振興基本法の制定

 こうしたなか、文化芸術振興基本法が成立しました。基本理念には、国民の文化的権利にかかわる文言や、専門家の地位向上が記されました。しかし、表現の自由が明記されず、芸術・文化活動への行政の介入を招きかねない問題ももっています。 振興基本法の制定によって、国が新たに「文化芸術振興」の基本方針を策定するなど、文化行政に変更が加えられていきます。小泉「改革」による文化切り捨てと、独立行政法人化や予算配分などを手段とした行政の介入を許さず、専門家の社会保障や税制改正など、芸術・文化活動に必要とされている要求の具体化を迫ることが必要となってきています。

辻 慎一(党学術・文化委員会事務局)


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